福岡の源流域を下る旅|九千部山から那珂川へ。水と森、食とアートに出会う日帰り登山

福岡の水を育むまち、那珂川市。その南に連なるのが、九千部山(くせんぶやま)です。山裾には、豊かな自然とともに暮らす人々、そしてアーティスト・作家が集う南畑(みなみはた)地区があります。

今回ご紹介するのは、九千部山からはじまる、ゆるやかな下る旅。水源の山から森を抜け、川を歩き、まちへ降りるほどに、自然と共に生きる人々の息づかいが少しずつ現れてくる。そんな一日の風景を、アートな寄り道とともに福岡出身のアウトドア好きなライター、青柳舞さんが辿ります。

福岡市中心部から車で約30分。週末にぴったりの日帰り山旅へ。11月には「南畑美術散歩」も開催予定。水とともに移ろう山麓の景色を、歩いてみませんか。

2025.10.27

Aoyagi Mai

食と暮らし、アートのフリーコーディネーター

INDEX


第1部:“下る旅”のはじまり、水のまち那珂川へ


1. 山頂からはじまる、九千部山の絶景&森さんぽ

山といえば“登る”もの。けれど、山の魅力は頂上だけではありません。

今回の山旅では、あえて山頂から“下る”ことを一日のはじまりに。山麓に広がる自然と里の表情をゆっくり味わってみたいと思います。

標高847.5メートル。脊振山系の一角にある九千部山は、なだらかな尾根道が続き、初心者にも歩きやすい静かな山。

森に抱かれた道では、木漏れ日のゆらぎ、朝露のきらめき、そして沢の音が五感をやさしく呼び覚まします。

山を下るほどに、空気はしっとりと湿り、水の循環を肌で感じられる。そんな山歩きです。

今回歩いたのは、2時間弱の行程となる九千部山山頂から五ケ山クロスリバーパークまで下るコースです。(地図をタップすると拡大できます)。該当の地図はこちら

今回の“下る旅”では、山頂の駐車場に車を停めてスタートします。仲間と車2台で訪れるなら、1台をゴール地点の五ケ山クロスリバーパークに停めておくと、下山後の車回収に便利です。もちろん、五ケ山クロスリバーパークからの往復登山も楽しめます。

山頂の駐車場からすぐの山頂入口。駐車場はこの手前にあります

雲の影が山肌を渡っていくのが見えて、いつまでも眺められそう

うっすらと海の景色がひろがる。福岡の街、その先に博多湾

眼下に広がる福岡の街並みを眺めていると、自分たちが暮らすあの街を潤す水が、今まさにこの足元から始まっているのだと、不思議な感動がこみ上げてきます。

九千部山の名の由来をたどって

むかし、九千部山に一人の僧がいました。村人の安穏を願い、山頂で日々経を唱えたと伝えられています。数え切れないほどの経を唱え続け、9千部唱え終えたところでその生涯を終えたそう。人々はその志を称え、この山を「九千部山」と呼ぶようになりました。

山中には、今もひっそりと経塚と供養塔が残り、その静けさの中に、祈りの記憶を感じることができます。

頂上の祠から少し奥に展望台あり。360°の景観ポイントです

うるおいの森を歩く

九千部山は、福岡県那珂川市と佐賀県鳥栖市にまたがる、脊振山系の山。山頂近くまでは、放送局の無線設備を維持するための車道が続いています。

けれど、ひとたび森の中へ足を踏み入れると、聞こえてくるのは風に揺れる木々の音。土の匂いと水を含んだ空気がやわらかく肌を包み、心がすっと澄んでいくような、格好の森林浴スポットです。

山頂から下山口までは、2時間弱の行程。険しい場所もないため、ゆっくりと深呼吸しながら瑞々しい森を楽しむことができます。

うるしが谷分岐。ここから五ケ山クロスリバーパークへの下りへ。※グリーンピアなかがわは現在閉園しています

山を包む透明な水の気配。歩くたび、呼吸がしっとりしていくよう

この山が古くから「水の山」として大切にされてきた証なのでしょう。豊かな水を育むのは、九千部山に広がる豊かな森です。この「緑のダム」が雨を受け止め、浄化し、ゆっくりと麓の川へと送り出していきます。

