幻の「剱大滝」史上初のドローン撮影の裏舞台に迫る|特別講座も8/12(金)開催決定

登山者にとって憧れの山のひとつが立山連峰の剱岳。けれども「剱大滝」と聞いて場所や風景を想起できる人は皆無に等しいのではないでしょうか。それもそのはず。この滝は立ち入ることさえ困難な深い峡谷にあり、その全貌を目にした者もいない秘境なのです。そんな「剱大滝」で史上初のドローン撮影が実現。その舞台裏が明かされる特別講座も開催されます。

「地球トラベラー 完登めざせ 幻の剱大滝」特別講座 <2022年8月12日(金)開催>
青山教室 / オンライン

(トップ画像提供:NHK 山田陽明堂)

2022.07.25

YAMAP MAGAZINE 編集部

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音はすれども姿は見えぬ|幻と言われる「剱大滝」とは⁉️

剱岳から望む剱沢雪渓と後立山連峰(撮影:鷲尾太輔)

日本三大雪渓のひとつである剱沢雪渓(つるぎさわせっけい)を源に、黒部峡谷へと注ぐ剱沢。源流のひとつである剱沢野営場から下ると、剱沢雪渓には剱岳(つるぎだけ、2,999m)へのバリエーションルートでもある平蔵谷・長次郎谷の雪渓が合流。別山沢出合先の雪渓末端まで下ると、剱沢の流れには立山三山のひとつである別山(べっさん、2,880m)を源流とする真砂沢が交わります。

さらに下ると、二股の吊橋先では日本に現存する数少ない氷河である三ノ窓雪渓・小窓雪渓も合流。裏剱の象徴でもある鋸歯状の稜線を創り出した険しい沢からの雪解け水も加わり、剱沢は黒部川の支流で最大の水量となって東へ進みます。

しかし一般登山者が剱沢に沿って歩くことができるのはこの二股まで。通行可能な登山ルートは、仙人池へと尾根を登り返す仙人新道となっています。

剱沢流域と剱大滝

二股から先の剱沢中流域はまさに人跡未踏の秘境。黒部川と合流するまでの約4km弱の区間は、北側に連なるガンドウ尾根と南側から迫り出した黒部別山の山塊に挟まれた深いV字型の峡谷地帯なのです。

その峻険な地形から登山ルートすら存在しない場所に位置するのが、今回ご紹介する「剱大滝」。高さ約300mの大岩壁に囲まれ9段に分かれて流れ落ちる雄大なスケールの滝ですが深く険しい峡谷に隠されているため、これまで“音はすれども姿は見えぬ”と称される幻の存在でした。

下ノ廊下の水平歩道(写真:PIXTA)

そんな「剱大滝」を流れ下った剱沢が黒部川に合流するのが十字峡。そしてこの十字峡がある下ノ廊下(黒部ダム〜仙人ダム間)自体が、あまりの豪雪によって例年9月下旬〜10月のわずかな期間しか通行できない、北アルプス有数の難コースです。

絶壁に刻まれた幅1mにも満たない旧日電歩道(水平歩道)は、かつて水力発電所建設調査のために開かれた険しい道。手がかりになるのは、山側に設置された細い番線(ワイヤー)のみです。黒部に怪我なし(落ちたら怪我では済まない)という言葉通り、長時間持続可能な集中力と岩場を安定して通過するスキルが高いレベルで要求される上級者向けのルートなのです。その難易度と特別感から多くの登山者が憧れる、日本を代表する秘境のひとつとなっています。

6万年前から2万年前にかけて氷河が侵食した究極のV字谷(提供:NHK 山田陽明堂)

この下ノ廊下から究極のV字谷と呼ばれる剱沢中流域を遡るには、川底から数10m上の断崖絶壁をロープを伸ばしながらトラバース(横断)しつつ進むという極めて困難な登攀技術が必要。I滝からA滝までの9つの滝で構成される「剱大滝」を登り切った者は、2021年までにわずか28人しか記録されていませんでした。

そして数少ない「剱大滝」の完登者たちですら、登攀中に目にすることができたのは深い谷を流れ落ちる滝の一部のみ。これまで滝全体が撮影されたことはなく、その全貌は謎に包まれた存在だったのです。

断崖絶壁の間を流れ落ちる「剱大滝」(提供:NHK 山田陽明堂)

北アルプスの深い峡谷に潜み、轟音だけを響かせる「剱大滝」。容易には人を寄せ付けず、これまで誰もその全体像を知ることのなかった大瀑布は、まさに秘境中の秘境。しかしそれ故に、山を愛する人々を惹きつけて止まない場所でもあるのです。

「剱大滝」のドローン撮影にチャレンジ|NHK『地球トラベラー』

剱大滝が潜む深さ300mの大峡谷をトラバース(横断)する撮影チーム〈写真左上〉 (提供:NHK 山田陽明堂)

