日本百名山が11座あり日本屈指の山岳県として知られる「群馬県」には、初心者からベテランまで幅広く楽しめる個性的な山々が揃っています。また、温泉県としても有名で、山麓で味わえるグルメも大充実!
今回は群馬の山で、この夏特におすすめの「4座」について、地元を知り尽くす登山ガイドさんに教えていただきました。山だけでなく、温泉や下山メシなど、とっておきの山麓スポットの情報も満載です。夏の青空が広がる群馬の山々に、この機会に出かけてみませんか?
2026.08.03
大関直樹
フリーライター
夏山シーズン本番。どこへ登ろうか迷っている人におすすめしたいのが、この季節ならではの魅力が詰まった群馬の山々です。
今回は、群馬の山を知り尽くした地元ガイドの長田厚実さんと松原美成子さんに、この夏に歩きたい「とっておきの4座」を教えていただきました。
現在、YAMAPでは「ぐんまの山旅2026 活動日記投稿キャンペーン」を開催中。期間中に対象の山を歩いて活動日記を投稿すると、「群馬県の地域産品カタログギフト」や「宿泊券」が当たる審査に参加できます。さらに群馬県内の対象の山10座のうち1座に登ると、YAMAPアプリ上で期間限定のデジタルバッジも獲得できます。
歩いて楽しい&下山後もうれしい、それが群馬の山の魅力!この夏は、地元ガイドおすすめの4座をはじめとする群馬の山々へ、ぜひ足を運んでみてください。
武尊山(ほたかやま)
標高:2,158m
おすすめコース:武尊神社〜武尊山〜剣ヶ峰山周回コース
行動時間:7時間17分
コース難易度:中上級者向き

Q:どんな山なの?
A:武尊山は、群馬県を代表する標高2,158mの日本百名山。ブナの森や高山植物、開放感のある稜線など、変化に富んだ自然が魅力です。周囲に高い山が少ない独立峰のため、その堂々とした姿は遠くからでもひときわ目を引きます。北アルプスの穂高岳と区別するため、「上州武尊山」と呼ばれることもあります。
Q:見どころを教えて!
長田さん(以下、長田):山頂からの眺めは本当に素晴らしいです。至仏山(しぶつさん)や平ヶ岳(ひらがたけ)、日光白根山(にっこうしらねさん)、谷川岳(たにがわだけ)はもちろん、赤城山(あかぎやま)などの上毛三山、天気がよければ関東平野まで見渡せます。特に山頂から剣ヶ峰へと続く稜線は、展望と高山植物を一緒に楽しめる武尊山屈指の絶景スポットです。

山頂から赤城山方面を望む
千石佐渡守(せんごく さどのかみ)さんの活動日記より
松原さん(以下、松原):武尊山は岩場のイメージが強い山ですが、『新・花の百名山』にも選ばれているように、夏はさまざまな高山植物に出会えます。景色を楽しみながら、「次はどんな花が咲いているかな」と探して歩くのも、この山の魅力ですね。

可憐な花を咲かせるヒメシャジンが見られることも(画像はイメージです)
松原:武尊山はいくつか登山コースがありますが、比較的歩きやすいのは、武尊神社からの周回コースと、OZE-HOSHISORA GLAMPING&CAMP RESORT(ほたか牧場)からの往復コースです。ただし、後者の日帰り登山者用駐車場は、利用時間が午前8時〜午後4時30分。コースタイムを考えると時間にあまり余裕がないので、武尊神社コースがおすすめです。
長田:武尊神社近くの武尊神社駐車場は約50台駐車できて、トイレもあるので便利ですよ。
Q:歩くときの注意点は?
A:剣ヶ峰からの下りと熱中症対策です。
長田:一番の注意ポイントは、剣ヶ峰からの下り。大きな段差や張り出した木の根が続き、滑りやすい場所もあります。このコースで最も気をつかう区間なので、焦らず足元を確認しながら慎重に歩いてください。また、剣ヶ峰の山頂も崩れているところがありますので注意しましょう。