ここからはじまる水の物語を想像しながら、豊かな森のなかをゆっくりと下っていきましょう。

蜘蛛の巣が描く、水のレース。山と水のアート作品

やわらかな光の森が、どこまでも

森の光を浴びながら下っていくと、五ケ山クロスリバーパークに到着します。山頂から想像していた水の物語が、今、目の前の豊かな川の流れとして姿を現しました。

五ケ山クロスリバーパークで山歩きの足を癒して

勢いある水しぶきに手を伸ばすと、ひんやりとした山の息が伝わってきます

2. 福岡を潤す五ケ山ダムへ 静かな水の風景を歩く

下山後に目指したのは、五ケ山クロスリバーパーク。そこから川上へ少し歩くと、森の間からダムの堤体が姿を現します。

近づくにつれて水の音が強まり、巨大なコンクリートの壁が空を切り取るように立つ様子は圧巻。

激しい水しぶきが白く舞う。その勢いに、山の力と水の重みを感じます

見下ろす先には、勢いよく流れ出す水。ここが那珂川の水の象徴であり、福岡の水のはじまり

その上、天端(てんば)へは坂道や階段を登って行くことができます。足もとに感じるのは、ダムの堅牢さと、山の静けさが溶け合うような重み。

堤体の上に立つと、ダムの湖面が静かに広がり、山の稜線と空の境がひとつに溶けていくよう。風が吹くたびに湖面がゆるやかに波打ち、そのきらめきが山と森の景色に花を添えます。

静かなその時間こそ、五ケ山ダムが見せるいちばんの美しさかもしれません。

COLUMN|堤体を歩いてみよう

時間に少し余裕があれば、堤体の上をゆっくりと歩いてみましょう。天端は福岡県内でも有数のスケールを誇り、その長さは556メートル。手すり越しに湖面をのぞけば、森と水と空がひと続きの景色になっています。

ダムの下にある五ケ山クロスリバーパークとあわせて歩けば、下から見上げる景観と、上から見下ろす眺め。二つの視点で、五ケ山の水の流れを味わうことができます。

この場所が、福岡の暮らしを支えている。そう感じられるダム

山の水をたくわえた巨大なダム湖から山並みを望む

3. 湖畔のカフェ TRÅILでひと休み

五ケ山ダムの湖畔に立つ、ガラス張りのカフェ「TRÅIL(トレイル)」。歩いたあとのひと息をここで。

山と旅人を迎えるカフェ「TRÅIL」

おすすめは、さわやかなグリーンアップルソーダ。
風が吹き抜ける湖畔の景色を眺めながら口に含めば、爽やかな香りとほのかな甘味が体にしみわたります。まるで自然そのものを味わうような贅沢なひととき。

やっほー!空に掲げる、五ケ山のサイダー

ガラス越しの席、あるいはカフェ上のデッキからは、湖面を見下ろす特等席の眺めが広がります。光と風のあいだで、静かに息を整えましょう。

山を下り、ダムの壮大さに触れた後だからこそ、このカフェでの一杯は格別です。美しい水辺の景色と共に過ごす時間は、忙しい日常を忘れさせてくれる、贅沢なご褒美となるでしょう。

INFORMATION

店名:TRÅIL
所在地:〒811-1235 福岡県那珂川市大字五ケ山1397-46(GOKAYAMA CROSS BASE内)
営業時間:11:00〜17:00
定休日:不定休 ※営業日はInstagramでご確認ください。
駐車場:無料(普通111台/大型5台)
Instagram:@trail_base


第2部:九千部山のふもとで楽しむ2つの旅
ナチュラル派とアート派へ


 

