登山専門店スタッフが教えてくれた、私が「グレゴリー」を推す理由

バックパック界のロールスロイスと称される名ブランド「Gregory(グレゴリー)」。その品質の高さは多くの登山者が認めるところです。では、彼らが絶賛するグレゴリーのバックパックとは、一体どんな魅力を秘めた製品なのでしょうか? 山道具に精通するプロショップのスタッフ3名に、その魅力とイチオシアイテムを聞きました。

2023.04.18

吉澤英晃

編集・山岳ライター

INDEX

バックパックの品揃えは関東随一! 「石井スポーツ ヨドバシ新宿西口店」

新宿駅の西口から徒歩2分の好立地にあり、日々多くの来客数を誇る一大登山専門店が「石井スポーツ ヨドバシ新宿西口店」です。コア層からライトユーザーまで訪れるとあって、関東にある同グループの店舗のなかでも、取り扱うバックパックのモデル数はNo.1。タウンユースの小型パックから120Lクラスの極地遠征用まで品揃えが充実しており、さまざまなニーズに応えています。

店内の売り場には、床から天井まで隙間なくバックパックが陳列されている

今回話を聞いたスタッフは、石井スポーツ ヨドバシ新宿西口店でバックパックを担当する、中村涼佳さん。2021年に新卒採用で石井スポーツに入社したことをきっかけに登山を始め、東京都や山梨県の山々を中心に山登りを楽しんでいます。実は、中村さんが初めて買った登山用のバックパックはグレゴリー
。自身も愛用するブランドの魅力を語ってもらいました。

笑顔が素敵な中村さん。最初に買ったグレゴリーのバックパック「ジェイド」を今も愛用中

テント泊にぴったりな女性用バックパック「ディバ」:おすすめ①

写真は「ディバ60」。ひと回り大きい「ディバ70」も展開する

中村さん:まずおすすめしたいのは、テント泊向けのバックパックとして人気の高い女性用の定番モデル「ディバ」(男性用は「バルトロ」)です。

グレゴリーのバックパックはサイズ展開が豊富で、「ディバ」もXS・S・Mの3サイズが揃っています。小柄な女性にもフィットするXSまで揃えている点は心強いですね。

ヒップベルトは正面から見てハの字に取り付けられている

また、グレゴリーの特徴である「背負い心地の良さ」は、「ディバ」でももちろん健在。その背負い心地の要となる部位がヒップベルトで、よく見ると本体に接する付け根が「ハの字」になっているんです。ヒップベルトの角度を腰骨にかぶさるように設計することで、荷重が腰に均一に分散されるように計算して作られています。

ボトルポケットは手の動きを計算して斜めに配置されている

細部の使い勝手に目を向けると、本体の側面にあるボトルポケットがとても便利ですね。サイドポケットは珍しい機能ではないですが、「ディバ」のボトルポケットは筒状に作られていて、本体を背負った状態でもボトルをスムーズに取り出せるんです。

登山でよくあるのが、バックパックを下ろすほどではないけれど、少し喉が乾いて水が飲みたいといった状況。そのとき「ディバ」なら、立ったままボトルにアクセスして水分を補給できるので便利ですね。

(左)「ディバ」を背負った様子。頭とバックパックの上部との間に十分な空間がある(右)他社のバックパックを背負った様子。ハットに干渉しているのがわかる

また、「ディバ」はヘッドクリアランスの広さも大きな特徴。たとえば、お気に入りのハットをかぶったとき、後ろのツバがバックパックに干渉したらストレスに感じてしまいますよね。「ディバ」は、本体上部のフレームを後方に反らすことでヘッドクリアランスを保っています。

わずかなストレスも長時間続くと疲労につながるもの。こういった配慮を感じられる作りに、グレゴリーの品質の高さをひしひしと感じます。

山小屋泊にちょうどいい「メイブン」:おすすめ②

写真は「メイブン45」。35L、55Lと65Lもラインナップする

中村さん:もうひとつのおすすめは「メイブン」(男性用は「パラゴン」)。こちらは山小屋泊の縦走におすすめしたいモデルです。

「ディバ」と同じように「メイブン」にもXS/SM、SM/MDのサイズ展開があり、こちらも背負い心地は良好。「ディバ」と「メイブン」の用途の違いは、テント泊か山小屋泊など、登山計画によって変わる荷物の容量に従って考えるといいでしょう。

サイドポケットがあると奥のほう入れた荷物も素早く取り出すことができる

使い勝手の点では、荷室にアクセスできるサイドファスナーに注目して欲しいです。これがあるおかげで、奥に収納したレインウェアや着替えに素早くアクセスできます。サイドファスナーもしくはフロントファスナーの有無は、使い勝手を左右する大きなポイント。バックパックを選ぶときに、ぜひチェックしてください!

