登山で膝が痛くなる原因と対策は? 歩き方・トレーニング・道具で膝痛を解消

登山において最も負荷がかかる場所、それは膝。実際、膝痛に悩む方も多いのではないでしょうか? 今まさに膝痛に悩んでいる方はもとより「痛くはないけど、長距離を歩くとちょっと違和感がある」なんて方も多いと思います。でも、その兆候、放っておくと取り返しがつかないことになるかも。今回は、膝痛の原因や改善法、膝痛を和らげる道具についてお伝えします。末長く登山を楽しむためにも、自分の膝をメンテナンスしませんか?

2025.07.01

YAMAP MAGAZINE 編集部

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膝が痛くなる原因は?

登山中に膝に痛みを感じる原因はさまざまありますが、この記事では筋肉の疲労を原因とするケースを中心にご紹介したいと思います。人によっては関節の故障や、過去の怪我による後遺症による症例もあると思いますが、実は膝の痛みの多くはこの筋肉疲労が原因だと言われているのです。
膝と大腿四頭筋の位置関係

膝の痛みの主な原因として挙げられるのが、「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」の疲労。大腿四頭筋とは太腿の上部、ちょうど手をふとももの上に置いた場所にあります。膝関節を伸展し、登りで体を持ち上げる力と下りで体重を支える役割を果す、登山においても貢献度の大きい筋肉です。この大腿四頭筋が疲労することにより、筋肉がつながっている膝の周辺に痛みが発生してしまうのです。

ではなぜこの大腿四頭筋が、膝が痛くなるほどまでに疲労してしまうのか。それは登山にともなう「運動の負荷の大きさ」が背景にあります。

登山中、脚部にかかる負荷は日常生活と比べてとても大きくなります。体重50kgで荷物が10kgだとしても、60kgもの負荷が片方の脚にかかります。体の動きによる衝撃も加わるので実際はさらに大きな負荷が…。ちなみに、下りは登りよりもさらに大きな負担がかかるのだそうです。

登山においては、重いバックパックを背負い、1日に数千歩〜数万歩も歩き、標高差も千メートルを超えることもあるでしょう。日常にはない高い負荷が膝にかかることで脚部の筋肉が疲労し、膝に痛みを感じるケースが多くなるんです。

不安定な場所を長時間に渡って歩く登山は、いわずもがな膝への負担も大きい

大腿四頭筋の疲労以外にも、太ももの外側にある腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)の疲労は膝横の痛み、鵞足(がそく)と呼ばれる膝まわりの筋肉の腱と膝の靭帯の疲労は膝の内側の痛み、膝の動きをサポートする膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)の硬化は膝下の痛みにつながることが多いようです。つまり、人によって痛みを感じる理由はさまざま。自分はどのケースだろう?と心配な方は専門家(主に整形外科等)に診てもらうことを推奨します。

でも、ちょっとした工夫で膝の痛みを軽減できることも。ここでは「3つの原因」と「その解決法」 を紹介したいと思います。

原因その1:歩き方が悪い

まず、歩き方に問題があるケース。前述のように、登山では脚部への負荷が大きくなります。日常生活と同じような歩き方や脚の使い方をしてしまうと、筋肉や関節が負荷に耐えられず痛みを発してしまうことも。

例えば「大股で一歩ごとの負荷が大きくなるような歩き方」や「飛び下りるように片足に体重がかかるような歩き方」。これらの歩き方は筋肉を疲労させ、痛みを発生させる原因にもなってしまいます。

とくに痛みが発生しやすいのは下り。下りは登りに比べて心肺にかかる負荷が少なく、息切れもしにくいのが特徴です。登りは息が荒くなったり、汗をかいたりするように、エネルギー消費が大きく、無意識のうちにゆっくり歩いているケースが多いですよね。一方、下りでは早いペースで歩いてしまうことが多いんです。しかしここが注意です。下りでは脚にかかる負荷が登りよりも大きいことをお忘れなく。筋肉も下りの衝撃に対応するように動かさなければいけないため、 歩き方が悪いとあっという間に、筋肉は疲労してしまいます。

下りではついついスピードを出しがち。無意識のうちに大股になってしまうことが多い

対策その1:正しい歩き方をマスターしよう!

対策はもちろん、正しい歩き方の習得。特に有効なのは、ゆっくり歩いたり、歩幅を狭くしたり、膝を曲げてクッションのようにしたりと、筋肉への負荷を減らす歩行技術です。

山を歩いているとき、ドンドンと足音がしていませんか? 足音が大きいとそれは負荷の大きい歩き方になっている証拠。一歩あたりの歩幅を小さく、優しく接地するように歩いてみましょう。一歩ごとの衝撃を減らすことができれば、筋肉の疲労を抑えることができます。

衝撃を減らす歩き方に加えて「膝の向き」にも注意するとベター。脚部の「ねじれ」は関節に与えるダメージが大きくなりやすいため、膝をまっすぐにして歩く「正しい歩き方」を身につけておくといいでしょう。

前に出した足が大きく外側や内側にねじれていると、膝にも大きな負担がかかってしまう

正面から見て、膝を曲げたときに内側や外側に向いていませんか? このラインが真っ直ぐになっていないと膝に変な力がかかってしまい、筋肉が余計な動きをしてしまいます。このことにより筋肉の疲労や関節の痛みが発生します。歩いている時、ちゃんと真っ直ぐになっているかな? とたまに思い出して意識して歩いてみてください。

