走るイラストレーターが、縦走登山で「ファイントラック・ドライレイヤー」を試したら

100マイルレースなどにも出場するイラストレーターの佐々木寿江さん。日常的に走ることを楽しむ一方で、ずっと気になっていたのが縦走登山。そこで、奥秩父の名峰・甲武信ヶ岳に1泊2日の登山へ! トレイルランニングと登山の違い、そして、ファイントラックのドライレイヤーの果たす役割について、改めて考えてみました。

2023.06.20

麻生 弘毅

フリーランスライター

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トレイルランナー、甲武信ヶ岳に登る

「ほわっとした新緑の季節は、まだこれからですね」

そう笑って、軽やかに歩き出すのは佐々木寿江さん。2018年には総距離100マイルを越える大会「ULTRA-TRAIL Mt.FUJI」を完走し、昨年にはトレイルランニング聖地ともいうべき高尾に暮らしを移したという。これはさぞかし、ガチなランナーと思いきや…。

「元々は映画や音楽が好きなインドア系で、30歳を過ぎるまで、運動らしい運動をしていませんでした」

そんな生活に不安を覚えてはじめたウォーキングを皮切りに、少しずつ走り出すようになったのが、ランにのめりこむきっかけ。その後、ランニング熱はさらに増し、フルマラソンレースから徐々にトレイルランにシフトしていったという。

「アスファルトの上より自然のなかを走るほうが、単純に気持ちいいですよね。同じコースでも季節によって景色が違うし、レースともなれば、いい大人が泥まみれになって夜中も寝ずに走る…そんな魅力に取りつかれ、気づけばすっかり夢中でした」

そうして、走ることで山に出会い、徐々に自然そのものに惹かれるようになった。

「レースや練習では山に入るのですが、純粋に自然を楽しんでいるわけではないと思っていました。だから、いつかは登山をしてみたいと思っていたんです」

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そんな佐々木さんに登山を体験してもらうために選んだのが甲武信ヶ岳(2,475m)。甲州(山梨県)、武州(埼玉県)、信州(長野県)の国境にそびえる日本百名山だ。

今回は、登山口から山頂までの標高差が1,365mもあり、数あるルートのなかでも特にきついといわれる「徳ちゃん新道」をチョイス。山梨県側の西沢渓谷からスタートし、奥秩父稜線に抜けて甲武信ヶ岳へ。山頂直下の甲武信小屋に泊まって、翌日は破風山、雁坂嶺を経て出発点に戻るコースだ。

「それにしても、縦走登山の荷物はやっぱり重いですね…」

日々のランニングではほぼ空身、100マイルレースでも背負うのは5kgほどだというから、テント泊装備や食料を詰めたバックパックの重量9kgは、ほぼ倍の重さになる。

「登山では一歩にかかる負担の大きさが、まるで違う気がします」

バックパックの重みを感じ、さらには背中のバランスに注意しながら、足を滑らせないよう一歩一歩着実に踏みしめてゆく。それは、トレランでぴょんぴょん走るのとは違う筋肉と神経を使っているようだと、新たな発見に目を丸くする。

「以前、黒戸尾根(南アルプス・甲斐駒ヶ岳。いわゆる日本三大急登のひとつ)を登ったのですが、わたしの母親世代の登山者が大きな装備を背負って登っている。わたしはこんなに小さなパックで登っていても辛いのに…登山者ってすごいなと、衝撃を受けました」

登山開始から2時間ほどたち、途中のピークでひと休み。普段はそれほど汗をかかないというが、すでに700mほどの急登を登り、背中にうっすらにじむものが。

空身であれば、背中の汗はウェアの外へと排出され、風によって乾かされる。しかし、重いバックパックを背負っていると、汗は水分となって背中にたまりやすい。バックパックを下ろして小さく身震いをすると、取材陣の最後尾を黙々と歩く小柄な女性の目がきらりと光った。

小柄な女性は、取材に同行しているファイントラックPR担当の大森遥さん。

「どうぞ、これを着てください!」

と、ファイントラックの「ドライレイヤー」を取り出した。

汗の処理をうながすメッシュ素材のアンダーウェアは各ブランドから発売されているが、ファイントラックのドライレイヤーはその先駆者ともいえる存在。その特徴は、「撥水加工」を施している、ということ。そのため、生じた汗をすばやく外側(ベースレイヤー側)へと移しながら、汗が再度、肌面に浸入することを許さない。つまり、さらさらとした着心地を保ちながら、いわゆる「汗冷え」を起こしにくくなっている。

木陰ですばやく着替えをすませると、主稜線を目指して登り続ける急登を、佐々木さんは、早足で駆けのぼってゆく。小さなピークにたどり着くと、南アルプスの山々が顔をのぞかせていた。

「汗をかいても冷たさを感じない。すごく心地よいです!」

登山よりも発汗量の多いトレイルランニングにおいて、汗の処理はシビアな問題だ。佐々木さんもレースでは10年ほど前に購入したファイントラックのドライレイヤーを着用しているというが、普段のランでは着用しないという。

「ブラジャーが濡れてしまうんです。で、一度濡れたら二度と乾かず、心臓をじわじわと冷やす感じ。それで、胃腸をやられるというか、身体がどんどん冷えきっていくんです」

自身もトレイルランナーである大森さんが、しっかりとうなずく。

「汗冷えやニオイ、べたつきなどの不快感が軽減されるため、山行中の着替えが不要なんです。本当は最初から着てほしかったのですが、着用前と着用後との違いを感じてほしくて…」

