【ドライは正義】ミレーのレインウェア・ティフォンがロングセラーを続ける理由

登山用品専門店に行くとずらりと並ぶ登山用具の数々。「いったいどれが自分の登山スタイルに合うんだろう?」と悩んでしまいますよね。そんな時に頼りになるのが経験豊富なお店のスタッフ。今回は、そんな専門店スタッフに、ミレーのロングセラー・レインウェア「ティフォン」の人気の秘密について教えてもらいました。実際に商品を売っているからこそ分かる「ティフォンを薦める理由」は説得力抜群です。

2023.10.03

大関直樹

フリーライター

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フランスを代表するアウトドアブランド、ミレー。最近は、汗冷えを解消するアンダーウェア「ドライナミックメッシュ」、ファーストクラスの背負い心地を持つバックパック「サースフェー」といった、爆発的な人気を誇るアイテムのリリースが続いています。この2つに勝るとも劣らないほどのヒット商品が、レインウェアの「ティフォン」シリーズです。

「ティフォン」が初めて登場したのは、2017年のこと。ストレッチ性があって生地が柔らかいティフォンは、硬くてゴワゴワする従来のレインウェアのイメージを覆すものとして、発売当初から大きな話題となりました。それ以来、ミレーのフラッグシップアイテムとして、7年間に渡ってロングセラーを続けています。

今回は、そんな「ティフォン」が、登山者に支持され続けている理由について、長年、登山者の悩みに向き合いながらティフォンを販売してきた、3つの登山用品専門店のスタッフのみなさん(石井スポーツ登山本店/有岡竜二さん、好日山荘池袋西口店/高谷和郎さん、LaLaさかいや/高橋朋子さん)にお話をうかがいました。

まるでソフトシェルのようなしなやかな着心地:人気の理由①

「ティフォン」シリーズの一番の特徴は、レインウェアやハードシェル特有の突っ張り感がないこと。まるで、ウインドブレーカーやソフトシェルのような柔らかな着心地。しかも、ストレッチもバッチリ効いているので、長時間着用しても疲れにくいのが特徴なのです。

ティフォンの生地を手で引っ張ると、写真のように大きく伸びる

石井スポーツ登山本店/有岡竜二さん(以下、有岡さん):ティフォンの最大の特徴は、とにかく柔らかさと薄さだと思います。お客さまが実際にティフォンを触ると「これは本当にレインウェアなの?」と衝撃を受ける方が多いですね。そこで「ちゃんと裏面に止水テープも施されているので、完全防水です」と説明すると「えーっ!」と驚かれますね。

腕を思い切り曲げてもウェアが突っ張らない柔らかな着心地

LaLaさかいや/高橋朋子さん(以下、高橋さん):女性の登山者は、「レインウェアって、ゴワゴワして着にくい」と感じていらっしゃることが多いんですよ。そんなお悩みをお持ちの方にティフォンをおすすめすると、「こんなに柔らかな着心地のものがあったの!」と気に入っていただけます。また、一度ティフォンを購入されると「すごく着やすいので、普段使いするようになりました」、「登山用に明るい色を買ったので、今度は街着として少し抑えた色が欲しいです」など、リピーターになる方が多いのもティフォンの大きな特徴だと思います。

一般的なレインウェアの約2倍という高い透湿性:人気の理由②

登山用レインウェアに必要な透湿性は、一般的に10,000~20,000g/㎡/24h以上といわれています。しかし、「ティフォン」シリーズの透湿性は、なんと50,000g/㎡/24h。これは、防水透湿メンブレンを、通常の半分以下である7マイクロメートルにすることで実現することができました。しかも、耐水圧は登山に必要とされる20,000mmを確保した上で耐久撥水加工を施しているので、大雨の中でも汗ムレすることなく快適に行動することができます。

表面には耐久撥水加工が施されているので、雨は水滴となって転がり落ちる

有岡さん:透湿性が50,000g/㎡/24hと非常に高いティフォンですが、アクティブに動いているとき、多少熱がこもることもあります。そんなときは、両方のポケットに手を入れてパタパタ動かして空気を入れてあげると、中のベンチレーションからサッと湿気が抜けていきます。急登などでちょっと汗をかいたときは、この方法がおすすめです。

