大分県六郷満山|親子修験体験! 父と息子の摩訶不思議大冒険

大分県国東半島六郷満山。天台密教寺院が数多く点在するこの地では、険しい山中に分け入り行を積む「峰入り」を始めとした修行が盛んに行われてきました。その文化は今も残り、各寺院では一般の方でも様々な修行を体験することができます。今回はYAMAP MAGAZINE編集部員がこの六郷満山で行われた「親子修験体験」に小4男子の息子と挑戦! その様子をレポートします。

2021.02.09

Toba Atsushi

YAMAP STAFF

INDEX

いざ! 父と息子で未知の旅路へ

薄暗い部屋の中に響き渡る太鼓と読経の声。大きな護摩壇の中で踊るように燃え盛る炎が、息子の顔を照らしています。ここは、大分県国東半島にある六郷満山。荒々しい山々とそこに点在する天台密教寺院群、そしてその特異な文化からかつては”魔所”とも称された秘境の地…。


大分県国東半島にある六郷満山。福岡市内からは高速と一般道を経由して2時間と少し

今を遡ること数ヶ月前。秋の足音が聞こえてきた頃、仕事の兼ね合いで「六郷満山の親子修験体験に参加してみないか?」とのお誘いが舞い込みました。1泊2日で六郷満山を巡り、護摩焚きや座禅、精進料理、峰入り登山などを体験する内容とのこと。

「座禅? 精進料理? 峰入り登山?」う〜ん。堪え性のない小4男子に果たして耐えられるのか…。座禅では警策(きょうさく)で叩かれまくり、初めての精進料理では緊張から食べ物をこぼし、峰入り登山では弱音を吐く…。そんな姿がふと頭をよぎりつつも、それもまた一興。だからこそ体験する価値があるのだと思い至り、そのお誘いを受けることにしました。

おにぎりを頬張る我が息子。とある初秋の光景。まだまだ頼りない小さな子どもだと思っていたのですが…

なにより、10歳を迎えた息子と男ふたり、未知の冒険へと繰り出すことに惹かれました。友達関係や学校の宿題、だんだんと忙しくなっている彼と一緒に遊べるのもきっとあと少し。であれば、ここで息子との友情を深めておくのも悪くないと思ったのです。

ゲームや漫画はもちろん持っていかない約束。これから繰り広げられる未知の冒険に心ときめかせ、私たちは福岡市近郊から車で約2時間、大分県国東半島を目指しました。

旅の始まりは昭和の趣きが残るレトロな街並み

今回の旅には、私たちを含めて2組の親子が参加するとのこと。まずは、他の参加者とガイドさんとの合流のため、待ち合わせ場所である豊後高田市街地「昭和ロマン蔵」へと向かいます。

この施設は、昭和の趣きを大切にした街づくりを推進している豊後高田市の象徴ともいえる場所。施設内には当時の面影を今に伝える建築物や三輪ミゼットなどのレトロカー、懐かしいおもちゃなどが展示されていました。
(上)三輪ミゼットが珍しいらしく中を物色…。(下)初めて触れるだるま落としに興味津々。試行錯誤しながら遊び方を自分で見つけていきます。昔のおもちゃは「遊び方を考える」ことも遊びの一部でした

集合時刻は午前10時。待ち合わせ場所となる施設の一角で私たちを出迎えてくれたのは六郷満山でガイドに従事する後藤裕之さんです。マスクを付けていますが、温かな笑顔がマスク越しにも伝わってきます。
中央オレンジ色の服を着ているのが今回の旅の道先案内人をしてくださる後藤さん。豊後高田市でエッチング彫刻工房を営むかたわら、六郷満山一帯の地域振興やガイド業に従事しています

