夏山を目指す多くの登山者を悩ませる「汗」。「登山にはつきものだから」と諦めの声が聞こえてきそうですが、ウェアの工夫次第で汗の悩みは軽減できるのです。前後編にわたってお送りしている「汗っかきのための最新登山ウェア講座」。 後編となる今回は、夏山登山を快適にアシストしてくれる「ショートパンツ」や「レインウェア」「ザック」などについてお伝えします。
汗っかきのための最新登山ウェア講座!【前編】/アンダーウェア・ベースレイヤー・シャツについてはこちら
2020.07.31
YAMAP MAGAZINE 編集部
登山者の多くが履くロングパンツ。夏場はどうしても熱がこもって汗の原因になりがちです。通気性のよい素材やベンチレーションを備えたトレッキングパンツもありますが、今年の夏はショートパンツを試してみてはいかがでしょうか? トレイルランニングやUL(ウルトラライト)ハイキングでの愛用者が多く、登山でも一般的になったスタイルですが、なにより暑さから開放してくれる快適性と軽快な着用感が大きな魅力でしょう。
ショートパンツを履いていると「ついに夏が来た!」と気分も上がります。登山では標高が高くなると気温が下がるため、ショートパンツで歩けるシーズンはとても短く、そのぶん風物詩的な捉え方をしている方も少なくないはず。トレッキングパンツにはない軽快さは一度経験してしまうとやめられません。
ただし、肌を露出するので岩場やヤブがある場所ではタイツの着用がオススメ。また、ショートパンツは肌の露出面積が増える分、虫刺されのリスクもあるので、防虫対策もしておくと安心です。もちろんロングパンツと併用するのもOK。日中はショートパンツで軽快に、冷え込む夕方はロングパンツに履き替えるなど選択肢のひとつとして持っておいて損はありません。それではさっそく、オススメアイテムを紹介していきます!
トレッキング用の軽量ショーツ「NORRONA ビティホーン・フレックスシ1ショーツ」。普段着にも合わせやすいシックなカラーとシンプルなつくりで、優れた軽量性、通気性、柔軟性を備え、その履き心地は爽快そのもの。整備されたトレイルを歩くとき、キャンプでのんびりするとき、または休日の公園を散歩するときに活躍します。素材は高機能ポリエステル生地「フレックス1」を採用。コットンのような風合いですが、細かい通気口をもった通気性の高いメンブレンで、蒸れ感はほとんどナシ。トレッキングだけでなく、ボルダリングなどのハードなアクティビティでも活躍します。(MENS・WOMENS/¥13,200)
アドベンチャーレースやトレイルランニングをルーツにもつ「OMM」によるショーツ。履いていることを忘れてしまいそうなほどの軽量性を誇り、縫い目をフラットな製法にすることで、肌に当たりゴワゴワ、ゴロゴロとするような感覚をなくし、快適にアクティビティを楽しむことができます。 足さばきが良いベリーショートのパンツだと、どうしても気になってしまうのが、腿上の部分の見え方。 伸縮性に優れたポリウレタン弾性繊維「ライクラ」の内部サポーターを設けることでフィット感もよく、ストレスなく足を前に出すことができます。(WOMENS/¥10,120)
アメリカの老舗ブランド・パタゴニアのロングセラーモデルのひとつ、「Patagonia バギーズショーツ5インチ」。パタゴニアの歴史に残る夏には欠かせない名品です。ファブリックは、DWR(耐久性撥水)加工済みの速乾性に優れたサプレックス・リサイクルナイロン100%。ウォータースポーツやランニング、街履きなどさまざまなシーンで着用でき、速乾性にも優れるので旅先や出張先でも非常に重宝します。伸縮性の高いウエストバンドは内側のドローストリングで自分好みに調節可能。男性用は内側にポリエステルメッシュのライナーが付くことで、快適な肌触りを実現しています。(MENS・WOMENS/MENS:¥7,150 WOMENS:¥6,600)
