1920年代にフランスで誕生したミレー(MILLET)。1950年には人類初の8,000m峰となるアンナプルナ遠征でもミレーのバックパックが使われました。そんなミレーが、今年、アウトドアの地平を拡げる「PLAY」というキャンペーンをスタートさせたそうです。いったい「PLAY」とは? そしてそれを支えるトリロジー ティフォン ジャケットとは? 北海道で取材してきました。
2022.04.12
林 拓郎
アウトドアライター
改めて言うまでもなく、僕らは山に代表されるアウトドアアクティビティが大好きだ。その理由を明確に説明できたことはないのだけれど、ひとつ挙げるならこのアクティビティには正解がないという点ではないだろうか。
たとえば100人が同じ山に登ったとしても、装備や楽しみ方などすべてがその人次第。軽快なスピードで歩く人もいれば、花や草を愛でながらゆっくりと歩を進める人もいる。
決められた形にとらわれず、その人なりの形で山を楽しむその自由さを、ミレーは「PLAY」の一言に込めた。
アウトドアアクティビティを登山やハイキングといったカテゴリーに当てはめることはしない。自分なりの活動、自分らしい楽しみ方をそれぞれの個性の現れとして、外遊びを捉えたのだ。そして安全性や快適性といったアウトドアウェアの機能性は、その自由な活動を支えるために与えられていると再定義した。
では、そうしたライフスタイルを確立させ、個性豊かに山を楽しむPLAYの達人たちは、どんな活動のために、どんなウェアを選び、どう使いこなしているのか。
今回は、そんな達人のひとり、北海道で動物写真家として活躍する、佐藤 圭(さとう けい)さんにお話をうかがってみた。
北海道・留萌(るもい)。日本海に面するこの町の夕日は、遮るもののない水平線に沈んでいく。中でも黄金岬からのそれはさまざまな自然条件が重なり合うことで独特の色合いを放ち “日本一の夕陽” と言われている。
「高校卒業して、しばらく留萌からは離れていました。20代前半で戻ってきた時、なんてきれいな夕陽なんだろうって感動したんですよね。こんな景色が住んでるところから、車で数分の場所にある。きれいだなぁ、と思いながら写真を撮ってたんですが、それが日課になって。気がついたら2年間、毎日黄金岬に通って夕日を撮るようになっていました」
夕陽への情熱はやがて、留萌周辺の自然や、そこでくらす動物たちへと広がっていった。
「最初はやっぱり、海の近くの動物から始めました。今でもオオワシやオジロワシの猛禽類、アオバトっていう海にいる鳩も撮りますし、留萌の海岸にはアザラシも来るんで、そういう海獣も撮ります。でも、ここ数年で一番力を入れてるのは山の動物達、特にエゾナキウサギやシマリスのような小動物ですね」
2021年11月には初の写真集『山の園芸屋さん エゾシマリス』を刊行した。
「昔、動物写真の師匠が、生き物のことをよく見ろって教えてくれたんですよ。何を食べてどういう行動をして、どんな活動をしているかをよく観察しろって。そういう動物たちの動きに沿って行動すれば、動物たちも姿を見せてくれるから、って。そうしているうちに、それぞれの動物なりの、素の表情や仕草を捉えることが楽しくなってきたんです」
言葉の通り、『山の園芸屋さん エゾシマリス』には、これまで誰も見たことがないような、愛らしい姿が並んでいる。
「僕は写真が好きだし、動物も好きなんです。好きなことを重ねて、その重なりの部分でたくさんの人を驚かせたり喜ばせることができたら嬉しいなぁと思ってます」
だから、と佐藤さんは続ける。
「喜んでくれる人がいる、っていうのが一番のやりがいなんです」
しかし、動物写真は誰にでも撮れるわけではない。たとえば、だ。
「海岸にアザラシの死体が打ち上がると、何かしらの動物が集まってくるんですよね。だいたいそういうアザラシを見つけたら、離れた所にカムフラージュ用のテントを立てて、その中から被写体を狙います。だけど動物って用心深いんです。オオワシなんかは近くに寄ってきても、何時間もじっと警戒してることがあります」
長いときには数時間、アザラシを見ているだけだという。動物はこちらの都合では動いてくれない。
「オオワシがアザラシをつつき始めるまで数時間、ただただじっと待って、いよいよ動き始めた!ってカメラを数mm動かしただけで、逃げちゃうこともあるんですよ」
生きることに真剣に向き合っている動物たちは、非常に神経質だ。だから撮影のときには彼らの警戒心を刺激しないよう静かに穏やかに、ひたすらシャッターチャンスを待っている
「長いときは12時間くらい待ってます。その間はあまり動きません。完全にジッとしてるわけじゃなくて、リラックスして、自分から緊張感が漂わないようにしてます。気持ちとしては、周りの木や岩に溶け込むようなイメージですね」
だからこそ、天候が変化しても着替えることはない。