そんな「剱大滝」の全貌をドローンで撮影することに挑んだのが、去る7月23日(7月30日もNHK BS4Kにて13:30より放送)に放映のNHKの人気ドキュメンタリー番組『地球(アース)トラベラー 完登めざせ 幻の剱大滝』の撮影チーム。旅人は“クライミング界のアカデミー賞”とも呼ばれる国際的な山岳賞・ピオレドール賞を過去2回受賞した日本を代表する登山家・カメラマンの中島健郎さんと、同じくNHKの『グレートヒマラヤ撮影日誌』など数々のTV番組で世界の秘境や名峰を撮影してきたカメラマンの石井邦彦さんです。

※『地球(アース)トラベラー 完登めざせ 幻の剱大滝』
NHK BS4Kで2022年7月30日(土)13:30より放送

中島さん・石井さんが辿ったルートのCG画像(提供:NHK 山田陽明堂)

中島さんと石井さんは長野県大町市の大谷原から入山。赤岩尾根を経て鹿島槍ヶ岳から後立山連峰を越え、十字峡に降り立ちます。

ここからが番組のハイライト、国内最難関ルートと呼ばれる究極のV字谷に分け入って「剱大滝」の全貌をドローンで捉える史上初の撮影に挑みます。深さ300mの大峡谷の谷底を、剱岳の膨大な雪解け水を集めて流れるコバルトブルーの激流は思わず息を吞むショットの連続。そしてついに「剱大滝」の全景がカメラによって捉えられたのです。

剱岳から望む後立山連峰のモルゲンロート(提供:NHK 山田陽明堂)

さらに中島さんと石井さんは「剱大滝」の水源となる剱沢雪渓を遡り、源次郎尾根を登攀して剱岳の頂を極めます。そこで2人を迎えてくれたのは、後立山連峰をシルエットに東の空を染める美しいモルゲンロートでした。

「剱大滝」撮影の裏側が明かされる|特別講座が開催決定!

ドローンを操縦する中島健郎さん(提供:NHK 山田陽明堂)

文字通り史上初の快挙となった『地球(アース)トラベラー』の「剱大滝」ドローン撮影。その裏側が明かされる特別講座が、8月12日(金)19:00から東京・NHK文化センター青山教室(オンライン参加も可能)で開催されます。

当日は中島健郎さんが特別トークに登壇。登攀するだけでも困難な究極のV字谷を突破し、さらにドローンを操縦して「剱大滝」の全貌を撮影するという過酷なロケ。いかにしてその偉業を成し遂げたのか、90分の番組放映時間では語り尽くせない部分もあったでしょう。そんなTV画面には映らなかった舞台裏のエピソードまでを中島さん自らが明かしてくれる、またとないチャンスです。

ドローン撮影をアシストする石井邦彦さん(提供:NHK 山田陽明堂)

中島さんと共に「剱大滝」完登に挑んだ石井邦彦さんもリモート出演予定。『地球(アース)トラベラー』では、今回のチャレンジ以外でも厳冬期の利尻山など数々の困難な登攀と撮影を実現させてきた2人ならではの、息の合ったトークが楽しみです。

「山の編集長」こと萩原浩司さん

さらに今回の特別トークには雑誌『山と渓谷』元編集長で、NHKの『にっぽん百名山』ではレギュラー解説者として出演している萩原浩司さんも登壇。中島さん・石井さんの確かな技術と経験なしには踏破できない厳しい世界の魅力を、存分に引き出してくれることでしょう。

本特別講座は、NHK文化センター会員でなくても入会不要ですぐに申し込み可能。オンライン配信も行われるため、東京近郊以外にお住まいの方でも受講できます。

一夜限りの開催となる本講座。この貴重な機会を逃さず、一般登山者では生涯目にすることのできないであろう絶景の魅力にどっぷりと浸ってみませんか。

提供:NHK 山田陽明堂

また、当日は第1部として、ヤマップによる講演「この夏行きたい山ランキング&日本一道迷いしやすい登山道」も同時開催。夏の登山の参考になる情報が満載のセミナーです。みなさんにお会いできることを楽しみにしていますので、興味のある方はぜひご参加ください。

「地球トラベラー 完登めざせ 幻の剱大滝」特別講座のご案内/夏の登山セミナーも同時開催

日時
2022年8月12日(金) 19:00~20:30

講師
【第1部】この夏行きたい山ランキング&日本一道迷いしやすい登山道
小野寺洋:株式会社ヤマップ 執行役員

【第2部】「地球トラベラー 完登めざせ 幻の剱大滝」特別講座
中島 健郎:アルパインクライマー・山岳カメラマン
石井 邦彦:山岳カメラマン
萩原 浩司:『山と溪谷』元編集長

参加方法・受講料
講師に直に話を聞く「NHK文化センター青山教室」・3,432円
全国・全世界から参加可能「オンライン」・2,200円

※いずれかをお選びいただけます
※受講料は「会員」「一般」同料金(一般の方の入会は不要です)

お申し込みはこちらから。

(編集協力:鷲尾 太輔)

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。