登山道具のお手入れ術【ザック編】汚れ・汗染み対策と長持ちさせる秘訣

登山で使うザック(バックパック)のメンテナンスのポイント「山行後のプチメンテ」と「汚れがひどいときの対処法」について、アウトドアショップ勤務の経験も合わせ持つ、登山ガイド・石川高明さんが詳しくレクチャー。プロが教える登山道具のお手入れ術、必見です。

2020.09.03

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

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背中から汗の臭いが…! 登山ザックの洗い方と登山ごとのお手入れ

登山靴は毎回使うものなので山から帰ってきたら必ずお手入れしよう、ということを以前この記事でお伝えしました。では、同じく毎回使うザック(バックパック)はどうすればよいのでしょうか?

1. 山行後に毎回やった方がいいこと(プチメンテ)
2. 汚れがひどいときにやること(しっかりメンテ)

この2つに分けてお伝えします。

山から帰ったら毎回やりたい、登山ザックの「プチメンテ」

まずは、すべての荷物を取り出します。スタッフバッグやビニール袋などをひっくり返して、着替えた服やゴミなどが入っていないかチェックしましょう。サイドポケットも同様に確認してください。これを心がけるだけで、食べかけの食品がザックの中で腐ってしまったり、濡れたギアやテントなどを乾かし忘れて傷めてしまう、ということがなくなります。

もし雨が降った場合は、レインカバーも出して干しておきましょう。専用のポケットはつい見落としがちなので、忘れないように気を付けてください。

このときに、ザックのジッパーがスムーズに開閉するかチェックしましょう。砂を噛んでいたら、取り除いてください。また、ショルダーハーネスの根本の縫い付け部分がほつれていないかチェックします。ひどくほつれていると千切れてしまう危険があるので、必要に応じて修理に出しましょう。

次に、ひどく汚れていないか外見をチェックします。特に、地面に置いているボトム部分は汚れやすい場所です。軽度な汚れであれば、固く絞った雑巾で拭き取る程度でOKです。ちょっとしつこい汚れは、洗剤を使ってブラシでこすって部分洗いしてください。

簡単に汚れを落としたら、ハンガーなどにかけて風通しのよい場所で陰干ししておきましょう。

泥や汗でしつこい汚れに効く、登山ザックの「しっかりメンテ」

軽い汚れの場合は簡単に拭う程度で結構ですが、泥だらけになったり、真夏に大汗をかいたときにはそうはいきません。汗をかいたまま放置しておくと、臭いの原因にもなります。たっぷり汗をかいたら、ザック自体を洗って清潔に保つことを心がけたいところ。しつこい泥汚れ、汗汚れは以下の手順でしっかりと洗ってあげましょう。

① まずは普段のお手入れと同様に中身を全部取り出し、泥などのひどく汚れた部分を雑巾やブラシで拭っておきます。

② ザックの全てのストラップを緩めていきます。雨蓋やヒップパッドなども外しておきましょう。メーカーによっては外れないものもあるので、決して無理に外さないように。

③ 大きなタライや風呂桶、もしくはお風呂の湯船に、全体が浸るくらいの水またはぬるま湯を注ぎます。そこにアウトドア用洗剤を規定量入れたら、ザックを浸しましょう。

④ ザックと外したパーツを優しく押し洗いします。しつこい汚れがあればブラシでこするなどして落としてください。洗い終わったら水でよくすすぎます。洗剤が残っていると傷みの原因になるので、何度もすすいで洗い流してください。

⑤ すすぎが終わったら、ザックをひっくり返して中に溜まった水を捨てます。背面やウエストベルトのパッド部分は水を吸っているので、しっかり押して水を出しましょう。ある程度水が落ちきるまではお風呂場などの濡れてもいい場所に逆さ向きで干しておいて、水が滴らなくなったらバスタオルで水滴を拭ってください。

⑥ 最後は風通しのよい場所で陰干しを。完全に乾いたらしっかりメンテは終了ですが、このタイミングで撥水スプレーなどをかけておくと汚れがつきにくくなります。

ザックを洗濯機・乾燥機にかけちゃダメ?

ザックを洗濯機で洗ったり乾燥機にかけるのはいいのか、悪いのか? 結論として、やめておいた方がよいでしょう。15〜20リットル程度の小さなものであればネットに入れて洗うこともできますが、多くのザックはネットに入らない大きさです。そのまま洗濯機に入れて回してしまうと、洗濯機が故障する原因になったり、ザック本体を傷めてしまう場合もあります。小さなサイズのものでも、手で優しく押し洗いしてあげるのがベストです。

また、荷物を入れる口の部分など、一部高熱に弱いパーツも存在します。乾燥機で熱が加わると傷んでしまうことがあるので、あくまで自然乾燥がおすすめです。

登山用ザック、正しいお手入れで長く使おう

登山に使う道具はとても高価ですが、その分頑丈さと機能を持ち合わせています。流行り廃りに乗って次々と買い換えるのではなく、しっかりとお手入れして、長く使うことを心がけましょう。愛着の湧いたお気に入りの道具を持って、もっと登山を楽しんでくださいね。

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※この記事は、「YAMAP CHANNEL」にて配信した講座の内容を文章・画像で読みやすく編集したものです。

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

石川 高明

信州登山案内人・登山ガイド

長野県在住。1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス ツェルマットで2年間トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、2008年長野県原村に移住。各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、 地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実 ...(続きを読む

長野県在住。1967年東京生まれ。学生時代から登山に親しむ。最初に登った山が八ヶ岳。大手電機メーカーを2000年に退職し、世界一周登山の旅に出発。途上のスイス ツェルマットで2年間トレッキングガイドを勤める。帰国後、八ヶ岳の麓で子育てをすべく、2008年長野県原村に移住。各国の山岳地域を旅した体験や、スイスで観光業に携わった経験を活かし、 地元地域や観光活性化のお手伝いをしながら、各種イベントを実施してい る。
原村観光連盟 副会長/八ヶ岳観光圏 観光地域作りマネージャー
公認スポーツ指導者 山岳指導員/長野県信州登山案内人
(株)八ヶ岳登山企画 代表取締役/登山歴30年/スノーシュー歴20年