スマートウォッチは今や「手首にまいたコンピューター」。スマホの通知や音楽操作はもちろん、登山道ナビに心拍数・心電図・血中酸素モニタリングまで。そんな万能ツールが登山者の間にも急速に普及しています。
とはいえ、ハイエンドモデルは5万〜10万円超が当たり前。そこで注目したいのが、3万円台にもかかわらず高い性能を詰め込んだ「HUAWEI WATCH FIT 4 Pro」です。今回の記事では、5/27に発表されたばかりの同モデルを山で徹底検証。日常生活での便利な点もご紹介していますので、スマートウォッチが初めての方も必見です!
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2025.05.27
Jun Kumayama
WRITER
ここ数年、山でスマートウォッチをよく見かけるようになりました。
運動や体調の記録、スマホの通知確認や通話、音楽操作や道案内など、日常生活において何かと便利なスマートウォッチですが、登山でも活用する人が増えているのです。
最近では、アウトドアに求められる「高度・気圧・コンパス」機能や「防水防塵性能」を備えた製品も数多く発売されていますが、登山での利用を想定したモデルでは、現在地や登山ルートの確認ができるものも。
「ルート外れ」や「心拍数の異常上昇」を感知してアラートを出してくれるほか、下山後には自分が歩いた記録を、YAMAPを始めとした登山アプリに取り込める製品もラインナップされています。
見た目は腕時計ながら、もはやスマートウォッチは手首にまいたコンピューター。四半世紀ほど前、ザックに大きなGPSロガーをぶら下げて山登りしていた筆者からすれば隔世の感があります。今となっては「おはようからおやすみまで」に留まらず、就寝時も含めて文字通り四六時中スマートウォッチが手放せないほど。
一方でガラケーやスマホが登場したときと同じく、スマートウォッチに懐疑的な方がまだまだ多いのも事実です。「そもそもメリットがわからない」「バッテリーが持たなさそう」「価格が高い」といった声を多く聞きます。
YAMAPユーザーもバッテリー性能が気になる模様(N=3,822 調査期間:2025/4/26〜4/30 YAMAPユーザーを対象とした「登山とスマートウォッチに関するアンケート」より)
というわけで、あらためてスマートウォッチで何ができるのか? 1990年代から現在にいたるまで、さまざまなスマートウォッチを使ってきた筆者が解説いたします。
スマートウォッチがあれば、音楽の再生や着信確認もスマホを取り出さず、手軽に操作可能
初期のスマートウォッチは「リストコンピューター」と呼ばれており、「スケジュール表」「アドレス帳」「計算機」「TO DOリスト」「メモ帳」などを腕時計型の機体に集約したものでした。
その後、ガラケー連携の時代を迎え、スマートウォッチは、電話やメールの着信を通知するコンパニオン的存在へと移り変わります。しかし、この時代のスマートウォッチは「知るだけ」。メール文面もSMSのような、ごく短いものしか確認することができませんでした。
その利便性が大幅に高まったのが、スマホ登場以降です。
電話やメール、SNSの通知、アプリからのアラートなど、スマホで表示される通知の確認や通話をスマートウォッチでも対応できるようになりました。
通知が多すぎると感じる場合は、アプリ単位やスケジュールに応じた調節も可。事実、筆者は不必要な通知をオフにして大事な連絡だけ受け取れるよう設定しています。
スマホのカレンダーアプリと連携してスケジュールの通知もしてくれる
いわば「腕時計サイズに小型化されたスマホ」とも言えるスマートウォッチ。バッグの中に入れたスマホを取り出すまでもなく、音楽アプリを操作したり、各種通知を受け取ったり、地図アプリでナビゲーションしたり、さまざまな機能を享受できる。
この身軽さは外出時、とりわけランニングや登山のようなアクティビティ中や、セキュリティに不安がある海外旅行のようなシーンで役立ちます。
しかしながら、ここまでの機能はぶっちゃけ「スマホでもできること」(あればあったで便利だけど、なければないでどうにかなる)でもあります。
ならばどうしてスマートウォッチのユーザーが増えているのか? その大きな要因が健康管理機能の充実です。