ポケット内部に付けられたベンチレーションからも湿気を逃すことができる

好日山荘池袋西口店/高谷和郎さん(以下、高谷さん):透湿性が高くてストレッチ性のあるティフォンなら、汗ムレも感じにくく身体の動きを妨げることもありません。だから、雨が降ってなくても、ウィンドブレーカー代わりに着ることができるんです。レインウェアとウィンドブレイカーを兼用することができるので、荷物を軽量化できるというメリットもあります。

自分の山行スタイルに合ったモデルを選べる:人気の理由③

「ティフォン」シリーズは、春夏モデルの「ティフォン50000」、秋冬モデルの「ティフォン50000ウォーム」、エキスパート向けの「トリロジー ティフォン タフ」の3タイプがリリースされています。このうち、「ティフォン50000」と「ティフォン50000ウォーム」は、裏地やジッパーなどを除いて、同じ設計になっています。

ティフォンの裏地は、素肌の上からでも着用できる肌触りのよいニット生地

高谷さん:ミレーの商品というのは、どれも個性があるのでお客様にも説明しやすいですね。ティフォンシリーズも3つのモデルがありますが、3シーズンの縦走ならティフォン、雪山で登攀を含まないならティフォンウォーム、バリエーションルートや登攀ならティフォンタフと、登山スタイルに応じてシリーズが棲み分けされているんですね。このように各ウェアにわかりやすい特性を持たせていることで、お客様も選びやすいというメリットがあります。

ティフォンウォームは、裏地に起毛トリコットを採用しているので保温性が高い

有岡さん:雪山はティフォンウォームがおすすめですが、シビアなところをめざすならティフォンタフの方がよいでしょう。雪山は装備が増えて荷物が重くなりますが、70デニールのティフォンタフ素材を使って摩耗に強くしています。ティフォンウォームが50デニールなので約1.5倍の耐久性があるのです。その分、透湿性は少し落ちますが、安心感が高いです。さらに肩周りなどの補強もシビアな環境では安心です。

ティフォンタフの裏地には、伸縮性を損なわずに強度を上げたトリコットが使われている


 

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登山用品専門店スタッフがティフォンを薦める理由とは?

これまで、ティフォンが登山者に支持され続けている理由について3人の登山用品専門店スタッフにお話をうかがいました。続いて、それぞれの担当者が特にこだわっている「私がティフォンを薦める理由」について聞いてみました。

ティフォンを薦める理由①(ICI石井スポーツ登山本店/有岡竜二さん)
アクティブインサレーションとの相性が抜群
「しなやかで着心地は抜群のティフォンですが、生地が薄いので稜線などの風の強いところでは、少し寒さを感じることもあります。そんなときには、今流行のアクティブインサレーション(保温性と通気性を兼ね備えた行動着)をティフォンの下に着用するとよいですよ。保温性がありながら汗も抜けるのでオーバーヒートしづらくなります。とくにワッフルウールなどのミレーのアクティブインサレーションは、高い透湿性を誇るティフォンとのレイヤリングが想定されているので、とても相性がいいです」

ワッフルウールは透湿性が高いので、ティフォンと組み合わせると汗ヌケが抜群

ティフォンを薦める理由②(LaLaさかいや/高橋朋子さん)
シルエットとカラーリングがスタイリッシュ

「ミレーのウェアは、10年くらい前だとクライミング要素が強いウェアが多くて、エントリーユーザーには敷居が高いイメージがありました。カラーリングも、原色を使うなどビビッドなアイテムがメインだったんですよね。しかし、ティフォンが登場した7、8年前から、色味もマットな感じで初心者でも普段使いできそうなものが出始め、選択肢が増えたと思います。

また、ティフォンはストレッチが効いているので、身体のラインに沿ったつくりになっているのも女性に人気があるポイントだと思います。実際に着用して鏡を見てみると『シルエットがきれいだな』と思いますね」

