年々、蒸し暑さが増している中、バックパック選びのトレンドは「軽さ」と「快適さ」です。
この2つのトレンドを押さえた2025年の新作の中でも、特に注目したいのが、サロモンの手がける「エアロトレックシリーズ」。
アウトドア製品の価格が年々上がり続けている中で、機能満載にも関わらず30ℓサイズでアンダー2万円というお得感。そして、日本の山岳環境にぴったり合う斬新な構造を持つこのバックパックが、なぜ日本の山に最適なのか? その理由を紐解いてみましょう。
2025.04.23
池田 圭
編集・ライター
サロモンはフランスでスキーエッジやビンディング(スキー板などに靴を接続する器具)の製造からスタートした1947年創業のブランドです。モンブランをはじめとする、ヨーロッパアルプスをテストフィールドにギア開発を進めています。
サロモンといえば、シューズのイメージが強いかもしれませんが、じつは機能的なウェアやバックパックなど幅広く手がけているアウトドアブランドでもあるのです。
サロモンは、クロスカントリースキーブーツやスキービンディングの開発を長年手がけてきたバックグラウンドがあるため、異素材を組み合わせて新たな発想の立体物を作るのはお手のもの。バックパックにも、他にはないユニークな構造や素材使いのアイディアが盛り込まれており、プロアマ問わず、定評を得ています。
その開発理念には、ヨーロッパアルピニズムに基づく思想があり、トレイルランニングやスピードハイクのような縦方向への移動や、長時間行動し続ける使い方にめっぽう強い製品展開が特徴でした。
しかし、今シーズンはより汎用性を高めた「ハイキング」シーンに最適なアイテムを展開しています。つまり、サロモンの今シーズンの新製品は、一気に標高を上げたり、蒸し暑い中で汗を多くかくような日本ならではのハイキングシーンに非常にマッチするのです。
「エアロトレック 30」 ¥19,800(税込)
そんな「ハイキング」シーンに最適なアイテムの代表格が、独自の特許技術を用いた背面フレームを採用したニューモデルが「エアロトレック」シリーズです。
軽さと快適さを謳ったシリーズですが、大きな空間が取られていてフレームが剥き出しになったユニークな背面の構造(背中とバックパックの間に大きな隙間が開いている部分)がとにかく目を引きます。
これは、サロモン独自の特許技術を用いた背面フレーム「アドバンスドエアシャーシ」を採用したもの。このオリオン座のような独特なフレーム形状と、フレームをパックの外に出すという奇抜なアイディアには、きちんと理由があります。
まず、独特な形状のフレームは最適な負荷の分散を発揮するために考え抜かれた形です。これをパックに内蔵するのではなく外に出すことで、フレーム自体のしなりをフルに活かすことができ、縦横方向どちらの体の動きにも追従しながら、快適なフィット感を生み出してくれるのです。
もう1つの大きな特徴は、トランポリンのようにメッシュ地が張られた背面構造「ブレサブルコンフォートシステム」にあります。
背中との接触面が通気性のあるメッシュレイヤーだけなので、パックと背中の間に空気の通り道ができ、蒸れを軽減。背面を常に快適に保つことができます。特に朝夕の空気がひんやりしている時間帯の登りや、風が吹く夏山の稜線上では背中に空気の流れを感じられるでしょう。
背中に隙間が開いていて通気性の高いバックパックはこれまでも存在しましたが、このシリーズがすごいのは高い追従性も兼ね備えているところ。
実際に荷物を入れて山を歩いてみると、こんなに背中が開いているのに体の動きに合わせてぴったりと追従してくれることがよくわかります。まるで「離れているのにくっついている」ような、不思議な背負い心地です。
「エアロトレック」は、お尻側が切れ込むようなフォルムも特徴的です。
この形状によって、荷物の重心を高い位置に保つことができるため、荷重で下に引っ張られる感覚がなく、軽い背負心地を実現しています。テント泊縦走など、荷物が大きく、重たい時ほどメリットを感じやすい構造ですね。
収納スペースにも、サロモンらしい細かなこだわりが盛り込まれています。
例えば、ショルダーハーネスのフロントポケット。500mlサイズのソフトフラスクを、左右それぞれに収納できる伸縮性のある深めの仕様になっています。もちろん、ハイドレーションも使えますが、ここにフラスクを入れておけば給水のたびに荷物を下ろす手間がありません。深さがあるので、スマホの収納場所としても優秀です。
サイドポケットも同じ素材を採用した深めの構造なので、ボトルや細かいギアを入れておくのにも安心です。
フロントのメッシュポケットは真ん中が固定されていて、左右から荷物を差し込む構造。サイドポケット同様、物を落とす心配がないように考慮されています。レインウェアや紙地図など、すぐに取り出したいものは、なんでもここに入れておくと便利でしょう。
蒸し暑い環境下でも快適に使える「ブレサブルコンフォートシステム」は、背面だけの機能ではありません。
適度な厚みを持たせたショルダーやウェストのハーネスは、レーザーで細かく穴開け加工されており、通気&速乾性を高めています。細かいポイントですが、使用時にはかなりメリットが実感できるディテールと言えるでしょう。
気になる重量ですが、フレーム入りの30ℓサイズで1kgを切る992gと、かなり軽量に仕上がっています。快適さ、サポート性能を十分に残したうえでの重量と考えると、驚きの軽さです。
ちなみに、荷重を分散させるベスト型のショルダーハーネスなど、これまでサロモンが得意としてきたトレランパックからのアイディアや機能を取り入れられてエアロトレックは開発されています。
背負い心地や使い勝手をカリカリに省いて重量を削り出している訳ではなく、あくまで工夫とアイディアで軽さを実現していることはサロモンらしさと言えるでしょう。
サイズ展開は20ℓ=¥17,600(税込)、30ℓ=¥19,800(税込)、40ℓ=¥24,200の3サイズ
もう1つ忘れてはいけないサロモンらしさが、コスパの高さ。
海外アウトドアブランド製品の価格が年々上がり続けている中で、これだけの機能を搭載した30ℓサイズでアンダー2万円はお得感あり。
サイズ展開は20、30、40ℓの3サイズ(女性用モデルは、それぞれ18、28、38ℓの3サイズ)。「エアロトレックをハイキング用バックパックの定番シリーズに据えよう!」というサロモンの意気込みが伝わってきます。
「エアロトレックシリーズ」の発売は、これまでコアな使い方をするユーザー界隈で定評のあったサロモンの実力派バックパックが、ついに一般ハイカー向けに本気を出してきたなという印象です。
日帰りから1泊程度のテント泊に使うならば、機能的にも価格的にも新たな選択肢の1つに入ってきそうな注目シリーズ。特に「今年は今までより少しハードな登り方やフィールドにチャレンジしてみたい」というハイカーはぜひ試してみてください。あなたの挑戦をばっちりサポートしてくれるはずです。
原稿:池田圭
写真:若林武志(YUKIMI STUDIO)
協力:アメアスポーツジャパン(SALOMON)