人気の行動食から見えてきた! 登山でバテない行動食選びのポイント

登山は日常生活にはない負荷がかかるハードなスポーツ。山に登ると息切れする、疲労困憊(こんぱい)するという方も多いのではないでしょうか?山でバテると、ふらつきや転倒、ひいては遭難など、取り返しのつかない危険な状況に陥ってしまうことも。今回は、そんな危機的状況を避けるための行動食選びについてご紹介。YAMAPユーザーへのアンケートから明らかになった「人気の行動食」についてもご紹介します。安全登山を続けるためにも、今こそ山での栄養補給を見直してみませんか?

2021.08.02

YAMAP MAGAZINE 編集部

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登山の後、「あ〜、疲れた〜」と言いながら、また次に登る山のことを考えてしまう、山好きのあなた! そんな登山後の疲れが少しでも軽くなったらいいなぁと思ったことはありませんか?

登山においての「疲労対策」とは、山や自分のコンディションに関する要因を客観的に分析し、適切な対策をとることにほかなりません。

特に気をつけるべき要素は下記の2つ。

1)その日の登山の負荷と、自分の状況を理解すること
2)適切なエネルギーの補給を計画すること

これらを把握することで、「登山中の疲労」を最小限に抑えることができるのです。

登山のエネルギー消費を科学的に分析すると…

まずは、登山がどれだけハードな運動なのか?その負荷を見える化する「メッツ」という数値についてかんたんに説明します。

メッツとは、安静時を1とし、各運動の負荷がどの程度の高さなのかを表す数値。数値が大きいほど負荷は高くなります。

登山においては、荷物の重さとメッツには次の様な関係性があります。

ちなみに、バスケットボールの試合は8.0メッツ、ラグビーの試合は8.3メッツ、マラソンは13.3メッツと定義されています。

一般的な日帰り〜1泊程度の登山の場合、荷物の重さは4.5kg〜10kg程度ですから、メッツの数値は7.3〜8.3の間。バスケットボールやラグビーの試合に相当する運動負荷がかかるということになります。

そして、このメッツの数値を使うと「これから行う運動がどの程度のエネルギー(カロリー)を消費するものなのか?」を次の式によって導き出すことができるのです。

平均的な成人男性(30〜49歳で平均的な活動レベル)の1日の推定必要エネルギーが2,700kcal程度と言われていますので、1日分に相当するエネルギーを使って登山していることがわかるかと思います。※出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)

日帰り登山ですらこのような状況ですので、荷物の重量が増し、歩行時間がより長くなるテント泊や縦走では、エネルギー消費量はさらに多くなるのです。このことからも、登山がいかにエネルギーを消費するハードな運動かが分かりますね。

学術的な消費エネルギーの話はここまでにして、次にエネルギー不足が招く危険について見ていきましょう。

エネルギー不足が遭難や転倒の原因になる!

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登山中にしっかり栄養を補給せずに歩き続けていると、急に空腹感に襲われ、全身に力が入らなくなり、しまいには動けなくなってしまうことがあります。これをハンガーノック(シャリバテ)と言います。エネルギー不足による血糖値の減少から筋肉に力が入りづらくなる状態で、身体が発信する「危険信号」です。

ハンガーノックに陥ると注意力が散漫になり、さらに脱力感や疲労感によりふらつきを誘発。結果的に転倒、滑落を引き起こす危険性が高くなります。

このリスクを回避するためには、計画的な栄養補給が重要です。

特に大切になるのが「行動食」。朝食・昼食・夕食はもちろんですが、その途中に食べる「間食」、つまりこまめに栄養補給を調整できる行動食こそが、登山の安全性を左右する重要アイテムなのです。

みんなは何を持っていく? YAMAPユーザーに聞いた行動食事情

YAMAPユーザーはどのような行動食を山へ持っていっているのか?そんな疑問を解き明かすため、YAMAPでは調査を実施。1000名を超える方に回答をいただきました。

全体の70%近くの登山者が、チョコレートを持っていくと回答した。2021年6月実施。YAMAPユーザーの行動食調査より。回答数=1,253

行動食として特に人気のある食品はアンケートの通り。第1位となったチョコレートはGI値(食後血糖値の上昇度を示す指標)が高いため、手軽にエネルギーを補給したいときには優秀なお菓子のひとつです。ただ暑い時期には溶けやすいため、取り扱いには注意の必要な行動食ともいえます。

ゼリー飲料は携行性、保存性に優れ、かつ消化吸収も早く、少量で高いエネルギーを摂取できることもあり、人気が高いようです。

上位にランクインした行動食から推測すると、やはりエネルギー補給に留意して行動食を求めている人が多いことが見えてきました。また、おにぎり、パンなどの主食系も行動食として好まれる傾向にあるようです。

結局、何を登山に持っていくのがベストな選択肢なの?

