DOMOへの質問・疑問にYAMAP代表・春山が直接答える|DOMO意見交換会レポート

2021年7月14日にリリースしたYAMAPの循環型コミュニティポイント「DOMO(ドーモ)」。 8月24日、YAMAP代表の春山から、DOMO導入の背景や目的についてご案内し、ユーザーさんからの質問に直接お応えする場として、意見交換会を開催しました。本記事では、その模様を要約してお伝えします。

2021.08.30

YAMAP MAGAZINE 編集部

INDEX

DOMOとは何か?

春山:「DOMO」は、一言で言うと「いいね」の進化系です。コミュニケーションや承認欲求的な役割が強かった「いいね」から、「いいね」の良い部分は引き継ぎながら、他者やコミュニティに貢献する機能へバージョンアップすることをDOMOの目的としています。

春山:今までの「いいね」は、コミュニケーションとしての「挨拶」であったり、褒めてもらう「承認欲求」としての役割があったかと思います。また、制限がなく「無限」に使えるという特徴もありました。「いいね」の良い部分はそのままに、承認欲求以上の価値にしたい、というのが今回のDOMOのチャレンジです。

DOMOの特徴としてはこんなものがあります。

・「利他的な行為(贈与)」を価値規範とする
・支援し合う関係性を目指す
・共感、感謝、応援を伝える
・有効期限は3ヶ月(貯めるより送る、支援することに使って欲しいとの意図から)

一般的なお金やポイントサービスとDOMOの特徴を比較した表。貯めたDOMOは、登山者同士でおくり合う他、山の再生などの支援にも使うことができる

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DOMOを導入しようと思ったきっかけは?

春山:きっかけのひとつは、昨年5月に行った山小屋支援プロジェクトです。有り難いことに、目標金額200万円に対して、約6200万円の支援金が集まりました。

みなさんからお預かりした資金を、1円も無駄にせず山小屋の方々にお渡ししたい。そう思い、クラウドファンディングの運営側と交渉したのですが、手数料が免除や軽減されることはなく、手数料分の820万円ほどをYAMAPで補填し、支援金全額を山小屋の方々へお渡ししました。

山小屋支援プロジェクトを終えて、登山には「共助の文化」が根づいていることを再確認する一方で、今の時代にマッチした共助の仕組みが足りていないように感じました。また、クラウドファンディングのような1回きりの単発的な取り組みではなく、普段から登山者が山岳環境に貢献できる仕組みがあった方がいいのではないか。 登山者自身が、自分たちの遊び場でもある山を豊かにし、登山道整備にも貢献していく仕組みをつくれないか。そんなことを考える機会にもなりました。

山小屋支援プロジェクトの詳細報告に関しては、こちらのnoteをご覧ください。

春山:DOMO導入の二つ目のきっかけ、毎年続く豪雨災害です。気候変動の影響で雨量が増加しているのが大きな原因ですが、山が荒れていること(はげ山が増えている、鹿の食害で植物が育っていない、皆伐された後放置されているなど)も、豪雨災害の原因になっていると実感しています。

2020年甚大な豪雨災害のあった熊本県球磨地方の山々。山がはげていて、皆伐が広がっていることがわかる。(画像提供:つる詳子さん)

同じく球磨地方の山の林床の様子。鹿が増え、鹿の食害が進んだ結果、林床に植物が生えていない。こうなると、山に保水力はなく、雨が降るたびに表土が流れ続ける(画像提供:つる詳子さん)

山が荒れると豪雨災害の度に登山道が壊れ、登山者は山へ行けなくなります。健全な山と、安全な登山道があってこそ登山者は山登りができる。そう考えると、気候変動の今、山の再生や登山道整備に、登山者がどのように関わっていくかというのは、喫緊の課題だと思うんです。

こうしたきっかけがあり、私たちYAMAPとしても、何らかの取り組みができないかと模索し導入したのが、今回のDOMOプログラムになります。

DOMOで解決していきたい課題と、つくりたい未来

春山:山が荒れていること、登山道整備が十分には行き届いていないこと、今の時代に合った共助の仕組みが足りていないこと。山や登山者をとりまく現状にはこうした課題があります。

DOMOを導入することで、この現状を少しでも変えていきたい。具体的には、山が再生されていく未来、登山道整備が行き届いている未来、今の時代にフィットした共助の仕組みがある未来。そんな未来をYAMAPでつくっていきたいと思っています。

どうしてYAMAPが、山の再生を語り、実践するのか?

