周防大島瀬戸内アルプスアドベンチャー|子どもと繰り出せ!海・陸・山の冒険

瀬戸内海の西に浮かぶ「周防大島」。海のアクティビティーが注目されがちな、「瀬戸内のハワイ」と呼ばれる島ですが、魅力はそれだけではないんだとか。島の西側に広がる「瀬戸内アルプス」のトレッキングや、海沿いの景色を満喫できるサイクリングなど、様々なアクティビティーが楽しめます。海、陸、山を遊び尽くすツアーに同行した現地ライターが、その魅力をお伝えします。

2021.02.22

三浦 宏之

農家・ラジオディレクター

INDEX

瀬戸内アルプスについて

「瀬戸内海で三番目に大きな島」と聞いてどれくらいの人がピンと来るでしょうか?兵庫県の淡路島、香川県の小豆島に次いで三番目に大きな瀬戸内の島、それが私たちの暮らす島、山口県の周防大島です。この「大きい」というのは面積のこと。島々にある山の高さで言えば、小豆島の星ヶ城山(816m)に次いで高いのが周防大島の嘉納山(685m)ということになります。これは瀬戸内に限らず日本全国の島にある山としても高い部類に入るとのことで、住んでる身としてはこれはかなり誇らしい気分です。その嘉納山(685m)を筆頭に文珠山(663m)、源明山(624m)、嵩山(618m)と4つの600メートル超級の山が連なる様は「瀬戸内アルプス」の愛称で親しまれています。

島といって最初に思い浮かべる風景はやはり海だと思うのですが、先にお伝えした通り、この島には連なる山々があり、そこを縦走することができます。海と山がかなり接近している地形ですので、海のアクティビティ、山のアクティビティをいっぺんに楽しめるのも周防大島の魅力のひとつです。ゼロメートルから684メートルまでを味わい尽くす周防大島の新しいアウトドアの形「瀬戸内アドベンチャー」について紹介します。

瀬戸内アドベンチャーの始まりは大人気のキャンプ場から

11月中旬のよく晴れた週末、周防大島を舞台に開催されたアウトドア体験会「瀬戸内アドベンチャー」のベースとなったのは、中国地方のキャンプ場としては人気ランキングの上位に必ず食い込む片添ヶ浜海浜公園オートキャンプ場です。周防大島の海岸沿いにはパームツリーが立ち並び南国ムードが満点!そのパームツリーと海水浴場の白砂、遠くに四国の松山を望むシチュエーションが最高キャンプ場です。ちなみにこの島はハワイのカウアイ島と姉妹島縁組をしていることから「瀬戸内のハワイ」の愛称もあります。姉妹島縁組は1963年6月22日と、その歴史もなかなか古いのです。「瀬戸内アルプス」に「瀬戸内のハワイ」、最高の山と最高の海のイメージ、なんとも贅沢な島です。

新しい海のアクティビティー タンデムアイランドで海の瀬戸内を満喫

瀬戸内アドベンチャーの初日は周防大島のゼロメートル地帯、海とその周辺のアクティビティから。当初予定されていたSUP(スタンドアップパドル)は、好天ながら強風の影響により中止に。大きく浮力のあるボードの上に立つ比較的安定感のあるマリンスポーツではあるものの、風の強さには敵わないと判断したようです。

それとは別に用意されていたアクティビティがタンデムアイランドという足漕ぎセーリングカヤックです。ヨットのようにセールに風を受けて海上を走ることもできるし、公園のスワンボートのように足漕ぎで進むこともできる、いわば二刀流のカヤックです。そして最大の特徴は乗船部の左右についたフロートが自転車の補助輪のように作用するので、転覆の心配がほとんど無いということ。こんな風の強い日にも体験可能、子ども連れにもオススメしたい海のアクティビティですね。真ん中の足漕ぎと操舵を担当する部分に2名、左右のフロートと乗船部をつなぐネットの上に2名、最大4名まで乗ることができるのも楽しいポイントです。

この日は強風のためセールを広げることはできませんでしたが、足漕ぎカヤックとして体験することができました。早速、今回のイベントに参加している女性2人組がタンデムアイランドを海に浮かべて漕ぎ出すと驚きの推進力と安定感で遠く沖の方へと消えていきました。公園の足漕ぎスワンとは雲泥の差です。


自分もネットの部分に乗せてもらって瀬戸内の海に漕ぎ出しました。水面とほぼ同じ高さの目線からハイスピードで進む海と空と雲と島々。このはじめて見る景色に大興奮!11月中旬の海は意外と温かでした。海と空の深い青にタンデムアイランドの赤が映えます。朝一番で「えー濡れるんですか?聞いてないです。」とか言っていた参加者さんも4回目のおかわりライド。想像以上に気持ちよかったようです。

ちなみにタンデムアイランドのインストラクターはピザのおいしい石窯料理店サルワーレのオーナーシェフの梅田さん、もう一方は本業が漫画家の福田さん。ちょっとかわったキャラクターを持ちあわせる周防大島のプレイヤーにも注目です。