木の根が張り出して滑りやすい剣ヶ峰からの下り
huiliziさんの活動日記より
松原: 夏は熱中症対策も欠かせません。コース上には手小屋沢避難小屋付近と山頂近くに水場がありますが、時期によっては枯れていることもあるので、水は十分な量を持って歩くことをおすすめします。
Q:おすすめの下山スポットは?
A:①イタリアンレストラン「オステリア サンテ」、②「ホテルサンバード」の日帰り温泉、 ③「そば処 角弥」(いずれもみなかみ町)
松原:昨年10月にオープンした「オステリア サンテ」は、本当におすすめです。東京の池袋の人気店で腕を振るっていたシェフが地元に戻って開いたお店で、アスパラやワラビ、ウドなど、地元の旬の食材をふんだんに使った料理が楽しめます。私がいただいたワラビのパスタも絶品でした。
夕方は午後5時から営業なので、登山後は「ホテルサンバード」の露天風呂で汗を流してから食事に向かうと、ちょうどいい流れですよ。

本日のランチペペロンチーノ(天然こごみとシラス)
写真提供=オステリア サンテ
長田:和食なら「そば処 角弥」がおすすめです。約250年前に新潟県長岡市で創業した老舗で、しっかりとしたコシのある手打ちそばが味わえます。おすすめは、やっぱり名物の「へぎそば」。登山の締めくくりにぴったりです。

午後2時30分頃には売り切れてしまうことが多いので、早目の来店がおすすめ
写真提供=そば処 角弥
至仏山(しぶつさん)
標高:2,228m
おすすめコース:鳩待峠-至仏山-山ノ鼻周回コース
行動時間:5時間57分
コース難易度:中級者向き

Q:どんな山なの?
A:至仏山は、群馬県・尾瀬国立公園にそびえる標高2,228mの日本百名山。蛇紋岩が生み出す独特の自然環境で知られ、高山植物の宝庫として親しまれています。尾瀬ヶ原を見下ろす雄大な景観も魅力で、多くの登山者を惹きつける名峰です。なお、至仏山は自然保護のため登山道が一方通行になっているので、山ノ鼻から登り、山頂を経て鳩待峠へ下山します。
Q:見どころを教えて!
A:8月の至仏山は、夏から初秋へと移り変わる尾瀬の景色が魅力。オヤマ沢田代や稜線ではウメバチソウやエゾリンドウなど晩夏の花が咲き、山頂からは尾瀬ヶ原や燧ヶ岳(ひうちがたけ)、谷川連峰、日光連山を望む大展望が広がります。9月には草紅葉も楽しめます。
松原:至仏山は「花の百名山」として知られています。初夏ならホソバヒナウスユキソウ(日本版エーデルワイス)が有名ですが、8月も見どころはたくさんあります。高天ヶ原ではタカネナデシコやタカネトウウチソウなどが登山道を彩り、まるで花畑の中を歩いているような気分になります。

コバケイソウの群生に囲まれながら木道を歩ける
tamさんの活動日記より
下山ルートの途中にあるオヤマ沢田代は、小さな湿原ながら見応え十分。シカ柵の効果もあって、8月にはキンコウカの群落が見られます。当たり年には湿原一面が鮮やかな黄色に染まり、本当に見事ですよ。
Q:注意することはある?
A:クマとの遭遇に注意!木道で滑らないようにしましょう。
長田:山ノ鼻周辺の湿原ではクマの目撃情報が多く、とくにミズバショウの実が熟す8月は、早朝や夕方に出没しやすくなります。出かける前にYAMAPの「フィールドメモ」機能から「クマ情報」をチェックし、クマ鈴やクマスプレーを携行しましょう。

山ノ鼻では登山者にクマへの注意喚起を行っている
おけぴかさんの活動日記より
また、この季節の鳩待峠発の最終バスは午後4時30分です。お盆明けからは最終が3時30分に早まる日もあるので、時間に余裕を持って下山するためにも、遅くとも9時前には登山を開始することをおすすめします。
松原:至仏山は蛇紋岩の山なので、とにかく足元が滑りやすいです。雨で濡れるとさらに滑りやすくなるので、慎重に歩いてください。高天ヶ原ルートは木道の階段が多く、一部は積雪の影響で傾いている場所もあります。足元をよく確認しながら歩きましょう。
また、夏は蛇紋岩の照り返しで想像以上に暑くなります。しかも登山道には水場がありません。熱中症を防ぐためにも、水は十分な量を持参してください。
Q:おすすめの下山スポットが知りたい!
A:①「至仏カフェ」のクレープ、②「食事処 健太」、③「尾瀬ぷらり館 戸倉の湯」(いずれも片品村戸倉)
松原:山ノ鼻の至仏山荘前にある「至仏カフェ」は、ぜひ立ち寄ってほしいお店です。クレープは、生地がパリッと香ばしくて本当においしい。パティシエスタッフが一枚ずつ丁寧に焼いていて、季節限定のトッピングも人気です。私が食べたリンゴバターのクレープは、ボリュームもたっぷりで大満足でした。