春山:有り難いことにYAMAPアプリは260万ダウンロードを超え、日本で最も使われている登山アプリにまで成長しました。

YAMAPはベンチャー企業です。会社規模やユーザー規模に応じて、果たすべき社会的役割もステップアップしていきたいと思っています。

また、YAMAPは企業理念はとして「人と山をつなぐ、山の遊びを未来につなぐ」を掲げています。創業時より、登山アプリに終わることなく、山の遊びを未来につなぐような”山のインフラサービス”となることを目指してきました。今回のDOMOは、YAMAPの企業理念である「山の遊びを未来につなぐ」を実践する取り組みでもあります。

山の遭難事故防止や山の情報交換など「山での遊びをサポートする機能」に関して、もちろん今後も継続・改善していきます。同時に、微力なのは承知の上で、今後は「山の再生にも貢献するサービス」に成長させていきたい。登山者自身が自分たちの遊び場を整え、次の世代につなげていくことにも、チャレンジしていきたい。気候変動を迎えている今、「山を楽しむ」だけでなく「山を守る」ことにも、YAMAPはユーザーさんと一緒にトライしていきたい。そう思っています。

「山へ行くことと山を再生することがつながると、山はどんどん豊かになる。これこそが今の時代にあった共助の仕組みなのではないかと考えて、DOMOをつくった」(YAMAP代表・春山)

DOMOはリリースしたばかりの機能です。DOMOの使われ方を分析したり、ユーザーさんのご意見をいただきながら、改善を重ねていきます。まだ使い方に慣れず、ご不便をおかけしているユーザーさんもいらっしゃると思います。ユーザーさんへのご案内や説明を重ねながら、DOMOで成し遂げたい”未来”を共有し、ユーザーのみなさんと一緒にDOMOを育てて行けたらと思っています。

DOMOのここがわからない! 意見交換会前に寄せられた主な質問への回答

ーDOMOの財源は?

春山:現状、DOMOの財源はYAMAPがすべて負担しています。DOMOのコンセプトや利用が広がった段階で、持続可能な機能にするため、原資を確保するいくつかの方法を考えています。例えば、山の再生や森づくりに賛同してくださる企業から協賛費用をいただく形で、DOMOの原資を確保する。YAMAP STOREでDOMOが使えたり、購入時にDOMOがもらえる仕組みを入れる。支援したいときにDOMOが足りない場合は、課金してDOMOをチャージしていただく、などです。いずれもまだ検討段階ですが、原資の確保に関しては、複数の案を考えています。

ー有効期限が3ヶ月の理由は?

春山:有効期限が短い理由は、DOMOは貯めるよりも、贈り合うことに重きを置いているためです。有効期限がなかったり、長かったりすると、人はどうしても貯めたくなってしまいます。「贈り合う」「支援し合う」ことを促したいため、有効期限はあえて短めに設定しています。

また、有効期限が切れることを心配し過ぎることのないよう、DOMOを新しくもらえるタイミングやきっかけを数多く設けています。YAMAPを”普通に”使ってくだされば、DOMOは枯渇することがないように、設計・運営していきます。

法律的な話にはなりますが、ポイントは6ヶ月以上を超えると資金決済法に抵触してしまいます。法律的な縛りもあり、有効期限を短く設定しています。

ー電話番号認証が必要な理由は?

春山:DOMOはポイントシステムです。なりすましの不正を防止したり、本人確認の必要性から、電話番号認証をお願いしています。本人確認の目的以外にYAMAPの方で使用することはありませんので、ご安心ください。

ーDOMOは仮想通貨ですか?

春山:DOMOはYAMAP独自のポイントシステムになります。仮想通貨ではありません。ビットコインなどの仮想通貨のように投機的な役割も目的もありません。

ー支援先の選び方は?

春山:今は、DOMOの立ち上げ期になります。そのため、DOMOのコンセプトに合う支援先をYAMAPの方で選定しています。森づくりの象徴となる場所から始めようと思い、熊野古道のある和歌山県田辺市や、日本三大修験道の一つである英彦山、震災で被害を受けている福島県南相馬市などを、私たちの方で選びました。

今後、地域に偏りがないよう全国各地に広げていく予定です。また、森づくりだけでなく、登山道整備やバイオトイレの設置、山小屋サポートなど、ユーザーさんからのお声や要望も頂戴しながら、支援先を増やしてまいります。

ー支援の流れはどうなっているの?

春山:DOMOの支援数がある程度貯まった段階で、集まったDOMOポイントの総量をYAMAPの方で円に替えて(20DOMO = 1円)、現金として支援先にお渡しします。支援が完了したら、支援ページにて振り込んだ日時や金額を公開いたしいます。透明性を確保しながら進めてまいります。

質疑応答タイム(主な質問を抜粋)

意見交換会の後半は、参加者の質問に答える質疑応答タイム。チャットにいただいた質問を中心に、代表の春山とプロダクトマネージャーの土岐が、一つひとつ回答していきました

ーふるさと納税やクラウドファンディングなど一般の支援の枠組みで良いのでは? なぜDOMOの仕組みが必要なの?