今回の体験の参加者は私たちを含めて計4名。左のふたりは熊本県南阿蘇から参加の本田さん親子

挨拶や予定の説明後、後藤さんは六郷満山の歴史について語ってくれました。

なんでも、六郷満山というのはいわゆる”山”の名称ではないとのこと。大分県国東半島にある6つの郷、そしてこれらの郷に点在する寺院群の総称としての仏教用語「満山」。このふたつの要素を合わせて「六郷満山」という名前になったと言います。また、その大半は天台宗の寺院で、荒々しい山中に分け入り修行を積む「峰入り」も盛んに行われてきたのだそう。

大人には非常に興味深い内容だったのですが、子供には少し難しかったのでしょう。後藤さんは、所在なげにしている息子の目線にまで腰をかがめ「難しい歴史なんかは、調べれば後でいくらでもわかる。せっかく来たんだからこの土地の魅力を感じればいいんだよ」と言ってくれました。さらに山中に点在する「鬼滅の刃」の聖地についても話は及びます。

子どもの緊張をほぐそうとする配慮をありがたく感じました。その笑顔に息子も安心したよう。はにかみながらうなずいています。さあ、いよいよ修行の旅のスタートです!

荘厳な護摩焚きの炎に魅了される

まず訪れたのは、六郷満山霊場第25番札所にも数えられる文殊仙寺。ここでは護摩焚きを身近で体験できるとのこと。山口弘俊副住職が、私たちを出迎えてくれました。
副住職の山口弘俊さん。穏やかな笑顔と語り口に、話を聞いているこちらまで優しい気持ちになります

文殊仙寺は知恵を司る「文殊菩薩」を本尊として祀っています。「3人よれば文殊の知恵」のことわざでも知られる仏様。その文殊菩薩に届けるべく願いを書いた護摩木を燃やしてもらうのが、今回の護摩焚き体験です。

まずはひとり1本づつ護摩木が手渡されます。願いを書いたものを山口副住職に渡し、焚いてもらうとのことです。
散々頭を抱えて考えた末、筆を取った息子。書いた願いは”合格祈願”。「何に合格したいの?」という質問に答えありませんでした。一体何に合格したいのか…

案内された堂内は薄暗くしんと静まり返っていて、何やら神聖な雰囲気。部屋の中央には護摩壇が作られ、大きな窯が置かれています。私たちは護摩壇そばの椅子に案内されました。

山口副住職が静かに座り、窯に火が入れられます。手元にある様々な供物と聖なる水が窯に入れられ、読経の声は迫力を増し、そして願いが書かれた護摩木がくべられたところで、火の大きさは天井に届くほどに! 副住職が叩く太鼓の音に合わせて舞い上がる火の粉が私たちの近くまで飛んできます。その迫力は、いつも触れ合っている穏やかな火とは全く別物です。

護摩木の爆ぜる音、読経の声、太鼓の音、そして目前で踊る炎。その荘厳な迫力に息子も何かを感じたのでしょう。瞬きも忘れて飽きることなくその揺らめきに見入っていました。
今までに見たこともない荒々しい炎の揺らめきに目を逸らすことができなくなってしまった息子

護摩焚きが終わった後、感想を尋ねてみると…「やってみたい」とのこと。しかし護摩壇は聖なる場所で、修行を終えた僧侶でないと立ち入れないらしく、やむなく諦めたようです。「どうしてもやってみたいならお坊さんになるしかないよ」という一言には無反応でした(汗)。

食の大切さを知る 精進料理

護摩焚きの後は昼食の時間ですが、今回はこれも修行のひとつ。大きな座敷に案内され、精進料理をいただきます。まずは食べること、すなわち命をいただくということについて、短い講話です。

お米の一粒も残さないようにすること、好き嫌いをせず感謝をして食べること、当たり前のことなのですが、その当たり前がきちんとできているのか、息子のみならず私も胸を張って「できている」とは言い難い…。改めて食の大切さに気づくきっかけとなりました。

