「YAMAP」と「クラブツーリズム」がタッグを組んで2021年春より始動した登山スクール「YAMA LIFE CAMPUS」。オンラインとフィールドの講習を掛け合わせた新しい運営形態も注目を集め、おかげさまで大盛況の講座が続々と開講されています。今回はその中から、低山トラベラーとして各種メディアで活躍する大内征さんが講師を務める「低山ハイク編」の様子をご紹介。文化や信仰などを学びながら低山を歩けば、そこには豊穣の世界が広がっていました。
2021.09.30
Jun Kumayama
WRITER
こんにちは、ライターの熊山と申します。趣味の登山は、20年ほど前の低山をとっかかりに、おなじみの富士山と屋久島を経て、ぼちぼち八ヶ岳や南アルプスにも手を出していたのですが、あるときネパールのエベレスト街道で覚醒。以降、夏秋の北アルプス縦走を中心に山歩きを楽しんでいます。
と、ふかすとベテランっぽく聞こえるかもしれませんが、あくまで素人。体力もないのでシーズンごとに脚力はリセットされ、毎度ゼェハァいいながら山にもまれている始末。
そんなぼくにYAMAP MAGAZINE編集部からお仕事のご依頼が。なにやらYAMAPとクラブツーリズムが新しく取り組む「YAMA LIFE CAMPUS 低山ハイク編」を受講し、体験記事を書いてみないか、というのです。
ちなみにこれはライター・熊山のアバターぬいぐるみ「ミニくまちゃん」です。いつでもいっしょ
「YAMA LIFE CAMPUS」は、オンライン講習と山でのフィールド講習をかけあわせた登山スクール。山のエキスパートの講師陣から登山知識を教わったり、ピークハントだけではない新たな山の楽しみ方が見つけられたり、受講生同士で山の仲間を作ることができたりするのがウリとのこと。
たしかに山は、詳しい人に連れて行ってもらわないと、何を揃えればいいかわからないし、趣味とはいえ知識がなければ命にも関わるし、なによりどの山へ行けばいいかもイマイチわからない。ハイカー人口を増やしたいYAMAPに、個性的なツアーを取り揃えたいクラブツーリズムが、うまいこと考えたもんです。
講師は低山トラベラーの大内征センセイ。頼れるアニキです
もっとも、受講料は「低山ハイク編」で9万円となかなかのもの。その内訳は、フィールド講習3回分の料金と、オンライン講習6回分だそうですが、これが高いか妥当かを検証するのが裏テーマでもありまして、コスパが気になる方はぜひ最後までご覧ください。
「低山ハイク編」の講師は、ライフワークとして日本中の低い山をめぐっている山旅文筆家/低山トラベラーの大内征さん。歴史マニアゆえに蓄積されている圧倒的な知識量と、膨大なフィールドワークのサンプル数、体育会系出身のドライすぎずウェットすぎもしない、しかし遊びゴコロ満載のアニキ的コミュニケーション能力、そして文筆のみならずラジオやテレビ、ワークショップ等の経験も豊富…と講師および講座のクオリティは担保されているようなものです。
個人的には低山といえば、都内からアクセスのしやすい高尾山や丹沢ばかりでワンパターンに陥っています。他にも行きつけ低山のバリエーションを増やしたいし、低い山ならではの楽しみ方も見つけたい。「YAMA LIFE CAMPUS 低山ハイク編」は渡りに船といいますか、ぼく個人が近年抱えていた課題にもガッチリはまった内容でもあったのです。
受講にあたってはパソコンかスマホ、そしてFacebookとZoomのアカウントがあるとよろしい
2回のオンライン講習(座学)を経て、実際に山でフィールド講習を行う。これを3セット(3ヶ月)くり返すのが低山ハイク編の構成。
初回は講師と受講生の顔合わせで始まるのですが、受講にあたっては運営からの連絡や受講生同士のコミュニケーション用にFacebookグループが用いられるため、Facebookのアカウントがあるといいかも、というかYAMA LIFE CAMPUSをしゃぶりつくすならほぼマストでした。もっとも、主義・信条の理由からSNSはやらないという方でも問題はありませんし、事実アカウントを持っていない受講生もいらしたので(多少不便ですが)必須ではありません。
