都心から電車で1時間半ほど揺られれば異国情緒溢れる港町、横須賀に到着できます。ペリー来航による開国の歴史が有名なこの街で、YAMAPが新しい企画を打ち出しました。その名も「よこすかロゲイニング」。横須賀に点在する近代までの文化変遷の見どころと自然豊かなスポットを選定し、市内全体を大きな「ミュージアム」に見立てて巡るというもの。普段は山で使うことの多いYAMAPですが、実は観光でも便利なんです。大人気のデジタルバッジももらえる新しい旅を、ライターのichiさんが巡ってきました。
2021.02.24
ichi
旅するフリーライター
旅の舞台は、ペリー来航の地として知られ、かつては日本の玄関口とも呼ばれた「文化の街」横須賀。都会ではあまり見ることのできない歴史遺構や広大な自然に触れることができます。また、世界から様々な偉人が訪れ、愛されたとされるこの場所には、歴史上の人物の足跡が多く残されており、そのロマンに触れたい!と世界中から人々が訪れる人気の観光地でもあります。
今回は、そんな魅力あふれる横須賀を巡る旅をご紹介。登山アプリ「YAMAP」に追加された「よこすかロゲイニング」の地図を使い、3つのコース「よこすかルートミュージアム・鎌倉BUSHIDO・横須賀アルプス」を歩きます。
3つのコースのうち、本日はヴェルニー公園を起点として、横須賀の歴史文化に触れる「よこすかルートミュージアム」からスタート。
YAMAPを使って自然と街、文化を楽しむ新しい形の旅。どんな出会いや発見があるのか、今から楽しみです。
東京を出発してJR横須賀線に揺られること約1時間半で、横須賀へ到着。この日は朝から快晴ということもあり「よこすかルートミュージアム」の主要エリアのひとつ、ヴェルニー公園で、海の景色を堪能することから旅をスタートしました!
ヴェルニー公園には、約1,200株のバラが植栽されており、5月から6月にかけて見頃を迎えます。バラの他にもフランス庭園様式を取り入れた花壇や噴水、洋風あずまやなどが設けられており、多くの観光客や地元の方に愛される公園です。
「うみかぜの路」と呼ばれる遊歩道は、JR横須賀駅から観音崎までの海沿いの道、約10キロメートルを繋いでいます。平坦で歩きやすい整備されたボードからは船を見たり、潮の香りを感じることができると人気のスポット。
私も早速歩いてみましたが、視界をさえぎる障害物もなく、晴れた日は遠くの船や景色までもよく見えるので本当に気持ちが良かったです…!
園内には海を眺められるスポットはもちろん、正岡子規の文学碑や軍艦長門碑なども設けられており、横須賀に関わりのあった人々の思いを感じることができます。
他にも幕末〜明治期にかけての人物や海軍に関する数多くの展示があり、歴史好きの琴線に触れること間違いなし。
フランス・ブルターニュ地方の住宅をモチーフとしたヴェルニー記念館では、明治初期、横須賀の海軍施設や兵廠の建設に貢献した フランス人技術者ヴェルニーの功績、そして横須賀の歴史を紹介している他、横須賀製鉄所で使用されていた3トンと0.5トンもある重さのスチームハンマーが設置・公開されています。歴史的建造物に興味のある人や、産業の歴史を知りたいという人にもぜひおすすめです。
フランス様式の庭園と海辺の景色を思う存分堪能したあとは、猿島に向かうためにフェリーへ搭乗しましょう。
フェリーが出ている三笠ターミナルは2020年夏にオープンされたばかり。ヴェルニー公園から歩いて約10分ほどで到着です。
すぐ隣には、「日本の都市公園100選」にも選ばれた横須賀を代表する三笠公園があり、戦艦三笠が今でも保存されています。戦艦三笠といえば、司馬遼太郎の名作「坂の上の雲」にも登場し、日露戦争の旅順閉塞作戦で活躍した戦艦。司馬遼太郎ファンなら、正岡子規の文学碑とあわせてぜひ見学したいスポットです。
看板には乗り場までの案内も書かれているので、横須賀初心者の私でも無事にたどり着くことができました!
新三笠浅瀬橋から出港するフェリーは1日7便あり、9:30〜15:30までの1時間間隔で運行されています。料金はおとな1人1,400円(往復)、片道約10分程度の船の旅に出発しましょう!