登山やランニング、キャンプに海のレジャー。夏のあらゆるアクティビティに欠かせないショーツ。「Teton Bros. Scrambling Short(スクランブリング ショーツ)」は、日本人の体格に合わせて作られたモデルで、ストレッチ性、通気性、撥水性に優れた「Dry Action」を生地に採用。思い切りフィールドを動き回って汗をかいても、蒸れを軽減し快適さが持続。さらりとした履き心地で乾きも早く、多少水に濡れても不快感は感じません。自然になじむツートンカラーのナチュラルな色味とシンプルながらも機能性を合わせたデザインが魅力。(MENS/¥13,200)
「海から岩場まで」。そんなコンセプトの元に生み出された、汎用性の高いショーツが「Teton Bros. Climbing Surf Shorts(クライミングサーフショーツ)」。サーフショーツのディティールと、岩場でタフに使っても問題ない耐摩耗性に優れた素材が採用されたマルチユースな一着で、ウエスト内側をノンストレッチ素材にすることで波の力で脱げる心配を解消。ハイキング中にずり落ちてくる不快感から解放されます。また、ハイキングでの使用を想定し、ドローコードの形状と素材に配慮することでハーネスとの干渉をクリア。ストレスフリーで履ける嬉しい仕様となっています。(MENS/¥9,680)
飽きのこないシンプルなデザインで、アウトドアはもちろん、休日のリラックスタイムにも最適な「HOUDINI クラックスショーツ」。クライミングやトレイルランニングなど、本格的なアクティビティにも対応する機能性に加え、北欧ブランドならではのデザイン性、日本人の体形にもフィットしやすいパターンが魅力。右臀部のポケットに収納でき、コンパクトに携行できるため、ロングパンツで行動し、キャンプサイトに到着したらバックパックから取り出して履き替えるといった使い方も可能。フーディニらしいナチュラルなカラーが揃い、オトナでも違和感なく履けるのがうれしい一本です。(MENS/¥14,300)
「HOUDINI ライトショーツ」は、トレッキングやランニングだけでなく、サイクリング、ヨガ、ビーチボールといった様々なアクティビティを前提に開発されたショーツ。汎用性を重視してデザインされたショーツの重量はわずか128gと、その名の通りの軽量さが魅力。ファブリックは高いストレッチ性を備え、肌あたりも滑らか。まるで素肌の上に直接着用しているような感覚を得られます。超軽量で伸縮性に優れる柔軟な生地は、抜群の速乾性で腰回りをドライで快適に保ちます。日本のような湿気の多い気候のトレッキング、たくさんの汗をかくトレイルランなどのハードなスポーツにも最適です。(MENS・WOMENS/¥13,200)
登山の必携品のひとつ、レインウェア。日帰り、小屋泊、テント泊にかかわらず、雨から体を守ってくれる大切なアイテムです。でも、そんなレインウェアですが、「夏はちょっと暑くて…」という方もいるでしょう。ほとんどのレインウェアの生地には透湿性という、蒸発した汗を通してウェア内を快適に保つ機能が備わっていますが、夏山の気温と運動量では効果が追いつかずに蒸し風呂状態になることも。
そこでベンチレーション出番です。ベンチレーションとは、ウェアに設けられた「通気口」のこと。脇の下や前面サイドなどに配置されたジッパータイプが多く、開けることで通気を促してウェア内をクールダウンしてくれる機能です。
小雨が降っていてレインウェアは脱げないけれどウェア内が暑い、レインウェアを脱ぎたいけれどいちいちバックパックを降ろして脱ぎ着するのは面倒、脱ぐと寒いけど、着ていると暑い、というようなときってありませんか? 近年は通気性をより高めたものも多く出回っていますが、とくに汗っかきな方にはベンチレーション付きのモデルがオススメです。