シックなカラーリングは女性からも好評。なかでも白は年齢を問わず人気が高い

ティフォンを薦める理由③(好日山荘池袋西口店/高谷和郎さん)
シルエットとカラーリングがスタイリッシュ

「ティフォンは、ジャケットはもちろん高性能ですが、パンツも素晴らしいんですよ。トレッキングパンツタイプとオーバーパンツタイプがありますが、とくに前者がおすすめですね。アンダーウェアの上から履くと、そのまま雨の中を歩くことができるんです。しなやかでムレないというティフォンの特性が活きていて、シルエットもスリムなのでかっこいいです。こんなパンツは、他のブランドではあまり見かけないものなので、ぜひ試していただきたいですね。

初心者の方の中には、ティフォンを購入するときにジャケットだけという方も多いのですが、下半身が濡れて体温が奪われると、足が動かなくなることがあります。そんなことにならないように、ぜひとも上下セットでお求めいただけたらと思います」

雨でもオーバーパンツなしで快適に歩くことのできるティフォントレックパンツ


 

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ディテールにも隠されたミレーならではのこだわり

ロングセラーを続けるティフォンですが、ディテール部分にもミレーならではのこだわりが隠されています。それを最後に写真でご紹介しましょう!

・口元が冷たくないようにフェルト生地を使用

ジャケットの口元部分にはソフトなフェルト生地を採用。ファスナーが顔に当たらないので冷たさを感じにくい

・ヘルメット対応フードは、雨が入らないインナー付き

ヘルメットにも対応した大きめのフード。つばの下には伸縮性のあるインナーが付いていて、雨の侵入をシャットアウト

・ダブルジッパーで上下からの開閉が可能

汗をかいたときに下から開けると素早い換気が可能。ジャケットの中にウエストポーチを着用しているときなども便利

・スタッフサック要らずのパッカブル収納

本体を丸めてフードの中に入れてドローコードで留めるだけでコンパクトに収納できるパッカブル設計

発売から7年を迎えるティフォンですが、リリースから3年目くらいまでは、ショップスタッフさんが「今までにはない着心地のレインウェアですよ」とおすすめすることが多かったようです。しかし最近は、実際に着用しているユーザーさんからの口コミで広まり、「ティフォンはどれですか?」と指名買いされる方がとても増えてきたとのこと。ますます人気が高まっているミレーのティフォンをあなたも試してはいかがでしょうか?

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<ティフォンについて教えてくれたショップスタッフ>
石井スポーツ登山本店/有岡竜二さん

「登山本店では、お客様にわかりやすいように登山靴、ウェア、ザック、登攀具などをカテゴリーに分けて販売しています。それぞれのコーナーには専門のスタッフがおりますので、ご相談ご質問はご遠慮なくお声かけください。登山学校や初心者向け講座も開催中です!」
石井スポーツ登山本店

LaLaさかいや/高橋朋子さん

「LaLaさかいやは、女性とお子様用のアウトドアウェアを取り扱っています。スタッフは基本的に女性なので、アンダーウェアなどについても気兼ねなくご覧いただけると思います。ウェアに限らず、女性の山のお悩み全般にお答えさせていただきますので、お気軽にご相談ください!」
LaLaさかいや

好日山荘池袋西口店/高谷和郎さん

「池袋駅から地下街を通ってアクセスできるので、雨の日でも濡れずにご来店できます。一般的な登山はもちろん、海外登山、クライミング、トレイルランなど様々なジャンルに詳しいスタッフが揃っていますので、お気軽にお立ち寄り下さい。キッズ用品の取り扱いもスタートしました!」
好日山荘池袋西口店

原稿:大関直樹
撮影:永易量行
協力:ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン

大関直樹

フリーライター

大関直樹

フリーライター

小中学校はボーイスカウト、高校はワンダーフォゲル部で自然に親しむ。好きなものは、タバコとお酒と競輪。最近は、山頂で一服すると周りの目が厳しいので肩身が狭いのが悩み。「みなさんが山で嫌な思いをしないように風下でこっそり吸いますので、許してください」