最新機種には心拍数、血中酸素レベル、手首皮膚温、心電図、睡眠コンディションなど、ユーザーの体調をモニタリングする機能が備わっているものも
そう、スマートウォッチはもはや「生体モニター」と呼ぶべき進化を遂げているのです。
多くのスマホでは、歩数や運動情報などを計測できますが、常時、身につけられるスマートウォッチによってさらに細かいデータが取得できるようになりました。
加えて、皮膚に接する各種センサーや電極が心拍数、血中酸素レベル、手首皮膚温、心電図、睡眠コンディションといった健康管理にまつわるデータを収集、そのスコアを通知してくれます。
そりゃ、健康に不安を抱える中高年には響くわけです(筆者にも響きました)。
いつまでもイキイキと健康で、元気に登山を楽しみたい。そのためには日ごろの健康管理はもちろん、登山時の急な体調変化を察知する機能も大事。それを可能にするのが最新型のスマートウォッチなのです。
最新のスマートウォッチは、一通りのスマホ連携や健康管理機能は備えていて当たり前。加えて登山を安心して楽しみたいとなると、特に重要なのが正確な現在地を割り出す「高性能GPS」と「登山ルート表示機能」「バッテリー性能」、さらに「ディスプレイの視認性」です。
ここからは、その4性能について解説していきます。
山中においては、GPSをしっかりキャッチして正確な現在地を表示することが安全につながる
廉価なスマートウォッチにもGPSアンテナを搭載しているものがありますが、安全登山のためには性能に妥協すべきではありません。複数の測位衛星システムの信号を用い、正確な現在地を割り出せるアンテナを搭載したモデルを選びたいところです。
ただし、現在地を特定できるだけでは登山道のナビゲーションはできません。位置情報にくわえ、地図や登山予定のルート情報(GPXファイル)をスマートウォッチ内に保持することで、ナビゲーションが可能となります。つまり、登山ナビアプリからダウンロードしたGPXファイルを取り込む機能も登山用スマートウォッチにはマスト条件です(YAMAPではプレミアム会員のみ、GPXファイルのダウンロードが可能)。
さらに、留意したいのがバッテリー性能。位置情報を受信し、ナビゲーションを行うには、大きな電力が必要となります。場合によっては1日の行動時間が8時間以上にも及ぶ登山だけにバッテリー性能は死活問題。日常生活でも、気がついたら電池が切れて使いものにならないといった事態は避けたいものです。
また、視認性も気にすべき点。ディスプレイが小さすぎたり、輝度が足りないモデルだと、屋外での活動時にストレスになってしまいます。地図がしっかり見えて、晴天時にも一目で表示内容が確認できるものを選ぶべきでしょう。
上記の性能が登山用スマートウォッチには必須だと筆者は考えています。
5/27発表の「HUAWEI WATCH FIT 4 Pro」。写真は立体的なウェーブ型構造で手首にフィットする、フルオロエラストマーベルトのブラックモデル
とはいえ、気になるのがお値段。基本的なスペックにくわえて「高精度GPS」と「長寿命バッテリー」、「登山道ナビゲーション機能」、「視認性に優れたディスプレイ」を搭載した、登山にも耐えうる「防塵防水」のタフネスなスマートウォッチとなると、値段も張りがち。なかなか気軽に購入できるものではありません。
スマートウォッチは気になるし登山で使ってみたいけど、どれもお高い…。そんな方にオススメしたいのがファーウェイが2025年5月27日に発表した「HUAWEI WATCH FIT 4 Pro(以下FIT 4 Pro)」です。
ファーウェイはあまり聞き慣れないブランドかもしれませんが、実は日本におけるスマートウォッチのシェア第2位を占めている、知る人ぞ知る存在(IDC統計「2024年通年 国内ウェアラブルデバイス市場実績値」より)。
同社は1987年に創業した、情報通信技術(ICT)およびスマートデバイスのグローバルメーカーです。iOSやAndroidと連携できるスマートウォッチをカジュアルモデルからハイエンドまで幅広く展開。最近は、日本全国のゴルフコースを網羅したアプリが好評で、ゴルフ愛好家から高い支持を集めています。
HUAWEI WATCH FIT 4 Proのグリーンモデル。毛羽立ちが少なく通気性の良い撥水ナイロンベルトが付属する
