YAMAPユーザーの中から、山の環境整備や活動日記で個性が光ったユーザーを表彰するYAMAP AWARDS特別推薦賞。
山ファミリー部門を受賞したのは、大阪府在住の子づれ登山(YAMAPアカウント名)ファミリー。雨の日も雪の日も、4人家族で近所の金剛山(1125m)に100回以上登った継続力が讃えられました。家族を代表して、お父さんのケンゴさんに、家族登山の喜びと子どもの成長を見守った日々を聞きました。
2026.09.15
米村 奈穂
フリーライター

大阪府在住の子づれ登山ファミリー。父ケンゴさん、姉(8歳)、弟(6歳)、母ショーコさん。ケンゴさんのイラストをプリントしたオリジナルTシャツを着て金剛山の山頂にて
── 特別推薦賞・山ファミリー部門の受賞おめでとうございます。2025年秋に、金剛山100回登山を達成されたそうですね。まずは登山を始めたきっかけをお聞かせください。
ケンゴさん 家が近かったのもあって、子どもを連れておにぎりを持ってちょっとハイキングくらいの気持ちで金剛山に立ち寄ったんです。金剛山の途中に公園というか園地があって、そこまで行ってお弁当を食べたのがきっかけでした。
── 最初からファミリー登山だったんですね。
ケンゴさん そうですね。登山をするぞというふうに行ったわけじゃなくて、ピクニック感覚でした。山登りするのはそれが初めてでした。
── 初めての登山はいかがでしたか?
ケンゴさん 山の自然の雰囲気もすごくよかったですし、登っていたら登山者どうしでいろんな方に挨拶する習慣があるじゃないですか。それがすごくいいなと思いました。

小さなお花を探していると、「何してるんや〜?」と話かけられました
── 初登山の時、お子さんはいくつだったのでしょうか?
ケンゴさん 2歳と4歳です。弟の方は、帰りに少しだけ抱っこしました。
── 金剛山に毎週登るようになったきっかけは何だったんでしょうか?
ケンゴさん 全くの勉強不足だったんですが、初めて登ったときから1年後くらいに、また登ってみようと思い調べてみると、前回登ったのは実は山頂じゃないぞと分かったんです(笑)。じゃあ今度は山頂まで行ってみようとなりました。
── それから毎週登られるようになったのでしょうか?
ケンゴさん 初めて山頂まで登った日の翌週に、登山靴を買ってまた登ったんです。そのときに山頂の売店で購入できる登山回数券を家族分作ったんですが、そうしたらハマってしまいました。

家族全員分と猫のアル君用の登山回数券
── 登山回数券とはどんなものですか?
ケンゴさん スタンプカードのようなもので、回数券を買って金剛山に登頂すると、山頂で1個スタンプを捺してもらえます。スタンプがたまると、回数に応じてバッジをもらえるんです。今年からペット用もできました。
── 活動日記で拝見しました。ネコも担いで山に行かれていましたね。
ケンゴさん 結婚する前から飼っているネコで、19歳になります。去年、ペットの回数券ができたので、一生に一度だけ記念にと思って一緒に登りました。
── 最初から100回登頂を目指していたわけではなかったんですね。
ケンゴさん 全くです。登山中に挨拶をしたりすることが子どもの教育にいいなと思ったんです。体を使ったり、頭を使ったり、自然に触れたりと、これは子どもにとっていいことだらけじゃないかと。回数券も手に入れたので、まずは10回を目標に行ってみようと思い登り始めました。

初めての4人+1匹での金剛山登山。背負子はケンゴさんのお手製
── 回数券は10回で満杯になるんですね。
ケンゴさん そうです。回数券購入時にまずひとつバッジがもらえるんです。あとは5回目、10回目でも種類の違うバッジがもらえます。
── 全部で3つもらえるんですね。10回は難なく終えられたのでしょうか?
ケンゴさん そうですね。弟が3歳のうちに10回登ってみようと思って、なんとか誕生日の2日前に10回登ることができました。

