縦走登山にはこのバックパック|コロンビアの【ワイルドウッドシリーズ】とは

この春、コロンビアから縦走登山に対応する50Lの登山用大型パックが登場しました。軽さを追求しつつも、取り扱いに気を使わなくてもいい丈夫さを兼ね備えた素材使いが最大の特徴です。幾度となくフィールドテストを繰り返し商品のブラッシュアップに協力した若手登山ガイドの伊藤伴さんに、その魅力を聞きました。

2024.03.20

池田 圭

編集・ライター

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充実した展開のコロンビアの「バックパック」

ハイキングから日常まで、フィールドや使い方を選ばない幅広い製品展開を誇るアウトドアブランド「コロンビア」。

その多彩なラインナップは、ウェアだけにとどまりません。じつはバックパックにも、本格的な縦走登山からライフスタイルにまで対応するモデルが全30型と多数揃っています。

コロンビアの登山用バックパックは3カテゴリー。中でも左の「WILDWOOD」は登山向きなハイエンドモデルが揃うシリーズ

ハイキングに対応するモデルは、用途の違いごとに「WILDWOOD(ワイルドウッド)」、「WAHCLELLA(ワクレラ)」、「CASTLEROCK(キャッスルロック)」と3つのカテゴリーに分類されます。

今回は、本格的な登山に対応できる新作の「WILDWOOD」シリーズにフォーカスして紹介しましょう。

シグネチャーモデル「ワイルドウッドEXP 50L+10Lバックパック」を深掘り

コロンビアが本格的な大型パックを作るのは、じつに5年振り

コロンビアの全ラインナップ中、もっとも登山向きなパックが「WILDWOOD」シリーズ。とくにシリーズを象徴するモデルが、テント泊縦走を想定してデザインされた「ワイルドウッドEXP 50L+10Lバックパック」です。

じつは、コロンビアが50L以上の登山用大型パックを手掛けるのは5年ぶり。それも既存モデルのサイズアップではなく、新たに設計したというストーリーからも、コロンビアの本気度が伝わってきます。

開発にあたり、フィールドテストを担当したのは、コロンビアのアンバサダーとして国内外の山々で活躍する新進気鋭の若手登山ガイド・伊藤伴さん。

フィールドでの使い勝手を考慮し、ディテールをブラッシュアップしながら作り込まれた新作の特徴を、伊藤さん本人に解説してもらいましょう。

軽さと耐久性を兼ね備えた素材使い、コスパの高さにも注目

白い格子柄の生地が『Extreema®︎(エクストリーマ)』。大きな格子状の生地が『X-PAC(エックスパック)』

「ワイルドウッドEXP 50L+10Lバックパック」は、軽さを追求しつつも、取り扱いに気を使わなくてもいい丈夫さを兼ね備えた素材使いが、最大の特徴となっています。

登山ガイド伊藤伴さん(以下、伊藤)
「メインに使ったのは、耐摩耗性と引き裂き強度に非常に優れるダブルリップストップ構造の新素材『Extreema®︎(エクストリーマ)』。さらに同じく軽さと耐久性に優れ、防水性も兼ね備える3層生地『X-PAC(エックスパック)』を雨蓋とボトムに採用。適材を適所に使い分けてデザインされています」

この最新鋭の生地をふんだんに使った50Lクラスで、価格はアンダー3万円&重量は1,690gに抑えられています。機能性はもちろん、コスパの高さも見逃せないポイントでしょう。

続いて、ディテールに目を移してみましょう。左右のサイドポケットをよく見比べてみると、わずかに仕様が異なることに気がつくでしょうか。

「トレッキングポールの石突き(先端)を上にしてサイドポケットに挿している登山者をよく見かけますが、木の枝などに引っかけると危ない場面もあります。そこで先端を下向きに収納できるよう、片側のポケットは強度の高い生地を採用しました。反対のサイドポケットは、伸縮性の高いメッシュ素材を使った深めのデザイン。大きめのボトルでも、しっかりとホールドする構造になっています」(伊藤さん)

スペック値には現れない使い勝手と背負い心地の良さ

なにかと便利な大容量フロントポケット

同じく伸縮性の高いメッシュ素材を使ったフロントポケットにも、フィールドテストで得られた実践的な意見が取り入れられています。

「僕はフロントにアイゼンケースが付いたバックパックをよく使うのですが、なんでも突っ込んでおけるフロントポケットはなにかと便利。容量があった方が使いやすいので、しっかりとマチを設けて立体感を確保しています」(伊藤さん)