カフェで一息ついたら、旅の後半は、食とアートを巡る旅。ちょうどお腹も空いてくる頃合いです。まずは、地元でも人気のパン屋さんに伺いました。

4. 週末、薪窯の香りに誘われる。おとぎのパン屋 MADOKA

木立の向こうに、ふわりとパンの香りが漂ってきます。

九千部山のふもと、那珂川のやわらかな空気に包まれる里山に、ひっそりと佇んでいるのは「手づくりパン工房 MADOKA」。まるでおとぎ話の中から抜け出してきたような、小さなパン屋さんです。

週末の3日間だけ開かれる店内では、薪窯で焼いた香ばしいパンや石窯ピザに、季節のサラダや生ハムなどを添えたもっちりパンのプレートランチを味わうことができます。

木立の向こうから、パンの香り。週末だけ開く、小さなおとぎのパン屋

お店までのワクワクを、愛らしい扉が迎えてくれます

「もともとサラリーマンをしてたんだけどね、廃材で家をつくるような器用でおもしろい人たちに出会って。パンよりも、そんな人たちの暮らしに惹かれたんです。ゆっくり山の中で暮らしたいなあって。母さんに話したら“いいよ”って言ってくれて。すっかりこの暮らしが気に入ってしまいました(笑)。今もその仲間たちとは仲良くしていて、山やパンのこと、いろんな話をしてます。」

そう話すのは店主の圓(まどか)寛明さん。穏やかな笑顔の奥に、山の時間のようなぬくもりと包み込むやさしさが宿っています。100年以上前のヨーロッパの製法を手本に、天然穀物酵母をゆっくりと発酵させ、薪の炎と余熱で丁寧に焼き上げる。そんな時間の流れそのものが、しっとりと満足感のあるMADOKAの味をつくっています。

廃材を活かした木のぬくもりある建物には、薪の香ばしさと発酵の匂いがやわらかく混ざり合い、森の息づかいがそのまま流れ込んでいるよう。

ピザランチのピザは3種。サラダ付き

人気のピザランチは予約制。ただし、焼きたてのパンは店頭で販売されているので、ふらりと立ち寄っても大丈夫。ひと口頬張れば、森から里山へとつながるエネルギーが体いっぱいに広がります。

圓さんのユーモアあふれる声と、奥様の峰子さんのやさしい笑顔が迎えてくれる。その空気のあたたかさこそ、多くの人を惹きつけるいちばんの理由です。

穏やかな声とやさしいまなざし。MADOKA の味をつくるのは、このおふたりです

 

INFORMATION

店名:手づくりパン工房 MADOKA
所在地:〒811-1233 福岡県那珂川市大字埋金408-1
営業日:金・土・日のみ(パンは売り切れ次第終了/ランチは要予約)
パン販売:11:00〜(完売終了)
店内利用:12:00〜16:00頃(L.O.14:00)
※食材の状況により早めに閉店する場合があります。
※ご夫婦で営まれているため、臨時休業となる場合があります。
電話:090-1348-9043
駐車場:あり(台数に限りあり/相乗りのご協力を)
Instagram:@madoka_nakagawaten
※掲載情報は変更される場合があります。ご来店の際は、事前に最新情報をご確認ください。

▼ナチュラル派のあなたへ

5. 川辺の自然に集う、「中ノ島公園」と「かわせみの里」

那珂川の豊かな水の流れをのぞむ「中ノ島公園」は、水辺の景色と地元の恵みがひとつに溶け合う、那珂川を代表する癒しスポット。川のせせらぎを聞きながらベンチで一息つけば、鳥の声と風の音がまるで音楽のように響きます。

併設の「かわせみの里」には、朝どれ野菜や果物、できたての豆腐やお弁当、焼きたてパンなど、那珂川の“おいしい日常”が勢ぞろい。屋外マーケットでは飲食や雑貨の出店もあり、週末には小さな賑わいが生まれます。

