夏の登山の悩みといえば、紫外線。日焼け対策に余念がない方も多いのではないでしょうか? でもお肌の紫外線予防を入念にやっていても「目の紫外線予防」に気をつけている方は少ないと思います。実は目に紫外線が入ると、皮膚でメラニンが生成され、日焼けの原因に。しかも全身の疲れにもつながるのです。今回は、そんな世にも恐ろしい「目の日焼け」について知っておくべき対応策をご紹介します。
2020.07.02
YAMAP MAGAZINE 編集部
夏が近づいてくると、テレビやWebなどでもよく目にする「紫外線」という言葉。スキンケア用品や衣類、カーテンなど身の回りのあらゆるものにUVカット効果が施され、日焼けを防ぐためのさまざまな工夫がなされています。
では紫外線とは何なのか、そして紫外線から身体を守るためにはどんな対策が必要なのか。「何となくわかっているけど、具体的には…」という方も多いのではないでしょうか? 日常生活はもとより、登山の際にも気をつけておきたい紫外線対策について、今回はご説明していきます。
まずは紫外線の基礎知識から。地球に届く太陽の光のなかには、目に見えない紫外線が含まれていますが、紫外線にはA、B、Cの3種類があるのです。そのうち地上に届くのは、UV-A(A波)とUV-B(B波)の2種類。それぞれ人の体に異なる影響を与えます。
A波は比較的エネルギーは弱いものの、地上に大量に届く紫外線。肌の奥にある「真皮」にまで入り込んで、シミ、シワ、たるみなど肌の老化を引き起こします。
B波はA波の1/20程度の量しか地上に届きませんが、非常にエネルギーが強く体に与えるダメージは実にA波の600~1000倍! 短時間で肌が真っ赤になる「サンバーン」と呼ばれる日焼けやシミ、そばかすもB波が主な原因。そればかりか細胞の中にあるDNAを傷つけて、皮膚がんを引き起す原因にもなってしまいます。
かつては化粧品のCMに小麦色に焼けた肌のモデルが起用され、子どもは日焼けしたほうが健康的だとされていた時代がありましたがそれはもう過去のこと。今は赤ちゃんや子どもから大人まで、紫外線対策は常識となりつつあります。
ピーカンに晴れているときは意識していても、雨や曇りの日には日焼け予防をつい怠ってしまいがち。でも実はうす曇りなら快晴時の80~90%、曇りでは約60%、雨の日でも30%程度の紫外線が降り注いでいるのです。日陰にいても日の当たる場所に比べて紫外線量は、約50%程までしか減りません。また曇っていて紫外線量が少ない状態でも、長時間浴びれば影響は大きくなります。
つまり晴れでも曇りでも日陰でも、暗闇でない限り常に体は紫外線を浴び続けているということなのです!
晴天時の紫外線量を100%とした時の各条件下での紫外線量。参考資料:気象庁ホームページ「紫外線の性質について」、並びに環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」P.17「紫外線の反射と透過」の資料をもとに作成
紫外線は天気以外にも時間や場所、季節によって量が異なります。冬に少なく夏に多いというのは想像がつきますが、具体的に何月ごろから紫外線対策をする必要があるのでしょうか?
参考資料:気象庁ホームページより「日最大UVインデックス(解析値)の年間推移(東京:2018年)」の資料をもとに作成
このグラフは、紫外線が体に及ぼす影響を現した数値(UVインデックス)です。7月8月の指数が特に強いことがわかりますが、注意したいのは4月や9月も紫外線量が多いこと。まだ夏までには時間があると油断をせず、春の訪れとともに紫外線の季節が始まるのだということをしっかりと意識しておきましょう。
季節のほかにも、1日のうちではお昼前後の数時間が最も強く、南に行く(緯度が低い)ほど紫外線が強いという傾向があります。これらは日常生活でも感じていることだと思うので、比較的簡単にイメージができますね。
参考資料:環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」P.13「時刻別UVインデックス」より7月のつくばに関する資料をもとに作成。データは各時刻の月最大UVインデックスの1994年‐2008年平均値
上空から地上に到達するまでの間、紫外線は空気中に漂っている固体や液体の小さな粒にぶつかって弱まります。ところが標高が高いと、太陽との距離が短くなるため紫外線が強いまま地上に到達してしまうのです。つまり、登山中は紫外線にさらされるリスクが増加するということ。
具体的には、標高が1,000m上がるにつれ紫外線量は約10〜12%増加するとも。例えば標高3,776mの富士山頂の紫外線は、平地よりも約40%も強いということになります。また大気が非常に澄んでいる場合などにはさらに紫外線が強くなることも…。