この大きさなら、休憩時にすぐに取り出したい行動食やシェルを入れたり、濡れたレインウェアやテントなどを乾かしながら歩くこともできます。

細かいポイントにも配慮。マチがあるだけでかなり荷物が入れやすくなる

雨蓋もフロントポケット同様、しっかりマチをとって容量をキープしていることが特徴。荷室は大型バックパックならではの2気室構造を採用しています。

荷物が多くなる大型パックは、下からも荷室にアクセスできた方が便利

「ぽこっと膨らんでいない、すっきりとした見た目のフラットな雨蓋は珍しいですよね。見た目に反して容量は結構大きくて、使いやすさも重視しています。付属しているレインカバーはボトムではなく、取り出しやすい雨蓋内に収納する仕様にしました。

2気室構造の荷室は、ボトム側に宿泊地ですぐに取り出したいテントを入れることを想定したもの。特に雨の日は、ダイレクトにテントにアクセスできた方が設営がスムーズです。使い方次第で1気室にもできます。間仕切りはサンプルではフック式でしたが、より使いやすいオールファスナーに変更しました」(伊藤さん)

見た目だけでもパッドのしっかりとした厚みが伝わる

背面のパッドやショルダーハーネスも、伊藤さんのフィールドで感じた意見を元に改善したポイント。

「従来、コロンビアが展開してきたバックパックで使う背面パッドやハーネスでは、このサイズ帯の重量を背負うにはやや物足りなさがありました。縦走登山を想定し、軽さを求めながらも、背負い心地を左右するこのパーツは、しっかりとした厚みがあるものを選んでいます」(伊藤さん)

他にも、サイドのテープやボトムのテープは、ロールマットを外付けできるくらいの長さに変更。背面上部のハンドルをぐっと持ち上げやすい幅に設定したり、ハイドレーション用ホールは凍結防止のカバーを付けたままでも使える太さに変更したりと、より実践的な仕様にこだわって、隅々までデザインされていることがわかります。

テープ類はたっぷりとした長さを確保した設計

近年の登山シーンでは軽量なバックパックが人気を集めていますが、大型パック選びはスペック値には表れない使い勝手や背負い心地の良さがとても重要。特に初中級者にとっては、多少雑に扱ってしまってもびくともしない耐久性の高さが大切です。

シンプルながら信頼のおける造りと機能をバランスよく兼ね備え、しかも手頃な価格帯。大型パックの新たな選択肢の誕生と言えるでしょう。

「ワイルドウッド」シリーズならスタイルや用途に合わせて選べる

ちなみに「ワイルドウッドEXP 50L+10Lバックパック」以外にも、ワイルドウッドシリーズには用途や体格に合わせて選べる5つのサイズがラインナップ。

同じシリーズではありますが、用途に合わせて使いやすいよう、それぞれ独立したディテールを備えています。

35Lサイズは3色展開。カラーバリエーションもサイズで異なります

「ワイルドウッド」シリーズのラインナップの中でも一番人気は「ワイルドウッド35Lバックパック」

使い勝手のいいサイズ感で、日帰りから山小屋泊、軽量なギアでまとめればテント泊にも使える汎用性の高いモデルです。

ダッフルパックのように、フロントがガバッと開く珍しい仕様

35Lサイズは、荷物全体がひと目で見えるようにガバッと開くことができるフロントポケットが大きな特徴です。山小屋や旅先などで非常に使いやすい仕様ですが、じつはこのデザインはシリーズの中でも35Lサイズだけのものなんです。

山行スタイルやルートに合わせて最適なモデルを選ぼう

同じように、サイズごとの主な用途を考えてディテールがデザインされているのが、ワイルドウッドシリーズの面白いところ。どのサイズも、シンプルな造りの中にフィールドでの使い勝手を向上させる工夫がたくさん詰まっています。

詳しくは、コロンビアのHPや店頭で手にとってチェックしてみてください。

教えてくれた人:登山ガイド・伊藤伴さん

中学3年でヨーロッパアルプス・モンブラン、高校3年でヒマラヤ・ロブチェイーストに登頂。大学3年に当時最年少でエベレストに登頂。現在は登山ガイドとして活動しながら、国内外でアルパインクライミング、バックカントリースキー、トレッキングなど四季を通してアウトドアフィールドで活動。
コロンビアスポーツウェアジャパン所属/日本山岳ガイド協会認定登山ガイド

原稿:池田圭
撮影:中村英史
協力:コロンビアスポーツウェアジャパン

池田 圭

編集・ライター

池田 圭

編集・ライター

登山、キャンプ、サーフィンなど、アウトドア誌を中心に活動中。下山後に寄りたい食堂から逆算して計画を立てる山行がマイブーム。共著に『”無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社)、編集を手掛けた書籍に『Two-Sideways 二刀流』(KADOKAWA)、『ハンモックハイキング』、『焚き火の本』、『焚き火料理の本』(ともに山と溪谷社)、『サバイバル猟師飯』(誠文堂新光社)など多数。