2021年3月17日、YAMAPのYouTube チャンネルで、登山者向けの新たな動画が配信されました。番組名は、「登山初心者のお悩み解決! 山のはじめて相談室 powered by GORE-TEX Brand」。
そう、ウェアやシューズなどで登山者にお馴染みのゴアテックスブランドが、山の知識やノウハウ面でも登山者をサポートしたい! と、私たちYAMAPと一緒にYouTube番組を配信したのです。「登山計画の立て方は?」、「山で熊にあったらどうする?」といった質問に、登山家の花谷泰広さん、登山ガイドの岩田京子さん、それに登山YouTuberのかほさんが答えた登山者必見のライブ動画の様子をリポートします。
2021.03.29
YAMAP MAGAZINE 編集部
本編は、28:45から始まります。
YouTube番組「登山初心者のお悩み解決! 山のはじめて相談室 powered by GORE-TEX Brand」にご登場いただいたのは、豪華すぎる3人のゲスト。
登山家の花谷泰広さん、登山ガイドの岩田京子さん、それに登山YouTuberのかほさんです。
いつもはテレビやWebでしか見ることができない面々に直接質問をすることができるとあって、リアルタイム視聴者が2,000人近く集まる盛況ぶり。
インスタグラムで募集した事前の質問はもとより、リアルタイムで書き込むことができるYouTubeのチャット欄にも、数多くのコメント・質問が寄せられました。
ライブの流れは、視聴者から寄せられた質問に対して、ゲストの3人が回答していくと言うもの。初心者の方はもとより、ある程度の登山経験がある方でも、実は知っているようで知らなかった情報が満載、充実の配信となりました。
それでは、さっそくライブ動画の様子をサマリーでお伝えします!
インスタグラムでの事前募集で、一番多かったこの質問からトークはスタート。
登山計画とは、どの山にどういうルートでどれくらいの時間で行くか、という山登りの基本となるプランニングのこと。でも、最初はどの山を選べば良いかも分からないし、自分の体力とその山が合っているかもわからない…。ということで、初心者から多かった質問です。
どうやって山を選べばいい? という質問に答えたのは、まずかほさんから。 チャット欄では、かほさんのYouTubeを観て行き先の参考にしている、というコメントもたくさんいただきました。
かほさん
「私も最初はどういう山に行けばいいのかわからなくて。でも今は、登る山に迷った時、雑誌やインスタグラムなんかで情報収集していますね。景色の綺麗な山などを見つけて覚えておくようにしているんです。
”この時期はこの山にこの花を見にいきたいな”と言った具合に、植物の開花時期なんかも気にしながら、大体2ヶ月くらい先までの山の計画を立てています。
計画を立てる時には、雑誌やYAMAPの活動日記を見ることが多いですね。特にルートが載っているものを参考にしたり、他にもネットを探せば、いろんな方が登山の情報をあげてくれているので、そういった情報もチェックして、ひとつのリソースだけに頼らないように注意していますね」
主観が入る文章よりも写真や映像など客観的で最新の情報を確認したほうがいい、と言うのは花谷さん。
花谷さん
「以前は、山の情報源と言えば、山の雑誌、ガイドブックくらいしかなかったですよね。でも今はインターネットがあって。たとえばYAMAPの活動日記を見て、甲斐駒だったら、甲斐駒ヶ岳っていうのを調べると記録がいっぱい出てくるんですよね。
で、いろんな人の投稿があっておもしろいなと思う一方で、その文章の中には主観が入っていて、思ったよりも簡単だったとか、大変だったとか、それぞれの感じ方があるんですよ。それはその人の意見なので僕はその通りだなと思うんです。
でも、そういった情報を参考にするときに一番見てもらいたいなと思うのは、写真や映像ですね。なぜかと言えば、客観的なんです。
例えば、鎖場だったり、難所と呼ばれているようなところが、人によって、すごく簡単に感じたり、難しく感じたりするんです。でもYAMAPの写真やYouTubeの映像があったら、まさにその場の写真・映像が見れるわけじゃないですか。そしたら、自分で判断できますよね。ああ、これならいけるなとか。ここはちょっと怖いなとか。
まずは、客観性のある情報を、できるだけたくさん集めることですね。インターネットは、昨日登った山の最新情報が出てますが、例えばガイドブックだと何年か前の情報で、今はぜんぜん違ったりすることもあるじゃないですか。
だから、いろんなところから情報を手に入れるほうがいいと思うんです。それぞれの得意なところを見抜いて、自分なりに信頼できる情報を集めたらいいんじゃないかなー、と思います」
次の質問は、「道具、なに買えばいいの? 問題」。
登山道具はウェアも道具も、種類がありすぎて、値段もまちまち。登山初心者にとっては悩みがちなポイントです。
そもそも登山道具って何が必要かわからない、という初心者からの質問に岩田さんが答えてくれました。
岩田さん
「よく山の道具で最初に揃えるものの説明で、“3種の神器”というキーワードが出てくるんです。自分の足、体にあったシューズとザック、そして防水性と透湿性の高いレインウェア。これが、登山道具の3種の神器ですね。
低山であれば、まずはこの3つをしっかり揃えていただきたいんですが、私がそれにプラスしてよくお話するのは、まずは命に関わるものから揃えてほしいということ。つまり、靴下やインナーなど、体に一番近い部分を守るものから重点的に揃えるといいかなあと思っています」
靴下やインナーも、速乾性と保温性を兼ねたものを! 汗や雨で濡れてしまうと体温を奪ってしまうので、速乾性と保温性は大事ということを教えてくれました。
そして、晴れでもレインウェアは必ず持っていくべし、というトークに。
岩田さん
「風が吹いても雨が降っても役に立つし、万が一遭難してしまったときもレインウェアを着て一晩過ごすとか、そういうこともありえますので、いつも持っていきますね」
ここで、かほさんが岩田さんに質問!