世界最大級の売り場面積を誇る「アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店」

次に取材班が向かったのは、千葉県柏市にある「アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店」。こちらの店舗は、2,300坪と世界最大級の売り場面積を誇る超大型ショップとして、2019年にオープンしました。

都内の専門店にはない広々とした売り場が魅力。商品をゆっくり吟味できる

巨大な店舗は3つのフロアに分かれ、1Fはキャンプ、2Fはアーバンスタイル、3Fは登山関連のアイテムが、カテゴリーやブランドごとにディスプレイされています。登山のフロアではバックパックの試着はもちろん、シューズやシュラフ、マットもテスト可能。テントも多数展示されているので、実際のサイズ感を確かめながら、納得するまで商品を見比べることができます。

話を聞いた浅野さん。日本百名山のほか北海道百名山にも挑戦し、現在80座まで踏破している

アルペンアウトドアーズフラッグシップストア 柏店でグレゴリーの魅力を語ってくれたのは、3Fフロアを担当する浅野正樹さん。2007年の入社以来、配属先で店頭に立ちながら日本山岳ガイド協会認定の登山ガイド・ステージⅡとスキーガイド・ステージⅠの資格を取得。日本百名山を全山踏破したことがある登山愛好家でもあります。

長年の登山経験と店舗スタッフ経験から感じるグレゴリーの良さを聞きました。

通気性はそのままにフィット感がアップした「ズール」:おすすめ③

写真は「ズール35」。ほかに30L、45Lと55Lがある

浅野さん:私のおすすめは、今年リニューアルした「ズール」(女性用は「ジェイド」)です。こちらは、本体と背中の間にスペースを設けることで空気の通り道を作り、背面の通気性を高めた人気モデル。さらに、背面長を調整できる機能もポイントです。

バックパックを選ぶときは、背面の長さが体に合っているかどうかが最も重要になります。ここを調整すると「背負い心地がこんなに変わるの!?」と驚かれる方もいるほどです。

なかには背面長を変えられないモデルもあるので、2つのサイズから大きさを選ぶことができ、さらに体型に合わせて背面の長さを調整できる「ズール」は、多くの方に背負いやすさをもたらすバックパックと言えると思います。

ヒップベルトの両脇に指を入れられるほどの空間があり、この作りが柔軟な動きを可能にしている

背面の長さと同様に、フィット感も同じくらい重要なポイントです。バックパックを選ぶときは、ショルダーハーネスやヒップベルトを締めたとき、違和感がないかどうかも確かめましょう。「ズール」は今季のリニューアルでヒップベルトのパッドの厚みが増し、背負ったときの安定感とフィット感がアップしました。

さらに、「ズール」のヒップベルトは、パッドが腰の動きに追従して快適なフィット感をもたらす独自機能で作られています。背負っていることを忘れるほどのフィット感の高さは、グレゴリーの真骨頂と言えるでしょう。

「ズール」のリニューアルポイントはほかにもあり、わかりやすいところではサイドポケットにマチがついたことでボトルを入れやすくなりました。

ヒップベルトに備わるポケットのサイズも見直され、大型のスマートフォンを余裕で出し入れできる大きさに改良されています。

フィット感と使い勝手が向上した新型「ズール」を、ぜひ店頭で試してみてください!

手頃な値段が魅力の「スタウト」:おすすめ④

写真はテント泊向けの「スタウト60」

もうひとつ紹介したいのが「スタウト」(女性用は「アンバー」)です。このモデルは、高機能を「ズール」よりも手の届きやすい値段に収めたエントリー向け。背負い心地の良さとフィット感を重視したいけど、予算は押えたい、そんな方におすすめです。

スタウトは山小屋泊に最適な35Lと45Lのほか、テント泊に対応する60Lもラインナップ。展開はワンサイズですが、「ズール」と同じく背面長を調整できるので、体型に合うベストな背負い心地を手に入れることが可能です。

ヒップベルトの長さはベルクロテープで無段階に調整できる

さらに「スタウト」は、ヒップベルトの長さを調整できる点も大きなポイント。細かくカスタマイズして、自分だけのフィット感を見つけましょう。

フルラインナップを扱う唯一無二の直営店 「グレゴリー銀座」

最後に訪れたプロショップは、ビジネスマンや海外からの観光客で賑わう銀座にある「グレゴリー銀座」。こちらの店舗、フロア面積は決して広いとは言えませんが、国内にある直営店の中でも最も品添えが豊富で、グレゴリーのラインナップのほとんどを扱っています。

間接照明で高級感のある店内は、グレゴリーのあらゆるモデルがディスプレイされている

さらに、テクニカルフィッティングディーラーの資格を所有するスタッフがいるので、気になるモデルを体型に併せて正確にフィティングしてくれるサービスを受けることが可能。バックパックの性能を最大限まで引き出した理想の背負い心地を体験できます。

グレゴリー銀座の店長、田頭さん。グレゴリーの旧品「Z」が最初に買ったバックパック

こちらの店舗では、店長を務める田頭隆介さんに話を伺いました。田頭さんも最初に買った登山用バックパックがグレゴリーという、筋金入りのグレゴリー愛用者。友人に誘われたことがきっかけで登山にはまり、いまではハイキングやキャンプなど幅広くアウトドアアクティビティを楽しんでいます。