ボリューム満点の至仏カフェのクレープ
写真提供=東京パワーテクノロジー
長田:温泉なら「尾瀬ぷらり館 戸倉の湯」が近くて便利です。汗を流した後は、鎌田方面へ向かう途中にある「食事処 健太」にぜひ立ち寄ってください。地元の山菜やきのこを使った料理が評判で、尾瀬のリピーターにも人気のお店です。おすすめは、舞茸の天ぷらがのったおそば。お土産として販売している塩山椒もぜひ味わってみて欲しいです。

内湯と露天風呂で源泉掛け流しの温泉が味わえる「尾瀬ぷらり館 戸倉の湯」
写真提供=片品村観光協会
八間山(はちけんざん)
標高:1,935m
おすすめコース:富士見峠-イカイワの頭-八間山 周回コース
行動時間:3時間40分
コース難易度:初中級者向き

Q:どんな山なの?
A:八間山(はちけんざん)は、群馬県中之条町に位置する標高1,935mの山。野反湖のほとりから登る初心者にも人気の山で、笹原が広がる開放的な稜線歩きと、周囲の山々を望む大展望が魅力です。
Q:見どころを教えて!
A:8月は、野反湖畔でサワギキョウやヤナギラン、山ではマツムシソウやオヤマリンドウなどが咲き、花と展望を一度に楽しめます。

鮮やかなブルーが目を引くオヤマリンドウ(画像はイメージです)
長田:八間山は歩きやすく、お花も多いので、特に女性に人気の山です。夏はクルマユリやアザミ、ハクサンシャジンなどが次々と咲きます。中之条町ではSNSで開花情報も発信しているので、出かける前にチェックすると見頃の花に出会いやすいですよ。
山頂までは約1時間30分。登るにつれて野反湖を見下ろす景色が広がり、頂上に立つと白砂山やエビ山、ぐんま県境稜線トレイルの山並み、浅間山まで見渡せます。初心者でも気軽に、大展望の稜線歩きが楽しめるのが魅力です。そして、富士見峠までの帰路では、野反湖畔で、ヤナギランやアキノキリンソウなどが咲く景色を楽しめます。
松原:八間山は背の高い木が少ないので、とにかく展望がいいんです。青空を映した野反湖の景色は、本当にきれいですよ。湖畔にはキャンプ場もあるので、一泊して星空を楽しみ、翌朝に八間山へ登るプランもおすすめです。

気持ちの良い野反湖畔を歩く
obuさんの活動日記より
Q:注意点は?
A:雷とガス(濃い霧)に注意!
松原:一番気を付けたいのは雷ですね。登山口から標高が高く、樹林帯が少ないので、天候が急変すると身を隠せる場所がほとんどありません。午後は雷雲が発達しやすいため、早めの出発を心がけましょう。
長田:初心者でも安心して歩けるコースですが、ガスが出ると登山道が分かりにくくなることがあります。YAMAPで現在地を確認しながら歩くと安心ですね。
Q:おすすめの下山スポットは?
A:①「そば処 六合 野のや」、②「㐂久豆腐店」、③尻焼温泉、(以上、中之条町)④大滝乃湯(草津町)
長田:お蕎麦なら六合(くに)地区にある「そば処 六合 野のや」がおすすめです。標高約1,100mの六合地区で育てたそばを、野反湖の源流水で打つ二八そばは、のど越しも香りも抜群。自家栽培の舞茸を使った天ぷらも人気で、登山後のお昼にぴったりです。

「そば処 六合 野のや」さんのまいたけ天丼付きざるそば(大盛)
京錦さんのモーメントより
お店の向かいにある「㐂久豆腐店」もぜひ立ち寄ってみてください。名物の豆腐アイスをはじめ、ざる豆腐や湯葉、豆乳などが並び、お土産探しにもおすすめですよ。
松原:温泉なら、まずは尻焼温泉ですね。川そのものが天然露天風呂になっていて、自然の中で温泉を楽しめます。無料ですが、更衣室などの設備はありませんので注意してください。

河原の中の底からお湯が沸き出し、お尻が焼かれる感じから尻焼温泉と名づけられた
写真提供=中之条町観光協会
時間に余裕があれば草津温泉まで足を延ばすのもおすすめです。日帰りなら「大滝乃湯」がいいですね。ぬるめのお湯から順番に入る、草津ならではの湯浴みを楽しめます。
湯ノ丸山(ゆのまるやま)
標高:2,101m
おすすめコース:地蔵峠-湯ノ丸山-烏帽子岳登山口 縦走コース
行動時間:3時間10分
コース難易度:初級者向き

