ホバークラフトの要素を取り入れた、これまで見たことのない衝撃的な登山シューズ「TenNine Hike GTX」がHOKA ONE ONE(ホカオネオネ)から登場。その最新レビューを山岳ライター・高橋庄太郎さんがレビューします。
YAMAP MAGAZINEでは「HOKA ONE ONE」の革新性と幅広いラインナップを紹介する記事も公開しています。合わせてご覧ください。
登山とトレランの世界を変える革新的シューズブランド 「HOKA ONE ONE」の魅力とは
2020.11.12
YAMAP MAGAZINE 編集部
革新的シューズブランド「HOKA ONE ONE(ホカオネオネ)」からひときわユニークなモデルが登場しました。その名は「TenNine Hike GTX(テンナインハイク)」。
ホバークラフトの要素を取り入れたという、かかと後方に迫り出したこれまで見たこともないようなヒール形状が印象的なハイキングシューズですが、「どうしてこのデザインなの?」「履き心地は?」「どんな山にオススメなの?」と、気になっているという方も多いはず。そこで、数々の登山用品をテストしてきた山岳ライター・高橋庄太郎さんのレビューとともに、「HOKA ONE ONE」の最新プロダクトを紐解きます!
まず、「TenNine Hike GTX」についてご紹介。このシューズは、限定発売されたトレランシューズ「TenNine」の兄弟モデル。コンセプトをそのままに、登山やハイキングをターゲットにチューンを施した仕様となっています。
やはり、大きな特徴となっているのが、「Hubble®ヒール形状」と呼ばれるかかと部分のデザイン。後方に大きくせり出しているのは、接地時の衝撃をより吸収しやすく、歩行をスムーズにするためなのだそう。「HOKA ONE ONE」といえば、マシュマロに例えられるようなクッション感が魅力。そのクッション感とヒールデザインによる歩きやすさの相乗効果を得られるのが、まさにこの「TenNine Hike GTX」なのです。
「HOKA ONE ONE」のシューズづくりの哲学をさらに発展させつつも、防水・透湿のGORE-TEXメンブレン、トレイルでの安定した歩行をサポートするヴィブラム社製のソールを採用するなど、登山・アウトドアに対応するスペックを実現した「TenNine Hike GTX」。これまでのアウトドアシューズにはない履き心地、歩きやすさを提供する一足に仕上がっています。
「HOKA ONE ONE」愛用者だという、高橋庄太郎さん。これまでさまざまなモデルを履いてきており、前回の記事:登山とトレランの世界を変える革新的シューズブランド 「HOKA ONE ONE」の魅力とはでも、「スピードゴート4」をレビューしてもらいました。
高橋さん曰く「岩や木の根などの障害物が少なく、ゆるやかな登山道がよさそう」とのことで、南アルプスの日向山へ。日向山は南アルプスの名峰・甲斐駒ヶ岳の前衛峰。コースタイムは矢石立登山口から山頂まで1時間半ほど。ゆるやかな樹林帯と白く輝く花崗岩が織りなす山頂付近で、「TenNine Hike GTX」の使用感と日本の山で使いこなすためのコツを伺いました。以下、高橋さんのコメントでお届けします。
まず歩いてみて思ったのは、かかとが接地してからミッドソールが衝撃を吸収、蹴り出すという一連の流れがスムーズだということ。下りに限らず、登りでもしっかり地面を捉えて衝撃を吸収してくれます。形状がユニークなのですが、履き慣れればその効果を存分に実感できると思います。
「HOKA ONE ONE」が提唱するメタロッカーテクノロジーを搭載。スムーズな足運びをサポート
クッション感は「HOKA ONE ONE」のシューズのなかでは抑えめだと思います。ただ、ソール幅が広い分、衝撃吸収力も大きいので問題なし。小走りしてみると、クッション感とソールの衝撃分散力を実感できます。
ユニークな「Hubble®ヒール形状」は、接地から蹴り出しまでの動作を考慮して生まれたテクノロジー
ソールが大きい分接地面積が広いので、「HOKA ONE ONE」の他のモデルよりも滑りにくい。また、ソールのパターンを見てみると、前に蹴り出しやすいようなデザインになっていることがわかります。横方向は少しずれる感覚がありますが、前方に進むことを重視としているはずだから、そこは割り切っていいでしょう。
砂地などの滑りやすそうな下りでも、幅広のソールがしっかりグリップして衝撃を吸収
幅広のソールのおかげで、普通だったら捻挫しそうになるほどの角度に足が傾いてしまっても、強制的に戻されます。安定感が高く、転びにくく、怪我の可能性も軽減されると思います。ただ、注意点がひとつ。後方に大きくせり出しているかかとは、ひっかかることがあります。一般的なシューズよりも少し前に足を出す感覚が求められ、少しだけ慣れが必要かもしれません。
「TenNine Hike GTX」は登山向けのモデルだけあって、ハイカットになっているのも特徴。くるぶし部分は柔らかく、ガチガチに抑えられている感じもなく適度だと思います。前傾姿勢になっても圧迫感はありません。
僕が注目するのは、シューレースの爪先部分の形状。三角形になっているので先端付近まで程よく締め付けることができ、フィット感がいいんです。
くるぶし部分の靴紐を掛けるシューレースアイレットもよく考えられています。シューズの少し前面に配置されているので、歩いているときに靴どうしがぶつかってもシューレースをかけるパーツひっかかりにくい。シューズ側面にパーツがあると、ひっかかって転んでしまうこともあるんですよね。これは結構重要なポイントです。