ただし、オンライン講習はZoomを使って行うので、少なくともそのアカウント取得は必要です。FacebookもZoomもアプリがあるため、パソコンがなくてもスマホだけで完結します。つまり、そこまで高度なことは求められないけれども、最低限のITリテラシーがないと受講は難しいかも、ということ。スマホでYAMAP MAGAZINEをご覧になって、今まさにこの記事をいいね!&シェアしようとしている読者のみなさんならきっと大丈夫でしょう(ありがとうございます!)。
大内センセイの過去の豊富な山旅写真をもとに展開されるオンライン講習。話題はフィールド講習で登る山だけでなく全国の低山へと縦横無尽に駆け巡ります
第1座目は「御岳道と山岳展望」のテーマのもと、山梨県甲府市の羅漢寺山を目指します。
初回のオンライン講習では、大内センセイの自己紹介にはじまり、「なぜ羅漢寺山なのか?」を、日本神話や奈良吉野・金峯山寺の修験道、そのなかで生まれた神仏習合の化身・蔵王権現と御岳信仰などなど、歴史文化を縦横無尽に駆け巡りながら、一気に解説。
センセイは「ぼくの講座は情報量が多すぎるので、ピンときたものだけメモすればいい」とおっしゃいますが…。体験受講とはいえ取材でもありますから必死に耳を傾けるものの、初めて耳にする地名や長ったらしいカミサマの名前も多く、正直追いつけません。途中、Facebookグループでアーカイブが共有されると聞き、ほっと胸をなでおろしました。
2回目のオンライン講習は受講生同士の交流をはかるべく、自己紹介が行われます。低山ハイク編の参加者は40代から50代が中心。登山経験はまったくの素人さんから、すでに登山やトレイルランニング、スキーを楽しんでいる方までさまざま。共通しているのは、「コロナ禍による運動不足解消」はもとより、「あらためて登山を一生の趣味にしたい」「高山ばかりではなく低山を楽しむ視点が欲しい」との登山に対するアツい思い入れでした。その後は、各人自慢の登山道具の紹介がてら、フィールド講習直前の装備購入相談タイムへと突入して準備は万端? いよいよフィールド講習です。
フィールド講習1回目のルート。YAMAPの該当地図はこちらから
大月駅から貸切バスに揺られて1時間半。登山口の昇仙峡・長潭橋までやってきました!
フィールド講習当日は、JR中央線で寝過ごした者が送り込まれる地として知られる終点の大月駅に集合し、一路登山口の山梨県・昇仙峡を目指します。朝8時集合ゆえ頭はまだまだおネムなのですが…。ここでも面倒見のよい大内センセイはマイクを離さず、またもや情報量の多いトークを矢継ぎ早にくりだし、決して受講生を寝させてはくれま、いや、飽きさせません。
このように、低山ハイク編は頭から尻尾までアンコがたっぷり詰まっているのでお得と言えるでしょう。
1時間半ほどで登山口の長潭橋に到着。この日の天気予報は80%で雨だったのですが、今のところギリギリもっています。準備運動とトイレタイムを経て、まずは南アルプスを一望できる白山展望台を目指します。そうそうYAMAPを起動するのもお忘れなく。
ただし、クマが出るそうです
なお、YAMA LIFE CAMPUSのフィールド講習には山のエキスパートたる講師にあわせて、山のプロたる山岳ガイドも同行します。今回はベテランガイドの矢ヶ崎晶アニキが、受講生への登山テク指南をはじめ、山や動植物についてのナレッジ、ケガや事故に対するケアと、あらゆる面でのバックアップを担ってくださいました。
登山道は、高尾山程度の低山をハイキングできる体力があれば十分にクリアできるレベル。道中は大内センセイや、矢ヶ崎晶アニキのトークを交えながら、こまめに休憩を取りつつ、2時間ほどで最初の目的地・白山展望台に到着しました。花崗岩が風化した山肌はまるで白砂のビーチのようで、不思議な感覚にとらわれます。
花崗岩が風化しまるで砂浜のような白山展望台。こちらでお昼
降られることを覚悟していたお天気模様も奇跡的にキープし、白山展望台では南アルプスこそ望めないもののパノラミックな視界は良好。日本百名山でおなじみ深田久弥終焉の地・茅ヶ岳もパッキリ。