かほさん
「岩田さーん、晴れた時って、レインウェアは、どういうふうに役に立つんですか? 」
岩田さん
「日焼け防止なんかに役立ちますね(といいながら首の後ろをさする)。休憩するときに隠れる場所がないところとかで、ジリジリくるときがあるんですよ。そのときフードのついたレインウェアなら、フードをちょっとかぶるだけで、暑さや日照りから逃れられるんですね」
花谷さん
「晴れていても、風が強い時なんかには着ますね。風ってとにかく体温を奪うから、そういうときに羽織る。休憩中って寒いじゃないですか。だから休憩中はレインウェアを防風のために羽織るんです。行動する前に脱いでもいいし、風が強い時には着たままでもいい。つまり必ずしも雨だけではなく、風の対策にもいいと思うんです」
かほさん
「なるほど。動いているとあったかいけど、止まったら寒いような今の時期には使えますよね」
YAMAP斉藤
「降水確率0%だったとしても、マストで持っていった方がいろいろ使い勝手がいいし。まずはレインウェアを揃えてみようってことですね」
岩田さん
「山で汗をかいたあとの帰りの電車のなかでも、冷えちゃったりするので。寒いな、というときに着ています」
なるほど、レインウェアは必携なんですね。そして、ヘッドランプ、モバイルバッテリーも欠かせないという流れに。ちなみに、携帯電話は山の中では電池の減りを抑えるために、機内モードにすることが大切とか。「地図アプリは機内モードでもGPSが反応するので使えますよ! 」とかほさんからのアドバイスに「知らなかった」というコメントも。
続きまして、みなさんの興味が高かったのが、「熊との遭遇」。ここ数年、熊被害のニュースが増えたためか、熊に関する質問も多かった!
「熊と出会ったらどうしたらいい? 」との質問に、近くで遭遇ことがある3人の顔も曇りがち。
花谷さん
「熊ってものすごい動きが早いんで、出会ってから、どうにかしようかなんて無理だと思います! “目をそらさずに後ずさり”なんて体が動くはずはないんで、会ってからどうするではなく、会わないためにすることを考えておいたほうがいいですよね」
また、明らかに熊がいないエリアや他の登山者が多いルートで、熊鈴やラジオを鳴らして注意を受ける「騒音問題」についても話題が広がりました。
岩田さん
「山小屋の出発時に、早朝から鈴を鳴らして出ていく人がときどきいるので、小屋には熊でませんよーと教えてあげたいです」
確かに、他の宿泊者が熊鈴の音で目が覚めちゃうかも。岩田さんは、山小屋付近には熊がいる可能性が低いため、到着時に熊鈴をザックにしまうようガイドしているとか。
次の質問は「山のトイレ問題」。携帯トイレを持つ方も多くなっていますが、山小屋のトイレにも課題があるようです。
特に女性は野外での排泄に抵抗があり、必要な水分をとるのを控えたり、我慢したりすることもあるとか。でもこれは大きな間違いだと岩田さん。携帯トイレなどもうまく利用してきちんと水分を取ることが大切だそうです。
ここで、甲斐駒ヶ岳で七丈小屋を運営する花谷さんからコメントが。
花谷さん
「トイレの問題は、それぞれの山小屋によって、状況は変わるはずですが、七丈小屋では汲み取ってヘリコプターで降ろしています。でも、それによる環境面への負荷のことも考えなきゃいけないし。まあ、永遠の課題ですよね、トイレの問題って」
確かに、一般の登山者は、なかなかそこまで気が付かないのかもしれません。また、携帯トイレを持っていても、それをどこで回収するのか、個人で処理するのかなど考えなければならないことは山積み。出して終わりではなくその先を意識することが大切なようです。
こんどは山での快適性を大きく左右する、道具のメンテナンスについての質問です。
たとえ晴れていて使わなかったとしても、レインウェアやジャケットは、ハンガーにかけて乾燥させて保管することがオススメ、と岩田さん。
岩田さん
「山のウェアのメンテナンスで気をつけたいのが保管方法。レインウェアを晴れている日に山に持っていって、今日は一回も着ていないから、という感じでそのまま次の時までしまいっぱなしという方が多いんです。でも、気が付かないうちにザックの中で湿気がこもってしまったり。そもそも、ぎゅっと折りたたまれている状態は、生地的にあまりよろしくないんです」