「TenNine Hike GTX」は、アメリカやヨーロッパの比較的緩やかなトレイルをメインターゲットに開発されたシューズなのだと思います。日本の山は海外と比べて、ひとつの山でも様々なシチュエーションがあるのが特徴。そのため、「TenNine Hike GTX」がどこの山でも使いやすいとは言い切れません。
「TenNine Hike GTX」の性能を十分に実感できるのは、岩や木の根が少なく、フラットでゆるやかな登山道がつづくような山。例えば八ヶ岳の山域でいえば、急峻な岩場が多い南八ヶ岳よりも、苔むしていて滑りやすい場所が多い北八ヶ岳。蓼科や双子池のあたりですね。ほかにも、北アルプスの乗鞍岳や那須岳など、砂礫でできたトレイルが歩きやすいと思います。大雪山、トムラウシ周辺、九州の阿蘇あたりもいいかもしれません。あと、富士山の下りもよさそう。滑りやすいところでもしっかり止めてくれると思います。
正直、「TenNine」シリーズの登場には驚きました。まずローカットの「TenNine」に驚いたのですが、まさか山用のモデルを作るとは思っていませんでした。今までの登山シューズの開発セオリーでは生まれなかった形状ですよね。もう、本当にびっくりしました(笑)。
「TenNine Hike GTX」は、若い会社ならではのフットワークの軽さ、思いついたら作っちゃおうという精神を体現したモデルだと思います。僕はクラシックから最新まで、いろいろなシューズを履いてきているけど、「TenNine Hike GTX」は唯一無二。似たようなモデルがないから、作った人の意図を、使う人が理解しなきゃいけないのかもしれません。開発者の「ついてこい!」という声が聞こえてきそうです(笑)。でも、そういう「HOKA ONE ONE」の先鋭的、革新的な姿勢はすごく好きですね。
「TenNine Hike GTX」に関しては、すでに「HOKA ONE ONE」のシューズを経験している人が、2足目、3足目に買うものがいいのかなと思います。「HOKA ONE ONE」のラインナップのなかでもかなりとんがったモデルなので、いきなりだと戸惑ってしまうかも。まずはお店で試し履きをさせてもらったり、テスト山行をして慣らしていくといいのではないでしょうか。
アウトドアシューズの概念を覆す、「TenNine Hike GTX」のデザインと機能。そして、いかに誕生したのか、「HOK ONE ONE」でプロダクトディレクターを担うColin Ingram(コリン・イングラム)さんに、開発秘話を伺いました。
「TenNine Hike GTX」は、トレイルでのこれまでにないスームズな歩き心地を目指して開発された革新的なシューズです。トレイルやあらゆる地形でのランニング、ウォーキングシューズとして、とくに下り坂での接地時の衝撃を抑え、スムーズな歩き心地を提供することを目指しています。
「HOKA ONE ONE」では、どのプロダクトにおいても非常に長い時間をかけてデザインを行い、厳しいテストを行っています。私たちは、「HOKA ONE ONE」のプロダクトを使用するアスリートが「最高の経験ができる」という確信が得られるまで、改善の余地があるかぎり、いくつものプロトタイプを製作し、ブラッシュアップを重ねています。
「TenNine Hike GTX」の最も大きな特徴は、「HUBBLE」と呼んでいる「スワローテイル(ツバメの尾羽)」形状のヒールデザインです。このヒール形状が、「HOKA ONE ONE」独自のメタロッカーテクノロジーと相まって、歩行時の衝撃を和らげ、スムーズな足運びを実現します。
「TenNine Hike GTX」のヒール部分はスプリットタイプで、ミッドソールは効果的に衝撃を分散するように設計された独自の構造を採用しています。アウトソールにライトベース構造のヴィブラム社製「メガグリップ」を採用。最小限の体重移動で最大限の蹴りだし効果を得ることが可能です。
バックパックを背負ってハイキングするときでも、しっかり足首をサポートできるようハイカット仕様にしているほか、リサイクル素材を使用したGORE-TEXファブリクスを導入することで環境への配慮も行っています。ちなみに、「TenNine Hike GTX」の開発にあたっては、トレイルで1300マイル以上、1000時間以上、ラボでは142時間のテストを行っています。
「TenNine Hike GTX」は、長距離トレッキングや本格的なバックパッキング、長時間の耐久レースから、日帰りハイキングや近所での散策まで、あらゆるシチュエーションに対応するようにデザインされています。「HOKA ONE ONE」の魅力である優れたクッション性をそのままに、さらにスムーズな足運びが可能になり、アスリートはまるで「永遠にハイキングできる」ような感覚を得られるのです。ぜひとも日本のHOKA ONE ONEユーザーのみなさんにも、「TenNine Hike GTX」を履いて、山を、アウトドアを楽しんでほしいと思います。
さあ、「It’s Time to Fly!」
最高のクッション性と推進力を実現した「TenNine Hike GTX」。特徴的なせり出したヒールデザインには、歩きやすさを高めてくれるもの。一見奇抜に思えるルックスですが、「HOKA ONE ONE」が培ってきた経験と技術、そして革新性が込められているんです。
「HOKA ONE ONE」が提案する「TenNine Hike GTX」とともに、これまでにない異次元の「歩き」を体感してみませんか?!
注意事項:
HOKA ONE ONEは、「TenNine Hike GTX」をアウトドア専用のギアとして設計しました。そのため、登山、ハイク以外に、階段や運転にこちらの商品を使用しないでください。