結局、夏山で使いやすいのは「40ℓサイズのバックパック」|ミステリーランチ

夏山シーズンを直前に控え、装備の見直しを図っている登山者も多い時期でしょう。「今年の夏こそはテント泊や山小屋泊デビューしたい」と考えているならば、用途に合わせたバックパック選びは必須。では、軽量なものから、しっかりしたものまで多岐に渡る種類の中から、何を基準に、どのようなタイプを選べばよいのでしょうか? ミステリーランチのバックパックを例に考えてみました。

2023.06.21

池田 圭

編集・ライター

INDEX

夏山登山なら40ℓサイズが使いやすい

日帰りハイキングからステップアップし、今年は夏山でテント泊や山小屋泊にチャレンジしてみたい。そのようなスタイルの登山に使うためのバックパックは、どのくらいのサイズが必要なのでしょうか。

1つの目安は40ℓ前後。30ℓ以上あれば、日帰りや山小屋泊に必要な荷物は余裕を持って背負うことができるでしょう。40ℓあれば、コンパクトな装備のテント泊にも十分対応できる非常に汎用性の高いサイズです。

バックパックはつい重量の軽さや見た目で選んでしまいがち。日帰りのハイキングのように、荷物が軽く、短い行動時間の山行であれば、そのような基準で選んでもよいでしょう。しかし、夏山登山は炎天下の中を長時間行動したり、重たいテント泊用の荷物を背負ったりと、バックパックの快適性が問われるシーズンです。軽さだけでなく、用途に合ったバックパック選びが求められます。

今回は、背負い心地の良さに定評のあるブランド「ミステリーランチ」の2モデルをピックアップし、それぞれの特徴を掘り下げながら、夏山での用途に合ったバックパック選びについて考えていきましょう。

汗っかきも安心!優れた通気性を誇る「ブリッジャー45」

夏山でバックパックに求められる機能の典型的なものといえば、やはり背面の快適性です。蒸し暑い山中で、テント泊用の重たい装備を少しでも快適に背負うためには、背面やハーネスの構造が非常に重要です。

その点、ミステリーランチの「ブリッジャー45」は適度な堅牢さと背負い心地の軽さ、荷物の取り出しやすさ、そして優れた通気性を兼ね備えたモデルです。

一番の特徴は、その「軽い背負い心地」です。

秘密は、いかに快適に荷物を長時間を運ぶかを第一に考え抜いてデザインされた独自構造にあります。荷重を支えながら体の動きに追従する柔軟性の高いスプリングスチール製のワイヤーフレームや、腰全体を包み込む4ピース構造のウェストハーネスなどが荷重を効率的に分散します。

今どきの軽量なモデルに比べると決して本体重量が軽いわけではありませんが、ある程度の重さの装備を詰めた時には、むしろ、驚くほど肩や腰の負担が軽く感じられるはずです。

特徴的な形状のショルダーハーネスも、荷重分散に一役買っています。

ベストのような形状にすることで、肩だけでなく胸にも広く荷重が分散されるのです。2本配置されたチェストストラップで一体感を高めることができるので、重たい装備を背負った際にもブレません。

サイドにそれぞれ設けられた荷室のジッパーを開ければ素早く内部にアクセスでき、両サイドを開けるとフロントパネル(内側にメッシュポケット付き)を大きく開くことも特徴です。

背面とウエストのパッドには、無数の穴があり通気性の高いダイカット・オープンセルフォームを採用しています。

背負った状態を横から見ると、背面に空間が開いていることがわかるでしょうか。この横方向の空間と、腰から背骨に沿って縦方向にも空間を設けることで空気の流れを促し、大量に汗をかくような状況下でも蒸れを最小限に抑えてくれます。まさに、テント泊にチャレンジする「汗っかきのためのバックパック」と言える構造でしょう。

欲張りな方には汎用性の高い「クーリー40」

せっかくバックパックを新調するなら、テント泊だけでなく、山小屋泊にも旅行にも兼用したい。そのような方には、よりスマートなフォルムで汎用性の高い「クーリー40」がおすすめです。

こちらは縦方向に2本のグラスファイバーステイを、横方向には形状の異なるグラスファイバーをフレームに使い分けることで、運搬時の安定性と荷重の分散を実現したモデルです。

素材には210デニールと丈夫な、100%リサイクルのロービックリサイクルナイロンを採用。ボトム部分は生地を二重構造にするなど、長く使い続けられる高い耐久性を備えています。

また、デザイン的な特徴にもなっているフロントのY字型ジッパーを開くことで、荷室全体がガバッとオープンになり、ボトム側に詰めた装備にも簡単にアクセスできます。テントの設営準備時に役立つのはもちろん、山小屋泊の際に限られたスペースを最大限活用して荷物を整理しておくためにも非常に有用な構造です。