Q:どんな山なの?
A:湯ノ丸山は、群馬県と長野県の県境に位置する標高2,101mの山。登山口の標高が高く、初心者でも登りやすい人気の山です。なだらかな稜線と360度の大展望が魅力で、浅間山や北アルプス、八ヶ岳まで見渡せます。

さまざまなお花が咲き乱れる湯ノ丸山
みきさんの活動日記より
Q:見どころは?
A:夏は涼しい高原の風を感じながら、開放的な稜線歩きを楽しめる季節。登山道ではオヤマリンドウやヤナギランなど晩夏の花々が咲き、花と大パノラマを満喫できます。
松原:初めてなら、地蔵峠から山頂を往復し、鞍部を経由して戻る周回コースがおすすめです。コースタイムは約3時間と手頃で、天候や体力に合わせて無理なく歩けます。余裕があれば、隣の烏帽子岳まで足を延ばすのもいいですね。
松原:何より魅力は360度に広がる眺望ですね。晴れた日には遠くの名峰まで見渡せ、条件が良ければ富士山も望めます。また、湯ノ丸山は日本海側と太平洋側の気候が交差する場所にあり、低山の植物から高山帯の植物まで多彩な植物が見られるのも特徴です。さらに、貴重な高山蝶・ミヤマシロチョウが生息していることでも知られています。

希少な高山蝶で絶滅危惧種のミヤマシロチョウ
さときんさんの活動日記より
長田:地蔵峠からなら山頂まで約1時間30分。これだけ手軽に歩けて、2,000m級の大展望を味わえる山はそう多くありません。時間があれば北峰まで足を延ばしてみてください。岩の隙間には珍しいヒカリゴケが見られますよ。
Q:注意点は?
A:積乱雲の発達とガスに注意!
松原:一番注意したいのは雷です。気候が交差するため天気が変わりやすく、午後は積乱雲が発達することがあります。展望が開けているぶん雷雲にも気付きやすいので、怪しい雲が見えたら無理をせず下山してください。早出・早着が基本です。また、山頂から鞍部へ下るガレ場は急で滑りやすいので、足元には十分注意しましょう。
長田:登山口から鐘分岐までは歩きやすいですが、その先は岩が多い急登になります。雨の後は特に滑りやすいですね。山頂は広く、ガスが出ると進む方向を見失いやすくなります。下山前にはYAMAPでルートを確認することをおすすめします。
Q:おすすめの下山スポットは?
A:①鹿沢温泉「紅葉館」、②「食堂カフェ きゃべつごはん」(いずれも嬬恋村)
松原:温泉なら鹿沢温泉の「紅葉館」がおすすめです。明治2年創業の歴史ある一軒宿で、現在は鹿沢温泉で唯一営業を続けています。2本の自家源泉を加水・加温なしの源泉かけ流しで楽しめるのが魅力。青みがかったやわらかな湯は湯治場らしい雰囲気があり、登山後の疲れを癒やしてくれます。

秘湯感溢れる鹿沢温泉「紅葉館」
写真提供=鹿沢温泉「紅葉館」
食事なら、嬬恋村の直売所「あさまのいぶき」にある「食堂カフェ きゃべつごはん」がおすすめです。嬬恋産の野菜をたっぷり使ったスープカレーや、ランチプレートが絶品。ザワークラウトも人気で、お土産にもぴったりです。

朝採れの嬬恋産野菜をたっぷりと使用したランチプレート「農家のいろどり旬菜ごはん」
写真提供=あさまのいぶき
教えてくれた人
長田厚実(おさだあつみ)さん

日本スポーツ協会公認山岳指導員
みなかみ山岳ガイド協会、尾瀬ガイド協会所属
谷川岳など群馬の山々をベースに春夏秋冬、山遊びを楽しんでいる。
松原美成子(まつばらみなこ)さん

日本山岳ガイド協会登山ガイド ステージⅡ
みなかみ山岳ガイド協会所属 尾瀬ガイド協会所属
谷川岳を始め、上越の山、北アルプスなど各地の山をガイドする傍ら、山番組のサポートなどを通じて、群馬の山の魅力を紹介。山登りの楽しさ+αを追い求めて、ガイドが無い日も山に入る日々。
原稿:大関直樹
協力:群馬県、公益財団法人群馬県観光物産国際協会