「アルファ米」vs「米から炊飯」、登山で美味しいごはんはどっち?

登山のエネルギー源として最適の、美味しくて腹持ちの良い日本の主食「ごはん」。お湯を注ぐだけのアルファ米や、ポリ袋に入れて湯煎するだけのポリ袋炊飯、コッヘルやガスバーナーを使った炊飯などがあります。それぞれの特徴と山ごはんで楽しむためのポイントを、野外炊飯のワークショップを開催している登山ガイドのヤッホー!!さんとアウトドア料理研究家のshihoさんが解説。無洗米を使った、山で作りやすい絶品レシピ2品「干し芋の炊き込みごはん」と「簡単ツナカレー」もご紹介します。

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2021.01.06

ヤッホー‼さん&shiho

管理栄養士・山の料理研究家

INDEX

備蓄の定番【アルファ米】ならお湯を注ぐだけ!

shiho:まずはアルファ米(α化米)。これは備蓄の定番って感じがするね。お米の主成分のデンプンは加熱して糊化(α化)させる必要があるけど、アルファ米は糊化させたお米を急速乾燥したものなので、お湯を注ぐだけで食べることができる。とにかく手軽なのがいいよね。

ヤッホー!!さん:高度や風などの影響が少ないので、いつでも失敗なく同じ水準のものが食べられる。それに、水を入れても作れるから燃料の節約にもなって便利。厳しい環境下ではザックに忍ばせておくと心強いよ。まぁ、冬山で水を使うと待っている間に凍ってしまう可能性もあるし、体を温めるためにもお湯で作ったほう無難だけどね。ただ、正直に言うと、僕は味があまり好きじゃないなぁ。

冬はお湯で作る。待っている間に冷めないよう、保温バックなどに入れよう。写真はフードコジー(mont-bell)

shiho:最近ではいろいろな味のバリエーションも増えて美味しくなってきていると思うよ。中にはお湯を入れてから3分で完成するフリーズドライ製法の商品もあるから、カップラーメン並みに手軽だよね。

味のバリエーションも徐々に増えてきているので、今後もさらに期待が持てる!

ヤッホー!!さん:おぉ!これはいい感じだね。これなら山に持って行きたくなる。

shiho:ほかにもアルファ米は個々にスプーンが入っている商品も多いし、パックは器として使えるので衛生的だし、食器やカトラリーを汚す心配もないよね。

ヤッホー!!さん:登山に使うのであれば、重量や保存性は普通のお米を持っていくのと大差ないけど、水や燃料の節約になるし、標高の高い山でも手軽につくれるから、長期縦走に向いているんじゃないかな。

shiho:アルファ米で山ごはんを楽しむには、完成したものに市販のレトルトパウチを加えるなどの「ちょい足しアレンジ」をしたり、おかずに重点を置いて調理をするときに使ったりすれば、手間もかからず、使いやすいね。

コツなし簡単! 誰でも簡単に炊ける【ポリ袋炊飯】

shiho:この炊飯法をはじめて試したとき、まさに「目からウロコ」だったよ。ポリ袋に無洗米と水を入れて、湯煎するだけで、こんなに美味しく炊けちゃうんだって。

ポリ袋は耐熱性のものを使い、鍋にポリ袋が触れないよう、底にステンレス皿などを敷くとよい

ヤッホー!!さん:そうだよね。芯が残っていたり、べちゃっとしていたりといった悪いイメージを勝手に持っていたけど、全然違っていたね。ただ、茹で湯が必要だから、水の持ち運びのことを考えると山向きではないかな?って思うけど…。

shiho:そうかなぁ~。私は山ごはんでの可能性を感じているよ。山ごはんを楽しむことを目的にした低山トレッキングなら、多少の荷物が増えたって問題ないんじゃないかな。何より、おかずもポリ袋に入れて一緒に作ることができるから、どんどんアイデアが沸いてきて楽しい調理法だと思うよ。

ヤッホー!!さん:なるほど。考えてみると茹で湯は直接口に入らないんだから、湧き水や雪解け水などの現地調達した水でも使うことができるね。ただし、標高の高い山では沸点が低くなるから充分な加熱ができない可能性もあるね。

shiho:ポリ袋炊飯で山ごはんを楽しむなら、低山がおすすめ。おかずも一緒にポリ袋調理すれば手間もかからないし、調理器具も汚れない!煮詰まって味が変わったり、焦げたりすることがないから失敗が少ないので、意外と料理ビギナー向けの調理法かもしれないね!

