秋冬は山に着ていくウェアのチョイスが一番悩ましい季節。行動中と休憩時の熱量の違いから、暑かったり寒かったりと目まぐるしく体感温度が変わるだけでなく、行動中の汗を放置すると低体温症のリスクも。
そんな難しい「秋冬のウェア」にミレーのアクティブサーマルレイヤーという選択肢があります。今回は、4種類のアイテムごとにどんなシーンに合うのかを紹介していきましょう。
2024.09.18
大関直樹
フリーライター
夏山にくらべて寒暖の差が激しくなる秋冬登山。登山前は寒いなと思っても、歩き出すと暑さを感じて、汗をかいてしまうこともしばしば。ウェア内が汗で濡れたまま、秋冬の冷たい風に吹かれると、急速に体温を奪われて低体温症のリスクも発生します。そこで、おすすめしたいのが、ミレーのアクティブサーマルレイヤーです。
登山で着用するサーマルレイヤーとは、保温着のこと。従来のサーマルレイヤーは、休憩や宿泊など行動時以外で着用するためのものでした。
しかし、行動中も着られる保温着として開発されたのが、アクティブサーマルレイヤーです。その大きな特徴は、体温が上昇してもオーバーヒートしないように通気性を高めたり、汗でウェアが濡れても保温力が落ちないように設計されていること。
<アクティブサーマルレイヤーの特徴>
特徴①:適切な保温力を持つ
特徴②:高い通気性を持つ
特徴③:高い吸汗速乾性を持つ
特徴④:運動に適した伸縮性を持つ
ミレーでは、このようなアクティブサーマルレイヤーを保温力、通気性などにバリエーションを持たせて複数リリース。気温やアクティビティによって、最も適切なモデルをチョイスできるので、秋冬登山を快適に楽しむことができます。
それでは、さっそくミレーが提案する4タイプのアクティブサーマルレイヤーの特徴をチェックしていきましょう!
ミレーのオリジナル保温素材「スルーウォーム」を表生地も裏生地をつけずに、そのまま着用するという画期的なアイテム。
モコモコした起毛にたっぷりと空気を溜め込むので、保温性は抜群。しかも、表・裏生地がないので通気性が非常に高く、汗を素早く吸収拡散してくれます。秋冬登山では、歩き出す前は寒いのに、動くと暑さを感じることがありますが、そんな悩みを吹き飛ばしてくれる一着です。
しかも、重量は約190g(おにぎり2個分)という驚くほどの軽さ。バックパックにもコンパクトに収納できるので、荷物が多くなりがちな秋冬登山では、とても重宝します。
保温性と抜群の通気速乾性を持つ「スルーウォーム」ですが、スリムなシルエットにすると伸び縮みしにくいというウィークポイントがありました。その点を改良するため肩回りや肘、サイドなどにストレッチパネルを配置。身体のラインに沿ったシルエットながら、動きを妨げることがありません。より動きやすさを求める人におすすめの一着です。
「スルーウォーム」を中綿に、撥水性と防風性を備えた「ブリーズバリヤー」を表生地に使用したジャケット。風雨から身体を守ってくれながら、ウェア内の蒸れを逃してくれるのが特徴です。ストレスフリーで動けるように立体裁断を施し、適度なストレッチ性を持たせることで、どんな状況でも快適な行動できるウェアに仕上がっています。
次に紹介するワッフルフーディーは、柔らかい肌触りのメリノウールを70%、速乾性に優れた化繊生地を30%の割合で混紡。サイドに縫い目のない筒状に編み上げたことで、絶妙なフィット感と保温性、通気性をバランスよく実現しました。
生地の表面には凹凸のあるワッフル起毛が施されているので、汗抜けがよいのも大きな特徴です。また、背中や脇、口元などの汗をかく部分は編み方を変えることで、より一層の汗抜けとストレッチ性を実現。ウールは、耐久性に劣るという弱点がありますが、化繊と混紡することで使い続けてもピリング(毛玉)が起きにくくなっています。
ファストハイクやトレランなど運動量の大きなアクティビティにおすすめの一着が「ドライグリッドフーディー」。
肌面には、水分を弾く素材、ポリプロピレンをグリッド状に配置。汗を素早く吸収してくれるので、肌は常にドライな状態がキープされます。さらに表面には吸水&拡散性に優れたポリエステル素材を組み合わせることで、吸汗速乾性をさらにアップ。激しく動いて汗ばんでも、2種類の素材が呼吸をするかのように湿気を排出してくれるので、いつでも快適にアクティビティを楽しめます。
アルファライトスウェットⅡジャケットは、軽量でありながら保温性と汗処理能力を備えた「ポーラテックアルファ」を使った一着。
表地と裏地は、通気性のよいメッシュ生地を配置することで、発汗時の蒸れを防いでくれます。薄手でシルエットもスマートなので、他のウェアとレイヤリングしやすいのも魅力。秋・冬はインナーにドライナミックメッシュやワッフルウールフーディを着るのがおすすめです。厳冬期など寒さが厳しいときは、上にシェルを羽織るとよいでしょう。
ミレーが提案する4つのサーマルレイヤーを実際にフィールドで着用した山岳ガイドの杉本龍郎さん。どんなシチュエーションで、どのように着用するとよいのか、お話をうかがいました。
①スルーウォームフーディ
――スルーウォームフーディを実際に着用した印象はいかがですか?
4つのアクティブサーマルレイヤーの中で、これが一番通気性に優れていると思います。冬の寒い時期でも、樹林帯などを歩いていると暑さを感じることが多いんですよね。でも、スルーウォームフーディなら風が通り抜けるので、気持ちいいんですよ。
――杉本さんはどんなレイヤリングで使っていますか?
晩秋や初冬など、それほど寒さが厳しくないときは、ミレーの汗処理アンダーウェア「ドライナミックメッシュ」との組み合わせが最高です。もう少し寒い時期は、その上にブリーズバリヤージャケットを羽織ることが多いですね。
――アクティビティとしては、どんな登山に向いていますか?
あまり寒くない秋や春のハイキングや低山歩きがいいと思います。雪山も、この上に1枚着たら、行けますよ。フリースをアクティブサーマルレイヤーとして着ている人で、「たまに暑さを感じるな」という人には、とくにおすすめです。
個人的には、いい意味で山ウェアっぽくないおしゃれな感じも気に入っています。家でスルーウォームフーディを着ていたら、妻が「どこのアパレルで買ったの?」と聞いてきたんです。ミレーのウェアだよと答えたら「でも、薄いじゃん、これ」って言われました。ちゃんと、「薄いから快適なんだよ」って教えてあげましたけど(笑)。
②ワッフルウールフーディ
――ワッフルウールフーディは、どんなシーンで着用していますか?
スルーウォームフーディとは違って、冬山登山のインナーとして使うことが多いです。ドライナミックメッシュの上に常にこれを着ていますね。肌触りがいいのと、汗によるベタつきがないところが気に入っています。
――具体的には、どこの山に行くときに着ることが多いですか?
厳冬期の八ヶ岳とか南アルプスなどですね。ヒマラヤ遠征のときも着ていました。標高6,000mの場所で、ワッフルウールフーディ1枚で過ごしたこともあります。これよりも薄いウェアだと、風が吹いたり気温差があると、一気に汗冷えしちゃうんですよ。ワッフルウールフーディは、適度な厚さなので、保温性としっかりとしたフィット感を感じることができました。
――素材にウールが使われているので、消臭効果もあると思うのですが
遠征のときは、10日くらい着続けたこともありますが、臭いは気になりませんでした。ただ、周りの仲間も臭っていたので、参考にならないかもしれません(笑)。実際として、3~4日程度なら、全く問題なく着続けられると思います。
③ドライグリッドフーディ
――ドライグリッドフーディについては、いかがですか?
まず驚いたのは、吸汗速乾性ですね。汗をかいても、どんどん吸い取ってくれます。通気性だったらスルーウォームフーディの方が高いと思うんですけど、汗をかくアクティビティのときや、もう少し保温性が欲しいときは、こちらを選びます。
――どんな山に着ていくとよいでしょうか
季節や山を問わず、どこでも持っていけると思います。僕は、一年中ザックの中に入れていますよ。夏の暑いときに半袖で行動していて、稜線に出て肌寒さを感じたらサッと羽織る。秋冬なら、気温に応じてドライグリッドの上にシェルを着ることもあります。とにかくこれを持っていくと安心というお守りのような使い方ができるウェアなんですよ。
――おすすめのレイヤリングはありますか
僕は試したことがないですが、トレランをする人は、ドライナミックメッシュの上にこれを着てもいいと思います。きっと、どんどん汗を吸い取ってくれるんじゃないでしょうか。そこまで運動量の多くないアクティビティをするなら、ワッフルウールフーディの上に着てもいいんじゃないでしょうか。
④アルファライトスウェットⅡジャケット
――アルファライトスウェットⅡジャケットは、いかがでしょうか
まず感じたのは、軽さのわりにめちゃくちゃ暖かいことですね。他の3着とくらべると、保温性が一番高いと思います。そのわりに汗抜けも悪くないです。ただ、秋冬でも晴天のときにこれを着て、ガンガン歩くと少し暑さを感じるかもしれないですね。
――どんなシーンでの着用がおすすめですか
雪山の小屋泊とかテント泊に向いていると思います。気温にもよりますが、雪山はどうしても寒いのがイヤで厚手のダウンを持っていく人が多いと思うんですよ。アルファライトスウェットⅡジャケットは、、ダウンよりかさばらず、速乾性もあるので濡れを気にしなくてもいい。行動中だけでなく小屋やテントの中で羽織るにもちょうどよい暖かさです。
――あまり動かないときにも使えるということですね。
そうですね。ただし、体感温度というのは個人差がありますし、同じ山域でも季節によって気温や風もぜんぜん違います。ベストなチョイスというのは、自分で見つけるしかないと思います。一般的に言って、冬山の激しいアクティビティじゃなかったらアルファライトスウェットがいいのではないでしょうか。
以上、4つのアクティブサーマルレイヤーの特徴と着用シーンについて、紹介しました。今回紹介したアイテムは、ミレー直販サイトのほか、全国の石井スポーツや好日山荘などのアウトドアショップで販売されていますので、ぜひ、手に取ってチェックしてみてください!
原稿:大関直樹
撮影:小山幸彦(STUH)
協力:杉本龍郎、ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン