和歌山県田辺市|熊野古道を巡り、里山の生活に触れる女子ひとり旅

よみがえりの聖地として平安時代から人々の信仰を集めてきた和歌山県紀伊半島の熊野古道。全長数百kmに及ぶ古道沿いには、歴史ある寺社や美しい自然、渾々と湧き出る温泉などが点在し、旅人の心と体を癒してくれます。今回この地を旅したのは、熊野古道を愛してやまない女性が集まる社会人サークル「熊野古道女子部」の副部長を務める、タノシゴトプロデューサー&編集者の佐藤句実さん。実に6度目の訪問になるという熊野古道歩きの達人が、ひとり旅を通して見出した「熊野の新たな魅力」とは?

2021.02.25

佐藤 句実

タノシゴトプロデューサー&編集者

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熊野古道と不思議な縁で結ばれてはや3年。美しい自然と豊かな文化に囲まれた古道に魅了され、いつの間にか「熊野古道女子部」の副部長になっていた私。

今回の「女子ひとり旅」の話を聞いたのも、熊野古道女子部のつながりからです。「熊野古道の魅力はもちろんのこと、古道を取り巻く里山の産業を体験できる旅」と聞いて、これはおもしろそう、と6度目の熊野行きを決めたのでした。

里山を舞台とした、狩猟、農業、林業の体験って、どんなことができるのだろうか? わくわくに胸膨らませ東京から一路、熊野古道中辺路の玄関口である和歌山県田辺市を目指します。


【1日目】はじめての狩猟体験

羽田空港を出発した飛行機が降り立ったのは、南紀白浜空港。今回の旅をコーディネートしてくれる現地スタッフさんの車に乗り込み、早速旅が始まります。

最初に訪れるのは、農作物に害を及ぼす鳥獣の狩猟現場。

鳥獣害…、東京生まれ東京育ちの私には、耳慣れない言葉。もちろん、「乱開発によって山が荒らされた結果、食べ物がなくなり、里に降りてきた動物たちが田畑を荒らす」そんな一般常識的な知識はありましたが…。

ゆるやかに流れる川の横を通って、咲き誇る梅の間をしばらく走ります。

山があって、空が広くて。いつもなら「あぁ、紀伊半島はのどかでいいねぇ」なんて、何も考えずに口にしているのですが、これから行くのは鳥獣害に日々悩まされる人たちのリアルな生活の場。そこでの体験と思ったら、なんだか身が引き締まる思いです。

空港からおよそ車で30分。ついたのは、田辺市上芳養(かみはや)の「日向屋」さん。地域の農作物に害を及ぼす獣を自分たちの手で退治しよう! と立ち上がった、地域の若手農家のチームです。

彼らの活動は、獣を狩って地域の農業を守るだけに留まらず、その命を活用して人々の交流を生み出すというもの。具体的に言うと、次の3つです。

①畑を守るために狩る、②狩った獣を解体して食肉にする、③おいしく調理して食す。

以前は、狩った獣は穴を掘って埋めていたとか。「害獣とはいえ、猪も鹿も生き物。農作物を守るためとはいえ、次第に殺生することに罪悪感をおぼえていった…」と話してくれたのは、日向屋代表の岡本和宣さん。「いただいた命は“無駄にしたくない”」そんな思いから、ジビエ処理施設を誘致して、上記の①~③の流れを作っていったそうです。

お話のあとは、早速「①狩る」の現場に連れて行ってもらいました。けもの道に何箇所にも罠を仕掛けているので、猪や鹿がかかっているかもしれない、と聞きちょっとドキドキ。罠にかかった野生動物を身近で見られるなんて、初めての経験ですから。

軽自動車がぎりぎり通れる山道を登ること10分。罠を仕掛けた場所を見て回ります。

が、しかし…、今回は残念ながら罠には何もかかっていませんでした。

獣がかかっているときは、ジビエ解体のプロを呼んで、その場で最初の処理をするのだとか。生き物の命を消す現場を見る…。残酷といえばそうなのですが、普段食卓にのぼる豚肉も牛肉も鶏肉も、その命をいただいて食べているもの。しかし、それらの肉がどうやって食卓にやってきているのか、私たちは想像すらしていないのが実情です。だからこそ、今回の旅では命が消える現場を敢えて見てみたかったのです。

狩猟のあとは「②解体する」のジビエ処理施設へ。今回はほかの地域で捕られた猪の解体を見学することに。

吊るされた猪は、すでに皮を剥がれ四肢の先を処理済み。処理施設の外側から見学していたのですが、ジビエ解体のプロ、日向屋の湯川俊之さんの包丁さばきの美しいこと。なでるように包丁を動かして次々と肉をさばいていきます。