コツさえつかめば、広がる【炊き込みごはん】の世界

shiho:コッヘルなどを使ってごはんを炊くのは難しいっていうイメージがあるけど、実際は慣れてしまうと簡単。最近ではメスティンブームで炊飯する人も多くなったよね。

ヤッホー!!さん:うん、これはとてもうれしいこと。僕はずっと野外炊飯のワークショップを開催していて、炊飯スキルはロープワークや読図、観天望気を学ぶのと同じくらい大切だと言い続けてきたからね。

shiho:これは防災にもつながるよね。コッヘルとガスストーブを使った炊飯スキルがあれば、わざわざ非常食を購入しておかなくても、災害時、家に常備している食材で美味しいごはんを食べることができるんだから知っておいて損はないよね。

ロープワークや炊飯などの登山で得たスキルは災害時でも役に立つだろう

ヤッホー!!さん:ただ、標高や気温、風といった外部の環境に影響されやすいので注意が必要。固形燃料を使ったいわゆる「自動炊飯」は山では通用しないので、ガスストーブを使うことにしっかり慣れてほしいな。

shiho:炊飯の失敗といえば「芯が残る」「柔らかすぎる」「焦げ付く」だと思うけど、これを防ぐコツは、山でも家でも同じだよね。

ヤッホー!!さん:うん、基本的には一緒。芯が残るというのは浸水時間が短い事が原因のほとんど。とくに気温の寒い日には浸水の時間を長くする必要がある。

目的地に到着する30分~1時間くらい前に、350mlが入るボトルに無洗米1合と水を入れ、ザックに入れて浸水しながら登れば、すぐに炊くことができる。ただし、激しく揺らすとお米が割れてしまう。ザックを揺らさずに歩くといった登山の歩行技術の基本も試される!

ヤッホー!!さん:炊きあがりがふっくらせずに、べちゃっとしてしまうのは蒸らし不足。炊き上がったら手拭に巻いて保温バッグに入れて10分程度蒸せば、ふっくらした仕上がりになる。

保温バックに入れてしっかり蓋をしておけば、蒸らした後も驚くほど熱々のまま

ヤッホー!!さん:コゲつくのは火力の調整に問題があるね。屋外では風や日差しの影響で、火を見ても火加減の調節はできないことが多い。蓋を開けて、フツフツしていれば弱火、グツグツしていれば中火、グラグラ沸いていれば強火など、中の状態を見て火加減を判断する必要があるんだ。蓋の開けやすさはコッヘル選びのポイントのひとつだよ。

炊飯には、穴の開いていない蓋が鍋の内側に収まる「文化鍋」タイプが適している

ヤッホー!!さん:山では沸点が低くなるから沸騰が早く、思っているよりも吹きこぼれが多くなるんだ。吹きこぼれてしまうと、水分が足りなくなって失敗につながる。そこでおすすめしたいのが「炊き込みごはん」なんだよ。

吹きこぼれの原因は、お米のデンプンが溶け出すことで、茹で湯に粘度が生まれて気泡が割れにくくなること。茹で湯に調味料を入れることで粘度が少なくなるから、炊き込みごはんは白米を炊くよりも吹きこぼれが少なく、失敗が少ないんだ。

shiho:……相変わらず、炊き込みごはんのことになると熱く語るね~(笑)