各自持参したお弁当を素早く摂取。ちなみにぼくの定番山メシはどこでも手に入り、いろんな味のバリエーションがあり、あわただしい時でも行動食にもなり、常温で日持ちするランチパックです。
白山展望台と同じく「山上のビーチ」との異名をもつ白砂山山頂手前
続いて羅漢寺山と谷を挟んで反対側の白砂山(920m)まで40分。ここで羅漢寺山の全体像を把握します。というのも、羅漢寺山はロープウェイ駅があるパノラマ台、そして展望台、最高峰の弥三郎岳(1,058m)の3つの峰の総称だからです。白砂山から望むそれらは、近いっちゃあ近いけども、馬の背まで降りて登り返すことを考えたらちょっとしんどいかな? と感じる程度の距離感。実際はそんなに時間も体力も必要ないのですが、後半戦ゆえに若干心が折れ気味。
白砂山山頂より羅漢寺山をのぞむ。あそこまで行くのかあ
心を無にして登り返し、ほどなくロープウェイ駅に到着。晴れていれば富士山も拝める龍の松をはじめ、八雲神社、和合権現といった注目スポットが点在しています。そこからさらに展望台を経て、標高1,058mの弥三郎岳に登頂オオォ。終盤はクサリを使って登る石階段など適度なスリル感もあり入門編としては最適なのではないでしょうか。受講生のくせに何目線だという話ですが。
弥三郎岳から金櫻神社(かなざくらじんじゃ)の御神体・奥秩父金峰山の五丈岩を探します
山頂直下の岩場も、これまたパノラミック。高尾山に毛が生えたほどのレベルながら、これほど見渡す限りの眺望が楽しめる低山もなかなか経験がありません。記念撮影をパチリ。
その後、ロープウェイでサクッと下山し、麓駅付近のカフェ・テロワールで休憩ひと息ついたところで、バスにて金櫻神社を参拝し、一度も雨に降られることなく第1座は終了したのでした。
そう言えば、道中ずっと雨雲レーダーとにらめっこしていたのですが、昇仙峡エリアだけすっぽり穴が空いたように雨が降らなかったのです。おそらく南西からの雨雲を南アルプスがブロックしていたからなのですが、もともと奈良吉野の金峯山寺の修験道を由来とする「御岳道」ゆえに何かしらの御加護を受けていたのかも?と思わざるを得ない山行となりました。
個人的にはロープウェイパノラマ台駅の和合権現の御神体がビビビときました。ご立派…
ひとことでまとめると:低山だけど絶景
諏訪八幡神社の狛犬。暑そう…
第2座目は群馬県・戸神山の予定が今年はヤマビルが大量に発生したとのことで、紆余曲折ののち埼玉県飯能市の天覧山(197m)と多峯主山(とうのすやま 271m)へと変更されました。今回も2回のオンライン講習を経てフィールド講習の順番です。だんだん受講生同士の顔と名前も一致してきましたよ。
天覧山と多峯主山が選ばれた理由は、飯能駅からアクセスしやすく、ぐるっと周遊し駅まで帰ってこられる入門ルートだから。もちろん信仰の山でもあり、道中に御嶽八幡神社というお社もあります。そう、第1座と同じく「御岳つながり」です。梅雨明けのタイミングでもあるので夏の低山につきものの暑さ対策・日焼け対策というテーマもあり、さらには下山後に温泉を楽しもうという裏テーマも設定しているとか。これはまた盛りだくさんの予感。
旅の最終目的地・飯能河原を指差す大内センセイ。もうすでに暑くてドボンしたい
フィールド講習2回目のルート。YAMAPの該当地図はこちらから
予測どおり、この日の秩父エリアの最高気温は33.9度と控えめに申しあげて激アツ。駅から近くの公園に向けて歩いただけでも心が折れそうです。
ミーティングと準備運動ののち、飯能丹生神社・諏訪八幡神社を経て、能仁寺山門の脇からいよいよ天覧山を目指します。道中トイレは等間隔にあるので水分を摂りまくってもOKなのがこの暑さにはありがてえ。
たったの197mなので暑ささえ気にならなければ余裕の天覧山
天覧山には1時間ほどで到着。標高も197mと本当に裏山感覚です。この天覧山、いにしえには山麓の能仁寺に愛宕権現を祀っていたため「愛宕山」、江戸時代には徳川綱吉の母親が十六羅漢を寄進したため「羅漢山」、そして明治期には天皇が登ったので「天覧山」と、時代時代で名前を変えたのだとか。そう、天覧山(羅漢山)のセレクション、実は第1座の羅漢寺山からの伏線でもあるのです!
