ただ着込むだけでは不十分?防寒対策の新常識「ドライ」なウェア選び

登山者にとって、秋冬は「どんなウェアを着ていったら良いの?」と悩ましいシーズンです。行動中なのか休憩中かで体感温度は大きく変わりますし、濡れによって引き起こされる低体温症といった恐ろしいリスクも潜んでいます。そこで注目したいのが「レイヤリング」。変わりやすい秋冬の天候に対し、1枚のウェアだけで対応するのではなく、何枚かのウェアを組み合わせて上手に着こなすことで対応しよう、という発想です。

その鍵となるのが「肌をドライに保つ」ということなんだとか。今回は、特に重要な「ドライレイヤー」と「ミッドレイヤー」についてご紹介します。

2021.11.05

池田 圭

編集・ライター

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登山者が悩みやすい秋冬のウェア選び

登り始めるとじわりと汗ばむ。けれど、立ち止まるとすぐに体が冷えてしまう。そんな11月は、ウェアの選択が非常に悩ましい時期である。

この難題に対処するには、役割を振り分けたウェアを重ね着する「レイヤリング」が重要なことは、周知の事実。しかし、コンディションが刻々と変化する秋から冬の山に対応するには、ただ温かいウェアを着込んだだけでは不十分だ。この時期のレイヤリングには、「ウェアを重ねて温かさを確保する」のと同じくらい大切なポイントがある。

それが「肌をドライに保つ」という発想のレイヤリングだ。

朝晩の冷え込み、行動時の体温上昇、冷たい風など、秋冬のレイヤリングは考慮すべき要素が多い

これからの時期にウェア選びを間違えてしまうと、快適に山登りを楽しめないだけでなく、低体温症で動けなくなるリスクまで増やしてしまう。

では、どのようなことを考慮してウェアを選ぶべきなのか考えてみよう。

まず意識すべきは、適度な保温ができること。同時に、じつはウェア内をドライに保てるレイヤリングも快適さの鍵となってくる。山で感じる寒さは、汗や雨などによる濡れもおおきな要因。濡れたウェアが肌に触れていると、水分の気化熱や高い熱伝導率で体温が急激に奪われてしまうからなのだ。

サーモグラフィ―でみる体温変化。左が不適切なウェアの着用で肌が冷えた状態。右が適切なレイヤリングで肌の冷えが抑えられた状態

保温も大事だが、濡れたままの状態でいくら上に温かいウェアを着込んでも、効率的に体を温めることはできない。つまり、まずはいかに肌をドライに保つかこそが、秋冬のウェア選びの最優先事項と言っても過言ではない。

かいた汗をスムーズに処理できるベースレイヤー。そして、適度な保温性を持ちつつ、行動中の蒸れをウェア外に逃してくれるミッドレイヤーと、肌をドライに保つためにはウェアをトータルで考えることが重要となる。

つまり、停滞時には温かく、行動中にはウェア内の湿度と温度の調整がしやすい組み合わせが最も大切なのだ。

ウェア全体で効果的に汗処理し続けるレイヤリングが大切

肌をドライに保つ専用の「層(ドライレイヤー)」

肌に接するウェアとして、吸汗速乾タイプのベースレイヤーを選んでいる登山者は多いだろう。しかし、それだけで登山中はシーズンを問わず、約1ℓもかき続けるといわれる汗に対応するのは難しい。肌をドライに保つためには、専用の「層」を設けると効果的。

そこでおすすめしたいのが、ファイントラックの「ドライレイヤー」シリーズ。これはベースレイヤーのさらに下に着て使うウェアで、生地自体に優れた撥水性があるため、肌をドライにキープしてくれる優れものだ。

繊維表面に水分が残りやすい「疎水」ではなく、生地自体が保水しにくい「撥水」であることがキモ

上の写真をご覧の通り、水は生地には染み込まずに撥水して水滴となる。この水滴を行動時にかいた汗だと考えてみてほしい。ウェア内でかいた汗はドライレイヤーには染み込まず、生地を通り抜けて上に重ね着したベースレイヤーへと吸収されていく。つまり、肌面には水分が残らず、つねにドライな状態がキープされるってわけだ。

汗濡れによる冷えやベタつきを防ぎ、余計な体力の消耗を最小限に抑えてくれる画期的なウェアなのである。

 「ドライレイヤーウォーム」は秋冬の登山だけでなく、ウォータースポーツにも適している

ドライレイヤーには、いくつかの厚みやフォルムがラインナップされているが、なかでもこれからの秋冬シーズンにはシリーズ中でもっとも温かい「ドライレイヤーウォーム」が最適な選択肢となるだろう。

手前が「ドライレイヤーウォーム」で、奥が「ドライレイヤーベーシック」。素材は同じだが、生地の編みと厚みの違いがよく分かる

「ドライレイヤーウォーム」の生地には、かさ高のあるニットメッシュ構造が採用されている。この厚みが着用時に空気を保持し、温かい空気の層を作ってくれる。ドライレイヤーシリーズの基本となる「ドライレイヤーベーシック」と比較すると、その保温性は約1.5倍。秋冬の低体温化での体温維持をもっとも重視して仕上げられている。