瀬戸内の海を望む絶景サイクリング

キャンプ場でのランチタイムを挟んで午後のアクティビティはサイクリング。「瀬戸内アルプス」「瀬戸内のハワイ」と、周防大島を知る上で大切なキーワードをここまでにふたつ紹介しましたが、さらにもうひとつ、「サイクル県やまぐち」というものがあります。

とにかく「山口県は全てのサイクリストを応援します!」というプロジェクトです。その言葉通り、県内には、サイクリスト向けの施設が充実しています。

周防大島でも、サイクルピットと呼ばれる自転車置き場や、サイクルエイドという自転車の修理もできる休憩施設などが多く存在。レンタサイクルが利用できるサイクルステーションも、道の駅サザンセトとうわをはじめ、島内に3ヶ所あります。

そして今回の体験会で走るのは、過去何百回も周防大島を走ったという上級サイクリストがナビゲートするオススメのサイクリングコース。

まずは、キャンプ場を出発し、南の海岸線を和佐地域にある「星のビーチ」目指して走ります。そこから北に向い、海沿いの国道を走り道の駅サザンセトとうわへ。再び南に戻ってキャンプ場までの周遊コース約13キロ、所要時間は約1時間のコースです。

高低差が30メートルくらいあるので、初心者やお子様にはちょっと厳しいかなと思われるコースでしたが、みなさん笑顔で楽しそうに走っていました。こんなかっこいいクロスバイクにまたがればテンションも上がりますし、何よりも美しい景色の中、風を切って走る爽快感は絶品です!

最初の目的地の和佐は「三百六十五歩のマーチ」「男はつらいよ」「兄弟船」などで知られる作詞家・星野哲郎先生の故郷です。周防大島の海ベスト3を選ぶなら、確実にランクインすることでしょう。海水浴場そのものの美しさもありますが、景色の抜け感といいますか、広く開けた海と空を堪能することができます。その割には人が少ないこともあって、心落ち着く海のひとつです。

そして北側に抜けた先、海沿いの国道は、自動車のテレビCMの撮影でも使われたこともあるという美しい海岸線です。先ほどの星のビーチもそうですが、周防大島の海は東に行くほどきれいで碧が濃くなります。東側は特に自動車の交通量も少ないので、サイクリストが安心して楽しめるコースです。

バーとDJブースが出現!?夜のキャンプも一味ちがう

タンデムアイランドとサイクリングで初日の瀬戸内アドベンチャーは終了!と思いきや、今回のイベントには特別な演出がありました。なんと、夜のキャンプ場の暗闇にバーとDJブースが出現!ここはイビザか周防大島か。「BE-PAL」や「TRANSIT」などの雑誌に寄稿するアウトドアライターでおなじみ、櫻井卓さんと、YAMAPひげ隊長を特別ゲストに迎え、焚火を囲んでアウトドア料理とアルコールを楽しみました。ホットワインとか、ホットウィスキーとか、楽しげな声が聞こえてきましたが、明日は早朝から山登りですから、飲みすぎ注意でお願いします!

瀬戸内アルプスに欠かせないインフラ「山タク」

瀬戸内アドベンチャー2日目は600メートル超級の山々が連なる瀬戸内アルプスの縦走です。瀬戸内アルプスの代表的なルートは、島の西側から順番に文珠山、嘉納山、源明山、嵩山と東に進むもの。文殊山山頂付近に車を置き、そこから嵩山までの縦走コースを往復する方が多いようです。

ただ、往復をするとちょっと帰りが単調になりがち。島では文珠山までタクシーで送ってもらって、嵩山に迎えに来てもらうことをお勧めしています。タクシーであれば、車の移動や誰に運転してもらうかなどを気にせずに思う存分瀬戸内アルプスの縦走を楽しめることができるからです。

「山タク」
周防大島に瀬戸内アルプス送迎サービス「山タク」が誕生しました。JR大畠駅から文珠山の登山道がはじまる文珠堂まで、嵩山山頂からJR大畠駅まで、それぞれ片道6000円で送迎してくれる山のタクシーです。最大4名まで乗車できるので4人家族の登山でも安心です。嵩山山頂と文珠堂を結ぶコースも選べるので行きはマイカーでという選択も可能です。



【ご予約・お問い合わせ】
サザンセト交通/TEL 0820-79-2121
大島観光タクシー/TEL 0820-74-3030
東和タクシー/TEL 0820-77-0200
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いざ、山の瀬戸内アドベンチャーへ

さてさて、話は戻って2日目の朝、周防大島のアウトドア体験会「瀬戸内アドベンチャー」の参加者を乗せた山タクが向かったのは周防大島の西端に位置する文珠山。七合目にある文珠堂の駐車場に現れたのは朝8時30分ごろ。車を降りるとそれぞれに身体を動かしながら準備体操、登山開始地点となる文珠堂を目指して歩きはじめました。この文珠堂は弘法大師が建てられたお堂と伝えられ、日本三文殊のひとつに数えられています。日本三文殊とは、京都の知恩寺、奈良の安倍文珠院、周防大島三蒲の三つ。この並びすごいですよね。瀬戸内アルプス縦走のスタート地点となる文珠堂を前にスマートフォンのYAMAPアプリを開いて縦走ルートを設定。気分が高揚してまいりました。