地元の人も、遠方の方も。小さな直売所「かわせみの里」を目指してやってきます

那珂川の水辺に寄り添う「中ノ島公園」 。夏は川遊びで、子どもたちの明るい声に包まれて

もうひとつ、人気は手づくりの鶏めし弁当。川辺でひと息つきながら、いただくのもおすすめ

「ここではね、トマトやナスは年中あるわけじゃないんです。その季節にしか出会えないおいしい野菜がある。それが、この里の魅力なんですよ」と、にこやかに話すのは寺井恵(てらい・めぐみ)さん。地元の人たちと力を合わせて直売所を支える一方、南畑地区のアートイベントにも携わり、地域の魅力を発信し続けています。

「露地ものの朝どれ野菜など、その日ごとの出会いが南畑の季節を教えてくれます」と寺井さん

テイクアウト専門のNAKANOSHIMA COFFEE STANDでは、コーヒーやソフトドリンクに加え、那珂川市特産の「やまもも」を使った人気のやまももソフトクリームが数量限定で登場。甘酸っぱくてみずみずしいその味わいは、川辺の空気にぴったり。ジャムや焼き菓子など、おみやげも見逃せません。

地元のやまももの木から、みんなで摘んだ実をソフトクリームに

やまももの実をたっぷり使ったやまももジャムをはじめ、那珂川の恵みの加工品が並びます

 

INFORMATION

名称:中ノ島公園・かわせみの里
所在地:〒811-1233 福岡県那珂川市市ノ瀬445-1
電話:092-953-0514
営業時間:8:30〜17:00(4月〜9月は18:00まで)
定休日:毎週水曜(4月〜10月は無休)
駐車場:あり(無料駐車場:50台、第2駐車場118台※最初の60分は無料、以降30分毎に100円)
公式サイト:https://www.nakanoshima.fukuoka.jp
Instagram:@nakanoshima.fukuoka

6. 古民家にうるおう、三つの小さな暮らしのお店「素素(susu)」

自然のリズムに寄り添いながら、からだと心を整える時間を過ごせるのが「素素(すす)」。築150年の古民家を改装した空間に、3人の女性がそれぞれの小さな店を営んでいます。

素材にこだわった焼き菓子とお茶を楽しめる「オーガニックおやつ研究所」、天然素材の衣服や小物を扱う「mercerie(メルスリー)」、世界の手仕事布を集めた「HEIRLOOM clothing & fabrics(エアルーム)」。

古民家の仕切りを外し、3 人の女性がそれぞれの店を営む「素素 」

「素素 」は、3 人の感性が響きあって、やさしい時間を編んでいるお店

三つの小さな店が並びながらも、それぞれの個性が静かに同居する屋内。お茶を味わう人、布を選ぶ人、言葉を交わす人。屋内にはそれぞれの穏やかな時間が流れ、そこにいる人すべてがゆっくりと溶けていくような心地よさがあります。

南畑から少し離れた西畑(にしはた)地区にあるこの店は、静かな田園の風景の中で、自然と人が調和する暮らしを感じさせてくれます。お気に入りのひと品と出会える、そんな場所です。

オーガニックおやつ研究所の松本さんが営むカフェ。甘い時間も、やさしいランチもゆっくりと

世界中から集めた“受け継がれるもの”が並ぶ「HEIRLOOM clothing & fabrics」

mercerie――デザインから縫製まで。着る人に寄り添う一着を

 

INFORMATION

店名:素素 -susu-
所在地:〒811-1232 福岡県那珂川市西畑155
営業日:金・土(※月1回程度、日曜営業あり)
※営業日・営業時間は各店舗およびInstagramでご確認ください。
公式サイト:https://susu.shopinfo.jp
Instagram:
・素素 -susu-:@susu_fukuoka
・organic oyatsu研究所(カフェ・グロッサリー):@organicoyatsu.kenkyujyo
・mercerie(洋服と小物):@_mercerie_
・HEIRLOOM clothing & fabrics(布と雑貨):@heirloom_fukuoka