登山やハイキングでは、標高が高くなると日陰を作る立ち木が少なくなります。さらに地面を覆う草もなくなって、地面に反射した紫外線を下からも浴びることに…。まさに、360度全方向からの紫外線にどっぷり浸かった状態になってしまうのです。
0m地点と比較した時の標高毎の紫外線増加量。参考資料:環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」P.17「紫外線の反射と透過」の資料をもとに作成
また冬の紫外線は夏に比べると弱いのですが、私たちが浴びる紫外線は直接太陽から届くものだけはありません。特に意識したいのが、地面などに反射して届く光。なかでも雪の反射率は非常に高く、晴天の雪の上では直接の紫外線量に反射した紫外線80%が加わって、通常の倍違い紫外線を浴びることになるんです。
標高と反射のダブルパンチ! これがどれだけ大きなダメージか容易に想像できますね。春先の残雪の山歩きや春スキーにはくれぐれもご注意を。
地表面の種類による太陽光の反射率。参考資料:環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」P.5「紫外線の性質」の資料をもとに作成
紫外線について知れば知るほど紫外線対策なしで山に登るということが、いかに無謀なことかがわかってきたでしょう。日焼け止めをしっかり塗ろう、UVカット加工のウェアを着ようなど、いろいろな対策を思い描いているかもしれませんね。そういった対策はもちろん大切ですが、もう一つ忘れてはいけないことがあります。それは紫外線が「目」に与える影響です。
皮膚が紫外線を浴びるのと同じように、目も常に紫外線と戦っています。
眼球の底部にある網膜は、光を視覚情報に変換するという重要な役割を果たす部分。この網膜を守るために、角膜や水晶体は外から侵入した紫外線を吸収して網膜に到達するのを防ぐ働きをします。
目の断面構造
でも紫外線を多く浴びると、角膜や水晶体紫外線が障害を起こします。もっとも多いのが紫外線角膜炎。強い紫外線による炎症により強い目の痛み、充血が起こってしまうのです。いわゆる「雪目(ゆきめ)」もその代表例。深夜から朝にかけて発症するため、登山の宿泊中に発症したら次の日の行動に大きな影響がでることは免れません。
角膜炎は通常1~2日で自然治癒しますが、これを繰り返すと白内障のリスクが非常に高まります。水晶体が濁って視力が低下し進行すると失明に至る病気ですが、紫外線の影響が大きな原因と指摘されているんです!
そればかりか、目から入った紫外線は肌にも大きな影響を与えるのです。
そもそも、日焼けで肌が黒くなるのは「メラニン」という物質の作用。紫外線を浴びた肌が細胞の奥にある遺伝子を守るためにメラニンをどんどん作り出し、遺伝子に覆いかぶさって紫外線を妨げようとするのです。
目と肌は直接関連がないようにも思えますが、目に強い紫外線が入ると脳がそれに反応して「メラニンを作れ!」という指令を出し、紫外線を浴びていなくても肌が黒くなるのです。つまりは日焼け止めをいくら塗っていても、目が無防備だと日焼けをしてしまうということなのです!
さらに紫外線が疲労の原因となることも明らかになっています。「疲れた」という感覚は、脳内に活性酸素が大量に発生することが原因。目から入った紫外線は角膜に大量の活性酸素を発生させ、肌が紫外線を浴びるのと同じように大きな疲労の原因となってしまうのです。
同じ荷物を背負って同じ山を同じ速さで登っても疲労度が違うのなら、紫外線対策はトレーニングなしで身につけられる登山技術のひとつ。取り入れない手はありません。
目の紫外線対策でもっとも有効なのが、サングラスで直接紫外線をカットすること。うれしいことにサングラスの着用で紫外線の眼への影響を90%減少させることができるといわれています。
顔とサングラスの隙間から入る紫外線を防ぐために、つばのある帽子を組み合わせればさらに有効。ただしこれには正しいサングラス選びが不可欠。選び方を間違ってしまうと、効果がないばかりか逆に大きなダメージを受けることもあるので要注意です。
帽子使用時とサングラス使用時の眼への紫外線被曝量。環境省「紫外線環境保健マニュアル2015」P.5「紫外線の性質」の資料をもとに作成
それでは山で使うには、どのようなサングラスがふさわしいのでしょうか。ここからはサングラス選びのポイントをチェックしていきましょう。
1 UVカット機能のあるレンズを使用している
これは第一の必須条件。UVカット効果のないサングラスを山で使うのは、百害あって一利なしです。注意したいのは、レンズの色の濃さとUVカット率はまったく別のものだということ。色は濃くてもUVカット加工されていないものや、日常生活や仕事で使いやすい無色のUVカットレンズもあるので、必ず表示を確かめてUVカット率の高いものを選びましょう。
2 レンズ色が濃すぎない