ヤッホー!!さん:炊き込みごはんはつくり方さえ覚えてしまえば、具材の組み合わせで無限のレパートリーが広がるんだ。僕のインスタグラムでは、いろいろな具材の組み合わせの炊き込みごはんを紹介しているからぜひ参考にしてほしいな(この記事の最後に僕の「炊き込みご飯365日チャレンジ」についてちょっとだけ紹介!)。

おすすめレシピ① 我が家の新定番!干し芋の炊き込みごはん

ではさっそく我が家のイチオシ! 干し芋の炊き込みご飯からご紹介します。
干し芋というとちょっぴり地味なイメージですが、お米と共に炊き込むことで、ねっとりした甘さにほっくり感がプラスされて主役級の美味しさに変身します。
お芋の上品な甘みに塩気が絶妙に合う子供から大人まで美味しい!と納得の逸品です。

*材料(1~2人分)
無洗米・・・1合
水・・・230ml
干し芋・・・100g
みりん・・・大さじ1
酒・・・大さじ1
塩・・・ふたつまみ
ごま塩・・・適量

保温バックのなかに、すべての食材・調理器具がシンデレラフィットするシステムが理想的だ!

*つくり方
【下準備】
・無洗米に水を入れて30分以上浸水させておく。
・干し芋は一口大にちぎっておく。

【1】鍋に米・水・みりん・酒・塩を入れたらひと混ぜして、平らにならしたら干し芋をのせる。
【2】蓋をして、中火~強火にかける。
沸騰するまではときどき蓋を開け、火力を確認することが焦げ付かせないコツ
【3】沸騰したら、弱火にして、蓋をしたまま10~13分程度加熱する。
ここでは中の温度を維持させるため、あまり蓋を開けないように
【4】蓋を開け、鍋を傾けて表面に水が出てこなければ、火を止めて10分蒸らす。
保温バックに入れ、蒸らしの間は絶対に蓋を開けないようにする
【5】底から優しく全体を混ぜ、ごま塩をかける。

Shiho:基本の炊き方は白米でも炊き込みご飯でも一緒です。先ほど説明した、浸水・加熱・蒸らしを守れば、大失敗!なんてことはほとんどありませんが、細かな火加減は経験を積んでいくうちに上達していくので、初めて炊飯にチャレンジする場合は、山に行く前に何度か家で炊いて練習してみるとよいでしょう。

ヤッホー!!さん:さつまいもの炊き込みごはんはよくあるけど、山で切るのは大変だよね。でも干し芋なら手でちぎれる。山にピッタリの炊き込みごはんだね。

おすすめレシピ② ルウとごはんを同時に調理! 簡単ツナカレー

Shiho:次はポリ袋を使った炊飯を紹介していきます。今回はただご飯を炊くだけでなく、アウトドアの定番、カレーも同時調理してしまおう!というレシピです!
大きなポイントは2つ!ポリ袋は必ず耐熱性のものを使用するということと、カレーの材料は火が通りやすいようにすべて薄切りにするということです。

*材料(1~2人分)
A
無洗米・・・1合
水・・・180ml
B
ツナ缶・・・1缶
お好みの野菜(じゃがいも・人参・タマネギなど)・・・合計100g
水・・・170ml
オイスターソース・・・小さじ1
カレールウ・・・2かけ(約40g)

*つくり方
【下準備】
・Aを耐熱性のポリ袋に入れ、口を縛り、30分以上浸水させておく。
・野菜は全て2~3ミリ位の薄切りにしておく。
・カレールウも刻んでおく。

ポリ袋の口を縛るときは手で空気を抜いてからねじり、袋の上部を縛るようにする。半真空状態になるのでムラなく短時間で加熱できる。また、加熱することでポリ袋の中で空気が膨張し、破裂することを防ぐことができる