中で実際に解体を体験できるということで、エプロンに長靴姿になって作業室に入ります。思ったほどニオイはありません。

「猪とか鹿とか、ジビエと言われている肉はもっとケモノ臭いんだと思ってました」という私に、「さばく前に個体差を見極めているのと血抜きをスピーディーに行うので、ここでは臭みが出ることはほとんどないんですよ」と湯川さん。

目の前に大きな肉の塊が置かれ、包丁を渡されます。「新鮮です!」と肉から聞こえてくるような美しい赤色。年間600頭もの猪や鹿をさばく、ジビエ解体のプロに包丁の入れ方を教わりながら、骨をはずしていきます。塊肉を調理することはあっても、こんな大きな骨のある肉を触るのは初めてで、大興奮でした。日向屋のみなさん、ありがとうございました!

害獣が、高級なジビエ料理に生まれ変わる!

解体の次に訪れたのは同じ上芳養(かみはや)にある、フレンチ・ビストロの「キャラバンサライ」。昔の梅蔵を改装して作られた、洒落たたたずまいのレストラン。ここで、「③食す」の体験です。

オーナーシェフの更井亮介さんは、日向屋の良き協力者。長野でのジビエ料理修行の経験を活かし、日向屋とともにジビエ普及に取り組んでいます。今日のメインは、先程触らせてもらった猪ではなく、鹿。メニューを見ると、前菜からデザートまで、すべてに地元の食材が使われているとのこと。これは楽しみ!

この日のメニューは「梅香るフォアグラ・勝浦産ビンチョウマグロのマリネ・地ビールのガレットとイチゴのクリーム・田辺市産鹿肉のロティ 赤ワインソース・自家製パン・地元産柑橘と地ビールのパウンドケーキ・コーヒー(紅茶)」

地元のボイジャービールにも惹かれたけれど、今日はまだまだ体験が続くので、飲み物は特産のみかんジュースに。味が濃いのにくどくなく、ごくごく飲めます。うっかり一気飲みしそうなところに、前菜2品。イケメンの給仕さんに目を奪われつつ、いただきます。ひとつひとつの素材の味がしっかりしていて、とてもおいしい。

そしてメインのジビエ。実は、ジビエはクセのあるものだという先入観があったのですが…。色は美しく、食感もいい。ちょっと独特な味ではありますが、鹿肉本来の旨味が感じられ、素直においしかったのです。

すごいなぁ、農家にとって害獣だった鹿が、レストランでは良質な素材に変わる。これが日向屋さんが掲げている「農業しながら狩猟して食べて畑を守る」地域循環なのだと感じました。

さらに言えば、このおいしさはジビエ解体のプロとすばらしい料理人の手があってこそ! 地域内の人々が手を取り合い、循環を作り上げているその様子に感動しつつ完食。更井さん、ごちそうさまでした!

熊野の山を守るプロジェクト。10年後、どんぐりをひろいに

ジビエでお腹を満たしたあと、今度は森へ移動です。案内してくれたのは、育林業・森林コンサルタントの中川雅也さん。「木を切らない林業」の会社をやっていると聞き、びっくり。林業って木を切らないで成り立つの? そんな疑問をもちながら、今回の体験「植樹」のために鍬をかついで山への道を進みます。

歩きながら、なぜ植樹をするのかを中川さんに聞いたところ、「木は切ったら、植えないと生えてこない。お金になるのは木を切り出して売ることなんですが、そればかりやっていたら、山に木がなくなっちゃうでしょ。そういう山が和歌山には多い。次の世代に山を残すためにも、植樹に特化して、健全な山を作っていくのがうちの仕事なんです」。それを聞いて、「木を切らない林業」という意味がわかり、大きくうなずく私。

「今日はどんぐりを植えます。猪や鹿が里の畑を荒らすのは、山に食べ物がないからなんです。いまの山はスギ・ヒノキばかりで木の実が少ない。だったら、実がなる木を植えてあげればいいんです。10年もすれば、たくさんのどんぐりが実をつけますよ」。そうか、動物との共存も考えた植樹なのか。

もう少し話を聞いてみると、林業にも獣の被害があり(木々の新芽を食べられてしまうそう)、木を植える場所は防護柵の中。ただ、たとえ防護柵の中にあっても、木から落ちたどんぐりは斜面を転がって柵を越えるため、動物たちが食べるのに問題はないのだそうです。

今回植えるどんぐりの苗は3年もの。「この大きさで3年?」と疑うほど小さい。これが、10年後には3m、5mの大きな木になっているのかと思うと、なんか感慨深いなぁ。

鍬で穴を掘って、苗を次々に植えていきます。大きくなあれ、大きくなあれと声かけしながら、植えてみました。10年後、私が植えた苗はどんな実をつけているんだろう?  また和歌山に来なければならない理由がひとつ増えました。中川さん、ありがとうございました!