正座に耐え兼ねたのか、脚をムズムズさせる息子を横目に「足を崩してもいいよ」と声をかけようかとも思いつつ「自分で決めさせよう」とぐっと我慢。

食前観という言葉を唱え、恵みに感謝してから料理をいただきます。精進料理なので、もちろん動物性の素材は使われていません。野菜の天ぷらに根菜と湯葉の煮物、酢の物、胡麻豆腐、精進うなぎ(大和芋や大豆、ゴボウなどでうなぎに似せて作られた精進料理)などの食事が御膳の上に並びます。
(上)今回のお料理。丁寧に作られた優しい味です。(下)割り箸の袋に書かれた「食前観」。感謝して好き嫌いせず食べることの大切さを伝えます

口にしてびっくり「どれも美味しい!」。派手な味があるわけではないのですが、ひとつひとつにしっかりと手がかけられており、お腹だけなく心まで満たされるような心地です。それは息子も同じだったのでしょう。やや緊張した面持ちながら、いつもよりじっくりと味わうように食べる姿が印象的でした。

最後は料理が入っていた椀にお茶を入れ、食材のかけらも残さないように椀の中をタクワンで洗っていきます。そのお茶とタクアンも口に運んで食事は終了。見事なまでに美しく空っぽになった椀を前に息子も満足げです。感想を聞くと「だしが効いていて美味しかった」とのこと。いつの間にかボキャブラリーも増えてきて、いっぱしな感想を言うようになっていました。
ごちそうさまでした。ちなみに案の定、足が痺れていたらしく立つことができなかった様子。頑張ったな! 息子よ

1日に3度もある食事の時間。だからこそもっと大切にいただくべきだと親子共々、神妙な気持ちになり箸を置きます。最後はみんな揃って「ごちそうさまでした」。

シンプルながら奥深い 鐘突きの妙を知る

昼食を終えた私たちが向かったのは両子寺。六郷満山の中では山岳修行の根本道場とされ、江戸期には隆盛を極めた古刹です。季節はちょうど紅葉の頃。仁王像に守られた山門の向こうには紅の絨毯が続き、まるで美しい絵画のよう。
錦秋に染まる境内。広くて起伏に富むので散策するだけでも楽しそうです

ここでは鐘突きを体験させてもらえるそうです。まずは、寺田豪淳法嗣に鐘の突き方を教えていただきます。「叩きつけるのではなく、心を穏やかにスゥーっと引いた撞木(しゅもく)が自然に戻る力を利用して突くことが大切です」と語る寺田法嗣。お手本を見せてもらいましたが、遠く澄んだ音が周囲に響き渡ります。所作も自然で美しい。
穏やかに流れるような所作で鐘を突く寺田法嗣。日々の修行の賜物でしょうか。動きが洗練されています

「ただ鐘をつけばいいだけでしょう」とちょっと甘くみていましたが、これが簡単に見えてなかなか難しい。大きな音を出そうとするとどうしても叩きつけるような姿勢になってしまうし、かといって自然体で突こうとするとすると大きな音が出ないのです…。試行錯誤の末、親子2人で力を合わせてようやく納得できる音を響かせることができました。鐘突きひとつとっても実に奥深いものです。
親子で力を合わせて「ゴーン」

鐘突きを済ました一行が続いて向かったのは奥の院本殿。両子寺の最奥部、岩に張り付くように建てられた江戸期の建築物です。不老長寿と子授けに霊験があるとのこと。

お参りを済ますと、ガイドの後藤さんが私たちを建物横の洞窟に案内してくれました。看板には「奥の院岩屋洞窟」との文字が。洞窟内から漏れ出す冷気とその薄暗い様相にちょっとたじろぐ息子。暗いところはニガテなのです。
ひんやりとした空気が漏れ出す入口。果たして中には…

意を決して入ってみると、すぐに蝋燭の炎が揺らめく開けた場所に出ました。ちょっと安心な様子。千手観音や三宝荒神などの小さな石仏が燈色の光に照らされています。その脇に湧いている水は飲めば不老長寿になる霊水だと後藤さんが教えてくれました。コロナウイルス感染拡大予防のため残念ながら飲むことはできませんでしたが、その御利益にあやかりたいと水を自分のおでこにチョンとつけて手を合わせる息子。

洞窟に入り、揺らめく炎に照らされた仏像を眺めながら聖なる水に触れるという体験は、幼い目にはさながら映画のような探検に思えたのかもしれません。

平安時代後期創建の古刹に隠された宝探し!?