では早速、文珠堂の右手に見える長い階段から登山スタートです。いきなりの急な階段を見て「えー!」の声があちこちから上がったものの、「登山ですからねー。」と気持ちを切り替えて、登りはじめました。山頂までのおよそ30分のルートには赤や黄色の紅葉や、霧に包まれる神秘的な杉林があったりと自然の豊かさにすぐに魅了されました。また、案内人ヒゲ隊長のクイズコーナーで山や自然の知識を深めながらの短い休憩時間を取りつつ、みなさん心地よいペースで登ることができたのではないでしょうか。山頂までの山道は比較的緩やかな長い坂が続きます。



そして、山頂には二階建ての展望台が待っています。360度とまではいきませんが、300度くらいのパノラマビューを楽しむことができます。島と本州を結ぶ大島大橋、瀬戸を行き交うフェリーや釣り船、大小の島々が織りなす瀬戸内の多島美。美しい景色につつまれての小休憩の後、一行は次の山頂を目指します。

アドベンチャーの集大成 瀬戸内アルプス全山踏破か?

一行は順調に文殊山山頂を通過し、瀬戸内アルプスの最高峰、標高685mの嘉納山へ。緑豊かな木々の間から差し込む光の美しさに魅了されたのか、写真を撮影したり、歓声をあげたりと疲れも忘れて歩を進めます。

木々の生い茂る登山道からは残念ながら瀬戸内の海を望むことはできませんが、紅葉の色の違いや植物の小さな実に目を向けることで、日頃の生活では出会えない自然に触れることができ、参加者一同大満足の様子でした。

豊かな自然を満喫していると、あっという間に嘉納山山頂に到着です。文珠山から歩きはじめて50分くらいでしたでしょうか。道のりが穏やかなので、参加者の皆さんもそれほど疲れずに到着できた様子。展望台があるわけでもないので山頂としての派手さに欠けるところもありますが、ここが周防大島のピークポイント685mです。



本来であれば3つ目の山、源明山を目指すところですが、今回は時間の関係でスキップ。4つ目の山、嵩山に向けて出発!歩き出してすぐに見えてきた嵩山の山頂はちょっと遠くに思えて、行く先に不安も感じましたが、それに以上に今まさに山登りしている!という高揚感が背中を押します。降り積もる落ち葉の層がクッションのように働いて足取りを軽くしてくれました。

文珠山・嘉納山方面から嵩山山頂を目指すとき、もう少しで山頂か?というあたりで道が三方に分かれます。「長寿の森」の案内図がその分岐点です。これまでの縦走経験では毎回ここでの選択を誤ってかなりの遠回りをしてきましたが、今回はYAMAPアプリのおかげで迷うことなく最短ルートを選択!体力的にも余裕をもって嵩山山頂に辿り着くことができました。山登りの必携アプリですね。ありがとうYAMAP!

山頂ではお待ちかねのお昼ご飯。瀬戸内アルプスのお供、大島大橋近くにある大島本陣茶屋さん謹製で、山頂で食べると格別の美味しさです。


大島本陣茶屋さんの山弁はこちらで予約・問い合わせ可能
TEL 0820-74-1066/住所 周防大島町西三蒲16-1

嵩山山頂の展望台は360度のパノラマビュー!天気の良い日には広島の宮島を望むことができます。全行程約4時間の瀬戸内アルプス縦走を達成し、笑顔で瀬戸内アドベンチャーを終えました。

周防大島の海からはじまり山の頂で終えた二日間の冒険「瀬戸内アドベンチャー」、周防大島の新しいアウトドアの形を提案しました。最新の海のアクティビティー「タンデムアイランド」、サイクリング、手ぶらでも楽しめる瀬戸内アルプスの縦走、周防大島観光のおいしいところをギュッと凝縮したアウトドアプランでした。島の外から訪れる観光客やおともだちにはもちろん、この島に住んでいる人にもオススメしたいです。

ゼロメートルから685mまで、海と山のアクティビティを一時に楽しめるのは島ならでは。瀬戸内で3番目に大きくて、2番目に高い山がある島、周防大島。瀬戸内アルプスと瀬戸内のハワイ、周防大島の魅力を詰め込んだ瀬戸内アドベンチャー、あなたも冒険してみてはいかがでしょか?

最高の笑顔を見せてくれたのは最終日、嵩山の山頂でした


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三浦 宏之

農家・ラジオディレクター

三浦 宏之

農家・ラジオディレクター

2013年より周防大島在住。農薬・肥料を使わない米づくりのかたわらラジオ番組の制作に携わる、自称”半農半ラジオ”。21世紀に入り年一ペースで富士山に登る程度の山好き。愛用のテントは小川スクートDX4。広げるのはやはり年一くらい。