(左)「ドライレイヤークールT(男性用)」 (右)「ドライレイヤーベーシック ブラタンクトップ(女性用)」

大森さんが取り出した「ドライレイヤーベーシック」は、ソフトフィットな着心地で登山に最適だという。

「汗抜けのよい、ブラカップ付きのブラタンクトップやフィットブラも好評です!」

にっこり笑う大森さん。ちなみに、炎天下での山行やトレイルランニングなど運動量の多いアクティビティには、「ドライレイヤークール」がおすすめだという。

「縦走登山やトレランのレースでは、長時間の着用による締め付けで皮膚が擦れがちですが、そのストレスから解放されます。両モデルとも撥水加工によって皮脂が付きにくく、抗菌防臭加工が施されているので、ニオイも抑えてくれますよ」

しばらく登ると視界が開け、お待ちかねの富士山が姿を現した。走っているときはそれほど休憩を取らないという佐々木さんは大きく深呼吸、ゆっくりと景色を味わっている。

標高2,300mを越えると、残雪がちらほらと現れた。取材時の4月下旬、山裾はやわらかい春の気配に満ちていたが、ここではまだ冬の硬さが残っていた。

14時すぎ、甲武信小屋に到着。当初の計画ではテント泊の予定だったが、あまりの寒さで予定を変更。山小屋に泊まることにした。居心地のよい小屋で、薪ストーブにあたりながらコーヒーを、そして名物のカレーをいただく。就寝前、白い息に驚きながら小屋の戸を開けると、明日の天気を約束してくれるよう、星たちが瞬いていた。

山を「走ること」、そして「歩くこと」

晴れあがった翌朝は、小屋から15分ほどの甲武信ヶ岳山頂へ。南には富士山がそびえ、西には金峰山の五丈岩がよく見える。その向こうには雪をかぶった北アルプスの姿が。東にも見渡す限りの山々が、奥多摩湖を挟んで高尾まで続く稜線が広がっている。

破風山から雁坂嶺へと続く山道は、ときにやわらかな笹に覆われながら、なだらかな起伏を繰り返していた。走りたくないかと聞いてみると、佐々木さんは首を振る。

「30kmなら30kmをめいっぱい、100kmなら100kmを走りとげる気持ちで山に臨むんです。今回はみんなでのんびり山を楽しもうと決めていたから、そういう気持ちにはならないですね」

5年前、長く目標にしていた「ULTRA-TRAIL Mt.FUJI」を完走したことで、どこか気持ちに余裕ができたという。元々ガツガツ走るのではなく、自然のなかに身を置きたいという気分があった。そんなとき出かけたのが、前述の甲斐駒ヶ岳だった。

「わたしは仙台の出身で、向こうのなだらかな山に馴染んでいたから、甲斐駒ヶ岳の山容の大きさに驚いたんです。それとともに、自分はちっぽけだな、と…」

それがきっかけで、大きな山を丹念に歩く登山に興味をもったという。
それでは、実際に2日間歩いてみて、どうだったのだろう。

「期待外れの答えかもしれないけれど、そんなに違いはないと思いました。ここ数年、競技志向が薄くなっていたからか、走りながらも景色や花を楽しんでいたことに、改めて気づいたんです。これからはカテゴリーにとらわれず、走りたいときは走り、歩きたいときは歩いて、純粋に山を楽しみたいと思います」

ファイントラック「ドライレイヤー」を着用してみて

最後に、佐々木さんに改めて「ドライレイヤー」を着用した感想を聞いてみた。

「これまで、レースではスポーツメーカーのブラを着け、その上にファイントラックのドライレイヤーのタンクトップを着用していました。普段のランニングではスポーツメーカーのブラに化繊のタンクトップ。そのため、汗冷え、締め付けがつねにあり、レースでは生地と皮膚が長時間にわたって擦れることによる痛みに悩んでいました。ブラが汗や雨で濡れた状態なので、その上に着るTシャツもずっと濡れたまま。ニオイも気になる…。

ところが今回、新しいファイントラックのドライレイヤーを着用したおかげか、まったく汗冷えを感じませんでした。汗をかいてもすぐに乾いてドライな状態で快適。だからでしょうか、本来寒がりなのですが、薄着で過ごすことができました。2日間、着替えず過ごしましたが、ニオイもまったく気になりませんでした。

後日、ドライレイヤークール ブラタンクトップも着用したのですが、今までのブラ問題――きつすぎる(サイズアップしても窮屈すぎる締めつけ)、汗をかいた後の脱ぐことの困難さ、汗冷え、擦れ、肩が凝る…などなどの諸問題をことごとくクリア! 日常のランニングでしか使用してませんが、揺れない程度のほどよいフィット感、汗をかいても快適。ブラ問題に悩まされているトレラン女子に広めていこうと思います」

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モデル・イラスト:佐々木寿江
原稿:麻生弘毅
写真:宇佐美博之
協力:ファイントラック

麻生 弘毅

フリーランスライター

麻生 弘毅

フリーランスライター

バックパッキングやカヤックによる長い長い旅にハマりがち。ロックと酒、焚き火が好き。著書に北極圏の泥酔紀行『マッケンジー彷徨』(枻出版社)がある