初日最後に訪れたのは国宝富貴寺大堂。その創建は今を遡ること900年前、平安時代後期の建築物です。ここでは河野順祐副住職に、900年間守り継がれてきた大堂の歴史について説明してもらいます。

小4男子にとっては鬼門ともいえる「静かに話を聞く」という行為。父の心には一抹の不安が…。
大堂前に建てられた柱。安置されている阿弥陀如来像と紐で繋がっており、この柱に触れることはすなわち阿弥陀如来に触れたことになるのだとか

河野副住職曰く、もともと富貴寺大堂は、宇佐神宮の大宮司である宇佐氏が一族のために建立した御堂だとのこと。創建当時は室内に極彩色の壁画があしらわれ、その光景は極楽浄土さながらだったそうです。しかし一族没落後はその庇護を失い、集落の御堂として地域の力によって細々と守られてきたとのこと。だからこそ行き届いた修繕が行われることなく、創建当時の姿を今に残すことになったそうです。

また、第二次世界大戦時には御堂を爆弾が襲います。その爆風によって扉が破壊され、風雨が室内に吹き込んだ結果、かろうじて残っていた当時の壁画もその姿を失ってしまったというのです。

ふ〜む、実に興味深い…。

で、息子はというと…意外なことに、きちんと座って話を聞いているではありませんか! 修行の成果が見えてきた…とは言わないまでも、いつもとは違う彼の一面を垣間見た気がしました。

ちなみに、説明の後は河野副住職案内の元、かろうじて残った壁画の痕跡を息子と一緒に探したのですが、彼にとっては宝探しに似た遊びだったようで結構楽しめている様子。「あそこに人の形が見えるよ」「あの形は花かな?」と一通り宝探しに興じていました。
日光による壁画の損傷を防ぐため、通常は暗く閉じられた室内。懐中電灯の明かりを頼りに壁画を見ていきます

壁画や仏像に興味が出てきたのか、熱心に観察しています

初日最後の楽しみは、海沿いに広がるキャンプフィールド

宿泊場所はこれまでのお寺巡りとは打って変わって、美しい砂浜が広がる国東半島北部のキャンプフィールド「長崎鼻ビーチリゾート」。到着時にはすでに日も落ち、辺りは闇に包まれていましたが、空には美しい星、海からは穏やかな波の音が。

そして何より息子の琴線に触れたのは、トレーラーハウス。長崎鼻ビーチリゾートは通常のキャンプフィールドとは別に、トレーラーハウスに宿泊することもできるのです。

濃密な1日を終え、疲労困憊かと思ったのですが、そこは疲れ知らずの小4男子。1日だけの仮住まいとはいえ「ベッドの場所はここで、荷物はここに収納して。グラスと食器はここにあるよ!」と、トレーラーハウス内の探索に夢中です。初めてのトレーラーハウス体験に嬉しそうな様子をみていると、こちらまで笑顔になります。
ベッド上部にサンルーフを発見!さっそく開けて外を覗きます。さ、寒い…

ひとしきり、トレーラーハウス内のチェックが完了した後は夕食の時間。ビーチサイドのバーベキュー棟には、国東半島の海の幸をはじめとした豪華な食材が並び、今や遅しと私たちの着席を待っていました。
山海の恵みをガブリ!