レンズの色が濃すぎると、瞳孔がより大きく開いて紫外線を多く目の中に取り入れたり、見え方の質やコントラストが下がったりすることがあります。また日なたと日かげが目まぐるしく変わる樹林帯などでは、脳が明るさの変化に対応することでかえって疲れてしまうことや、暗さで充分な視界が確保できない場合もあります。眩しさを抑えられる範囲で、できるだけ色の薄いものを選びましょう。
3 偏光レンズがベター
地面からの照り返しや水面のギラつきなどをカットする、偏光レンズならさらに快適。視界をクリアにするだけでなく、目の疲れも抑えられます。レンズの裏側にも偏光加工されたものなら、顔とサングラスの隙間から入る日差しで起こる内部反射も軽減することができます。
1 顔の形にフィットする
長時間行動する山では、顔の形にフィットすることが重要なポイント。安価なものに多い一体型のフレームよりも、ノーズパッドが付いたものがフィット感が高くかけ心地もいいので安心です。欧米人と日本人では骨格が異なるため、国産ブランドから選ぶというのもひとつの方法です。
2 軽い
アクティブに動くときにストレスを与えないために、軽さは重要なポイント。ガラスレンズやスチールのフレームよりも軽量で汗にも強い樹脂製のものがいいでしょう。
3 壊れにくい
アウトドアで使うなら、耐久性も重要なポイント。扱いもラフになりがちなので、衝撃や圧迫に負けないタフなものを選びましょう。
4 コンパクト
紫外線カットだけを考えればレンズサイズの大きなものが有利ですが、活動中に邪魔にならずヘルメットやキャップとの相性がいいことや、持って行くときにもかさばらないことも重要です。
5 使用シーンに合っている
トレランやスピードハイク、バイクレースやクライミングなどアクティブなスポーツで使うなら、アスリートが使うような顔にフィットするスポーツタイプが使いやすいでしょう。顔との隙間が少ないので、紫外線カット効果も期待できます。
一方で家を出てからアウトドアまでずっと使いたい、日常の外出にも使いたいというならあまりスポーティーなデザインでなく、ファッションサングラスに近いデザインで登山にも使える機能を備えたものを選ぶのがおすすめ。
紫外線カットのためのギアでありながら、サングラスには好みや、似合う似合わないなど、ファッションアイテムとしての要素もあります。機能だけを優先するのではなく、気に入ったものを選ぶことで、毎日長時間楽しんで身に着けられます。
実際にどんなサングラスがあるのかと気になったところで、登山者の間で話題の「FLOAT」をご紹介しましょう。山用サングラスの条件を満たしたうえに、日常にも気負いなく使えるデザインで、人気急上昇中のシリーズです。
日本の眼鏡フレーム生産の約95%を占める福井県鯖江市から、日本人に合ったかけやすさと確かな品質を誇る製品を送り出す、眼鏡ブランドFLOAT。話題を集めるサングラスシリーズは99.9%紫外線カットの偏光レンズと、特殊樹脂製の軽量テンプルと組み合わせることで、アクティブに動くアウトドアでもずっとかけ続けられる快適性を実現しました。
両方のツルを持って広げても畳んだまま押し付けてもビクともしない復元性があり、レンズも壊れにくいポリカーボネート性。なによりも、動いてもずれない安定性がありながら、頭や耳の上を挟み込むような圧迫感がまったくなく、かけているのを忘れるほどの快適性は見逃せません。ちょっと外して汗を拭きたいときや、木陰で地図を読むときなどはフレームをネックレスのように首にかけておける便利な機能も備えます。
アウトドア仕様の機能を備えながら、街使いにもなじむデザインでいつでもどこでも大切な目を紫外線から守ってくれる、心強い味方です。
今回はそのラインナップの中から、新入荷の「リゲル/グリーン×ブラック/UNISEX」について、ご説明します。
FLOAT(フロート)/リゲル/グリーン×ブラック/UNISEX
いくつかあるFLOATのフレームデザインのなかでも、このRIGEL(リゲル)は、クラシックな雰囲気のあるナチュラルなタイプ。ブラックのフレームに、ライトグリーンのレンズを合わせた、山でも街でも、どんなファッションにもなじむ使いやすい形。
全体的に少し丸みのあるシェイプながら、上部は比較的ストレートに仕上げているので甘くなりすぎず、男性、女性のどちらでも、どんな人にも似合う万能デザインといったイメージ。ヘルメットやキャップにも干渉しにくいのもポイントです。
レンズの明るさを示す可視光線透過率は28%で、かなり明るめのカラー。しっかりと紫外線を防ぎながら、山や森林など、自然の緑が鮮明に見える効果をもたらします。優しいコントラストなので、視野にストレスも感じません。景色や植物の色を自然に近い状態で楽しみながら歩く、低山歩きやハイキング、植物観察やフォトハイキングにぴったり。相手から目の表情が見えるので、日常使いもしやすいモデルです。