猫のアルくん用の登山回数券を記入中のお姉ちゃん
── ご家族がお揃いで着ていたTシャツも気になりました。オリジナルで作られたんですか?
ケンゴさん 私が絵を描いて作りました。金剛山の山頂の売店でしか売ってない、モンベルの金剛山オリジナルTシャツがあるんです。山頂看板とクマが描かれたTシャツなんですが、それをオマージュして僕達家族を描いてみました。
── 活動日記を拝見していると、金剛山は常連さんが多そうですね。毎週登るようになって、新たな発見などはありましたか?
ケンゴさん 毎週登っていると、顔見知りの方が増えました。山友さんもできて、子どもたちに声をかけてくれたり、お菓子をくれたりします。
毎週登っていても毎回違う気づきがあったりもします。先週は咲いていなかった花が咲いてたり、最近では初めてヤマドリも見られました。カタバミの葉は通常は三つ葉なんですが、お姉ちゃんが四つ葉のものを見つけたりもしました。
子どもたちの成長にも気付かされます。小さい頃は上るのが大変だった段差を、今ではスイスイ上れたりとか、いつの間にか成長しているのを感じます。

登山中、粘菌を観察している人に出会い、ルーペで見せてもらう
── お子さんたちと登る際に、特に気をつけていることはありますか?
ケンゴさん 最初の頃は、危ないところでは手を繋いだりしていました。登山道の脇が崖になってるところなどでは声をかけて注意するようにしています。最近は、子どもの方から「この丸太滑るよ」というように教えてくれます。
── 装備で気をつけているものはありますか?
ケンゴさん 冬用の装備だったら、子ども用のモンベルのチェーンスパイクを持っていったり、最初の頃はオムツや着替えの下着、着替えのズボン、靴下も持って行っていったりしていました。基本的には、子ども用はほとんどモンベルで揃えています。モンベルは金剛山麓店があるんです。

チェーンスパイクがあれば、雪の山もへっちゃら
── お子さんと一緒に山登りをされる方からは、子どもが飽きないようにするのが大変という話をよく聞きます。飽きさせない工夫などはされていますか?
ケンゴさん わりとふたりとも飽きたりはせずに楽しめているんですが、僕自身が楽しんでいるところを見せるようにはしています。かわいいお花があったよとか。
最近だったら、使っていない古いスマホを貸してあげて、カメラでお花を撮ってもらったり、小さなクマのぬいぐるみを登山中にいろんな場所に置いてカメラで撮ったりして楽しんでいます。家に帰るまでは撮った写真は見せちゃ駄目だよと言っておいて、帰ってからみんなで見せ合ったりしています。
最近YAMAPやインスタグラムも始めたんですけど、使う写真も家族で選んでます。そういうのも楽しいです。

家に帰っても、家族の山の楽しみは続く

お父さんのスマホを借りて、ぬい撮り撮影大会

弟カメラにて
── 下山しても山登りが続く感じでいいですね。お子さんふたりにも質問していいですか? 山に登るときに楽しみなことは何ですか?
お姉ちゃん ブランコ。
弟くん ブランコ。
── ブランコがあるの?
ケンゴさん 山頂にブランコがあるんですよ。

いちばんの楽しみは山頂にあるブランコ

カメラがひとつあるだけで、帰ってからも楽しい
── 山に登っている時に、何か見つけたものはありますか? 石とか木とか、変わった形のものとかあった?
お姉ちゃん お花。
── どんなお花だった?
お姉ちゃん 紫色。
── 何のお花だったんだろうね。
ケンゴさん 多分カタクリです。

姉カメラで撮影したカタクリ
── カタクリ見つけたんだ!いつもふたり一緒だから登れるのかもしれないですね。
ケンゴさん おっしゃる通りですね。ふたりだから継続できてるのかなと思います。先週、長い距離のルートを歩いたんですが、ずっとふたりで喋っているから歩けたのかなと感じました。

どこでもふたり一緒だから登れました
── 毎週だと、「今日は行きたくない」となったりはしませんか?
ケンゴさん たまにありますね。「家でゴロゴロしてたい」みたいな(笑)。一度だけお姉ちゃんは家でお留守番をしていたことがありました。違う日にお姉ちゃんと僕とで登って回数券の数をみんなと合わせました。そのときにたまたまリスを見られたんです。だいぶ近くまで寄って来てくれました。

── ご褒美だったんですね。子どもさんたちが山に登っていることが、日常生活に役立っていたりとか、これは山に登ってるからかなと感じられたりすることはありますか?
ケンゴさん 生活に影響しているというか、運動会のときにかけっこが早かったり、お姉ちゃんは竹馬の高さが一番高かったり、弟は自転車に30分で乗れるようになったりとか、それくらいかな。
── 2歳から登ってるだけありますね。登山は体幹を鍛えることができると聞きますよね。
ケンゴさん そうかもしれないですね。跳び箱もすごく跳べます。5段飛んでいたりとか。あと、挨拶はできるようになったかな。

いつの間にか難所も越えられるようになりました
── 逆に、お子さんたちと登るようになって、ご自身の中で考え方であったり、行動であったり、何か変わったことはありますか?
ケンゴさん 毎週なので、生活習慣が変わりましたね。最初はすごく筋肉痛になっていましたが、今は体力がつきました。あとは他の方への配慮というか、理解ができるようになりました。子ども連れで登山している方の気持ちが分かるというか。そういうのに疎い人間だったんですが、ちょっとは理解できるようになったのかなとは思います。
── お母さんはどうですか?
ショーコさん 子ども連れの方を見ると、大変そうだなと自分と重ねてしまって声をかけてみようかなと思ったりします。
── 金剛山には、ケンゴさんたちと同じように頻繁に登っているお子さん連れの方はいらっしゃるんですか?
ケンゴさん 同じ年で150回登っている子がいたりします。山友さんのお孫さんと一緒にブランコで遊んだり、山頂で偶然よく会うお友達がいて一緒に遊んでいます。
── それは楽しみのひとつでもありますね。
ケンゴさん 金剛山に行ったら会えるお友達みたいな感じですね。

金剛山で会えるお友達と遊べるのも回数登山の楽しみ
── お子さんたちに、山から何を得て欲しいと思われますか?
ケンゴさん 金剛山だからかもしれないんですが、コツコツ積み重ねることですね。継続することは大事だし、力になるということを学んで欲しいです。
── すでに100回登っているからすごいですよね。
ケンゴさん まだまだいるんですよ、もっとすごい人が。1万8000回登った人もいるんです。
── 何歳くらいの方なんですか?
ケンゴさん 80代後半くらいの方です。毎日登っても40数年はかかるんですよ。おそらく毎日登られていると思うんですが、時間帯が違うので会ったことはないんです。そんな方が大勢いるんですよ。
── 活動日記で拝見したのですが、山頂に名札のようなものがあるんですね。ケンゴさんのご家族の名札もあるんですか?
ケンゴさん そうなんです。登頂回数によって名札の掲示場所が変わるんです。一番目立つところに掲示されるのが200回以上の人たちでブランコの後ろなんです。50回→100回→200回と、だんだん名札の場所が移るんです。

ずらりと並んだ、登頂回数により掲示場所の変わる名札
── やる気を起こしてくれるしかけが色々あるんですね。
ケンゴさん 今はとりあえず200回を目指してます。
── でも、この2人だったら18000回は狙えるかもしれませんね。
ケンゴさん 今から毎日登って目指してもまだ40代です。
── ご自宅は登山口まで何分くらいなんですか?
ケンゴさん 20分か30分ぐらいですかね。
── すぐ近くに山があれば、割と敷居は低いとは思うんですが、子どもと一緒に山に行きたいけれどどこに登ったらいいか分からないとか、連れて行けるかなとか、道具を揃えなきゃとか、なかなか一歩を踏み出せずにいる人も多いと思われます。そんな人たちに何か一言いただけますか?
ケンゴさん まずはやってみたらいいんじゃないかなと思っています。最初はスニーカーでも、山頂まで行かずに途中まででもいいと思うんです。最初は、駐車場に車を停めて登山口の辺りを散歩するだけでも僕はいいんじゃないかなと思います。僕らもそんな感じです。
毎週、「よし行くぞ!」みたいな感じではなくて、「ほな行こか」みたいな、気構えて行くというよりも、週末だからとりあえず登って山で遊んでいる感じです。

