普段は聞けない、みんなのショーツ事情。普通のショーツ、登山・スポーツ用の速乾ショーツ、生理用のサニタリーショーツなど、いろいろな種類がありますが、生理中の登山で、みなさんはどんなショーツをはいていますか?
近年、増えてきているのが「吸水サニタリーショーツ」。経血が少し漏れても、吸水素材がしっかりキャッチしてくれて安心です。
そんな心強いアイテムが、登山ウェアとしてミレーから初登場。「ドライナミック メッシュ アブソーベント ショーツ」です。ミレーの人気シリーズ「ドライナミック メッシュ」としての機能を備えながら、「生理のお悩み」を解決してくれるすぐれもの。
今回は製品を、登山好きの女性たちに使用してもらったあと、座談会を開催。肌触りや使用感などの感想だけでなく、今までどんなことで困ったかなど、女性登山者のショーツ事情や生理中のお悩みを打ち明けていただきました。
2024.04.10
池田 菜津美
ライター
座談会メンバー
鈴木千花さん/写真家。登山歴6年。プロダイバー兼フォトグラファーとして世界中を回る。山に没頭するきっかけは、谷川岳で「山伏」と出会ったこと。以来、日本の山の美しさや文化に夢中。
小室千可さん/好日山荘・池袋西口店のエキスパートスタッフ。登山歴は高校生の山岳部からで25年ほど。好日山荘がプロデュースする「おとな女子登山部」の講師として、机上講座やツアーを実施。
宮尾賀代さん/ミレーの商品部でプロダクトコーディネーター務める。ミレーの商品開発にたずさわる前は、スポーツウェアやゴルフアパレルを開発。自身もフィットネスに熱中するスポーツ女子。
池田菜津美さん/登山雑誌などで原稿を書くライター。登山歴は15年。沢、雪山、クライミングなど、いろいろな登山をちょっとずつかじる。ハイキングで山の動植物を観察するのが好き。
池田:私はナプキン派。生理中の登山、とくに泊まりの時はナプキンが大量になりません?
一同:なるなる!
鈴木:タンポンを使っているけど、タンポンだけだと不安だからナプキンも併用してます。
小室:私もタンポンとナプキンの両方使い。
宮尾:私もトレーニングのときはタンポンですね。
池田:え! ナプキンオンリーは私だけなのか!
鈴木:タンポンだと動いても漏れにくいし、やっぱり安心感がちがう。あとナプキンオンリーだと、大量に持ち運ぶことになりそう。
池田:すごいですよ。2泊3日とかだとバックパックの3分の1がナプキンじゃないかと思うくらい。ほんとにかさばる。
小室:薄型でもそれなりに体積がありますもんね。タンポンとナプキンの両方使いの場合は、そんなに枚数はいらないですけど、『ナプキンがなければ荷物が減るのになぁ』って思いますもん。
鈴木:さっそくミレーのショーツの話をしちゃうけど、このショーツ、すごい便利じゃない?
小室:私もそう思いました! タンポン派は、これがあればナプキンはいらないかもって!
宮尾:今回発売する『ドライナミック メッシュ アブソーベント ショーツ』はいわゆる吸水サニタリーショーツ。かなりの吸水力なので、タンポンを使っている方なら、このショーツだけでも漏れないと思いますよ。ちなみに吸水サニタリーショーツは、アウトドアブランドでは初の商品なんです。
小室:好日山荘で仕入れてすぐ、吸水サニタリーショーツの実力を知るために実験してみたんです。ほんとに30ml吸うのかなって。というか、30mlって少ないのか多いのかもわからなかったので、とりあえずやってみようと。
鈴木:たしかに。なんか少なそうな気もするけど。
小室:いや、それがすごい量なの! 『こんなに漏れたら大事故じゃん』って量で。でも、しっかり吸ってくれて、全然漏れなかったのでびっくりしました。
宮尾:吸水部分は4層構造になっていて、かなりの吸水力なんです。
鈴木:なるほど! このショーツだったらタンポンのときは本当にナプキンなしで過ごせそう。
小室:実際、タンポンだとほとんど漏れないですもんね。実験でさらにおどろいたのが、満タンに吸わせてタプタプなのに、表面はサラサラだったんです。生地に工夫があるのかな。
宮尾:濡れても張りつきにくいように、肌に当たる部分は起毛した生地にしたんです。
小室:なるほど〜。それでこんなにふかふかなんですね。
池田:このショーツ、私も実際に山で使ってみたのですが、ナプキン派にもぴったりなんですよ。ナプキンって動くとよれやすいから、漏れがほんとに怖くて。
鈴木:羽根付きは使わないんですか?