肌に接する生地表面は凹凸のある構造になっており、汗や水に濡れている状態でも肌離れがいい。つねにさらりとした着心地をキープしてくれる。

脱ぎ着の際に起きやすい静電気を抑制する機能を備えているのも嬉しい。嫌な臭いの原因となる菌の増殖を抑制する機能も備えているので、複数日に渡る山行で着続けても快適だろう。

ブラトップタイプも仲間に加わった

今シーズンからは女性用ブラトップタイプも新たにラインナップ。ブラとドライレイヤーが一体になっているので、レイヤリング枚数を減らせ、重ね着が多くなるこれからの季節の着圧ストレスから解放してくれる。

もちろん、ブラカップ部分にもドライレイヤーと同じ生地が使われているため、バストも快適に保ってくれる。汗で濡れたアンダーウェアにストレスを感じている女性には、ぜひ試していただきたい。

 

 

ミッドレイヤーの役割は保温だけじゃない


さて、ここからは中間保温着「ミッドレイヤー」について見ていこう。ドライなウェア内環境を保つためには、ミッドレイヤー選びも非常に重要。このウェア層には、いくつか重要な働きが求められる。

登山中にかいた汗の行方を想像してみよう。まずドライレイヤーが肌から離した汗は、ベースレイヤーが吸い上げることは前述の通り。しかし、ミッドレイヤーがこの汗をさらに吸い上げて、ウェア外へと排出できなければ、蒸れがウェア内にこもってしまう。

つまり、ミッドレイヤーは保温性だけではなく、汗濡れや蒸れを積極的にウェア外へと排出する高い通気性と汗処理性能も考慮して選ぶべきなのだ。

「ドライレイヤーウォーム」の汗処理能力を最大限に活かすなら、これらの機能性を兼ね備えたファイントラックのミッドレイヤー「ポリゴン2ULジャケット」をぜひとも併用したい。

この「ポリゴン2ULジャケット」が従来の製品と大きく異なる点は、保温材にシート状立体保温素材「ファインポリゴン」を封入していること。この保温材は、極薄で軽量なポリエステル繊維を凹凸のある立体構造をもったシート状にしたもので、さまざまな特徴を兼ね備えている。

画面左の白い紙状のシートが「ファインポリゴン」

例えば、保温材として一般的なダウンや化繊綿は、汗や雨で濡れるとロフト(かさ高)が失われて保温力が下がってしまうが、ファインポリゴンは保水しにくい素材なので濡れてもロフトを維持することができる。

さらに、速乾性にも優れているため、万が一濡れてしまっても短時間で本来の保温力を回復してくれる。つまり、「ポリゴン2ULジャケット」は「濡れに強いミッドレイヤー」なのだ。

ポリゴン2ULの肌面に付いた水滴は吸収、蒸散される

裏地には親水性がある素材を採用し、ベースレイヤーが吸い上げた汗をさらに吸い上げて、汗を蒸散させる。さらに、このポリゴン2ULジャケットは適度な通気性も備えている。これらの特徴が、常にウェア内環境を快適に保ってくれるのだ。

付属の収納バッグに収めた状態。圧縮すれば、さらに小さくすることも可能

ファインポリゴンは、軽量でコンパクトに圧縮できることもポイント。「ポリゴン2ULジャケット」の重量は、Mサイズでわずか210gと持ち歩きも苦にならない。

今シーズンから登場したフーディタイプのみならず、ジャケット、ハーフスリーブ、ベスト、パンツ、七分丈パンツと、季節やアクティビティに応じて選べる豊富なラインナップも揃う。

肌寒さを感じた時にさっと羽織れる保温着として、通年使いやすい適度な保温性。行動着としても活躍してくれる通気性と汗処理能力。持ち運びやすい軽量コンパクト性。秋山のミッドレイヤーに求められる数々の要素を、高い次元で兼ね備えた1着に仕上げられている。

シリーズ名の「ポリゴン2UL」とは、中綿の保温シートが2枚封入されていることの意。ジャケット、フーディ共に全4色展開

 

さらに寒さが厳しい時期になったら、これらのレイヤリングの上にミッドシェルやアウターシェルを組み合わせれば、レイヤリングの相乗効果によってフィールドでの安全性と快適さをさらに高めることができるだろう。

ウェア内が快適であることは、安全な登山にも繋がる。今年の秋冬は「肌をドライに保つこと」を念頭に置いて、自身のレイヤリングを再考してみていただきたい。

 

 

 

原稿:池田圭
撮影:小山幸彦(STUH・スタジオ撮影)、宇佐美博之(フィールド撮影)
モデル:千野美樹
協力:ファイントラック

池田 圭

編集・ライター

池田 圭

編集・ライター

登山、キャンプ、サーフィンなど、アウトドア誌を中心に活動中。下山後に寄りたい食堂から逆算して計画を立てる山行がマイブーム。共著に『”無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社)、編集を手掛けた書籍に『Two-Sideways 二刀流』(KADOKAWA)、『焚き火の本』、『焚き火料理の本』(ともに山と溪谷社)、『山グルメ』(エイ出版社)、『サバイバル猟師飯』(誠文堂新光社)など多数。