「テント泊同好会」による記事も今回で最終回。達人ならではのテントの選び方からオススメ装備、気になるハウツーなど、これからテント泊をしたいという方に向けてお届けしてきました。最終回は、テント泊だからできること、そして達人たちの憧れの場所(テント泊で登りたい山とテント場)を教えてもらいました。
はじめようテント泊|登山テントの選び方、おすすめアイテム、活用アイデア #09/シリーズ一覧はこちら
2020.10.07
YMテント泊同好会
テント泊の達人たち
「テントがあるとどんなことができるの?」「どんな楽しみがあるの?」といった疑問を持っている方も少なくないはず。まずはテント泊の達人たちに、テント泊だからこそのいいところを教えてもらいました。
伊藤:やっぱり行動範囲が広がるということ。日帰りでは行けない山に登れるというのは、テントがある大きなメリットだと思います。テントに泊まること自体が一種のアクティビティとして楽しめるものだけど、テントって元々は「野営することで行動範囲を広げていくための道具」なんですよね。
ちゅーた:アルプスはとくにテント泊か小屋泊をしないと行けない山も多いですよね。自分のテントと装備一式を担いで、テント場をつなぎながら歩いていくという楽しみ方は、テントがなければできないですし。
田所:それに、自由に行動できるというのもテント泊だからこそですよね。私自身そんなにゆっくり寝ているわけではないのですが(笑)、自分のペースで起きて行動するのは小屋だとちょっと難しいかも。でも、テント泊なら、その日のコンディションや目的に応じて調整できる。例えば山頂で日の出を見たいから夜明け前に歩き出すとか、長いルートを歩かなきゃいけないから早く出るとか、逆に前日頑張ったから今日はゆっくり寝ていたい、とか。
船山:他の登山者の行動を気にしないマイペースな感じもいいですよね。僕の場合は自然にどっぷり浸かりたいから山に行くということがよくあるので、自分のペースでゆったりと時間を使いたいなと思います。別にいつも一人がいいってわけではないんですけどね。
ちゅーた:私はテント泊の「山で暮らしている感」が好き。日の出とともに行動して、日が暮れたら我が家(テント)で寝る。そうやって、街の暮らしとは違う「山の暮らし」を楽しんでます。
伊藤:逆に、山小屋のありがたみを感じられるのもテント泊をしていればこそ、ですよね。小屋に泊まるたびに、毎回感じるのは快適で安全だってこと。で、不思議と小屋から出られなくなっちゃったりして(笑)。
田所:小屋で休憩して飲むコーヒーもいいですよね。でも、山に行く回数が増えてくると破産しちゃうんですよね(苦笑)。毎週小屋泊だと金銭的なハードルで山に行けなくなっちゃうかも。
船山:テント泊は、あえて苦労することを楽しむということもありますよね。普段の生活が便利だからこそ、自分の力で判断して、行動する。山という自然をより感じて、アンテナを張っていろいろ思考を巡らせることも必要ですし。
ちゅーた:テントで感じる雨や風もいいんですよね。はじめは雨やだなあって思うかもしれないけれど、雨が降っていても楽しいと思えてくるんです。雨の音もテントなら楽しいし、ちょっと荒れたくらいの方が思い出に残ることも(笑)。
伊藤:どんな山に行ってもテントの中はセーフティーゾーン。天気が悪い時とか、テントを設営してなかに入ったときのホッとした感じは忘れられませんね。
田所:雨のあとの晴れが嬉しいですよね。晴れてよかった~、残っててよかったって。あと、やっぱりテントで見る景色も好きなので、テント場に余裕があるなら、入り口をどっちに向けようか考えますね。風が強いと張る向きは限られてきますが、テントの正面に山が見えるようにできると嬉しい(笑)。
これまでいろいろな山でテント泊をしてきた4人。「もう一度テント泊をするなら?」をテーマに、イチオシのテント場を教えてもらいました。
船山:僕は常念岳ですね。穂高も槍も見えますし、ちょっと風が抜けやすいので注意が必要ですが、テント場も広いのでのんびりできます。
あとは唐松岳ですね。メジャーなルートと山ですが、白馬の山々が広がる景色は最高です。山荘もしっかりしていて補給もできるし、テント泊ビギナーにもオススメです。
ちゅーた:うーん、すごい迷うけど…北アルプスの五色ヶ原が好きです。あそこはもう、天国ですね(笑)。広い平地になっていて、地平線の先に立山が見えて、木道のまわりに花が咲いていて。すごくいいところなんです。ちょっと行きにくいということもあって人が少ないのですが、景色も綺麗だし、テントで1泊するには持ってこいの場所ですね。1泊2日なら、鳶山周辺を散歩したり、立山三山のあたりを登って室堂に戻ってもいいですよね。
伊藤:やっぱり剱沢のテント場ですね。ときにかく真正面に見える剱岳がカッコイイ! 剱岳を見るなら絶対にここですね。テントに寝っ転がりながらみる景色はまさに絶景。アプローチもそんなに遠くないし、人は多いけれど眺望は格別です。
田所:私は北岳のテント場ですね。標高が高いから、上まで頑張ってテントを担いで登らないといけないけれど、担いだ甲斐はあります。達成感も(笑)。目の前に広がる絶景はまさにご褒美。景色と、あとはビールも楽しみに登るのがおすすめです。
達人といえども、まだまだ行ったことのない山域や山はたくさん。今後テント泊で行きたい山を聞いてみました。
船山:九重連山ですかね。温泉もあるし、植生も山の雰囲気も違うというのが魅力的。長野県出身の僕にとって、もともとアルプスの山々は身近な存在。だから遠くの山、違う土地の里山に登ってみたいんです。
違う土地の里山ですね。去年昨年、鹿児島の「宝島」という島で「イマキラ岳」という標高300に満たない山に登ったんです。に行ったのですが、標高が400mくらいしかないんです。山としては低いと思うのですが、手付かずの自然があって、めちゃくちゃ感激しましたよかったんです。知らない山はってまだまだたくさんあるので、一つひとつ目指していきたいまずは九州の山を登ってみたいと思っています。
伊藤:鳳凰三山に登りたいです。王道だけど、実はまだ行ってことがなくて。単純に行ったことがないとうのもあるのですが、「鳳凰」っていう名前がカッコイイ(笑)。
ちゅーた:飯豊と朝日を繋いでみたいです。ちょこちょこそのあたりの山には行っているのですが、テント泊で歩いたことがなくて。あとは北海道ですね。避難小屋が多いけれど、大好きな野湯がいっぱいあるので行ってみたいです。
田所:先ほどちゅーたさんもおすすめのテント場で挙げてましたが、昨年行こう思っていた、五色ヶ原から赤牛、読売新道は歩いてみたいですね。北アルプスのメジャーな縦走路は歩いているのですが、読売新道はまだなので。あとは屋久島をちゃんと歩きたいと思っています。テント泊で宮ノ浦岳の縦走をしてみたいですね。
全6回でお送りしてきた「テント泊同好会」によるテント泊記事。テント泊というと、敷居が高いのでは?テクニックは必要なのでは? と思うかもしれませんが、そんな不安以上に得られる楽しみはとても大きいもの。登りたい山、歩きたいルートがあるならば、ちょっとずつステップアップすればOK。テント泊同好会の記事を参考に、テントと一緒に山を楽しんでいただければ嬉しいです。
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