阿蘇山の怪獣工場|山の怪獣プロジェクト

怪獣のプロ・ガイガン山崎さんに「山の怪獣をつくってもらう」本企画。「YAMAPユーザーにとって人気があり、面白い特徴や伝説がある各地の山」をモチーフに、新・山の怪獣を紹介していきます。十体目の怪獣は巨大なカルデラを擁し、今も活発な活動を続ける火山・阿蘇山。九州を代表する火山の噴煙の中から、一体どんな怪獣が登場するのでしょうか。

山の怪獣を本気でつくりたい #11連載一覧はこちら

2021.06.23

ガイガン山崎

怪獣博士

INDEX

怪獣と縁のある山々

25体――この連載でつくってきた怪獣の数だ。本題に入る前の怪獣うんちく話のために描いてもらったバクゼントザウルスやヤマップゴン(仮)、前々回のモブっぽいガルラ星人みたいなものも含めれば30体近くになる。半年とちょっとで、随分と増えたもんだ。
YAMAP MAGAZINE編集部の皆さんと打ち合わせた際、最初に11の候補地を挙げてもらい(つまり次回がラスト!?)、TVシリーズでいう1クール分くらいはつくれるなと思ったもんだけど、そんなものでは済まなかった。まあ、六甲山のときに、一気に10体もの怪人を考えたのが大きい。でも動植物だったり、日用品だったり、妖怪だったり、1年間の放送を通してのモチーフ縛りというか、ある種の共通フォーマットを持つことが、怪獣ならぬ怪人の特徴だったりするので、これはもうたくさん並んでいたほうが楽しいに決まってるのだ。

▲蓬莱峡の風景(ぼたんさんの活動日記より)

ちなみに六甲山が怪獣ではなく、怪人になったのは、ちょうど連載も折り返し地点で目先を変えたかったこともありつつ、基本的には成り行き任せの結果なんだけど、そもそも怪人と縁の深い山であったことを思い出した。『仮面ライダー』第71話「怪人アブゴメス 六甲山大ついせき!」の舞台なのだ。六甲有馬ロープウェーのゴンドラにぶら下がりながらのノースタントアクションは、コンプライアンスもクソもない昭和ならではの名シーン。今の感覚で観てしまうと、藤岡弘だって生身の人間なんだぞとドン引きすること請け合いだ。
また、ショッカーの大幹部である地獄大使が、作戦のためにさらってきた科学者相手に「どうですかな、アメリカのグランドキャニオンにも似たる眺め。あの天にそびえる針の如き山が、我がショッカーの中継アンテナになるのですぞ」と語るシーンもある。そう、蓬莱峡ですね。山のことはからっきしだったボクも、この連載を通してそれくらいは分かるようになってきたぞ。なお、仮面ライダーとアブゴメスの最終決戦は、やはり六甲の白水峡で撮影されている。蓬莱峡から近く、雰囲気も似ているから選ばれたのだろう。

▲阿蘇山の風景(matsuさんの活動日記より)

で、ほかにも特撮モノの舞台になっている山はなかったかなと調べてみたんだが、この連載で取り上げてきたところでは高尾山くらいしか見つからなかった。冷静に考えてみれば、登山家が好むような険しい山中までロケ隊が赴くメリットはないもんな。さらに霧吹山だ、おそれ谷だと架空の名前をつけられていることも多い。しかし、今回の阿蘇山は違う。誰もが知ってるどメジャーな山なだけあって、なかなかの大物が関係していた。怪獣王ゴジラのライバルにして相棒、空の大怪獣ラドン出生の地なのだ。初代ラドンも二代目ラドンも、阿蘇山の火口を住処としていた。怪獣ファンからすると、阿蘇山といえばラドン、ラドンといえば阿蘇山というくらい印象的な組み合わせだ。とはいえ、そのまんま翼竜っぽい怪獣にしても面白くない。ここは火口の部分だけリスペクトして、まったく違う怪獣にしてみよう。

▲阿蘇山で暗躍する宇宙人連合

たとえば、もうもうと上がり続ける噴煙を隠れ蓑に、宇宙人たちが前線基地を作っていたらどうだろう。エメラルドグリーンの美しい火口湖、その奥底では恐ろしい地球侵略計画が進められている。ひょっとすると、何も知らずにさらわれてきた登山客が、この上ない労働力としてこき使われているかも知れない。ここではメカゴジラ顔負けのロボット怪獣……いや、サイボーグ怪獣の建造が進められていたのだ。その名も!

生物と機械の融合、ダブルネックキング!