山は季節ごとの楽しみが待っている遊び場
── そのぐらいの気持ちでまずは行ってみようと。今、家族に山があるのとないのとではどう違うと思われますか?
ケンゴさん えっ!山がなくなったらちょっと自信をなくしてしまうかもしれないです(笑)。
── どういうことでしょう?
ケンゴさん 金剛山が大好きなので、何て言うんだろう? アイデンティティというか、まだ100回ぐらいのひよっこですけど、自分の中の自信のひとつがなくなっちゃうみたいな感じはしますね。
── そういう風に思える山があるっていいですね。羨ましいと思います。身近な山が生活の一部になっているのはとてもうらやましく思います。
ケンゴさん 続けていることが自信になってると思います。また登ってるんやろうとよく言われます。
── 次の目標は200回ですか?
ケンゴさん 200回ですね。あと内緒なんですが、ダイヤモンドトレールという道があるんです。金剛山脈を縦走する全長約45キロをつなぐ道なんですが、それを6歳までに2日間で歩きたいなと思っています。途中でホテルにエスケープしつつ、一回チャレンジしてみようかなと。金剛山にまつわることを、とりあえず全部挑戦してみようと思っています。
── 金剛山に登る前までは、金剛山はケンゴさんにとってどんな山でしたか? 意識したことはありましたか?
ケンゴさん 駐車場までは行ったことがあって、駐車場で雪だるまを作るぐらいの場所でした。意識したことは本当になかったですね。
── それは家族ができたから、山まで足が延びたとも言えるのでしょうか? 家族全員で登る山とはケンゴさんにとってどんなものですか?
ケンゴさん 毎回6〜7時間ほどの長い時間を共有するので、いやぁ、もうすごく素敵な時間だと思います。子ども達はどう思っているか分からないですけど(笑)。
── お母さんはどうですか? 本当はきついとかはないですか?
ショーコさん 急登は結構しんどいです。子ども達に徐々に体力がついてきて登るのがすごく早くなってきて、追いつくのが必死になってきました。

いつの日か、引いていた手に引かれる日がくるのでしょうか?
── いつかは荷物も持ってもらって、手も引いてもらって、なるべく長くご家族一緒に登ってもらいたいです。
ケンゴさん 僕達にとって、金剛山で大事な存在の柴犬のさくらちゃんとつくし君という有名なワンちゃんがいるんです。さくらちゃんは300回も登ってるんです。その人たちにもとてもよくしてもらってます。
100回目の登山のときにたまたま登山口で会って一緒に登って、山頂で一緒に横断幕を広げて写真を撮ったりしました。さくらちゃん、つくし君にも感謝しているというのを一言伝えたくて。この場を借りてお礼を言わせてください。

登山中に出会ったさくらちゃんと記念撮影

山頂でつくし君と一緒に
── 100回登頂できたのは、その2匹のおかげでもあるんですね。この記事を見てくれていることを願います。ダイヤモンドトレールも頑張ってください!

取材後、無事にダイヤモンドトレールを全線制覇していた子づれ登山ファミリー!お疲れ様でした!
写真提供:国見 健吾
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回数はあくまで数字であって、家族で過ごしたい思いが登山回数になって表れたのかなと感じたお話でした。お子さんたちにとって金剛山がどんな存在になっていくのか楽しみです。これからも家族仲良く登山を続けられてください!
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