▼アート好きのあなたへ

7. 11月、南畑美術散歩へ行こう。

登山口から少し足を伸ばせば、“水がつくる里山”に出会う寄り道が待っています。川沿いのきらめきと響き合うアート工房、自然の恵みを生かしたカフェやクラフト体験。ここ那珂川・南畑地区には、ゆるやかな時間の中で、創作と暮らしを重ねる人たちがいます。

紅葉色づくころ、山歩きとともにアート巡りを楽しんで

作家の工房だけでなく、飲食店などまち全体でイベントを盛り上げます

その象徴が、毎年11月に開かれる「南畑美術散歩(みなみはたびじゅつさんぽ)」。

2025年で12回目を迎えるこのイベントは、かつて南畑小学校の児童数が100人を切った時期、“この地域の魅力を伝えたい”という思いから、地元の人たちが立ち上げたものです。

アートを通して人が集い、語り合い、地域に新しい風が吹きはじめました。その流れは時間をかけて確実に実を結び、今では南畑小学校の児童数が再び100人を超えるまでに。アートが地域を元気にし、世代をつなぎ直した南畑の奇跡とも言える取り組みです。

さきほど「かわせみの里」を案内してくれ寺井さんは、この南畑美術散歩の実行委員長。もともとは福岡市から訪れていた鑑賞者のひとりでした。南畑のあたたかな空気、人と人のつながりに心を惹かれ、やがてこの地へ移り住んだそうです。「ここでは、自然とともに暮らしを楽しみ、感性豊かな作家が息づいています。この風土をもっと多くの人に知ってもらいたい」と彼女は語ります。

昨年の様子

南畑地区周辺に点在するアトリエやギャラリーでは、陶芸、ステンドグラス、木工、ジュエリー、服飾など、さまざまなジャンルの作品が息づいています。

イベント期間中には、普段は立ち入れない工房の扉が開き、作家との対話や、作品が生まれる瞬間にふれることができるとのことなので、興味がある方はぜひ!

南畑地区内では当日、無料のシャトルバスも運行。中ノ島公園や南畑小学校を結ぶルートで、はじめての方でも安心して里山を巡ることができます。

秋の里山を歩きながら、ひとつの作品からまた次の工房へ。水と人、アートと暮らしがゆるやかに重なり合う風景は、心をあたたかく、感性を静かに咲かせてくれる。そんなひとときになるでしょう。


みどころ
・アトリエ公開と体験教室(陶芸/ステンドグラス/木工/服飾 ほか)
・里道に点在するギャラリー巡りとカフェの寄り道
・「水の道」を感じる川沿いのアートスポット
・地元のおもてなしが光るお休み処

まわり方のヒント
・本部と案内所を起点に、エリアごとに小さなループで回る
・写真は午前の森、午後のアトリエがやわらかい光でおすすめ
・歩き+無料シャトルで無理なく数カ所をピックアップ

INFORMATION

イベント名:南畑美術散歩 2025
開催日:2025年11月16日(日) ※雨天決行
時間:10:00〜16:00
会場:那珂川市南畑地区(本部:南畑小学校/那珂川市埋金530-1)
案内所:南畑小学校・中ノ島公園
駐車場:南畑小学校 約60台、中ノ島公園 約150台(11/16のみ第2駐車場も無料開放)
アクセス:福岡都市高速「野多目IC」より約17分
シャトルバス(無料):博多南駅〜中ノ島公園間を約45分ごとに運行
主催・問い合わせ:南畑美術散歩実行委員会事務局(那珂川市役所 地域振興課内)
E-mail:minamihata.mirai@outlook.jp
公式Instagram:@minamihatabijutusanpo

8. 光と水を映す、ステンドグラスの工房「ウェーブGグラス工房」

山の麓の森に抱かれるように、静かに佇む工房の名前は「ウェーブGグラス工房」。扉を開けると、色とりどりのステンドグラスが壁いっぱいに輝き、まるで光そのものが作品になったよう。

