スマートウォッチの性能が著しく進化しています。アウトドアタイプの中には、登山に役立つ機能を搭載しているものも少なくありません。その大きな柱のひとつが「ナビゲーション機能」。
予定ルートを外したときにアラートを発してくれたり、地図でルートを示したりする機能のことなのですが、実際にどのように、どれくらい役立つのか。YAMAPのGPXデータを取り込んだ「Amazfit(アマズフィット)T-Rex 3」を用いて、山岳ライターの森山憲一さんが実践テストで確かめてみました。
なお、記事の最後にはYAMAPユーザー限定の「クーポンコード特典」もあります。ぜひ最後までお読みください。
2025.03.26
森山 憲一
山岳ライター/編集者
やってきたのは、埼玉県・奥武蔵の天覚山(445m)。「飯能アルプス」と呼ばれる人気ハイキングコースとなっており、稜線を西にたどると有名な伊豆ヶ岳(851m)に至ります。
なぜここを選んだのかというと、ここはかつて「日本一道迷いしやすい登山道」に選ばれたことがあるからです。YAMAPが多くのユーザーデータを分析したところ、全国で2番目に道迷いが多い場所であることが判明したというのです。
「日本一道迷いしやすい登山道2022」発表|「なぜ迷う?」を徹底解説
こんな人気コースでなぜ!? とは思いつつ、低山というのは、いろいろな道が錯綜していて、意外とルートファインディングの難易度は高いものです。何があるのかわからないけれど、ナビゲーション機能を試してみるには打って付けといえるでしょう。
駅から歩き出してすぐに、ひとつ軽い実験を。
今いるのは赤矢印で示した場所。予定コースは地図を左下に向かってまっすぐ行くのですが(オレンジ色の線)、左上に行く道(黒破線)もあります。今回は、あえてこちらに入ってみることにします。このふたつの道は先で合流するので、どちらを行ってもいいのですが、Amazfit T-Rex 3がどのようなナビゲーションをしてくれるのか、試してみようというわけです。
予定コースを外れて数分歩くと、「ピッ」という音とともに、手首に振動が伝わりました。見ると、以下のような画面が。
「予定コースから0.09km外れていますよ」というアラート。このアラートは予定コースに戻るまで数分おきに繰り返されるので、ルート逸脱に気づかないということはないでしょう。
今回は実験なのでアラートは無視し、そのまま進みます。天覚山直下で予定コースに合流し、無事、天覚山に着きました。
飯能市街方面の展望が開ける天覚山(445m)山頂
さて、ここからが本番。天覚山のすぐ先に、ひとつ目の「日本一道迷いしやすい」場所があります。Amazfit T-Rex 3の画面をチラチラ見ながら注意深く進んでいきます。
そして現れた迷いポイント。
直進すると間違いで、正しい登山道は下りぎみに右に曲がって続いています。典型的な道迷いポイントで、これは確かに間違いやすい。
ただし、すでにバッチリ対策されていて、直進方向にはロープが張られて通行止めになっていました。YAMAPの調査がけっこう話題になったので、地元で対策されたのでしょう。これ自体はいいことなのですが、迷いようがなくてテストの趣旨的には張り合いがないなあ。
迷いポイントで地図を確認してみるとこのように。目の前の地形や登山道と照合しやすいので、通行止めのロープがなくても正しい道が判断しやすい
さらに進むと、似たような分岐が現れました。ここも、登山道の正しい方向は看板の矢印で示され、間違ったほうは倒木で塞がれています。そこで、あえて間違った方向に進んでみました。何が起こるか。
間違った方向にしばらく進むと例のアラートが。
地図を確認すると、明らかにコースから外れていることがわかります。
この地図表示は間違いが視覚的にわかりやすいので、特に便利だなと感じました。
このコース、実はもうひとつ「日本一道迷いしやすい登山道」に選ばれたポイントがあります。大高山、大高沢入山と縦走した先にある六ツ石ノ頭。ここが全国で3番目に道迷いが多いポイントだというのです。
現場に着いてみると、下の写真のような感じでした。写真右上に直進していく方向が間違いで、左にズレていくほうが正しい登山道。「登山道が左右に曲がる箇所は要注意」という、道迷いポイントの典型的条件を備えておりました。
ただしここもロープと標識で間違った方向はふさいであり、すでに対策がなされておりました。T-Rex 3で地図を確認して、難なく正しい方向に進んでいきます。
このポイント、今となってはルートファインディングの難易度は低く見えますが、直進方向にもしっかり踏跡が付いており、ロープで対策される前は現在より断然判断しづらかったんだろうなと想像します。