個性的な虫食いの木で、工作体験

山を降りたあとは、街中に移動して、インテリアショップ「リ・バラック」さんへ。ここでは熊野の森で育った木を使って、木工体験を行います。教えてくれるのは、このお店の4代目・榎本将明さん。熊野の山を守るために、虫食いのスギやヒノキ(あかね材)を使って、家具を作っているのだそうです。

虫食いや節の多い木というのは、家作りや家具作りでも嫌厭され、特に使い道がない木材なんだそう。しかし「虫食いの木というのは見た目がちょっと悪いだけで、強度や性能的には何の問題もなく使えるものなんですよ」と榎本さん。

木の虫食いと聞くと、シロアリ被害のように木がボロボロになったものを思い浮かべてしまいますが、そうではないんですね。今回の木工体験も、あちこちに虫食いや節穴がある木を使います。

のこぎりとやすりで作ったのは、小さい鍋敷き。スギの木が思っていた以上にやわらかく、のこぎりでサクサク切れたのにも驚きました。虫食いの部分が、形になるとステキに見えるのが不思議です。榎本さん、ありがとうございました!


【2日目】柑橘の国でみかん狩り

2日目のスタートは農業体験。和歌山・紀州の名産といえば、梅とみかん。今日の体験は、みかんの収穫から。

みかん畑に連れて行ってくれたのは、上秋津の「紀州とんと農園」3代目の田中達郎さん。想像以上に険しい坂道を車で登って行きます。みかんの木は水捌けと陽当たりがよい場所でしか育たないので、このような斜面に植えられているのだそうです。

このあたりでは、年中なにかしらの柑橘が実っているそうで、どんな種類があるのか田中さんに聞いてみると、「ポンカン、デコポン、清見、はっさく、バレンシアオレンジ、せとか、温州みかん、極早生みかん…」。

なんでも、年間を通して80種類ほどの柑橘類が栽培されているそうです!

今、収穫できるのはデコポンとポンカン。「好きに穫っていいよ」と言われたのでまずはデコポンから。実だけを穫るのでなく、枝ごと摘むのがいいんだとか。さらに、ぼこっと上に出ているデコがしっかりしている実がおいしいと聞き、立派なデコを探しながら収穫。続いて、オレンジ色が鮮やかなポンカンも収穫していきます。

柑橘類は大好きなので、穫りながら食べ、食べながら穫るという、とても大人とは思えない収穫体験。

柑橘ならいくつでも食べられると思っていたけれど、大きいデコポンはひとつ食べただけで、かなりお腹いっぱいに。みかん狩りを満喫しました。田中さん、おいしゅうございました!

なんか甘くておいしくて、うれしすぎて、このポーズ

みかんのあとは、梅染め体験へ

デコポンとポンカンの香りに包まれつつ、次に向かったのは「秋津野ガルテン」。ここは、昔の小学校の木造校舎を活かした交流施設で、とってもステキな雰囲気の場所です。

ここでは、さまざまなワークショップが行われているのですが、今回はその中から染め物体験をチョイス。

いわゆる草木染めで、なんと梅の枝で染めるとのこと。私はまったく知らなかったのですが、梅の枝は昔から染料としてよく使われていたそう。花を愛でて、実を食べ、枝も使えるとは、梅すばらしい!

まずは白いストールに模様付けするために、輪ゴムで縛ったり、布の一部を結んだり。それを、梅の枝からとった赤ワインのような染液の入った鍋に投入。グツグツ煮ること20分。その後、色落ち防止の液を加えてさらに煮込みます。

水洗いをして、輪ゴムを外していくと…。

円をイメージして模様を作ったのに、すべてが四角。まぁそれでもくっきり模様がでているので、上出来でしょう。これを干せば、完成です! できあがりは、しっとり渋めのオレンジ色。旅先で形に残るものを作れると、思い出がずっと手元にあるような気がしていいですね。春になったら使いたいと思います。

熊野古道Nightで、古道の魅力を知る

夕方からは、紀伊田辺駅の目の前にある、カフェ&ワークスペース「タナベエンプラス」にて「熊野古道Night」なるイベントに参加です。

講師は、熊野古道の観光活性化を担う組織「田辺市熊野ツーリズムビューロー」でプロモーション事業部長を務めるカナダ出身のブラッド・トウルさん。日本語がペラペラなので、安心して聞けます。

今まで何度も古道を歩いていますが、改まった話や、講座を聞いたりはしてこなかった私。歩く前に古道の情報をインプットできるって、とってもいい。明日からの古道巡りを10倍楽しめる! といっても過言ではない、お話を聞くことができました。


【3日目】1日で熊野三山をぐるりと巡る

3日目は、ユネスコの世界遺産にも登録されている、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)へ。

熊野古道女子部で、けっこうな距離を歩いてヘトヘトになってたどりついた記憶がありますが、今回はスケジュールの関係から車で一気に行けることに。熊野三山を1日で巡る、神社好きには、この上なくうれしい計画です!

熊野那智大社

まずは、熊野那智大社別宮飛瀧神社(ひろうじんじゃ)へ。落差133m、日本一とも言われる那智の大滝を眺め、しばしその美しい姿に癒されます。参拝したあと、目に入ったのが巨大なおみくじ。この場所には2回も来たことがあるのに、全く気づきませんでした。もちろん引いてみることに。結果は…第一番・大吉。「旅行 行く先利あり」。いい感じです!

別宮の次に向かったのは、熊野那智大社。以前は463段もの階段を登って行ったのですが、今回は車で向かいます。

標高約500メートルに位置する熊野那智大社の手前にあるのが、青岸渡寺(せいがんとじ・観音信仰の霊場。西国三十三所一番札所)。こちらも世界遺産の中のひとつで、歴史を感じさせるお寺です。

熊野那智大社に入ると、色鮮やかな朱色の社殿が目に飛び込んできます。ご祭神は「熊野夫須美大神」(くまのふすみのおおかみ)。境内には、樹齢約850年の御神木の樟(くすのき)が。この御神木、願いをしたためた護摩木を持ってくぐると願いが叶うそう。「願望成就・良縁祈願」ほか、あれこれ書きまして、もちろんくぐって参りました。叶いますように!

熊野速玉大社と神倉神社

次に訪れたのは、新宮市の熊野速玉大社。熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)と熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が主祭神。境内には、樹齢千年の梛(なぎ)の木が。

何でもこの梛の木の葉は、かつて熊野詣の道中安全のお守りとされていたものだそう。そのせいもあってか、木の周囲には優しい雰囲気が漂います。歴代天皇の参詣の記録を記した石碑もありました。教科書で見たことのある名前が並んでいて、熊野詣の歴史の深さを感じます。

続いては、熊野速玉大社から約500mのところにある神倉神社へ。ここは熊野三山の神様、熊野大神が一番最初に降臨したと伝えられる場所で、聖地熊野の中でも屈指のパワースポットです。鳥居をくぐったところから、「えっ、ここ登っていくの? 私登れるの?」という、急勾配の石段が…。

おっかなびっくりストックを持って登っていると、おそらく近所の方と思われるおじいちゃまが軽やかにお散歩でもしているように、私を追い越して行きます。す、すごい。

15分ぐらいで頂上へ。鳥居をくぐると、御神体の巨岩「ゴトビキ岩」がドーンと目前に鎮座されています。何度きても、神秘的な場所です。

熊野本宮大社と大斎原

新宮市をあとにして、向かうは全国に4,700社以上ある熊野神社の総本宮、熊野本宮大社。主祭神は、家都美御子大神(けつみみこのおおかみ・素戔嗚命と同一神)。檜皮葺(ひわだぶき)屋根の社殿が並ぶ境内は、いつ訪れても静寂で清浄な空気が流れていて、とても気持ちのいい場所。再び来られたことに感謝して、祈りをささげました。

神社巡りの最後は、熊野本宮大社から川に向かって徒歩5分ほどの、熊野本宮大社旧社地の大斎原(おおゆのはら)へ。ここは知る人ぞ知るパワースポット。日本一の大きさを誇る鳥居(高さ33.9m)は圧巻です。


【4日目】いよいよの熊野古道歩き

4日目はこの旅の山場、熊野古道を歩きます。今まで何度も歩いてきましたが、今日歩く「小辺路」は初めて。真言宗の開祖としても知られる空海さまが開いた高野山と、熊野本宮大社を結ぶ道です。今回は、八木尾バス停から約6時間、十津川温泉まで歩きます。