池田:羽根が当たると皮膚が荒れちゃうんです。なので、いつも羽根なしのナプキンしか使わない。
鈴木:登山って長時間動き続けるし、羽根なしだとすぐよれそう!
池田:そうなんです。いつもナプキンが、ほそ〜くよれちゃって。だから多い日はほんとに怖い。
鈴木:サニタリーショーツは使っているんですか。
池田:太ももの付け根に縫い目が当たるのも、皮膚がかゆくなったり荒れたりしちゃうから、サニタリーショーツで体に合うものを探すのを諦めてしまって。生理中も普通のショーツだけです。今回のミレーのショーツはどうかなと、おそるおそる試してみたんですが、かゆくなったり荒れたりしませんでした。
宮尾:それはよかった!
池田:ボクサーショーツのような形で、太ももの付け根に縫い目が来なかったのがよかったのかも。
宮尾:30mlの吸水量を実現するために、吸水部分を大きくする必要があったんです。それで一分丈っぽい形になりました。
池田:そうなんですね。でも、この吸水サニタリーショーツなら羽根なしのナプキンがよれて、漏れちゃっても全然気になりませんでした。すぐ吸水してくれてべたつかないし、もちろんズボンに経血がつくこともなかったです。
鈴木:もうすぐ生理になるかな〜っていうとき、おりものシートとか、小さめのナプキンで予防線をはりますよね?
小室:そうですね。そして、そういうときがいちばん面倒。おりものシートだといきなりどっと来たときに漏れちゃいそうだし、まだ生理じゃないのにナプキン使うのはゴワゴワして心地よくないし。
鈴木:裏銀座縦走のとき、まさにそんな感じで。とりあえず生理になるまではおりものシートでやり過ごそうと。でもよく考えてみたら、初日の行程は小屋までトイレがない。そして最悪なことに初日に生理が来ちゃって。
小室:やばい!
鈴木:焦ったけどどうしようもなくて。でもやっぱりおりものシートでは受け止めきれず、少し漏れちゃいました。
小室:私も同じようなことがあった! 大キレット越え、まさに長谷川ピークにいるとき! その時は前後に人がいないと信じて、ナプキンをつけました。それこそ、吸水サニタリーショーツがあれば、キレットでお尻を丸出しにすることもなかったなと。
鈴木:ほんとにそう! 今思えば、吸水サニタリーショーツがあったら、急に生理が来ても焦らずに済んだはず。
小室:日帰り登山だったら、予防線のナプキンもいらないかも。
鈴木:荷物も減らせるしいいですね。
小室:でもあのときのピンチも、今こうして話ができたことでようやく報われたというか。こういう悩みとか失敗談って、あんまり人に話す機会がないからモヤモヤしますよね。
鈴木:そうそう。こんな失敗するの私だけかな、みんなどうしてるのかなって、よく思います。
宮尾:『フェムテック』という言葉がよく聞かれるようになって、生理の悩みなどをオープンに話せるようになったのは、ここ数年ですよね。
池田:そうですね。2020年をフェムテック元年というらしいですし。コロナ禍で健康意識が高まったことも原因だとか。
宮尾:じつはこのショーツ、2023年には完成していたんですが、社内には『フェムテック商品を出すには時期尚早では?』という意見もあって、1年様子を見ることになったんです。その間に、もっとブラッシュアップできたらと試行錯誤して、生地に抗菌&防臭機能をつけられました。
池田:一般的な吸水サニタリーショーツと、ミレーの吸水サニタリーショーツを比べてみたんですけど、ミレーの方が生地がしっかりしてますよね。
宮尾:はじめは一般的なショーツに使われている薄手でストレッチ性の高い生地を採用しようかなと思っていたんですけど、せっかくミレーから出すので、ドライナミック メッシュを活かしたつくりにしたくて。
池田:背面の生地もドライナミック メッシュと同じ素材なんですか?
宮尾:ここ、よく見てみてください。ドライナミック メッシュと背面でツギハギがないでしょう。
池田:ほんとだ! メッシュと背面の生地が一体化してる!
宮尾:ホールガーメントといって、ぐるっと一周、寸胴型に編む方法なんです。
池田:ツギハギがない分、肌当たりがやさしいんですね。でも、全面をメッシュにしてもよかったのでは?
