ありとあらゆる缶詰を食し、世界一の缶詰通としてメディアにも多数出演する「缶詰博士」こと黒川勇人氏。実は山登りが趣味で、山に登っては絶品缶グルメに舌鼓を打っているのだそうです。そんな博士がとっておきの山ごはんを紹介してくれる本企画。第1回のテーマはペコペコのお腹を満たしてくれる絶品缶詰丼。缶詰で作る「十勝の豚丼」と「帆立ピラフ」のレシピです。フリーズドライにはないジューシーで芳香豊かな味わいをぜひご堪能ください!
缶詰博士が推薦する激ウマ「缶動・缶たん!山ごはん」 #01/連載一覧はこちら
2020.09.15
黒川 勇人
缶詰博士
僕は4歳の時にキャンプで食べた缶詰の味に缶動(感動)し、それ以降のジンセーを缶詰に捧げてしまった男だ。ゆえに缶詰が好きでキャンプも好き。登山も大好きで、ひそかにYAMAPに登録したりしている。
僕の野望は、登山が大好きなみなさんに、缶詰をもっともっと愛用してもらおうというもの。これから5回にわたってイチオシ缶詰を紹介しながら、それを使った絶品缶詰レシピも書き添えようと思う。
第1回目のテーマは「絶品缶詰丼」。登山といえば炭水化物。炭水化物といえばやっぱりごはんである。缶詰はもともとごはんと相性がいいけど、合わせる時にひと工夫を加えることで悶絶必至の丼ものが出来る。今回は2つの缶詰を使って、和と洋の2品を紹介したい。
缶詰は極洋「豚の角煮」160g 税込400〜500円ほど
いきなり核心から入るが、極洋「豚の角煮」はウマい。中華の東坡肉(トンポーロー)をイメージしており、2007年に発売されて以来、世の豚肉Loversを虜にしてきた。
脂身と赤身が層を成す三枚肉を厚くカットし、甘辛い砂糖醤油で煮込んであるのだけど、その汁は透き通っている。肉の下処理で余分な脂を抜いているのだ。誠実に造られた缶詰なのであります。
この缶詰を見て真っ先に思いついたのは北海道・十勝の豚丼。白ごはんの上にタレまみれの豚肉とグリーンピースが乗った美味絶佳の丼だ。これを山上で再現したい。
1人分の材料は水170ml(規定量)、アルファ化米1袋(とうもろこしご飯がベター)、フリーズドライのグリーンピース適量と豚の角煮1缶。
170mlの湯を沸かすあいだにアルファ化米の封を切り、脱酸素剤と付属のスプーンを取り除く。缶詰はフタを開けておく(けっこう忙しい)。
沸騰した湯をアルファ化米の袋に入れて手早くかき混ぜ・・・。
ごはんの上に角煮とグリーンピースを入れる。ここまで大急ぎでやって中の熱をなるべくロスしないようにし、袋のジップで密封。あとは規定時間を待って器によそえば・・・。
缶汁をかけるというはしたない行為も、もちろん許されるのであります。塩分・糖分の補給になるし、缶汁を残さないという利点もある。
ただ、僕は全部かけられず(味が濃いので)、1/3ほど缶汁を残してしまった。でもティッシュなどに吸わせ、空のアルファ化米の袋に入れて持ち帰れば問題なし!
おまけ画像。ふだんの単独行なら袋から直に食べておりますぞー。
缶詰は明治屋「おいしい缶詰・国産帆立のバターソース」75g 税別550円
2品目はピラフである。ピラフは丼とは言えないけど、まあ同じごはんものということでご缶弁(勘弁)いただきたい。
ここで使う明治屋「おいしい缶詰・国産帆立のバターソース」には、陸奥湾産ホタテが使われている。この湾には八甲田連峰のブナ林に降り注いだ雨水が流れ込んでいて、ブナ林の滋養がたっぷり含まれている。ゆえに植物性プランクトンが豊富に育ち、それを食べて育ったホタテもまた、他の地域では味わえないふくよかな甘みを持っているのだ。
そんなホタテをバターソースで仕上げているのが、いかにも日本の洋食界をリードしてきた明治屋らしい。ということは、そのバターソースで米を炒めれば、正真正銘のピラフになると思うのだ(たぶん)。
1人分の材料は水100ml(規定量より70ml少なくした)、アルファ化米の白飯1袋、フリーズドライのグリーンピース適量、チリペッパー少々、塩ひとつまみと国産帆立のバターソース缶が1缶。
フランパンに白飯投入。弱火にかける。
ここで開缶! フタを取るやいなや、その濃厚なバターの香りに虫が寄ってくるのはしかたなし。
白飯に缶汁だけを混ぜる。ホタテは缶内に取っておく。
全体を混ぜながら1分炒める。この時点でたまらない匂いが拡散し、さらに虫が寄ってくるのはやむなし。
水100ml、塩、レッドペッパー、グリーンピースを加えてもう1分加熱。
火を止め、取っておいたホタテを星のごとく散りばめる。と、ここで秘密兵器が登場。
この冗談のように小さなスパチュラはアマゾンでも売っている既製品。これが缶詰には欠かせない(重量3g)。
こうして缶内面をきっちり拭えるのだ! バターソースのウマ汁は一滴たりとも残したくない。あとはフタをして(火は消したまま)、10分待てば・・・。
かくのごとし。ホタテピラフの缶成であります。米に対して少なく見えた缶汁も、ちゃんと全体に行き渡っていた。ただ塩気は薄いから、塩の追加は必須だ。
バターのこっくりした風味に、八甲田連峰と陸奥湾が育んだホタテのうまみまで加わって、それが沁みた白飯がもうトータルでやばい。
シーフードを常温で山に持ち込めるのは缶詰ならでは。なお、空き缶はアルファ化米の空き袋に入れてジップを締めれば、匂いを漏らさずに持ち帰れますぞ。
今回のようなおかず缶詰は「温める」「野菜を足す」、この2点が缶要(肝要)だ。温めれば脂分が溶けてうっとりした食感になるし、野菜は彩りと風味を加えてくれる。その野菜もフリーズドライにすれば、食中毒の危険がぐっと減るのであります。読者のみなさんにも、ぜひトライしてほしいと思う。
・極洋「豚の角煮」160g 税込400〜500円ほど
・明治屋「おいしい缶詰・国産帆立のバターソース」75g 税別550円
ともにネットショッピングなどで購入可
※野外での火器使用は山火事や公共のベンチ・テーブルの破損に十分注意して実施してください。また、使用が禁止されているエリアでの火器使用はくれぐれも実施しない様にしましょう。
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