YAMAPの地図はこちら

しかし、昨年からコロナの影響でリモートワークにもなり、 超運動不足の私。すごい高低差の地図を見て、歩けるのだろうか? とだいぶ不安を感じていました…。とはいえ、ここまできたら覚悟を決めるしかありません。YAMAPアプリを起動させて、古道歩きスタートです。

いやはや、不安的中です。最近では1日平均300歩しか歩かないという日もあり、3kgも重くなった体。驚くほど体力が落ちていて、足があがらない。なんとか、果無峠(はてなしとうげ)の頂上へたどりつくことができました。

すでに足は棒に、疲れて頭もぼーっ。そんな姿を見てか、山歩きに慣れているスタッフさんが、おもむろにリュックからポットを出して、コーヒーを入れてくれました。寒い山の中での一杯、沁みます。あったかい、ありがたい。

あとは、降りるだけ。すでに体はピキピキ状態なので、「降りるだけ、降りるだけ」と呪文のように自分に言い聞かせて、果無集落を目指します。

最後の最後は、おっかない吊橋を渡ってゴール。YAMAPアプリを見ると、5時間17分。当初の目標は何とかクリア。お疲れさまでした。


【5日目】やっと呼んでもらえた玉置神社

旅の最終日は、奈良県吉野郡十津川村の玉置神社へ。この場所は「呼ばれないと行けない場所」として有名で、期が熟さないと何をしても辿り着けないのだそうです。私も何年も来たいと思っていたのに、実は初めて。ようやく来ることができました。

前日は曇り空だったのに、今日は気持ちのいい青空。本殿に参拝したあとは、裏手にある巨木へ。樹齢3,000年の神代杉からは、圧倒的に強い迫力を感じました。一方その手前にたたずむ夫婦杉は、やわらかな雰囲気。ここでも良縁祈願を長々としてみました。祈り届きますように。

続いて行ったのは、玉石社。筋肉痛の体にムチ打ち、山道を登っていくと、柵の中に3本の大木に囲まれた丸っぽい黒い石が。その名が示す通り、この石が御神体なのです。何でも、玉置神社の起源となったのが、この玉石社なんだとか。こちらにもしっかりお参りして、玉置神社をあとにしたのでした。

最終日の昼食。山伏が打つ蕎麦を味わう

旅のしめくくりは、熊野古道中辺路・伏拝王子のそばにある「山伏そば拝庵(おがみあん)」さんへ。実は以前から気になっていたお店です。

法螺貝の音に出迎えられて、お店の中へ。一番人気の「山伏そば」は、今まで食べたことのないタイプのお蕎麦でした。驚くことにつゆが大根おろしの汁。それに自家製の味噌をとかして食べるというもの。うん、おいしい。あっという間に完食。ごちそうさまでした。


旅のおわりに

実は、この6回目の和歌山訪問に際し気がついたことがひとつ。それは、いつも熊野古道を歩いているだけで(それだけでも十分楽しいんですけどね)、古道の周囲に広がる里山のことを、ほとんど知らなかったということ。知ろうともしなかったということ。

東京から飛行機で和歌山にやってきて、車で熊野古道の出発点まで。そこから歩いて、温泉に入って、また歩いて。最終日に車で空港まで行って、東京へ帰る。途中、神社に行ったり、お土産屋さんに寄ったりはするけれど、「地域」というものに目を向けることは、ほぼなかったということに気がついてハッとさせられました。

目的地へまっしぐら、の旅ももちろんいいと思うのですが、旅の楽しみは目的地の周りに広がる“地域”、そしてそこで暮らす“人々”との触れ合いにもあるのだと感じました。地元のいろいろな方たちとの出会いがあり、交流ができた、うまみが凝縮された4泊5日。味わいつくしました。

ありがとう熊野古道、また来ます!


熊野古道女子部の活動はこちらから

YouTube
https://youtube.com/channel/UCSk-JeeCwIT9zQkxTwkGVmA

公式Webサイト
https://www.kiilife.jp/agara/kumanogirl/

佐藤 句実

タノシゴトプロデューサー&編集者

佐藤 句実

タノシゴトプロデューサー&編集者

編集者&タノシゴトプロデューサーとして、女性が元気に、笑顔になれる本を編んだり、つながりの場を作ったりしてます。今と目に見えない不思議世界と、美人とかっこいい人とステキな人が好き。