「実はエゾナキウサギやシマリスといった小動物を撮るのは雨や霧の日がいいんです。空からの視界が良くないので、猛禽類が獲物を狙いにくくなって、そういう小動物も安心して活動できるようになるんですよね」
カメラをスタンバイしたまま、雨が振ろうと霧に包まれようと、静かに静かに動物たちの警戒心が緩むのを待っている。
「そうやって力を抜いて周囲を見ていると、視界の中にフッと違和感を感じることがあるんです」
それが待望の一瞬だ。誰も見たことがない生き生きとした姿は、そうした長い長い時間の先にこそあるものなのだ。
佐藤さんが動物を撮影するフィールドは、決して特別な場所ではない。海岸、河川敷、登山道といった、誰もが簡単にアクセスできるところばかりだ。そして特別ではないからこそ、佐藤さんには想いがある。
「その日、その場所には、自分が最初に行きたいんです。賑やかになる前にそっと近づいて、静かにそこにあるものを撮りたいと思ってます」
だから佐藤さんは自分を鍛えた。本格的に写真を始めるまで、登山の経験はほとんどなかった。けれど、誰よりも先に目的地に到着するために、重い機材を背負ってひたすら山を歩いた。
「2年くらい、けっこう歩き込みました。登山靴もボロボロになりましたね」
そのかいあって、現在の佐藤さんが歩くスピードは、普通の人の小走り程度にまでアップした。けれど、その足さばきは軽やかなままだ。まるで流れるように、スルスルと山道を登っていく。そうして目的地に近づくと、音を立てないように、その場の空気感を乱さないよう、スーッとペースを落としていく。
「今、この瞬間に、ここにいる。それが一番大事だと思っています」
来なければ撮れなかった写真。来たからこそ巡り合った瞬間。そうした刹那を重ねるために、佐藤さんは翔ぶような速さで野山を歩き続けるのだ。
そんな佐藤さんが選び取ったウェアは、
■トリロジー ティフォン タフ ストレッチ ジャケット
■トリロジー ティフォン タフ ストレッチ パンツ
だ。
「真夏の晴れた日以外なら、たいていティフォンの上下を着てるような気がします。特に霧が立ち込めたときとか雨っぽいときは必ずですね」
そもそもが雨に強いウェアなので、荒天時でも安心して使えること。まずはこれがティフォンを選んだ理由だ。
「ティフォンはレインウェアのカテゴリーなんですが、普段からアウトドアジャケットとして使えるくらい着心地もいいんです。レインウェアを感じさせず、アウトドアジャケットとして日常使いできるっていうのが魅力ですよね」
「もうひとつは生地が柔らかいんです。そのおかげでガサガサいわない。これは動物写真を撮るときには非常に重要だと思っています」
本来、着心地や動きやすさを考慮した機能が静粛性に役立っている。
「生地が伸びるので動きやすいし、それが快適さにもつながっています。でも、いちばんありがたいのは衣擦れの音がしにくいことです」
そしてもちろん、ティフォンが備える透湿性も佐藤さんの活動を大きく支えている。
「ガンガン動いても蒸れにくいから、トップスピードで動いたあとでじっとしてても耐えられる。その間に雨が降っても平気。この包容力っていうか、守備範囲の広さはめちゃくちゃありがたいです」
加えて言うなら、動物写真家が選ぶウェアにはタフさも必要なのだ。
「エゾナキウサギやシマリスが住んでるのは溶岩帯なんです。ゴツゴツした岩の上で膝をついたり、腹ばいになったりしながら撮影します。時にはハイマツの藪を漕ぐこともありますし。やわなウェアだと、すぐに破れちゃうんですよ」
様々な状況に対応できて、タフで快適。それこそ佐藤さんが、ミレーのティフォンを使う理由だ。
「他にもウェアはいっぱいあるんですけど、なんだかんだでティフォンの出番が多くなってます。それだけ、丈夫で気軽に使えるってことだと思います」
動物写真という、完全に相手のペースで作品を作るアクティビティ。その独創的な世界を作り上げることに、ティフォンの機能性が役立っている。
■ミレー・トリロジー ティフォン タフ ストレッチ ジャケット
レインウェアとしての信頼性を確保する30,000mmの高い耐水性と、四季を通じて快適なウェア内環境を実現する40,000g/㎡/24hという優れた透湿性を誇るメンブレン「ティフォンタフⅡ」を使用。アウトドアでのアクティブな活動を支えるために、表地にはしなやかながらも、しっかりとした頑強さを与えた。またフードはヘルメット対応。ツバ部分にワイヤーを備えて、フード使用時の視界確保も万全だ。
■ミレー・トリロジー ティフォン タフ ストレッチ パンツ
レインウェアとして申し分のない30,000mmの耐水性と、40,000g/㎡/24hの透湿性を備えた。オーバーパンツとしてだけでなく、全天候型のトレッキングパンツとしても使用可能。
取材・原稿:林拓郎
撮影:中田寛也
協力:ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン