花の百名山・月山へ。霊峰を巡り名湯に癒される旅|やまがた百名山・村山編

東北地方南部に位置し、東京駅から山形駅まで新幹線で約3時間弱とアクセス良好な山形県。日本百名山だけでも6座を有する山岳県でもあります。

今回は、その中でも県の中央部に位置する「村山エリア」の魅力をご紹介
このエリアの象徴であり「花の百名山」としても名高い月山は、7〜8月がベストシーズン。山頂一帯が色とりどりの高山植物に埋め尽くされる光景は、夏だけの特別な贈り物です。この絶景、どうぞお見逃しなく。

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山形県の人々から愛する故郷の山を募り、選定されたのが「やまがた百名山」。YAMAPでは、この峰々を舞台に2025年8月1日(金)〜11月3日(月・祝)まで「やまがた百名山デジタルバッジキャンペーン」を開催しています。

2025.07.31

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

INDEX

山形県の中心となる村山エリア

県庁所在地である山形市が位置し、山形県の中央に位置する「村山エリア」。山、食、文化、ここでしか味わえない魅力の宝庫です。

・日本百名山に四方を囲まれる
日本百名山に数えられる蔵王や月山、朝日連峰などの美しい山々に四方を囲まれています。夏の高山植物、秋の紅葉狩り、冬の樹氷観賞など、一年を通して山の見所が満載。

・まさにフルーツ王国!旬の恵みを味わい尽くす
盆地の寒暖差が、さくらんぼをはじめ、ラ・フランス、ぶどう、りんごなどの果物を甘く美味しく。生産量全国1位を誇るさくらんぼは、山形県の代名詞的な存在で、山形県生まれの「佐藤錦」「紅秀峰」、2023年デビューの「やまがた紅王」など種類も豊富です。

・熱気あふれる祭りの数々
「ヤッショ、マカショ!」の掛け声が響き渡る夏の山形花笠まつり(毎年8月5日~7日)や、そのスケールに驚く日本一の芋煮会フェスティバル(例年9月中旬)など、地域一体となるパワフルなイベントが目白押し。

関東エリアからは「山形新幹線」で、東名阪エリアからは「山形空港」で、仙台エリアからは「山形自動車道」で。アクセスしやすい立地も魅力です。

期間中の登頂でバッジがもらえる!村山エリアおすすめの4座

それでは「やまがた百名山デジタルバッジキャンペーン」で対象となっている村山エリアの山とその魅力を紹介します。1座の登頂で「エリアバッジ」は獲得できますが、せっかくの山形への旅、ぜひ複数の山を制覇してください。

月山|雲上の花畑をどこまでも。月山神社へと続く、高山植物の宝庫

夏の天空の花畑のような月山の登山道(与太ハイカー YUKIさんの活動日記

日本百名山・東北百名山・花の百名山にも選定されており、山形県でも屈指の人気を誇る名峰が月山(1,984m)です。アプローチは庄内側の月山八合目から登る羽黒口と、村山側の月山リフトを利用する姥沢口がありますが、後者であれば同じくやまがた百名山の姥ヶ岳(1,670m)を経由して山頂を目指すことができます。

月山へと続く稜線はまさに雲上の楽園。夏には可憐な高山植物が咲き競うお花畑が広がり、秋の山肌はカラフルなカーペットのような紅葉で彩られます。月山リフトを利用すれば標高1,510mのリフト上駅からスタートできるので、手軽にこの絶景を楽しむことができるのです。

秋の紅葉と夕日に紅く染まる月山(ぬーさんの活動日記

月山は羽黒山(414m)・湯殿山(1,500m)とあわせて出羽三山の一座で霊山としても重要な存在。羽黒山は人々の現世利益を叶える「現在の山」、湯殿山は命の誕生を象徴する「未来の山」、月山は祖霊が鎮まる「過去の山」と言われています。

月山山頂の月山神社には、御祭神として月読命(ツクヨミノミコト)が祀られています。兄弟神として知られる太陽神・天照大御神(アマテラスオオミカミ)や八岐大蛇退治で知られる須佐之男命(スサノオノミコト)と比べると日本神話への登場も控え目な月詠命。そのミステリアスな存在感から、今も多くの参拝者が訪れる名所です。

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葉山|”もうひとつの出羽三山”。古の修験道に想いを馳せる、静かなる霊峰

鐘が設置された葉山神社・奥の院(山女魚さんの活動日記

県内に多数ある同名峰と区別するために「村山葉山」と呼ばれることも多いのが寒河江市、村山市と大蔵村の境に位置する葉山(1,462m)です。奈良時代から修験道の行場(修行の山)として栄え、山中には多くの宿坊を抱える大寺院でした。

また、かつて出羽三山は羽黒山と月山そして葉山を指し、湯殿山は総奥の院(もっとも大切な場所)とされていた時代もありました。現在でも山頂から北上した稜線上には修験道の聖地である葉山神社・奥の院が鎮座しています。

極楽浄土をも感じる秋のトンボ沼の池塘(Lukeさんの活動日記

信仰の山という観点以外からも、葉山は魅力的です。山肌は豊かなブナ林に覆われ、新緑から紅葉まで季節の移ろいを感じさせてくれます。また稜線からの眺望も抜群で、山形県内の日本百名山(月山・大朝日岳・鳥海山・蔵王山・飯豊山・吾妻山)すべてを見ることができます。

稜線上にはトンボ沼をはじめとする池塘・湿原・お花畑も点在しており、夏は様々な高山植物が咲き乱れます。潤いに満ちたその光景は、さながらサンクチュアリ。いにしえの山伏(修験道の信者)たちも、この絶景に極楽浄土を感じ取っていたかも知れませんね。

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甑岳|ユニークな山頂地形と、鳥海山まで見渡す大パノラマ

追立山付近から望む甑岳。器のような特徴的な山容(ざぶんさんの活動日記

村山市の東側に堂々とした山容でそびえるのが東北百名山にも選定されている甑岳(こしきだけ・1,015m)です。かつて、米などを蒸すために古代中国発祥の「甑」という器が使われていましたが、これを逆さにしたような山容であることが山名の由来とされています。

登山口は西麓の岩神口と幕井口がメインです。尾根上を行く岩神口ルートでは途中の岩神山(450m)や追立山(628m)を越えながらのプチ縦走気分を味わうことができ、谷筋を行く幕井口ルートには途中に馬立沼があります。

山頂広場からの眺望。出羽三山、鳥海山が見渡せる(めぐみさんさんの活動日記

岩神口と幕井口が合流すると、山頂へ向かう稜線が始まります。甑岳の山頂自体はブナ林に覆われており眺望はありませんが、手前の山頂広場をはじめ随所に展望ポイントが。特に村山市街を挟んで西側にそびえる葉山と背後の出羽三山、北東に秀麗な姿でそびえる鳥海山が見事です。

なお、岩神口と幕井口近くにある東沢バラ公園は色とりどりのバラが咲く名所。例年、6月と9月中旬~下旬に秋のバラまつりが開催されるので、立ち寄っても良いでしょう。園内にあるバラ交流館ではバラを使ったソフトクリームが大人気で、視覚だけでなく味覚でもバラを満喫することができます。

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蔵王山・地蔵岳|ロープウェイで地蔵尊へ。そこから始まる、三つの神を巡る旅路

樹氷を形づくる樹木オオシラビソに覆われた山肌(ちひろさんの活動日記

出羽三山と並ぶ村山地域の霊山が、山形・宮城県境に位置する蔵王山。最高峰・熊野岳(1,841m)を筆頭に巨大な火口湖・御釜の縁に連なる刈田岳(1,757m)など複数の山々から構成される日本百名山の一座です。冬のスキーや樹氷が有名ですが、蔵王国定公園に制定されており、独自の植生や高山植物などの自然も豊かな山域です。

蔵王山は様々なご利益をもたらしてくれる存在として古くから村山地域の人々から信仰を集め、現在でも家内安全・商売繁盛の神様である蔵王大黒天、不老長寿・水の神様である蔵王大権現、災難除け・所願成就を願う蔵王地蔵尊の蔵王三大神が山形県側の山中各所に祀られています。

姥地蔵がたたずむ(hossyさんの活動日記

最高峰・熊野岳山頂の蔵王山神社(地図には旧社名の熊野神社と記載)は修験道の開祖である役行者が奈良県・金峯山寺の金剛蔵王大権現を勧請して開山したもので、蔵王という山名のルーツでもあります。

そんな蔵王山の霊峰の中でも山形県側からのアクセスが良いのが地蔵岳(1,736m)。蔵王温泉からの蔵王ロープウェイ山頂線・地蔵山頂駅前には1775年に建立された高さ2mを超える堂々たる蔵王地蔵尊が祀られています。ここから約15分ほどで地蔵岳山頂、さらに15分ほど下ったワサ小屋跡には姥地蔵がたたずんでいます。もちろん熊野岳まで足を延ばせば、蔵王の信仰と自然を満喫することができるでしょう。