宮尾:そうすると、吸水部分を持ち上げる力が弱くて、フィット感が落ちてしまって。なので、背面はしっかりした生地に変更しました。ドライナミック メッシュと同じ素材なので、メッシュほどではありませんが、通気性は高いです。
池田:ハイキングで使ってみたのですが、蒸れは気にならなかったです。むしろ、しっかりホールドしてもらっている安心感の方が高かったかも。
宮尾:吸水サニタリーショーツなのでフィット感を高く、でも、ドライナミック メッシュの通気性もキープしたい。その中間でこの形に落ち着きました。
小室:そもそもショーツって、アウトドア用を使ってない人が多いかもしれません。
池田:私も使ってなかったですしね。
小室:皮膚が荒れるとか特別な理由がなくても『ショーツは普段使っているものでいいや』というお客さまはたくさんいます。ブラジャーやタンクトップはアウトドア用のものを買って帰る方が多いですが、なぜかショーツだけは『いいや』と。
鈴木:ブラはすぐびしょびしょになるし、濡れると冷たいと感じやすいんですかね。私はブラもショーツもアウトドア用が必須。すぐ乾くし、やっぱり快適ですよ。
小室:そうですよね。私が特におすすめしているのは雨のとき。例えば、大雨予報のマラソン大会に出るという方が、アウトドア用のアンダーウェアを買い求めて来たことがありました。しかも、生理中だとおっしゃっていたので、ミレーの吸水サニタリーショーツが発売されていたら、絶対におすすめしたと思います。
鈴木:残念、まだ発売されてなかったんですね。私は生理のとき、山に登らなくてもアウトドア用のサニタリーショーツを使っちゃうんです。なんなら、何もないときも、普通のショーツと同じように使っちゃう。だって、夏場とか、アウトドア用の生地だと本当に快適ですよ。蒸れないし、サラサラだし。
宮尾:このショーツの開発中、社内外の人にサンプルを使ってもらっていたのですが、普段使いしたいという人は多かったですね。
小室:お客さまにも普段使いをおすすめしていますよ。アウトドア用のアンダーウェアは機能性が高いのに、登山だけに使うとなると月に数回。せっかく快適なのに、タンスの肥やしになるのはもったいないですしね。
池田:ついつい、普通のショーツより高価だしなと思っちゃうんですよね。でも、登山でのサニタリーショーツの出番は月に一回あるかないかで、使う機会は少ないですね。私も真夏とか、じゃんじゃん使っちゃおう!
鈴木:ちょっと話はそれるのですが、吸水サニタリーショーツって、妊婦さんにもおすすめだと思うんです。妊娠したときにいろいろ調べていたら、妊婦さんはお腹が大きくなると膀胱が圧迫されるらしくて。
宮尾:商品開発のときに、尿漏れ対策用のシートやショーツもリサーチしました。いろいろな商品が出ていて、結構需要があるんですよね。
鈴木:尿漏れ対策にこのショーツを使ってもいいんですか?
宮尾:もちろんです。
小室:じつは私、登山中におしっこしたとき、拭かないんです。だから心の中で『このショーツは使えるぞ!』とこっそりガッツポーズしてたんです。
池田:えーっ! 拭かないんですか!?
鈴木:私も拭かないよ。
池田:えっ! ふたりもいた!
鈴木:ずっと海外を回っていたから、トイレットペーパーがないトイレもたくさんあって。それで、おしっこは振って切ればいいんだって学んだ。もちろんペーパーがあるところでは拭きますよ。
小室:私も山岳部時代に身についたかな。雪山で吹雪いているときに『お尻なんか拭いてられるか!』ってこともよくあって。
池田:たしかに雪山でお尻出してるとき、ほんとにつらいですもんね。『どうしてこんな思いをしなくちゃならんのだろう』って思う。にしても4人中2人ってことは、お尻拭かない派が超レアケースでもなさそう。
鈴木:なかなかこんな風にぶっちゃける機会ないから知らないだけで、結構いるかもね。
小室:お客さまに商品を紹介するときにも、いろいろな悩みに寄り添えるのは大事なこと。本当に有意義な座談会でした。
宮尾:私も同感です。商品開発に役立てていきたいですね。
鈴木:それに、吸水サニタリーショーツが尿漏れにも使えることがわかったしね。
小室:さらには普段使いにもおすすめ。アウトドア用のウェアは本当に高機能だから!
それぞれに悩みも対処法も違いましたが、みなさんはどんな悩みや対処法をもっているでしょうか。生理やショーツ事情など、普段は聞きにくい話なので「これは正しい?」「この方法がベスト?」とひとりでモヤモヤすることも多いかもしれませんが、この座談会を通じて少しでもそのモヤモヤが解消されたらうれしいです。