低山ながらも眺望がよく、奥多摩・奥秩父の山々はもちろん富士山がくっきり
暑さ対策に経口補水液を凍らしてきましたが、すでに液体
続いて、丘陵が侵食されてできた開析谷の谷戸を経て多峯主山へ。標高271mと余裕なんですけど、とにかく暑くてみなさんバテ気味です。とはいえ天覧山に負けず劣らず眺望がよく、山頂でたっぷりランチ&お昼寝タイム(もちろんランチパックでね)をとりました。
多峯主山に登頂〜!遠くは富士山や新宿まで見渡せるパノラミックな展望台ですが、この看板の裏側に住宅街が広がっていたのが、何よりもの驚き
その後、雨乞池を経由していよいよセンセイご推薦の御嶽八幡神社を参拝。こちらはもともと「おんたけさん」と呼ばれていた場所で、江戸時代末期には山の管理を任されていた与平という人物が天啓を受けて琴平宮を祀ったり、明治期には御嶽教ムーブメントから木曽の御嶽神社を分祀したり、八幡太郎義家を合祀したり…といった歴史を経て、御嶽八幡神社として地元の信仰を集める場所となったそう。あらゆる信仰のごった煮が日本人らしい。
御嶽八幡神社の参道を下ります
それにしても最高気温33.9度です。
下山後は入間川まで降りて、吾妻峡でチルアウツ……という予定でしたが前日まで豪雨で通行止めェ! 一行は照り返しの激しいアスファルト上を飯能河原までトボトボと歩いて帰ったのでした。
増水で通行止め…
飯能河原では受講生のリクエストのもと、登山ガイドの矢ヶ崎アニキによるツェルトの張り方を教えてもらったのですが、河原とはいえ暑さへのガマンはもう限界。ほうぼうの体で飯能駅まで体をひきずり、ようやくひと心地つけたのでした。
めちゃくちゃ暑い飯能河原で登山ガイド・矢ヶ崎アニキによるツェルト講義。当然ツェルトの中はサウナです
ひとことでまとめると:夏の低山はサウナ気分
多少ガスってますが雨には降られず、まずは八島ヶ原湿原を見下ろす鷲ヶ峰へのトレイルへ
第3座目は長野県・霧ヶ峰北西部に位置する八島ヶ原湿原です。標高は1,630mとすでに低山の領域を越えているような気もしないでもありませんが、バスでアクセスできるので「低い!」と言えなくもありません。今回に限って事前のオンライン講習は1回のみ。低山ハイク編の総評としてフィールド講習後に1回分が残るという構成でした。
今回のテーマは「神話と自然崇拝」として、霧ヶ峰にほど近い諏訪の一風変わった歴史と信仰、また、ブラタモリばりのジオネタや豊かな植生、そして絶景のトレイルを仕込んでいるそう。これは期待です。
この日もJR中央線・大月駅に集合ののち、ほぼ3時間近くバスに揺られて登山口に到着(さすがにセンセイは寝させてくれました)。天気予報はやっぱり(?)あいにくの雨です。さすがに羅漢寺山みたいな奇跡は起こらないだろうなあ、とあきらめつつスタートです。
フィールド講習3回目のルート。YAMAPの該当地図はこちらから
さほど厳しい登りもなく気持ちのよい稜線歩きが楽しめます
八島ヶ原の入り口からは、いったん標高1,798mの鷲ヶ峰を目指して登ります。外輪山の稜線をたどるだけなので、道迷いもなく眺望もよい楽ちんトレイルなのですが、雨だけが心配。
のんびりペース1時間ほどで鷲ヶ峰に到着。なんということでしょう、雨には一切降られず、むしろ眺望が開けてきたではありませんか。道中ではセンセイによる諏訪信仰の特殊性、ひいては「信じるか信じないかは、あなた次第!」なネタまで織り交ぜながら、相変わらず情報密度の高い解説が続きます。
鷲ヶ峰山頂でおランチ(パック)。左手奥には諏訪湖も見えてきましたヨ!
鷲ヶ峰下山後は八島ヶ原湿原をぐるっと周遊し、旧御射山神社(もとみさやま)へと向かいます。
眼下を見下ろせば八島ヶ原湿原もくっきり!
最後の最後に若干雨には降られたものの、すでに残すは木道歩きだけなので余裕です。霧に包まれた厳かな雰囲気のなか、シンプルながらも妙に存在感のある、旧御射山神社のお社が一行をお出迎え。かつて鎌倉時代には幕府重臣も集い、諏訪大明神へ奉納する御射山祭(みさやままつり)も行われたとのことですから、今風にいえば霊験あらたかなパワースポットなのでしょう。大内センセイにとっても「人生に迷ったときや、自分を見つめなおすたびに訪れるプライベートな場所」なのだそう。気になる方は、今後の講座にご参加の上、ぜひ聞いてみてください!