猿島と呼ばれる由縁は、1253年(建長5年)に、日蓮宗の開祖としても知られる日蓮上人が白い猿に連れられてこの島に辿り着いたと伝えられているため。古代人が生活した名残や、縄文・弥生時代の土器が見つかっていることからも、その歴史は古いことがわかります。
かつては大砲が置かれ、東京湾を守るための要「要塞の島」として軍事拠点にもなっていました。
明治時代に建造された砲台跡やレンガづくりの長いトンネルは今でも猿島にそのまま残されており、実際に見ることができます。
砲台跡へと続くトンネルは、別名「愛のトンネル」と呼ばれ、カップルや夫婦で訪れる人も多い観光スポット。
愛知県産の品質の高い赤レンガを用いて、横須賀製鉄所のフランス人技師の指導によりつくられたそうです。明治20年以前に作られたレンガ建造物は、日本国内では22箇所しか確認されておらず、そのほとんどがイギリス式の積み方。フランス式の建造法で作られたものは、ここ猿島を入れて4箇所しか現存しておらず、とても貴重とされています。
今でこそ多くの観光客で賑わってはいるものの、一時は軍事機密的な観点から、一般人の立ち入りを禁止された過去もある猿島。豊かな自然や当時の建造物が現代でも色褪せることなく伝えられているのは、先人たちの努力や思いがあってこそなのかもしれません。
猿島から戻ってきた後は、横須賀市内でランチを食べることに。訪れたのは、「かねよ食堂」さん。
元は漁師小屋だった場所をリノベーションしたという外観からは、まるで南国を連想させる開放的な空間が広がります。
まずは、漁師であるオーナーさんが今朝釣ってきたという魚を調理した「海の幸の前菜盛り合わせ」をいただきます。それぞれに工夫を凝らした味付けがされていて、普通のお刺身を醤油で食べるのとはまた違った楽しみが…! 横須賀の海で朝採れたばかりの新鮮な魚は、ぷりぷりの食感がたまらない美味しさです。
お得な「ランチセット」はメインとサイドメニューを選ぶことができ、スープ、デザートまでついておりおすすめ。この日は「三崎産マグロ小頭のロースト」と「自家製若布の佃煮ときのこピザ」をチョイス。
オーナーが自慢の目利きと漁の腕前で入手してくる新鮮な海の幸と、自然のエネルギーがたっぷりつまった美味しい野菜を使用し、こだわり抜かれたメニューの数々。どれもほどよい口触りとボリューム、優しい味わいがお腹も心も満たしてくれます。
食後のデザートもぺろりとたいらげてしまいました。
チーズケーキの甘さとカフェラテの口触りに癒やされたところで、次の目的地へ。
大満足のランチタイム、本当にごちそうさまでした。
続いて訪れたのは、先程まで紹介した幕末・明治の歴史巡りとは変わって、中世の歴史を辿る「鎌倉BUSHIDOコース」。そして、絶景と美しい自然が堪能できる「横須賀アルプスコース」です。
BUSHIDOとは、日本の武士階級の論理や道徳的範囲・価値基準の根本となる思考や考え方を指したもの。多くの氏族が誕生したとされる平安末期、「三浦一族」は、鎌倉幕府を設立した源頼朝の祖先である源頼義に従い、源氏の勃興に尽力したと言われています。その恩賞として康平年間( 1058年~1064年) に三浦の地であるここに、横須賀に「衣笠城」を築きました。
浄楽寺は、そんな三浦一族の「和田義盛夫妻」が願主となり設立されたお寺。 同じく鎌倉時代に活躍したとされる仏師・運慶が残した阿弥陀三尊像をはじめ、計5体の仏像を拝観することができます。和田義盛は、鎌倉幕府設立時、源頼朝を支え、初代侍所別当に任じられたことでも有名です。
これらの仏像はすべて指定重要文化財に登録されている貴重なものばかり。鎌倉幕府時代の中世ロマンに想いを馳せながら、三浦氏ゆかりの地を巡ってみてはいかがでしょうか。
平安時代から鎌倉時代にかけて三浦半島に勢力があった三浦一族。その本城があったとされるのが、ここ、衣笠城跡です。深山川・大谷戸川のふたつの川が堀の代わりになるなど、自然を利用したお城であったことが伝えられています。また、治承4年(1180年)の衣笠合戦の舞台ともなり、この城に平家側の大軍を迎えて、源頼朝の旗揚げに応戦したことがわかっています。
このような数々の歴史を物語る貴重な城跡である衣笠城跡にも、ぜひ訪れてみてくださいね。
横須賀には三浦丘陵を構成する低山が点在しており、そのうち三浦富士・砲台山・武山・大楠山を結ぶハイキングコースを、YAMAPでは親しみを込めて「横須賀アルプス」と呼んでいます。
今回は大楠山に登ってみましょう。
三浦半島最高峰(242m)の大楠山は、「横須賀アルプス」のひとつです。登山コースは全部で5つあり、それぞれ難易度や風景も違うため、自分のレベルに合わせて登るコースを選ぶことができます。
私は、大楠芦名口バス停から約60分ほどで山頂に到着できる「大楠芦名口コース」をチョイス。難易度は一番低いといわれており、初心者にも優しい初級のハイキングコースです。
山頂では360度のパノラマを堪能できるということで、その景色に期待しながら、いざ登山スタートです。
多少の凹凸やぬかるみはあるものの、基本的には歩きやすいなだらかな道が続く大楠芦名口コース。すれ違う人たちの中には、犬の散歩に毎日登っているという方や、バイクで山頂まで登っている方もいました。
山頂付近では、四季を感じさせる風景にいくつも出会うことができます。
色とりどりの花が咲いているかと思いきや、秋の風物詩であるすすきが残っていたりと、景色を眺めながら登るのも楽しい!