工房を主宰するのは、後藤ゆみこさん。那珂川の里山・南畑地区で暮らしながら、森の緑や川のせせらぎ、雨上がりの透明な空気、自然が教えてくれる色や光を作品に映し出すことを意識して、創作活動に取り組んでおられます。

ギャラリーには、光を受けて輝くランプやパネルが並びます

工房には猫や犬たちの姿も。あたたかな空気が流れていました

那珂川に移り住んでおよそ30年、森の緑や川のせせらぎ、水を含んだ透明な空気に囲まれて暮らす後藤さん。

「自然とつながる。自然のなかで暮らす。ふとアイデアが降りることがあるんです。」穏やかにそう語る姿に、彼女の作品の透明感の理由がにじみます。

体験教室(要予約)では、フォトスタンドやフットランプ、オーナメントづくりが楽しめるとのこと。好きな色のガラスを選び、自分だけの「小さな光」をかたちにすることができます。

事前予約制の体験では、約2時間でお好みの色合いの作品づくりが楽しめます

光だけでなく、造形の美しさにも目を奪われるガラスの世界

 

INFORMATION

工房名:ウェーブGグラス工房
所在地:〒811-1231 福岡県那珂川市大字不入道834
営業時間:10:00〜17:00
休業日:日・月曜日(営業日:火〜土曜日)
体験内容:フォトスタンド/フットランプ/オーナメント制作(所要時間 約1時間30分〜2時間程度)
※色のリクエストができるため、世界に一つだけの作品が作れます。
公式サイト:https://www.wave-g.com
アクセス:詳しいアクセスはこちら
Instagram:@wave.g.glass.studio
※掲載されている情報や写真は最新の情報とは限りません。ご訪問の際は、必ず事前に公式サイト等でご確認ください。

終わりに:山を下りて想う、九千部山と那珂川のこと

九千部山から那珂川へと下る一日は、自然の静けさと人の温もりがゆるやかに交わる時間でした。
「ナチュラル派?アート派?」 と聞かれたら、アート。でも、迷う。どちらも好き。森を歩く心地よさも、アトリエで出会う感性も、どちらもこの土地の魅力です。

山と里がつながっているように、自然と人も響き合っている。帰り道、ふと振り返ると、やさしい水の流れと恵みを感じました。季節を変えて、また誰かと訪ねたい。そんな気持ちが、静かに心に残りました。

COLUMN|下山後や里山散策のあとは温泉でひとやすみ。那珂川清滝

九千部山の旅を終えたら、少し足を伸ばして温泉へ。
五ケ山クロスリバーパークから車でおよそ15分、那珂川の森に抱かれるように佇む「那珂川清滝」は、背振山麓の地下深く、早良花崗岩から湧き出る天然温泉です。
肌あたりのやわらかな泉質が、歩いた時間の余韻をそっと包み込み、心も体もゆるやかにほぐしてくれます。
館内には、お食事処や甘味処、休憩スペースも併設。
山歩きの終わりのごほうびとして、ぜひ立ち寄りたい温泉です。
INFORMATION
施設名:那珂川清滝(なかがわせいりゅう)
住所:福岡県那珂川市南面里326
定休日:毎週木曜
TEL:092-952-8848
公式サイト:https://www.nakagawaseiryu.jp

 

原稿:青柳舞
撮影:村上智一
協力:那珂川市 地域振興課

 

Aoyagi Mai

食と暮らし、アートのフリーコーディネーター

Aoyagi Mai

食と暮らし、アートのフリーコーディネーター

1981年、福岡県生まれ。エディター、ライター、プランナー。香川県直島において地域に根付いた美術館の設立に携わってきたほか、福岡の食品会社にて、食と暮らしが楽しくなる商品の提案や、イベント企画、飲食店の器のコーディネートに関わってきた。遺跡やアート好きが高じ、さまざまな地域の文化・歴史に触れる里山歩きはライフワークとなっている。