阿蘇山の噴火とともに姿を見せた大怪獣。身体の大部分が宇宙金属で覆われているため、これまで出現した怪獣とは桁外れの頑強さを誇る。図らずも九州で合同演習を実施していた陸上自衛隊及びアメリカ海兵隊、フランス陸軍が対処にあたったが、まったく歯が立たなかった。しかし、宮崎・鹿児島両県にまたがる霧島演習場で迎え撃ったことにより、一般市民や市街地の被害は最小限に留められたという。

生身の首から10万度の高熱火炎を、機械の首からはマイナス150度の冷凍光線を発射するほか、両腕と尻尾の先を武装しており、その破壊力たるや従来の怪獣の比ではない。さらに翼の起こす突風は、ビルや自動車をオモチャのように吹き飛ばす。また、背中には2機の大型ミサイルを搭載していたが、高尾山からやってきたガルラ星人との交戦中に発射した際、あろうことか念動力で跳ね返されてしまい、あえなく爆死した。

なお、このときの戦いはそれで収まらず、ダブルネックキングの爆発とともに操縦席から3人の宇宙人が脱出。そのうちのひとりは、ラゴラモスを操っていたガルラ星人と見られ、かつてと同様にガルラ星人同士の決闘へと発展した。この相模大山のガルラ星人は、高尾山の個体と対立関係にあるらしく、最後は両翼をもがれて海中に没したが、一味と思われるジョルジュ星雲人とシェルドン星人に関しては、杳として消息が知れない。

クリエイターズ・コメント

▲シェルドン星人の検討稿

「メカ系の怪獣でいこうと決めたとき、それを作り上げる頭のいい宇宙人を3体くらい出したいなと思いつきました。ただ、またゼロから考えると大変なことになるので、1体はガルラ星人の、もう1体はジョルジュ星雲人のバリエーションでいくことに。ジョルジュ星雲人は、連載第1回のときに写真も載せたんですが、我々がつくった着ぐるみの宇宙人です。首から下は共通で、頭のみすげ替えて別のキャラクターに見せるというやり方で運用していまして、これまでハリウッド映画のクリーチャーっぽい頭、如何にも日本の特撮モノに出てきそうな頭の2種類があったので、今回はアメリカのパルプマガジンの挿絵っぽい頭を考えてもらいました。ガルラ星人イーマは、第9回のときにつくったもので、『マジンガーZ』に出てくる悪ボスのDr.ヘルを意識したカラーリングになってます。シェルドン星人に関しては、人間が入らない操演タイプの宇宙人というオーダーを出しました。どこかでやりたかったネタなんですが、なかなかイメージが合致する山がなかったのです。これはけっこう難航しました。最初は貝類、途中からマオウカマキリをモチーフに考えてたんですが、うまくまとまらず、これはもうどこかで妥協しないとドツボにハマるぞ……というタイミングで、デザイン担当の入山がフラットウッズ・モンスター(「3メートルの宇宙人」の名でも知られる未確認生物)をベースにすることを思いついてくれました。頭がふたつあり、12時間毎に上下交換するため、ずっと起きていられるという設定です」(山崎)

▲ダブルネックキング検討稿1

「主催の山崎からロボット怪獣がいいか、それともサイボーグ怪獣がいいかと問われ、すぐさま後者を選びました。全身メカとなると、どうしても左右対称だったり、わりとカッチリした仕上がりが求められるものだと思うんですが、そういうのはどうも得意じゃなくて……。まあ、そもそも機械系のデザイン全般が苦手なため、なかなか正解に辿り着けず試行錯誤を繰り返しました。生身の部分にしても恐竜タイプにするのか、それ以外でいくのか悩んでましたね。“永井豪とダイナミックプロ”の世界が好きすぎて、『ゲッターロボ』のメカザウルスや『マシンザウラー』に引っ張られていたのかもしれません。で、ラドンと被ることを恐れず、敢えて鳥モチーフにしようと決めたあたりから光明が差し込んできた気がします。一応、自分たちの想定としては、窓のついてる操縦席のあたりに人の頭があり、2本の首はピアノ線がなにかで吊ってる感じなんですが、翼や尻尾も吊る必要がありますし、ちょっとテレビのスケールには収まらない着ぐるみになっちゃいました」(入山)

▲ダブルネックキング検討稿2

次回予告

いかがだったろうか。これまで使ってこなかった鳥とメカをモチーフに、ちょっとスペシャルな感じの怪獣をつくってみた。改めて考えてみると、ダブルネックキングもシェルドン星人も双頭キャラという部分で被ってるんだけど、そこはシェルドン星人が自分を参考にして、怪獣の頭を増やすことを提案したという解釈で勘弁していただきたい。さて、冒頭でも軽く触れたように、次回で最終回というか、第1部完というか、とりあえずこの連載も一区切りつけることと相成りました。2週間後、またお会いしましょう。

▲次回、霊峰富士を揺るがす最凶怪獣が出現!!

ガイガン山崎

怪獣博士

ガイガン山崎

怪獣博士

1984年東京都生まれ。“暴力系エンタメ”専門ライター、怪獣造形集団「我が家工房」主宰。 最も得意とする特撮ジャンルを中心に、マニア向け雑誌や映像ソフトのブックレットなどのライティングを手掛ける。また、フリーランスの造形マンとして活動する入山和史氏らとともに、オリジナル怪獣の着ぐるみ製作も行っている。