贅沢な機能を搭載する「ミコ」:おすすめ⑤

写真は「ミコ20」。30Lのみ開口部がパネルローダーからトップリッドタイプに変わる

田頭さん:今回紹介したい商品は、「ミコ」です。こちらは男性用で、女性用になると商品名が「マヤ」になります。

いずれも、昨年まで販売されていた男性用の「ミウォック」、女性用の「マヤ」をリニューアルした新製品で、スピーディーに行動する山行を意識して開発されたモデルです。

サイズ展開はワンサイズですが、「ミコ」と「マヤ」共に15L、20L、25L、30Lの4つの容量から選ぶことができます。

リニューアルした背面パネルは、センターの凹みと左右の溝が優れた通気性をもたらす

どこがリニューアルしたかというと、いちばんのポイントは背面パネルです。前モデルでも背中との接触面積が少ない通気性の高いパネルが使われていましたが、汗の逃げ道はありませんでした。

そこで、今モデルから従来とは異なる3Dフォームパネルを採用。背中のなかで最も汗をかくと言われている脊柱が当たる部分を凹ませることで、通気性をアップさせました。さらに、両サイドのフォームを波打つ形状に設計することで、背中への接地面積を減らしつつ空気の通り道を確保。快適性が大幅に向上しています。

新しくなったショルダーハーネスは、横揺れを押えつつ縦に伸びて肩への負荷を軽減する

ショルダーハーネスの素材も見直されました。昨年までは縦と横に伸びる素材が使われていのに対して、今年からは、縦に伸びても横には伸びない素材に変更。これにより安定性が高まり、バックパックの横揺れを軽減する仕様にアップデートされています。

ミコの背面パネルはベルクロテープで長さを無段階で調整できる

そして、個人的にいいなと思っている特徴が、背面長を調整できる機能です。実はグレゴリーが展開する全ラインナップのなかでも、20Lクラスで背面長を調整できるのは「ミコ」と「マヤ」だけ。

背面パネルの通気性と背負い心地が良くなり、さらに体型に併せて背面長を調整できる。こんなに贅沢な作りの小型パックは、ほかのメーカーにもないのではないでしょうか? スピードハイキングに限らず日帰りハイキングからぜひ検討してもらいたい、今年の一押しモデルですね。

創業当時から続く不朽の名作「デイパック」:おすすめ⑥

「デイパック」のカラーデザインは、定番のブラックからカモ柄まで豊富に展開

もうひとつ注目して頂きたいのが、グレゴリーを代表する名品「デイパック」です。「デイパック」はクラシカルなデザインに目が行きがちですが、実はバックパックの背負い心地にこだわるグレゴリーの信念が随所に見られるモデルでもあります。

そのひとつが、三日月型のボトム。中央で2つに分かれた背面パッドが「く」の字形になることで、背中を包み込む構造となっています。これは、背中にフィットする背面パネルの構造を考えた末に生まれました。さらに、ショルダーハーネスにはEVAと呼ばれる非常にコシのあるパッドが使われていて、肩への負担を軽減します。

「デイパック」は、グレゴリーが創業した1977年から続くロングセラー。いまでも人気が非常に高く、豊富なカラーデザインから自身のスタイルに合う一色を選んで頂けます。日常でもグレゴリーが手掛けるバックパックの背負い心地の良さを体感してください。

3人のプロが口を揃えて評価する背負い心地とフィット感を、ぜひ店頭でお試しあれ!

異なる店舗で3名のスタッフにそれぞれの話を聞きながら、背負い心地とフィット感の良さが今回紹介してもらった6つのモデルに共通していることに気づいた読者は多いのではないでしょうか。

グレゴリーの創業者であるウェイン・グレゴリーは、生前こんな言葉を残しています。「Don’t carry it , wear it (バックパックは背負うものではなく身に着けるものだ)」。

これこそグレゴリーの全製品に宿る、唯一無二の魅力といえるでしょう。プロが認める優れた背負い心地とフィット感を、ぜひ店頭でチェックしてみてください。

原稿:吉澤英晃
写真:加戸昭太郎
協力:グレゴリー(サムソナイト・ジャパン)、石井スポーツ新宿店アルペンアウトドアーズ柏店グレゴリー銀座店

吉澤英晃

編集・山岳ライター

吉澤英晃

編集・山岳ライター

1986年生まれ、群馬県出身。学生時代に入部した「探検会」で登山に目覚め、一度は旅行代理店に入社したものの、憧れを捨てきれず登山用品を扱う会社に転職。その後、前職で培った山道具の知識を生かしてフリーライターとして独立。現在は登山専門のwebメディアや雑誌を中心に活動。いちばんの趣味は泊りがけの沢登り。山菜、キノコ、イワナを愛し、冬は雪山縦走、アイスクライミング、バックカントリースキーを楽しんでいる ...(続きを読む

1986年生まれ、群馬県出身。学生時代に入部した「探検会」で登山に目覚め、一度は旅行代理店に入社したものの、憧れを捨てきれず登山用品を扱う会社に転職。その後、前職で培った山道具の知識を生かしてフリーライターとして独立。現在は登山専門のwebメディアや雑誌を中心に活動。いちばんの趣味は泊りがけの沢登り。山菜、キノコ、イワナを愛し、冬は雪山縦走、アイスクライミング、バックカントリースキーを楽しんでいる。