60分、ほぼ休憩なく登りましたが、初心者の私でも風景を満喫したり、人とお話しながら登る余裕もあり、ちょっとしたハイキングにはぴったりの登山コースでした…!
展望台からは、噂通り360度のパノラマの絶景が拝めました。三浦半島を見渡せるのはもちろんのこと伊豆半島から富士山、箱根連山、大島、房総半島までの景色を独り占めできるのは、もはや贅沢以外のなにものでもありません…!
「いや〜、ここまで頑張って登ってよかった!」と、思わずガッツポーズ。
春には桜が咲き、菜の花畑も見頃になる大楠山。もう少し暖かい季節になったら、次は違うコースにもチャレンジしてみたいです!
山頂からの眺めが抜群の三浦富士も、三浦アルプスのひとつです。標高約183mと、大楠山と比べれば低い山ではありますが、相模湾から東京湾はもちろんのこと、伊豆大島や房総半島まで見渡すことができます。
こちらもお天気が良ければ、悠々とした富士山の姿を見ることができるスポット。山頂近くには浅間神社が祀られており、そこには「浅間神社奥宮」と彫り込まれた碑が経っています。この碑には、古くからこの地に住む人達の厚い信仰が寄せられていたのだそう。漁師が三浦富士を目標として、帰るべき港の方向を判断していたとも伝えられています。
ハイキングコースも整備されており、大楠山の登山だと少し心配という人は、まずは三浦富士から登ってみるのもおすすめです。
横須賀の歴史に触れ、時代は違えど、ここで文化を発展させていった偉人たちの心情に、少しだけ寄り添えた気がした今回の旅。
特別なアクティビティに参加しなくても、歩くだけで存分に美しい自然や文化を楽しむことができるという点では、日頃あまり運動をしない人や、アクティビティが苦手という人にもおすすめできるのではと感じました。なにより都心から近く、周辺には鎌倉などの観光スポットも盛りだくさん、1日はもちろん、2泊3日のお出かけなどでもより楽しめそうです!
ロゲイニングとは地図とコンパスを使って、山野に多数設置されたチェックポイントを制限時間内にできるだけ多く回り、得られた点数を競うオーストラリア発祥の野外スポーツです。よこすかロゲイニングでは、地図とコンパスの代わりにスマートフォンのYAMAPアプリを使って横須賀をめぐり点数を獲得していきます。
参加方法は簡単。YAMAPの地図検索ページから「よこすかロゲイニング」を選んでダウンロード。地図内の設定から「よこすかロゲイニング」をオンにして、表示されるポイントを巡りましょう。
YAMAPアプリを使って各コンセプトエリアの〈対象チェックポイント〉を通過すると、ここでしか取得できない特別なデジタルバッジをプレゼント! 観光でも使えるYAMAPを使い、この機会にぜひチャレンジしてみてください!
よこすかルートミュージアム
横須賀に点在する開国から近代につながる歴史や文化の見どころと自然豊かなスポットを「ルート」でつなぎ、市内全体を大きな「ミュージアム」としてとらえて巡る新しい旅の形。横須賀から全国に広がった技術や文化、東京湾と相模湾の二つの海にまたがる自然など、歴史と文化、自然にあふれる横須賀をお楽しみいただけます。
〈対象チェックポイント〉
猿島・くりはま花の国・観音崎燈台・ソレイユの丘
〈バッジの特徴〉
横須賀が名を馳せたのはペリーの来航があってこそ。そんな横須賀の顔、ペリーをモチーフにしました。
鎌倉BUSHIDO
衣笠城を本拠地として、全国に広がり活躍した三浦一族。三浦半島には三浦氏ゆかりの史跡が数多く存在し、国重要文化財の運慶作の仏像や、繁栄が偲ばれる文化財が多数残っています。本拠地衣笠城や菩提寺満昌寺、三浦一族の発願で建立された仏像が安置されている浄楽寺など、鎌倉幕府設立に尽力した足跡を堪能できます。
〈対象チェックポイント〉
浄楽寺・満願寺・清雲寺・衣笠城跡・満昌寺
〈バッジの特徴〉
鎌倉時代に運慶に作られた浄楽寺の毘沙門天像をモチーフにしたバッジです。
横須賀アルプス
横須賀アルプスは、三浦富士、砲台山、武山、三浦半島最高峰の大楠山を含む山々の総称のこと。武山の麓には津久井浜観光農園が広がり、秋はミカン狩り、春はイチゴ狩りを楽しむことができます。三浦富士山頂には浅間神社奥宮、砲台山には砲台跡、大楠山の山頂からは360度の絶景パノラマをご覧いただけます。ハイキングを通して横須賀の山の魅力を堪能しましょう。
〈対象チェックポイント〉
大楠山・三浦富士・武山・砲台山
〈バッジの特徴〉
三浦半島最高峰、関東百名山のひとつとされる大楠山をモチーフにしました。
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文:ichi(Twitter、note)
カメラマン:大谷陽二郎(Twitter)