利用広がるYAMAP経由の登山届|登山計画からの提出で手間を削減、提出率アップ【遭難ZEROプロジェクト担当レポートvol.1】

山頂や分岐ポイントをタップで追加していくと、簡単に作成できるYAMAPの登山計画。YAMAPでは、この登山計画をそのまま正式な登山届として提出できるように、各自治体・警察との連携協定を推進しています。

こうした連携の取り組みは、実際の登山者の行動や遭難救助の現場にどのような貢献をしているのでしょうか。

YAMAP経由での登山届が全体の半数超となった地域がある状況や、遭難事案が発生した際の警察・救助機関との対応などについて、YAMAPで自治体・警察との連携を担当する矢島が2回に分けてお伝えします。

2024.04.26

矢島夕紀子

YAMAP 遭難ZEROプロジェクトリーダー

INDEX

宮城ではYAMAP経由の登山届提出数が全体の半数超に

まず、こちらのデータをご覧ください。宮城県が公開されている登山届提出数のデータをもとに、YAMAP経由の提出数を分けたものです。

YAMAPが宮城県と登山届の連携を開始した2023年5月30日以降、季節的な要因を考慮した上でも、YAMAP経由の登山届が全体の提出数を押し上げていると考えられます。

2023年6月〜12月で、YAMAP経由の登山届提出数は全体の54.5%を占めました。

長野でも40%がYAMAP経由に

2020年から登山届連携を行っている長野県でも、2022年4月〜2023年3月に提出された登山届のうち、40%がYAMAP経由のもので最大割合を占めています。

YAMAPからの登山届で準備をラクに、登山をより安全に

山頂や分岐ポイントをタップで追加していくと、簡単に作成できるYAMAPの登山計画

YAMAPのアプリダウンロード数はおかげさまで420万件(2024年4月時点)を記録。登山GPS地図アプリとして一番のダウンロード数があるサービスに成長しました(2021年8月 登山アプリ利用者数調査 [App Ape調べ])。

多くの登山者にご支持いただいているYAMAPで登山届が提出できるようになり、登山計画と一緒に作成できる利便性もあって、警察への提出率アップにも貢献したとみられます。

ただ、YAMAPの登山計画は、登山届の作成のためだけではありません。選択したルートのコースタイムの合計が自動で計算される機能もあり、自分の体力とペースにあった無理のない計画を立てるのに役立ちます。

ルートの合計時間のほか、休憩時間などの設定もできるYAMAPの登山計画

「登山届を提出するために登山届をつくる」という感覚ではなく、ルートのシュミレーションや、危険箇所、エスケープルートの確認などをしながら登山計画を作成するのも、登山者の安全登山には不可欠。

計画したルートは地図上に表示され、「到着時刻予測」機能(YAMAPプレミアム機能)も使えるようになり、山行中に役立ちます。

印刷して未締結の自治体にも提出できる

YAMAPは2024年3月時点で、25府県と登山届連携の協定を締結。残る都道府県との連携も目指しています。

現段階で協定を連携していない地域でも、印刷した登山計画は「登山届として必要な項目」を満たす内容になっているので、入山口のポストなどに提出できます。各自治体によってフォーマットが異なる場合もあるので、詳細は登山前にご確認ください。

連携協定が締結済み・未締結の自治体への提出についての詳細:YAMAPヘルプセンターを見る

登山計画はLINEでも家族や友人と共有

YAMAPの登山計画は、一緒に登る仲間や、帰宅を待つ家族やパートナーにLINEやメール、SNSで簡単に共有でき、自身の遭難したときのリスクの低減はもちろん、待っている人たちの安心につながります。

登山計画の作成は、遭難が発生した際には救助機関が捜索・救助を行うための重要な手がかりになります。万が一遭難した際、登山者本人が帰宅しないことでまず気付くのが家族や友人。

作成した登山計画を事前に共有しておけば、どの登山口から入山したかもわかり、捜索範囲がすぐに絞り込めます。

家族にも知人にも登山情報を伝えず、駐車場に車が数日とまっているという通報でやっと捜索が始まるケースも過去にはあり、早期の捜索開始のためにも、必ず登山計画は家族や親しい人に伝えて出発しましょう。

登山届提出のための最後の1アクションを忘れずに

そして、ここからが大事なお願いです。

YAMAPで登山計画を作成した際には「提出する」ボタンを押すところまでお願いします。このボタンを押されなければ、YAMAPと登山届連携をしている警察に登山届を提出したことになりません。


YAMAPでは以前、捜索にあたる警察から「遭難者がYAMAPで登山届を提出したと言っているが、届出の状況を確認してほしい」と連絡を受けたことがあります。

該当者のデータを調べてみると、登山計画を保存しているだけで「提出する」ボタンが押されていない状態。この場合、警察で直接登山届を確認できず、YAMAPに問い合わせをする手間と時間が発生してしまいます。

県の条例がある山域では、登山届の未提出は罰金が課されることもあります。最後のアクション「提出する」ボタンを忘れずに押してください。

登山計画の作成方法

 ▼登山計画の作成を動画で見る

作成方法の詳細を知る:YAMAPヘルプページを見る

登山計画を立てるときは、慎重に、複数の情報を

YAMAPの登山計画は便利で簡単に作れる一方、簡単に作れるがゆえに、山のリサーチ不足になる可能性もあります。特に標高が高い山や、積雪・残雪期は天候の急変も含め、同じコースでも危険度が変わります。

そういった情報はYAMAPの登山計画を作成するだけでは絶対に把握できない情報です。そのため、YAMAPの活動日記から最新の情報を収集したり、他のユーザーさんや知人に聞いてみたり、YAMAP以外の情報も含め、信頼できる複数のソースから情報を集めて十分な事前準備をしましょう。

また、YAMAPでは赤線でルートが引かれていない登山道で登山計画の作成はできません(2024年4月時点)。YAMAP以外でも登山計画をつくれるWebサイトやサービスがあるので、ご自身に合ったものを活用してください。

登山計画は事前にできる安全の第一歩。ご自身の体力や技量を見極めて、しっかりと計画を立てましょう。

YAMAPユーザーさんを真ん中に考えているからこそ

YAMAPの機能開発は、毎日のように問い合わせフォームに寄せられる、ユーザーさんの要望を参考にさせていただきながら、山でのシンプルな使い勝手の良さを大事にしています。

いわゆる登山届のフォーマットから発想するのではなく、山を歩く前に「ユーザーさんが解決したい課題は何だろう?」と考えて生まれたのが、登山計画の機能。

「登山届は出さないといけない」と頭では思っていても、実際には億劫に感じる人がたくさんいるはずです。

ユーザーさんの行動を汲み取ってアプリに組み込み、登山計画を立てることの利便性やワクワク感を起点に登山届の提出まで行ってもらう。ユーザーさんを真ん中において考えるYAMAPらしいやり方が現れていると思います。

次回は、実際にYAMAPが自治体・警察・救助機関とどのような連携を行っているのか。どのような形で貢献をしているかなど、より現場に近い内容をお伝えします。

参考:ヘルプセンター 登山計画はどうやって作るの?

矢島夕紀子

YAMAP 遭難ZEROプロジェクトリーダー

矢島夕紀子

YAMAP 遭難ZEROプロジェクトリーダー

広報・PR担当として、主に登山届連携に関連する業務及び遭難事案に従事。2022年秋に九州から関東に転居し、現在は北アルプスへの登山を楽しんでいます。