春山:ふるさと納税やクラウドファンディングなどの一般的な取り組みも当然大事だと思っています。ですが、圧倒的に支援の数が足りていない、支援が一過性の取り組みで終わってしまうことは、課題に感じています。

YAMAPとしては、登山者が山を楽しむだけでなく、山を守る活動にも継続的に貢献できる仕組みをつくりたいと思い、DOMOを導入しました。

ただ、DOMOはこれまでのYAMAPの機能とは種類が異なっている部分があります。YAMAPはこれまで「役に立つ(遭難防止に役立つ、山で地図が使える、便利である、安価である)」という軸でサービスを提供してきました。「役に立つ」機能は、誰もが納得しやすく、わかりやすい。今回のDOMOは、どちらかと言うと「意味がある」という軸に属します。「意味がある」かどうかは、個人の価値観によるところが大きく、人によってとらえ方は様々です。支援を強制するつもりは運営側にはありません。DOMOを含め、ユーザーさん自身の価値観に照らし合わせて、YAMAPを自由に使っていただくのが良いと思っています。

「役に立つ」軸だけでなく、「意味がある」軸にもYAMAPのサービスの範囲を広げていきたい(春山)

ー山に頻繁に行けない人、事情があり山に登れない人にとっては、DOMOがなくなってしまう時期・状況が発生してしまうのではと懸念しています。

春山:ご高齢で今は山へは行けないけれども活動日記を見て楽しんでいる方ですとか、登山以外でYAMAPをご活用いただいている方が、一定数いらっしゃることは私たちも把握しています。そういった方々が、DOMOが枯渇してしまい、コミュニケーションがとりづらい状況になることは、私たちも望んでいません。

まだ検討段階ではありますが、YAMAPアプリを1日1回立ち上げたら10DOMOがもらえるなど、山に行かなくてもDOMOがたまっていく仕組みの導入を模索しています。

ーランク制度を復活してほしいです。

土岐:DOMO導入にあたってランク制度をどうするかについては、社内でもかなり議論しました。ランクを上げるために「いいね」を集めようとする行動が一部ユーザーの間に見られたこともあり、一旦はランク制度の廃止を決定しました。 DOMOの使われ方を注視しつつ、ランク制度に代わるものを用意するのか、あるいはランク制度を復活するのかなど、今後も検討を重ねていく予定です。

ーいいねからDOMOに変わってユーザーの間のポイント数の変化はあったのでしょうか?

土岐:DOMO導入によってユーザーの活動状況が大きく減少したなどの変化はありません。むしろ活発化している状況です。下記のデータが参考になると思います。

ー読んだことを示すためいいねを使っていました。DOMOは消えるため、既読の印をつけるにはどうしたらいいでしょうか?

春山:有効期限に関係なく、DOMOをおくったらその記録はずっと残ります。消えることはありませんので、ご安心ください。今後は、既読の印というよりは、心が動いた活動日記にDOMOを送っていただければ幸いです。

DOMOについてさらに詳しく知りたい方は…

100名近くのユーザーさんにご参加いただいた今回のDOMO意見交換会。前半は、代表の春山からDOMO導入に至った経緯、DOMOの詳細をご案内させていただきました。後半の質疑応答タイムでは、参加者のみなさんから率直にご質問・ご意見・ご感想をいただくことができました。

本記事ではポイントを要約して紹介しています。詳しく知りたい方や当日の模様を見たい方向けに、当日の録画をYouTubeにて期間限定で公開をしています。ぜひこちらもご覧ください。

意見交換会のグラレコ

当日の意見交換会を、中尾仁士さんにグラフィックレコーディング(グラレコ)していただきました。こちらもあわせてご覧ください。

意見交換会に参加したユーザーさんのお声

意見交換会に参加した方の感想を一部紹介いたします。

YAMAPの代表が、どんな質問にも誠実に答えている姿が印象的でした。また代表の言葉から、DOMOを通じてSNSやアウトドア業界のあり方を変えようという熱意を感じ、応援したいとも思いました。これからも頑張ってください。これからのDOMOを楽しみにしてます。

単なるアプリにとどまらず、一定の社会的責任を負うために様々な試みがなされており、とても良いと思った。またDOMOが承認欲求を超える価値を持つこともよく理解できた。

DOMO導入の背景からDOMOの価値と実際の運用、今後の展望まで幅広く興味を抱いていたことを知れたため。疑問が解消された。

意見交換会でも書きましたが、DOMO寄付先の他薦含め山を守る活動の輪が広がっていくための設計を期待しています!

意見交換会や説明会があるのは、みんなで作っていきたいという、気持ちが伝わって来る。話さないと伝わらないことも多くあると思うので、これからもこういった会を設けてもらえれば嬉しいです。

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。