【1】Bをポリ袋に入れて口を縛る。
コッヘルに皿を置き、その上にAとBをのせて、ポリ袋全体が浸るくらいまで水を注ぎ、中火にかける。湯煎するときは熱でポリ袋が破ける恐れがあるので、必ず底にお皿を敷くようにしてください。我が家では鍋の直径に合わせて100円ショップで購入したステンレスのお皿を使っています。
【2】沸騰してきたら弱火にして蓋をして20分加熱する。
ふつふつと軽く沸騰するくらいの火加減を維持すると良い
【3】火を消して、10分蒸らす。
【4】袋を開けて、ご飯をほぐし、カレーをしっかりかき混ぜたら盛り付ける。

Shiho:使用するポリ袋は耐熱温度90~110℃の高密度ポリエチレン素材のものを使用してください。作り方のポイントさえ押さえておけば、入れる具材次第でいろいろなアレンジが可能なので、ぜひチャレンジしてみてくださいね!

ヤッホー!!さん:隠し味に入れたオイスターソースのおかげで、短時間でもしっかりコクが感じられる美味しいカレーに仕上がったね。

shiho:今回は日本人の主食「ごはん」を山で上手に食べる方法を考えてみました。ほかほかの美味しいごはんを食べれば、元気に登れること間違いなしです!

ヤッホー!!さん:失敗しない一番の近道はたくさん練習すること。普段から、家でも炊飯して、いざという時に失敗しない炊飯スキルを身につけよう!

【おまけ】山ごはんレシピの宝庫、ヤッホー!!さんの「365日連続!山の炊き込みごはん投稿チャレンジ」

ヤッホー!!さん:今回のテーマである「ごはん」。その中でも僕のイチオシは、山で作る「炊き込みごはん」だって紹介したよね。じつは今、365日連続してインスタグラムに炊き込みごはん投稿するというチャレンジを始めて3か月経過したところなんだ。

すでにレシピは80越え。季節感や意外性などを考えながら日々のレシピを捻り出している

shiho:本当によく頑張ってるよね。そもそも、どうしてこのチャレンジを始めたの?

ヤッホー!!さん:一番の理由は、炊き込みごはんが好きだってこと。ずっと前から山で炊き込みごはんを作っていて、沢山レシピのストックがあったんだ。

それから、2011年の東日本大震災のあと、防災のための野外炊飯のワークショップをする機会が多くなって、缶詰や乾物といった日持ちする食材を使った山の炊き込みごはんは、参加してくれた人たちにすごく喜んでもらえたんだ。これをもっと多くの人に伝えたいという気持ちがあって、チャレンジすることにしたんだ。

もちろん一人ではこんなに沢山のレシピを考え出せないので、shihoさんにも手伝ってもらったり、子どもたちにも試食してもらったりして、アイデアを生み出しているよ。自分でもなかなかいいラインナップに仕上がっていると思う。登山中の炊飯に興味を持った人には、レシピのアイディア集としても使ってもらえると思うよ。

レシピや作り方も全て掲載している

炊き込みごはんの作り方を動画でも紹介。山ならではの調理のコツもお見逃しなく

ヤッホー!!さん:YAMAP MAGAZINEの読者の皆さんにもこのチャレンジをフォローしてもらえると嬉しいし、もしよかったら、「こんな材料を使ったレシピを考えて!」なども書き込んでくれるとなお嬉しいな。

ヤッホー!!さんのインスタグラムはこちら

shiho:ぜひ、炊き込みごはんチャレンジを応援してくださいね!

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ヤッホー‼さん&shiho

管理栄養士・山の料理研究家

ヤッホー‼さん&shiho

管理栄養士・山の料理研究家

登山ガイド・ヤッホー!!さんと、アウトドア料理研究家・shihoさんによる「山ごはん」ユニット。共に管理栄養士の資格を持ち、登山経験も豊富。各種メディアやイベントを通じ、山ごはんの楽しさを広めている。現在ヤッホー‼さんが「山の炊き込みごはん」365日連続投稿に挑戦中! https://www.instagram.com/ikiikitozan/