まっすぐに足を出すと、膝への負担は少ない

真っ直ぐになっていればかける力も無駄がなく地面に伝わり、膝の痛みが出にくいだけでなく、楽に登り下りができるようになります。

ほかにもバックパックの荷物を軽くする、傾斜の緩いコースを選ぶなど、脚部の負荷=痛みの原因を削ってみてください。もし登山中に膝が痛くなってしまったら、歩幅を狭くしてみましょう。そうすることで歩数は増えますが、一歩あたりの衝撃を小さくすることができ、疲労軽減につながりますよ。

原因その2:筋力が足りない


登山では、登り下りといった動きに加え、長距離・長時間に渡って歩くこともあるでしょう。当然のことながら、日常生活以上に脚部の筋肉を酷使することになります。その運動に耐えられる筋力を備えているかどうか。頻繁に登山をしていたり、普段からトレーニングをしていたりしない限り、どうしても「筋力不足」で山を登ることになってしまうのです。

そのため「登りが辛い…」「下りが疲れる…」というのはある意味当然のこと。「登山では普段以上に筋肉を酷使している」ということを理解し、普段からトレーニングを行なって基礎筋力をアップしたり、自分の体力に合ったルート設定やペース配分をしたりと対策をしていただきたいと思います。

トレイルランニングの選手は、りっぱな太ももの筋肉をしていますよね。長時間、しかも整地されていない山道を走るという負荷の大きい行動を可能にしている理由は、ズバリ「強い筋肉が支えているから」に他ならないのです。

対策その2:家でもできる「膝痛改善トレーニング」

膝の痛みの原因である脚部の筋力不足はトレーニングで解消できます。トレーニングは大きく分けて「筋力の向上」と「筋持久力の向上」の2つ。筋力の向上は登り下りのための力で、筋持久力は長時間登山をしてもへこたれないスタミナです。この2つを意識してトレーニングをしましょう。ここでは、代表的なトレーニングを2つほど紹介したいと思います。

「スクワット」で脚力アップ!
ひとつめは「スクワット」。脚を少し開き、ゆっくりと屈伸しましょう。膝関節が90度くらいまで曲がればOK(お尻を地面につける必要はありません)。慣れてきて楽に感じたら、バックパックを背負って行ってみるといいでしょう。体重とバックパックの重みを脚部でしっかり支えながら曲げ伸ばしすることで負荷がかかり、筋力がアップします。

10回を1セットとして、セット数を増やしたり荷物を重くしたり、自分なりにカスタマイズしてみてください。はじめは負荷をかけることを意識して筋力アップ、慣れてきたら回数を増やして筋持久力をアップ!

「かかと上げ」でバランスと足裏感覚アップ!
もうひとつは「かかと上げ」。バランスをとりながら爪先立ちを繰り返してみましょう。低い台を利用するのがオススメです。登山道は平面ではないため、足裏の筋力によるバランス感覚が大切。爪先立ちを繰り返すことで筋力がアップし、不安定な登山道でも安定して歩くことができるようになります。そうすることで不整地での安定感が増し、脚部への負荷を軽減できるのです。

日常生活ではなかなか足裏に力を入れる機会がありませんが、「かかと上げ」は電車の中やバスを待っているときなど、いつでも気軽にできるトレーニング。日常生活にぜひ取り入れてください。こちらもバックパックを背負ったり、片足だけで行ってみたりと、自分の状態に合わせてカスタマイズしてみると良いでしょう。

他にも、荷物を背負って階段を登り降りするのも効果的。慣れてきたら、一段飛ばしで負荷をかける、荷物量を重くする、往復回数を増やすといった工夫をしてみましょう。

ざっくりした言い方ではありますが、「膝の痛みの原因」は「日々の運動不足」によるものが大半。山で膝が痛くなって楽しい山行ができないのは避けたいですし、「下山できずに命の危険が…」という可能性もゼロとは言えません。日頃から自分の脚力や体力の維持や把握に努めておきましょう。トレーニングは地味なものですが、山歩きでは多いに役立ちます。痛みのない膝と強い足腰があれば登れる山も、見える景色もきっと変わってくるはずです。

原因その3:道具が合っていない/必要な道具を使っていない

原因1と2は、主に脚部の筋肉の疲労が原因ですが、道具も膝の痛みに関わる要素です。たとえばシューズ。登山では歩くごとに脚に体重と荷物の重み、そして衝撃が加わります。歩行時に脚部の筋肉がクッションの役割を果たしてくれるのですが、その役割をサポートしてくれるのがシューズなのです。

シューズにはミッドソールと呼ばれるフォーム素材などで構成されるクッションが設けられていて、衝撃を和らげる効果があります。でも、ソールのクッション性が弱かったり、そもそも足に合っていなかったりすると効果がないばかりか、余計な負担になっている可能性すらあるのです。

シューズ内のインソールもチェックしておきたいポイントです。登山靴には基本的にインソールが付属していますが、足に合わない場合も。インソールはシューズ内で足裏にかかる体重を分散させ、シューズ内での足裏を正しい位置に収めてくれる役割があります。足裏サポートやパフォーマンスを向上してくれるものもあるので、違和感がある場合は、変えてみるのもオススメです。また、インソールは使用と共にクッション性能が劣化する場合も。へたれている場合は交換をお勧めします。

下りで膝が痛くなるようなケースでは、脚への負荷を軽減してくれるトレッキングポールも効果があります。トレッキングポールを使うことで脚にかかる負荷を腕に分散し、不整地などでは、歩行時のバランスを取ることもできます。結果として、下半身の負担を大いに軽減できるのです。

原因1〜対策その2までの参考文献:『登山の運動生理学とトレーニング学』(発行:東京新聞 山本正嘉:著)

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登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。