そんなファーウェイの「FIT 4 Pro」は、5種の衛星システムの信号をしっかりキャッチする「ヒマワリ型アンテナ デュアルバンドGPS」を用いた高精度なGPS機能を備え、あらかじめGPXデータを取り込むことで登山道ナビゲーションも可能。
さらに最長10日間稼働のロングライフバッテリーを備え(登山道ナビゲーション使用時には最長18時間稼働)、ディスプレイは、ファーウェイ史上最高の輝度3,000ニト1.82インチの高解像度AMOLEDモデル。
さらにディスプレイ表面には高品質のサファイアガラス、ボディには航空機にも使われている丈夫なアルミ合金、ベゼルにはチタン合金を採用し、耐久性も抜群。
まさに登山にぴったりのスマートウォッチ。それでいてお値段なんと37,180円〜39,380円(税込)と、お求めやすいプライシングなのです。
もちろん防水防塵性能も抜かりなく、水深40mの潜水にも使える「5ATMに加えてダイビングアクセサリ規格EN13319」。生体モニタリング用のセンサー類も、心拍、血中酸素レベル、手首皮膚温、心電図、睡眠時無呼吸検出など、ハイエンドモデルのそれを網羅。とりわけ、日本のプログラム医療機器承認(承認番号:30600BZI00035000)を取得した心電図(ECG)が計測できるスマートウォッチは、国内では3社からしか販売されていません(2025年5月現在)。
求めやすい価格帯ながら、ハイエンドモデルと遜色ない機能を備えた「FIT 4 Pro」。そのぶん、本体は大きかろう…と思いきや、厚さ9.3mmと一般的な腕時計と遜色なく、レインウェアやジャケットの袖に干渉しにくいスリムさ。ウォッチ本体の重さも30.4gなのです。
これは魅力的なコスパ! 本当にスペック通りに機能するのか、少し不安になる程です。
というわけで、みなさんにオススメする前に実際に「FIT 4 Pro」を山に連れ出し、その機能と使い心地を検証してまいりました。
アタックするのは筆者が生活している沖縄県北部、やんばるエリアにある嘉津宇岳(かつうだけ)。標高わずか452mながら、周辺の安和岳、三角山、古巣岳をぐるっと周回するとコースタイム4時間40分の立派なトレイルと化します。
侵食が進んでギザギザに尖った石灰岩中心の山頂付近も、なかなかにデンジャラスです。長袖・長ズボンのほかグローブは必携。
そして、このコースを今回の検証に選んだ最大の理由は、道がわかりにくいこと。嘉津宇岳通過以降は登山者も少なく、道迷いしやすい「南国の迷宮!」とも言えるトレイルなのです。
登山前の下準備としてはYAMAPアプリで作成した登山計画をGPXファイル形式で書き出し、スマホアプリ「HUAWEI Health」でスマートウォッチに読み込ませておくこと。くわえてオフラインでも等高線と地図が表示できるよう同アプリで沖縄県の地図データもスマートウォッチ本体に取り込んでおきます。
文章で説明するとやや難解に感じるかもしれませんが、操作はいたってシンプル。一度マスターすればノーストレスです。
「FIT 4 Pro」で登山道ナビゲーションを利用するには、YAMAPであらかじめルート(GPXファイル)をダウンロードし、スマートウォッチ本体に取り込んでおく必要がある。プレミアム会員のみ、GPXファイルのダウンロードが可能
あとは登山口でスマートウォッチのメニューから「ワークアウト▶︎登山」を選択し、先ほどのルートを選んでスタートするだけ。
1.82インチのAMOLED高解像度カラーディスプレイには、「現在地・ルート・軌跡」が大きく表示されるほか、画面をスワイプすることで「高度・経過時間」「心拍数・距離」などさまざまな情報にアクセスすることができます。
それにしても、明るくて見やすい。さすがディスプレイ輝度3,000ニトは優秀です。筆者が持っているお値段3倍のスマートウォッチよりも明るいとは…。
3,000ニトの明るいディスプレイで薄暗いジャングルはもちろん、炎天下でも視認性が高い
ともあれ、「FIT 4 Pro」単体で登山道のナビゲーションとログ取得ができるので、緊急時に備えスマートフォンのバッテリーを温存しておける安心感もあります。