ノルウェー生まれのアウトドアブランド「NORRONA(ノローナ)」のラインナップ中でも最も軽量なレインジャケット。ノローナオリジナルの防水透湿素材「dri1」を採用した2.5レイヤー仕様で、カタログ値で重量214g(Mサイズ)という軽量性を実現。フードの中にまとめるように収納してしまえば、驚くほどコンパクトになるため、携行性も抜群。ハイキングやトレイルランニング、サイクリングに最適な軽さと防水性を兼ね備え、同シリーズの「ビティホーンドライ1パンツ」と上下セットで揃えたくなるスタイリッシュさも大きな魅力です。ベンチレーションは汗をかきやすい脇下に配置。バックパックのハーネスとも干渉しにくく、効果的に通気をサポート。(MENS・WOMENS/¥35,200)
登山中、バックパックと背中の間が汗でびっしょり…という経験ありますよね。通気がしにくい背中は汗がたまりやすい箇所のひとつ。バックパックを降ろして休憩しているときに背中から冷えてしまう危険もあり、見直しておきたいポイントです。
そこでオススメしたいのは、背面のデザインに通気性を持たせる構造を採用したり、汗を分散してくれる素材を使ったりと、さまざまな工夫が施されたモデル。そもそもバックパックは重い荷物を背中で背負うための道具。背中と接するのは当然のことなのですが、「いかに汗を溜めずに快適性を維持するか」に取り組んだアイテムもあるんです。
デイハイクで活躍する15リットルサイズのバックパック。軽量モデルはたくさんありますが、ビティホーン15Lパックは、バックパックに「軽さ」と「便利さ」という2つの要素を付け加えることで、実用性を高めたモデルです。ファブリックには、軽量かつ引裂や破れなどに強いリップストップナイロンを使用。全体重量を470グラムと軽量に仕上げています。さらに、100%リサイクルのナイロン「ECONYL」を使用し、環境にも配慮。背面には放射状にパッドを配置し、メッシュを組み合わせることで通気性を確保。汗が溜まりがちな背中をドライにする仕組みが設けられています。(MENS/¥14,300)
汗対策はウェアやギア以外にもできることがあります。ニオイを消してクールダウンしてくれるハッカ油をスプレーにして使ったり、タオルで汗とニオイの原因になる汚れを拭いたりすることも、汗対策としては効果的。基本的な対策にプラスしてほしいアイテムをご紹介します。
ハッカとは、爽快感とさわやかな香りするシソ科のハーブの一種。ガムやタブレットなどでもおなじみの香りの元で、英語ではミントと呼ばれています。このハッカには虫よけ効果があり、山で使える防虫スプレーにしたのがコチラ。虫除け以外にもハッカ特有の爽快感が暑さ対策にもなります。ハッカ油に含まれるメントール成分は高い冷却効果があり、体感温度を下げてくれるんです。水と混ぜてハッカ水スプレーを作って肌にスプレーすれば、広範囲を一気にクールダウンすることも可能。虫も避けられて爽快感も味わえる一石二鳥のアイテムです。(¥1,100)
滴る汗や濡れた道具を拭いたり、山小屋泊する際に枕カバーの代用にしてみたり、下山後のお風呂で使ったりと、1枚あれば何かと役に立つ速乾タオル。「Finetrack NANO TOWL(ナノタオル)」は、軽量・速乾機能に加え、「体の汚れを落とす」という大きなスペックを追加。数日風呂に入れない、石鹸が使えないという山の環境において、水で濡らして拭くだけで体についた皮脂や油、臭いをすっきり落とすことができます。素材はポリエステル100%。髪の毛の7500分の1という超極細繊維でできていて、従来の繊維では落としきれなかった汚れもきれいに除去できるというスグレモノなんです。(¥3,300)
今回は「汗っかきのための最新登山ウェア講座」と題し、前後編合わせて全19アイテムをご紹介してきました。 ついつい汗の不快感から夏の登山を敬遠しがちな方もいらっしゃるかと思いますが、対策さえきちんと行えば、快適性はグッと向上します。
また、汗をかくということは、その分、体内から水分が失われているということもお忘れなく。充分な水分量を持参し、こまめに水分補給をするように心がけ、安全に夏山を楽しんでくださいね。
汗っかきのための最新登山ウェア講座!【前編】/アンダーウェア・ベースレイヤー・シャツについてはこちら