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一般的に登山などの長時間の運動には、糖質や脂質などのエネルギーになる成分のほか、エネルギー代謝を助けるクエン酸、ビタミンB₁,B₂,B₆なども必要だと言われています。クエン酸を豊富に含む食品の代表格は梅や柑橘類。また、ビタミンB群は、肉や魚介類、一部野菜などに多く含まれています。

しかし個々の食品の栄養素などを吟味して行動食を選ぶのはなかなか難しいところ。「プロの登山家じゃあるまいし。なんだかアスリートの食事設計みたい」と思われる方も多いかと思います。しかし、冒頭でもお話しした通り、登山はかなりハードなスポーツ。栄養補給を正しく理解し、行動食を準備することが安全登山へとつながるのです。

また栄養だけに目が行きがちですが、「山で摂取する」という重要な前提も見過ごせません。それはすなわち、携帯性と保存性に優れている必要があるということ。例えば、「歩きながら栄養を補う」「雨の中で栄養を補う」など、平地とは異なる場面で栄養補給を必要とすることもあるのです。もちろん、美味しさも重要な要素です。

登山者にもおすすめ『リポビタンゼリー for Sports 清涼飲料水(ゼリー飲料)』

そんな悩める行動食ですが、効率的に摂取できる手段があります。それがアンケートでも第2位にランクインしていた「ゼリー飲料」で摂取する方法。

スポーツの際に飲用することを前提に、クエン酸やビタミンB群(B₁,B₂,B₆)をはじめとした各種栄養素をバランス良く配合した商品が市販されていますので、そう言った商品を活用してもよいでしょう。

その中のひとつが、大正製薬から販売されている『リポビタンゼリー for Sports』。

この『リポビタンゼリー for Sports』は、運動時にも甘さ控えめな、さっぱりしたマスカット味(果汁10%未満)。運動時にも飲みやすいだけでなく、熱中症対策としても有効な水分補給と栄養摂取を同時に行うことができます。それでいて重量が180gと軽量なので、できるだけ荷物を軽量・コンパクトにしたい登山においてはまさに一石二鳥。

素早く吸収される糖質(マルトデキストリン、フルクトース)とゆっくり吸収される糖質(パラチノース)を適切な割合で配合した「マルチカーボ組成」も特徴。吸収速度の異なる複数の糖質を配合している

大正製薬の研究から生まれた、メイド・イン・ジャパンの行動食。登頂前の最後の頑張りに、エネルギーを摂取できそうですね。

ECサイト、全国のドラッグストアにて販売中。見かけたらぜひ手にとって、試してみてください。

ちなみに…
YAMAPユーザーへのアンケートでは「ゼリー飲料は、ぬるくなると味がいまいち」などのネガティブな意見も。

そんなお悩みをお持ちの方におすすめしたいのが、『リポビタンゼリー for Sports』を凍らせて持っていくこと。登山中に溶けて、冷たい状態で味わえることはもとより、保冷剤の代わりとしても活用できます。暑い夏には登山に持っていく食材の傷みも気になるところ。ぜひ、この夏挑戦してみてください!

今回は、「行動食」について、アンケート結果、運動強度などの観点からみてきました。繰り返しにはなりますが、登山という非日常の環境では、栄養を理解し適切に摂取することが重要です。ぜひ自分に合った行動食を試しながら、安全な山登りを続けてほしいと願っています。

参考:『登山の運動生理学とトレーニング学』(発行:東京新聞 山本正嘉:著)
厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-001.html
筑波大学陸上競技研究室 http://rikujo.taiiku.tsukuba.ac.jp/column/2014/38.html
エネルギー消費量(kcal)計算式の出典:「非運動性活動を考慮した加速度センサによる消費エネルギー推定手法」https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=46213&item_no=1&page_id=13&block_id=8

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YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。