最後にもうひとつ試してみました。現在地の「スルギ坂」から「不動堂」というところまで、登山地図上では破線のルートが続いています。ここを行ってみましょう。
このルートは通る人があまり多くなく、登山道は不明瞭であることが予想されます。検証のため、あえてここに突入してみることにしました。
案の定、登山道は草が茂りぎみであまり歩かれているようすがなく、ところどころに謎の分岐も現れましたが、まあ、問題なし。謎の分岐では、地図画面をパッと見るだけで進むべき方向が大まかにわかるので、素早く判断できて役立ちました。
こうして無事、地図の表示どおりに「不動堂」に下り立つことができました。めでたし。
さて、今回やったようなAmazfit T-Rex 3でのナビゲーションには、事前にある程度の準備が必要です。操作に慣れていないとわかりにくいかもしれないので、以下に私が行なった準備の手順を記しておきます。
まずはルートデータ(GPXというファイル形式)を作ります。YAMAPの場合だと、山行計画のページにGPXデータの「エクスポート」というボタンが現れます。ここをクリックすれば、スマホにルートデータがダウンロードされます。
*ただし、エクスポートができるのは有料のYAMAPプレミアム会員のみ。ヤマレコでもこの機能を使えるのは、2025年4月1日以降は有料会員のみになってしまいました。一方、スマホアプリはありませんが、山と溪谷オンライン(ヤマタイム)なら無料ユーザーでもGPXデータのダウンロードが可能です。ほか、難易度は上がりますが、ジオグラフィカやスーパー地形などのアプリを利用することでもGPXデータの作成はできます。
スマホのダウンロードフォルダにエクスポートした「yamap.天覚山~子ノ権現.gpx」というファイルが格納されるので、これをタップすると「アプリで開く」という選択肢が現れます(左写真)。これを選ぶと右写真のようになるので、ここでAmazfitの公式健康管理アプリ「Zepp(ゼップ)」を選択(事前にZeppアプリのダウンロードが必要です)。
*この画面はGoogleのPixel 6(Android 15)です。お使いのスマホによって画面や操作が異なると思いますが、やることは同じです。
するとZeppアプリが立ち上がり、左上のような画面になります。ルートデータが正しく読み込まれていれば、このように予定ルートが地図上に表示され、高低図も表示されます。
ここで画面右上の「保存」というボタンをタップすると「デバイスに送信」という選択肢が現れます。これを選ぶことで、Amazfit T-Rex 3にルートデータが送られ、ナビゲーションの準備が完了します。
この一連の作業、Amazfit公式が説明動画を公開しています。文字で説明するよりずっとわかりやすいので、詳しく知りたい人はそちらをご覧ください。
【Amazfit】YAMAPからGPXデータを取り込む方法
なお、このZeppアプリ、登山後には以下のようなデータが記録されます。
歩行軌跡や距離、累積標高など、行動中のさまざまなデータをここで見ることができます。心拍数の推移が見られるのがスマートウォッチならではというところで、私はここ、けっこうよく見ています。スマートウォッチを使うようになって以降、心拍数を”バテ管理”の指標として使っていて、これはそれまでになかった体験であり、実際、バテ防止にかなり有効に感じています。
心拍数や歩行スピードはこのように細かいデータも見られます。細かく見ているといろいろ発見もあり、特にトレイルランニングをやっている人には貴重なデータになるかと思います。
このAmazfit T-Rex 3、ナビゲーションの他にもいろいろな機能があります。自分が必要な機能を優先的に使えるように設定をカスタムしておくと、より便利に使えると思います。
以下に私の設定を紹介しますので、これを参考にいろいろ試してみてください。実は私も普段から愛用しているのですが、まだまだ知らない機能や設定があるような気がします。登山で便利な設定や使い方があれば逆に教えてください。
これが登山モードのメイン画面。表示する項目は、時刻/歩行時間/距離/歩数/心拍数/移動速度/平均ペース/標高/気圧などなど、さまざまなもののなかから自由に選べます。体温や消費カロリー、道の傾斜なんて項目もあります。
これらのなかから登山中に自分が知りたい項目を表示するように設定しておくと非常に便利です。私の場合は、「現在時刻」「歩行距離」「心拍数」「標高」を表示するように設定しています。
Amazfit T-Rex 3には4つの物理ボタンが付いています。これらのボタンには、それぞれ機能を割り当てることができます。私は、それぞれのボタンを長押しすることで、「コンパス」「音声メモ」「Zepp Flow(ゼップ フロー・AI音声アシスト)」が表示されるように設定しています。