シンプルながらおごそかな雰囲気の旧御射山神社。大内センセイの心のふるさと
なるほど。
よくよく考えてみれば、低山ハイクと銘打ってはいるものの、一連の道のりは「低山トラベラー・大内征の低山ワールド」というか内なる小宇宙をたどる旅だったのかもしれません。
下山後に雨は本降りになりましたが、あとは温泉で汗を流すだけ!
下山後もセンセイおすすめ、諏訪湖湖畔にある昭和3年創業の温泉・片倉館で汗を流してサッパリ! 初めて訪れたのですが、名物・千人風呂の浴槽には砂利が敷き詰められてあり、山歩きで疲れた足裏に心地よい。
後半だけカッパを着ました
ひとことでまとめると:大内征という山を登った気分
今回実験的に取り入れたアクシーズクインのハカマスカートと、この時は履いていませんがルナサンダル。そしてクーリーハット。(撮影:大内征)
最後のフィールド講習のあとは、まとめのオンライン講習で各人の「低山を楽しむ視点」の発表をもって低山ハイク編は終了しました。予定の時間が過ぎても酒を片手にいつまでも受講生の質問や会話が途切れなかったのが印象的です。
ぼくが個人的に見出した低山の楽しみ方は、ずばりコスプレでした。コスプレ?
最後にネタばらしですが、実はぼくと大内センセイとは昨年熊野古道を一緒に歩いたときからの山仲間。その際、ぼくの興味が修験道や修験者へとフォーカスしたのです。今ほどハイテク素材が充実していなかった時代に、果たして日本人はどういういでたちで旅していたのかと思いを巡らせるうち、昔ながらの和装で登山をしたいと思うようになったのでした。
そのスタイルは写真のように、編笠のような風通しのよい日除けに、羽織りのような化繊ジャケット、袴のような軽快なスカート、そして足袋のようなトレイルランニングサンダルという、和装×ハイテク素材のハイブリッドとんちきコスチュームへと昇華。
一見、山登りには適していなさそうでいて、スカスカと風通しがよく特に夏の低山では至極快適。ヤバい見た目ゆえか、道々出くわすハイカーとも話がはずむという望外の効果もございました。この成功例に味をしめ、最近では普段着にも取り入れるようになったほど。
「これだけ、歴史や信仰の話をインプットしておきながらコスプレかよ!」というツッコミが聞こえてきそうですが、奥深い低山ハイクの楽しみ方は十人十色。たまたまぼくにとってのアウトプットがコスプレだっただけなのでそこはご容赦ください。
集合写真や個人で撮った写真をFacebookグループで共有できるのも、オンライン講習を組み合わせたYAMA LIFE CAMPUSならでは
もうひとつ、裏テーマであったYAMA LIFE CAMPUSのコスパです。現代人はなんでもコスパコスパとうるせえもんですが、正直気になるのも事実。果たして9万円の価値はあったのか?
あらためて計算してみましょう。第一線の山旅文筆家による1時間半のオンライン講習が合計6回に、バス付き・添乗員付き・登山ガイド付きフィールド講習が3回。そしてYAMAPプレミアム会員権6ヶ月分も付きます。受講終了後には修了証と手ぬぐいまでいただきました。
文字数の制限もあって記事ではフィールド講習にフォーカスをあてましたが、オンライン講習も登山の知識を身につけたり、装備を整えたりする上で重要なノウハウが詰め込まれておりました。もちろん、大内センセイによる山ネタトークも膨大、かつ振り返ると文脈で串刺しされているという見事なもの。
これは妥当、もしくはお得と言えましょう。
そもそも登山はお金がかかるもの。いわゆるザック、シューズ、レインウェアの3種の神器を揃えるだけでも10万円かかることは珍しくありません。また、近郊の山々ならまだしも、徐々にステップアップして日本アルプスともなるとアクセスと滞在で数万円が軽く吹っ飛びがち(登山口までタクシー代2万円とかざらですもの)。
ゆくゆくお金がかかることを考えると、その入門編として9万円は決して高い投資ではありません。また、そこそこお高い講座ゆえに、登山仲間となる受講生のやる気も担保されていると言ったら言い過ぎでしょうか。
繰り返しになりますが、趣味の登山の取りかかりとして、また、従来とは違った山の楽しみ方を見出す手段として、そして山仲間を見つけるコミュニティとして、YAMA LIFE CAMPUSはアリアリのアリなんではないかと感じました。すでに第2期の募集もはじまっているようですが、その取材もお願いしたいくらいです。おしまい。
ぜんぶまとめると:YAMA LIFE CAMPUSはおとく