レインウェアだけでなく、ザックやシューズも汚れが一番よくないので、とにかく汚れをとって必要であれば洗って、なおかつ乾燥を心がけることが大切だそう。
そして、意外にもストックの中空部分に湿気がたまりやすく、きちんとケアしないと劣化を早めてしまう、という話に司会の斉藤もびっくり。また、シューズのインソールは、毎回靴から外して乾燥させよう!というお話には、コメント欄はうなづきの嵐でした。
かほさんから、またまた岩田さんへの質問。ここ、大事なので動画でしっかりと見ていただきたいポイントです。
かほさん
「レインウェアってどれくらい持つものなんですか? 買い替え時期ってあるんですか? 」
岩田さん
「どのくらい持つかは使う頻度によるかと思うんです。そもそもレインウェアで使われている素材はゴアテックスが多いと思うんですが、透湿防水シートが中に1枚あって、その両脇とかに生地があって、サンドイッチされている状態なんですよね。
なので、中にあるシートの浸透性や防水性は悪くはなりにくい。ただ、いちばん悪くなりやすいのが外側の生地。だから、それがぺたーとなって。フリースとか、絨毯でわかると思うんですけども」
YAMAP斉藤
「起毛しなくなる? 」
岩田さん
「そう、起毛が寝てしまうと撥水性が低くなってしまうんです。防水性っていうのは中のシートなんですが、外側の生地の撥水性、はじく方が見た目にみすぼらしくなっちゃうっていうのがいやだと思うんですよ。それを改善、回復させるには洗った後に乾燥させたりとか、熱を持たせたりしてあげると、寝ちゃった起毛がちょっと立つんですよね。
なので、そこに水がはじかれる状態が作られるので、これはじきが悪くなってきたなと思ったら乾燥機とかアイロンで当て布してあげるとかで、ある程度は回復します」
かほさん
「へえー! なるほど! 」
YAMAP斉藤
「YAMAP MAGAZINEでも、去年の12月にゴアテックス製品の洗い方を専門クリーニング店が伝授という記事がアップされてるんです。
これ、僕も取材に同行して、都内のクリーニング屋さんの店長さんにいろいろとお話をうかがったんですが、目からウロコで。洗い方のコツ、家庭でどうやったらウェアをメンテナンスするかっていうことを紹介している記事があるので、ぜひその記事を読んでいただければと思います! 」
「登山者必見! ゴアテックス製品の洗い方を専門クリーニング店が伝授」の記事はこちら
昭和から登山をやっているという花谷さんは当時、“雨具は洗わないっていう教育を受けた”とか。昭和の頃と比べて、道具も進化しているので常識も変化しています。
真似したい! の声が多かった花谷流のレインウェアの扱いは、「収納ケースにいれない」ということ。
花谷さん
「レインウェアは、フードにくるくるって仕舞い込んでしまうような感じにして。そうするとザックから毎回出す癖がつくんですよね。袋に入っているとひと手間になってしまうから、家に帰ってもそのまま今日使わなかったしいいや、みたいな感じになると思うんですけど。袋に入れてなかったら必ず出すし、僕も毎回ハンガーにかける。それはちゃんと意識はしています」
なるほど! 面倒くさくならないテクニックはさすがプロならでは。
この他にもとっておきの情報が盛りだくさん! 動画はこちらから
このあとも、事前にいただいていた質問と、番組放送中に寄せていただいた質問、お悩みに丁寧に答えてくれた3人。
その模様は、YAMAPのユーチューブチャンネルでアーカイブ動画として見られます。
花谷さん、岩田さん、かほさん、三者三様の経験、視線ならではのお答えあり、視聴者の方からのコメント欄を通じてのアドバイスもあり。想像以上の方にご視聴いただき、盛り上がったオンライントークでしたが、みなさまのお悩み解決のお役に立てましたでしょうか? この記事を参考に、しっかり感染対策をしながら、これからの春山&夏山をお楽しみください!
原稿:柳澤智子(柳に風)
協力:日本ゴア合同会社