それにしても久しぶりの山行。登山口から連続する登りで一気に心拍数があがり、軽い貧血状態に陥ってしまいました。そんな時に役立つのが心拍センサー。心拍数のゾーンが「ウォームアップ」「脂肪燃焼」「有酸素」「無酸素」「極限」と分けられており、常時どのゾーンにいるのか表示されるため、極端に心拍数があがりすぎないようペース配分の目安にもできます。
登山道ナビゲーション中には、定期的に心拍数をレポート。あらかじめ推奨心拍数を設定できるので、無理なペースを自重できる
また、ちょっと不調かも…という時には、血中酸素レベルや心電図を測定して体調に異常がないか確認することも可能。ふだんは元気でも登山中に突然体調を崩す中高年は少なくありませんからね。
体調に不安を感じたら心拍センサーや心電図で体調チェック。写真は心電図測定の様子
ほどなく嘉津宇岳山頂にたどり着いたのですが、あいにくのガスで真っ白け。しまいには雨がパラついてくる始末でしたがそこは圧巻の防水性能、この程度の雨にはビクともしません。
水深40mにも耐える防水性能なので、登山中の雨も気にする必要なし
しかしながら、ここから長く険しいのが嘉津宇岳周回ルート。足元がツルツルと滑るなか低山ながらもアップダウンの激しいタフな道のりを進みます。中盤は雲が消え、名護の町並みと東シナ海が見渡せたのがせめてものご褒美でしょうか。いや、絶景。
晴天なら名護市街とやんばるの密林と青い海が望める。下山後は海に直行だな
開けた山頂以外は、亜熱帯特有の密林が広がるやんばるの森。湿度も高く汗だくです。途中あやふやになるトレイルもあり、うっかりすると道迷いの可能性も。
しかし「FIT 4 Pro」には道迷いをアラートしてくれる機能があります。あえて正規のルートから離れてみたところ、100mほどでズレを警告してくれました。
音とバイブでルート外れを警告してくれる
そんなこんなでコースタイム4時間40分のところ、撮影だ、休憩だ、道迷い実験だといろいろ試したせいもあり6時間40分でゴール。気になるバッテリー消費はなんと37%。GPSでログを取りながら7時間弱稼働してバッテリー残量63%は頼もしいかぎり。
汗と泥でぐしゃぐしゃの筆者は、その足で近くのビーチまでクルマを走らせ海へとダイブ。「FIT 4 Pro」は水深40mまでのフリーダイビングにも使えるほどの防水性能ゆえ、水遊び程度ならへっちゃらです。
汗や泥で汚れても丸洗いできるのが衛生的で嬉しいポイント。水に浸けた後は、メニュー画面から「水分を排出」ボタンを押すとゴボっと内部に詰まった水を出してくれます。
山頂から眺めていた海にドボン。海水だってへっちゃらのタフネスさ
帰宅後のお楽しみは、YAMAPへの活動日記投稿ですが、「FIT 4 Pro」で記録した山行データをスマホアプリ上からGPXファイル形式(※)で書き出し、それをパソコン(ブラウザ)のYAMAPサイトで読み込む必要があります。やや手間かもしれませんが、慣れてしまえばそれほど気になりません。
※「FIT 4 Pro」ではGPX形式の他、TCXファイル、KMLファイルでも書き出しが可能。
薄さ9.3mm、本体重量30.4gは快適な装着感
以上、3万円台ながらハイエンドモデルに匹敵する機能とスペックを備えた「HUAWEI WATCH FIT 4 Pro」の山行テストでした。
なかでも筆者が好印象を抱いたのは、そのライトウェイトな装着感です。
昨今、スマホの普及で腕時計をしない人が増えているなか、重要になってくるのは違和感のない装着感だと思っています。ずっしり重く分厚い腕時計なんて、それだけで疲れますし、ましてや登山時や就寝時に付けっぱなしでいることはできません。
いくら高機能・多機能でも生活の邪魔をするようではスマートではありません。もはや肌着並みに四六時中身につけている存在のスマートウォッチ。最新のスペックをいかにコンパクトにまとめるかが、メーカーの腕の見せ所です。
その点、「FIT 4 Pro」は日常から山登りまで違和感なく溶け込む装着感で、健康管理機能、タフネス性能、高性能のバッテリー、見やすいディスプレイまで非常に高いスペックを兼ね備えています。
それでいて、しつこいようですがお値段3万円台! スマートウォッチデビューの候補に加えて損はない1本かと存じます。
取材・文:jun kumayama
撮影:タカハシアキラ/Picser