熊野岳まで足を伸ばせば、かの有名なお釜が(たかみーさんの活動日記

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登山後は温泉でさっぱり!村山エリアの名湯

山形県の大きな魅力のひとつが、数多くの温泉です。登山でかいた心地よい汗を温泉で流せば、さっぱり爽快。歴史ある名湯・秘湯も多く、山形への山旅では、ぜひ立ち寄りたいところです。ここでは、村山エリアの山から下山後におすすめの温泉地を紹介します。

月山志津温泉|出羽三山への参拝者も迎えた宿場町に湧き出でる温泉

月山の登山後は、月山志津温泉。身体が芯から温まる(やまがたへの旅より

月山の登山後におすすめなのが、月山志津温泉です。この場所は、古くは村山地区と庄内地区を結ぶ六十里越街道沿いの宿場町として栄え、出羽三山への参拝客も宿泊しました。塩分濃度が強く身体が芯から温まる美肌の湯は、月山登山の余韻に浸るのにぴったりです。

蔵王温泉|日本屈指の歴史を誇る湯けむりの街をめぐる

蔵王山の登山後は、蔵王温泉。日帰り温泉施設も充実

蔵王山の登山後におすすめなのが、開湯1900年という歴史を誇る蔵王温泉。日本武尊(ヤマトタケル)の東征に従軍した吉備多賀由(キビノタガユ)が発見したとされ、強酸性の硫黄泉は殺菌効果が高く、美肌の湯として人気です。ホテル・旅館の他に3つの共同浴場・3つの足湯・5つの日帰り温泉施設があり、湯けむり漂う温泉街を散策しながら、これらを巡るのも楽しみです。

山以外にも魅力いっぱい!村山エリアの観光

せっかく山形県を訪れたならば、登山だけでなく観光も楽しみたいもの。ここでは、村山エリアおすすめの観光地を紹介します。

フェリシア月山カヌーセンター|2025年6月オープンの新名所

月山湖の水上アクティビティを気軽に楽しめる(西川町ホームページより

出羽三山を源流とする川の水を集め、村山地方の重要な水がめとなっているのが寒河江ダム(月山湖)です。ダムの水は寒河江川へ注がれます。 ここには名物の「月山湖大噴水」があり、その打ち上げ高112mは日本一を誇ります。

そんな月山湖に2025年6月にオープンしたばかりなのが、フェリシア月山カヌーセンターです。プロのカヌー競技の強化を目的として作られましたが、併設されたHOBIE BASE GASSANでは観光客も手軽に大型ボードやセーリングカヤック体験が可能。月山湖の水上を存分に楽しむことができる新名所です。

果樹園とカフェめぐり|150周年を迎えた山形のフルーツ栽培の歴史を美味しく堪能

ラフランス狩り(やまがたフルーツ150周年

山形県は2025年に、さくらんぼや西洋梨などの苗木が植えられてから150年という記念すべき「やまがたフルーツ150周年」を迎えます。

いずれも直営カフェが併設された観光果樹園・高橋フルーツランド(上山市)、王将果樹園(天童市)、仲野観光果樹園(天童市)では果物狩りとスイーツの両方を味わうことが可能。夏から秋は桃、ぶどう、ラ・フランス、りんごなどが旬を迎えます。

紅葉シーズンまでチャレンジできる「やまがた百名山デジタルバッジキャンペーン」

紅葉に彩られる月山

8/1〜11/3と期間が長く、紅葉シーズンまで楽しめる「やまがた百名山デジタルバッジキャンペーン」。今回ご紹介した村山エリアだけでなく、置賜エリア、最上エリア、庄内エリア、4つのエリアそれぞれのエリアバッジがあり、エリアバッジの複数獲得で「コンプリートバッジ」も手に入ります。

他エリアの記事も読み、この機会に「やまがた百名山」を堪能してください!

執筆:鷲尾 太輔(登山ガイド・山岳ライター)
協力:山形県



鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

鷲尾 太輔

山岳ライター・登山ガイド

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派 ...(続きを読む

登山の総合プロダクション・Allein Adler代表。山岳ライターとして、様々なメディアでルートガイドやギアレビューから山登り初心者向けのノウハウ記事まで様々なトピックを発信中。登山ガイドとしては、読図・応急手当・ロープワークなどの「安全登山」から、写真撮影・山岳信仰・アウトドアクッキングなど「登山+αの楽しみ」まで、幅広いテーマの講習会を開催しています。とはいえ登山以外では根っからのインドア派…普段は音楽・アニメ・映画鑑賞や、読書・料理・ギター演奏などに没頭しています。

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