食事は参加者全員でいただきます。食べることに夢中かと思いきや、肉の焼け具合をチェックしたり、料理を皿に取り分けたりと、甲斐甲斐しく動き回る息子の姿にちょっと驚き。いつもの家族旅行とは違い、父と息子、そしてたまたま旅先で一緒になった参加者とスタッフの面々。新しい旅の形は、日頃見慣れた彼の違った一面を見せてくれます。
1日の旅を終え、すっかり打ち解けた一行。焚き火を囲み、今日の話に花が咲きます

さあ、明日はいよいよこの旅の目玉! 座禅体験と峰入り登山体験。未だ覚めやらぬ今日の興奮と明日への期待を胸に海辺の夜は更けていったのでした。

姿勢を正し穏やかに。座禅の心に触れる

2日目の朝、長崎鼻ビーチリゾートでの朝食を済ませた私たちが向かったのは、天台宗寺院が多数を占める六郷満山には珍しい曹洞宗の寺院、泉福寺。禅の教えを大切にする曹洞宗らしく、ここでは座禅体験を行うことができるとのことです。
履き物を揃えると心も揃う。親子共々心に刻みます

指導してくれるのは住職の最勝孝道さん。座禅の作法や心得について話をしてもらった後、座禅道場へ向かいます。
額には「調身、調息、調心」の文字

「座禅の素晴らしさ、奥深さは言葉では伝わらない。座った人にしか分からないんです。ここでの体験を一度限りで終わらせず、家に帰った後にも座禅に取り組み、静かに自分と向き合うことで、豊かな心を持つことができるんですよ」と最勝住職。

日頃落ち着きがない我が子が果たして座禅に耐えられるのか? 警策(座禅の際に修行者の肩を打つ棒)で叩かれまくるのではないか? でも記事としてはそれも面白いかも…。父としては不安と期待が胸の中で渦巻き、ありがたい話も思わず上の空。

しかし、そんな不安をよそに息子は淡々と教えられた通りに作法を行い、座禅の準備を整えていきます。時間は初挑戦ということもありちょっと短めの20分です。
足の組み方を丁寧に指導。優しい語り口で教えてくださいます。息子も真剣!

そしていよいよ座禅開始。足を組み、印を結び真っ白な壁に向かって目を薄く開き、頭に浮かび上がってくる様々な考えを消していきます。とはいえ、最初からうまくはできません。私はというと、仕事の段取りや明日の予定、息子はきちんと座れているのか? などなど様々な思いが浮かんでは消え、浮かんでは消え…。

ダメだと分かっていながらも、途中薄目を開けて息子の方を覗き見してしまいます。足の痺れに耐えかねて頓挫しているのではないか…。

が、意外なことにしっかりと座っている様子。日頃、ことあるごとに注意している背筋もピンと伸び、一丁前に形になっているではないですか! 我が子とは見紛うばかりのその凛々しい姿にしばし見入ってしまいます。
いつものダラけた姿勢とは打って変わって…。なかなかやるではないか、息子よ

それに比べて父は…。足が痺れ、頭に去来する雑念の数々は一向に止む気配がありません。う〜ん…。

……と思っていたのですが、おそらく半分ほどの時間が過ぎた頃でしょうか。不思議と頭をよぎる思いが段々と薄く、少なくなり、何も考えていない時間が増えてきたように感じます。これは不思議な感覚。目が開いているのにも関わらず目前の白い壁もいつの間にか姿を消しているような、見えているのに何も見ていないような。そして、だんだんと時間の感覚が曖昧になっていきます(ような気がします…)。

次に我に帰ったのは、終わりの鐘が鳴らされた時。おそらくこの不思議な感覚が続いたのはほんの数分程度だったのでしょう。ですが、心なしかすっきりとした気がします。なんとも摩訶不思議。

「座禅の素晴らしさ、奥深さは言葉では伝わらない。座った人にしか分からない」まさしくその通り! 果たして、息子がどの程度集中できていたのかは分かりません。でも、スッと背筋を伸ばし、静かに座り続けた涼やかな息子の姿に、頼もしさを感じました。
座禅の最後には「何事も経験」と警策でピシリッ! 喝を入れてもらいます

旅のフィナーレ 峰入り体験で出会う大迫力の岩登り

そして、いよいよ旅はフィナーレにして、文字通り山場となる峰入り登山へ! 泉福寺の一角を借りて白装束に着替え、修験者モードにチェンジです。
(上)さすが中学生! 本田さんちのみひろちゃんはしっかりと自分で準備。(下)足首から膝にかけて巻く脚絆の装着がなかなか難しい。親子揃って悪戦苦闘