ちなみに、日帰り登山のように荷物が軽いときや、旅行に日常使いの際にウェストベルトが不要な場面があります。クーリーはご覧のように、必要に応じてワンアクションでウェストベルトを簡単に着脱できます。もちろん、不用意に外れてしまうなんてことはありません。

テント泊を考慮するなら40ℓか50ℓ、山小屋泊や日常使いを中心に考えるなら30ℓを選ぶのも良いでしょう。使い方次第で、テント泊から山小屋泊、日常使いや旅行にまで対応する「欲張りな方向けのバックパック」です。

夏山登山にミステリーランチをおすすめしたい5つの理由

2000年にロッキー山脈の麓で生まれたミステリーランチは、「荷重の負担を軽減する」という唯一にして最大の目標を掲げ、職人気質のバックパックを作り続けてきたブランドです。

これから、彼らのバックパックを日本の夏山登山におすすめしたい5つの理由を解説します。

長年、積み上げてきた経験のフィードバック

ミステリーランチは、前身であるデイナデザインをはじめ、複数のアウトドアブランドを礎にスタートしたブランドです。

例えば、20年以上に渡ってマイナーチェンジを続けている「グレーシャー」は、デイナデザイン時代からの系譜を引き継ぐシグネチャーモデル。エクスペディションな現場で使われる大型バックパックとして、長年に渡ってたくさんのフィードバックを受け、改良を続けてきました。このパックに詰め込まれた経験やアイディアが、小型、中型モデルの開発、展開にも生きているのです。

独自のフレーム構造で荷物が重たくても疲れにくい

しっかりとしたフレームを搭載していることが、ミステリーランチのバックパックの構造的な特徴。

バックパックの自重は増えますが、フレームの剛性が高く捻れやブレが少ないので、装備が重たい時や長時間行動する時の疲労度が格段に軽減されます。

バックパック本体だけではなく、ハーネス側にも独立したフレームシートを設けていることもミステリーランチならでは。

荷室の剛性を保つためのフレームと体に沿わせるフレームシートの役割を分けることで、体の負担を最大限に軽減し、優れた背負い心地を実現しています。しかも、モデルごとにフレームの形状や素材を変えているほどのこだわりよう。テント泊のような重たい装備を背負った時ほど、そのありがたみが感じられることでしょう。

ラフに扱っても安心なタフなディテール

生地やジッパー、ストラップ、バックルに至るまで、非常に耐久性の高いパーツを選んでいることも特徴です。多少ラフに扱っても、ものともしないタフな造りに加え、製品保証やリペアサポートも充実。長く付き合うことができる選択肢です。

究極のフィッティングを実現

バックパックの性能を最大限に生かすために、フィット感の高さにもこだわっています。

例えば、大型~中型モデルには背面長が無段階で調整できるシステムが搭載されています。また、ハーネスの形状が絶妙に異なるメンズ用、ウィメンズ用がラインナップされ、それぞれでサイズ展開もあります。

豊富な専用アクセサリーによる拡張性の高さ

豊富な専用アクセサリーによる、拡張性の高さもミステリーランチのバックパックの魅力。使いながら自分の嗜好や用途に合わせてアクセサリーを追加することで、さらに自分仕様のバックパックに育てていくことができるのです。(写真は、「クイックアタッチゾイドバッグ・スモール」を取付)

初中級者にこそ、軽さより快適さでバックパックを選んでほしい

近年のバックパック市場では、軽量なモデルが続々と登場し、注目を集めています。

しかし、軽いことはメリットがある反面、正しく使いこなすにはコツが必要な中上級者向きな造りとも言えます。これから夏山でテント泊や山小屋泊にチャレンジしてみたい方には、多少ラフに扱っても壊れにくく、重たい装備を快適に背負うために作られたモデルをおすすめします。

体力に自信がないから軽いものを、という気持ちもわかりますが、しっかりとした造りのモデルを選ぶことが、結局は快適で安全な登山につながるのです。初中級者こそ、初めからいろいろと背負い比べて、自分の体と用途に合ったバックパックを選びましょう。

■問い合わせ
エイアンドエフ
TEL:03-3209-7575
URL:https://www.mysteryranch.jp/

原稿:池田圭
撮影:小山幸彦(STUH)
協力:エイアンドエフ(ミステリーランチ)

池田 圭

編集・ライター

池田 圭

編集・ライター

登山、キャンプ、サーフィンなど、アウトドア誌を中心に活動中。下山後に寄りたい食堂から逆算して計画を立てる山行がマイブーム。共著に『”無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社)、編集を手掛けた書籍に『Two-Sideways 二刀流』(KADOKAWA)、『ハンモックハイキング』、『焚き火の本』、『焚き火料理の本』(ともに山と溪谷社)、『サバイバル猟師飯』(誠文堂新光社)など多数。