右上ボタン(SEL)を長押しするとコンパス画面に。登山中、これは使う頻度が高いので、いちばん押しやすいボタンに割り当てています。
左下ボタン(DOWN)を長押しすると「音声メモ」。個人的にはこれ、非常に重宝しています。
私は山を歩いているときに仕事のアイデアが浮かんだり、下山してからやることを思い出したりすることが多く、過去にはメモ帳を持ち歩いたり、スマホのメモ機能を使ったりもしていたのですが、どうにも面倒で、メモしないまま忘れてしまうことがよくありました。
しかしこの音声メモ機能は、思いついたときに歩きながらでも手早くメモできて、これまでの悩みがほぼ解消。今では手放せない機能です。
左上ボタン(UP)は「Zepp Flow」。これは音声で操作できる機能で、他のさまざまな機能を声で呼び出すことができるというもの。AI機能なので、定型の指示文をしゃべらなくても理解してくれるのがいいところ。「きょう午後の天気予報を教えて」などとしゃべれば、スパッと表示してくれて便利です。
「グローブモード」という設定項目があり、これをONにしておくと、タッチスクリーン対応でない手袋でもタッチ操作ができるようになります(手袋の厚さ2mm未満まで)。
そもそもAmazfit T-Rex 3は、4つの物理ボタンでほとんどの操作ができ、手袋をしていたり指が濡れていたりするときでも問題なく操作できることが大きな利点でもあるのですが、グローブモードを設定しておけば、その利便性がさらに広がるというわけです。これは実際かなり便利なので、私はグローブモードを常時ONのままにしています。
さて今回は、迷いポイントが対策されていたので、ナビゲーション機能の本領を発揮するまでには至りませんでしたが、もっと迷いやすい場所であれば、これはかなり役立つことと思います。なにしろ、予定ルートを外れれば電子音とバイブレーションですぐに知らせてくれるので、地図読みに自信がない人には心強いはず。
Amazfit T-Rex 3では新たに等高線入りの詳しい地図を表示できるようになったので、現在地や予定ルートが視覚的にわかりやすくなっているのもうれしいポイント。このオフラインマップ機能を搭載したスマートウォッチは一般に価格が高く、安くても5万円ほど、高い物だと10万円以上もします。3万円台でオフラインマップを使えるものは他になく、そこも大きな魅力です。
個人的には、バッテリーが長持ちすることも大きなメリットだと感じています。T-Rexシリーズのバッテリー持ちには定評があり、終日GPSを動かしてもバッテリーは15%ほどしか減りませんでした。デフォルトの設定だともう少し減りが早いですが、私は「低精度」設定で使っています。自転車やランニングに比べて登山は移動スピードが遅いので、経験上、低精度でも十分な結果が得られます。
すなわち、4~5日の山行でも充電なしでいけるわけで、バッテリー残量を気にしなくていいというのは思った以上にノーストレスなものです。
スマートウォッチに興味はあるけど、イマイチ手が出ない…という初心者には特におすすめできる機種だと思うので、ぜひ試してみてください。きっと自分の登山が変わりますよ。
■軍用レベルの堅牢性
MIL-STD(アメリカ国防総省軍用規格)準拠。丈夫なステンレス製ベゼルを備え、衝撃に強い本体ケース。耐熱性70℃、耐寒性-35℃。
■100m防水
水深100mの水圧に耐え、フリーダイビングに使用も可能。
■大型で明るいディスプレイ
業界最大級の1.5インチディスプレイは、高解像度で見やすいAMOLED製。最大2000ニトの輝度があるため、炎天下でも見やすい。
■デュアルバンド6衛星捕捉GNSS
GPS(米)、グローナス(露)、ガリレオ(EU)、北斗(中国)に加え、みちびき(日本)、NavIC(インド)まで対応し、高精度な測定結果を実現。
■最大27日間持続するバッテリー
GPSを使用しない日常的な使い方では、最大27日間充電不要。GPSを使用しても、設定次第で最大180時間(7日半)動き続ける。
■ミニアプリで機能拡張
専用のミニアプリをインストールすることで、機能を拡張することができる。GoProコントロールアプリや、登山難易度計算機などのアプリも用意されている。
なお、今ならAmazfit T-Rex 3をAmazonでお得にゲットできるYAMAPユーザー限定キャンペーンを実施中です。
クーポンコード:
YAMAPT3PR
クーポン内容:
対象製品:Amazfit T-Rex3
割引率:5%
期間:2025年3月26日~4月30日まで
原稿:森山憲一
撮影:矢島慎一
協力:Zepp Health Corporation