車で登山口がある岩戸寺まで移動し、いよいよ入山! 今回登るルートは、岩戸寺から不動山山頂を経て千燈寺に至る道のり。おおよそ3.5kmです。

まずは、ガイドの後藤さんリードのもと、木々の間を縫うように細い道を登っていきます。アップダウンは多少あるものの、まだまだ楽勝。どんぐりや木々を観察しながら軽快に歩を進めます。岩戸寺越休憩小屋に出たところで、昼食タイム。
(上)杉木立の中、細い道を登っていきます。(下)ボリュームたっぷりの手作り弁当。口いっぱいに頬張ります。ハムスター状態…

お腹も満たされ、満面の笑顔。午後の行程に向け、気合を入れ直して休憩終了! ここまでは「不動山の標高は352m。まあ、子供が一緒だからね。大人なら楽勝でしょ…」と父はこの峰入りを甘く見ていたのですが…ことの顛末は後程。

ここからしばらくは落ち葉が降り積もった静かな森の中を順調に歩きます。みんな笑顔。息子は小学生男子あるあるで、気に入った棒を見つけてご満悦の様子です。

でも、余裕と思いきや、徐々に斜面は急になり…。

だんだん崖っぽくなってきたと思っていたら…。

鎖が出てきて…。

気がつけば凄いところを歩いていました! 息子は軽快に登りますが、父…恥ずかしながらちょっと怯えています(汗)。

そう、この岩場こそが今回の旅最大の山場、 不動山山頂に祀られている五辻不動尊に至る峰入りの道なのです。その眺望たるや、左手に海を、右手に山々を望むまさしく360度の絶景!一同その自然美にしばし時を忘れて見入ってしまいました。
五辻不動尊の御堂にて。海と山々が織りなす絶景にしばし見惚れる4人。後藤さん曰くこの眺望こそ、険しい山道をここまで歩いた「ご褒美」なのだとか

結果、時間を大幅に超過することに…。でもこの経験こそまさにプライスレス。この旅に参加して本当に良かったと思える一瞬でした。いやー、本当に美しい。この景色は、きっと父と息子2人だけの一生の宝物になるはずです。
今回の登山ルート。YAMAPの該当地図はこちらから

今回の冒険を振り返って

下山直前、美しいイチョウの葉でリーフシャワーを試みる子どもたち

こうして幕を閉じた父と息子の大冒険。1泊2日と短い時間ながら、濃密な旅を経験することができました。

日々成長を重ねている息子。でも、毎日同じ環境で顔を合わせていると、意外とその成長を見逃してしまいがちです。今回の旅を通して本当に良かったと思うのは、彼の新しい一面を垣間見れたこと。何もできない子どもだと思っていたのに、いつの間にか着実に成長を重ね、頼り甲斐のある男に育っていました。

もうしばらく子育ては続きますが、この先のふたりの関係は新しいステージに入るのだと、改めて実感。こまごまと口を出さずとも自分の判断でしっかりと行動できるようになってきた息子。これから先は今までよりも少し遠くで見守りつつ、彼の行動、そして思いを信頼していきたいと思います。

六郷満山親子修験体験。非日常の旅だからこそ、子どもの新しい一面を発見することができる旅。あなたも挑戦してみてはいかがでしょうか?


六郷満山の歴史文化を知る旅のエッセイ「神と仏と鬼の郷 六郷満山を巡る旅」

六郷満山の寺院、磨崖仏、文化伝統etc.その奥深さをまとめたエッセイは下記ボタンからから。六郷満山でのみ使用可能なYAMAP×Japan Audio Journeyの独自サービス「YAMAP 音声ガイド機能」もご紹介しています。

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Toba Atsushi

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YAMAP MAGAZINE 編集部メンバー。文系登山をこよなく愛しており、山の話をしていてもついつい歴史の話や神話の話にトリップしがち。登山・歴史神話・キャンプが主な守備範囲です。

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