2018.10.23
YAMAP MAGAZINE 編集部
山頂からの眺めに、達成感、道中で出会う動物たちや季節の植物……などなど。登山には本当にたくさんの魅力、楽しみ方があります。でも、残念ながら山は楽しいだけではありません。同じくらい危険も伴います。標高や季節、登山者の体力やレベルに限らず、どんな山にも危険は潜んでいるのです。
登山初心者はもちろんのこと、山を登る者なら誰もが最低限知っておくべきこと。そんな登山の基本の「き」とも言える事柄を、山岳遭難ルポの第一人者として活躍されている羽根田治氏の監修・協力のもと、コンパクトにまとめてみました。すでに山登りに親しまれている方も、今一度ご自身の登山スタイルを見直してみてはいかがでしょうか?
登山はオウンリスクが原則ですが、アクシデント発生時に「自分たちでは対処しきれない」と判断したなら、早めに救助を要請しましょう。
道に迷ったときには絶対に沢を下ってはなりません。沢を下れば、いずれ崖や滝に行き当たりま す。そこを無理して降りようとして転滑落して命を落としてしまうというのが、道迷い遭難の典型的なパターンです。道に迷ったら沢を下るのではなく、ピークや尾根に登り返します。ピークや尾根には登山道や作業道が通っていることが多く、また見通しも効くので、現在地を知る判断材料になります。
道迷い遭難などでは、焦りから闇雲に山中をさまよい歩き、体力を消耗してしまうケースが目立ちます。もし完全に道に迷ってしまった場合は、いたずらに動き回らずにその場で行動を打ち切り、救助要請をして救助を待ちましょう。次の日の予定や仕事のことはいったん忘れて、無事に生還するためにはどうすればいいのか考えることがいちばん大事です。
まずは、YAMAPアプリの活動記録画面に表示されている経度緯度情報をメモする、もしくはスクリーンショットとして保存してください。その場で携帯の電波が繋がるようであれば救助要請をし、経度緯度情報を伝えます。電波が繋がらなければ、山小屋や尾根など電波の繋がるところへ移動して同様のステップを進んでください。
<救助要請時に伝えること>
自分は大丈夫。どこかでそう思っていないでしょうか。残念ながら、「絶対に遭難しない山」はありません。低山であっても、気象条件やその時の体調によって「危険な山」に変貌します。山にはリスクがつきものであることを理解し、もしもの時は落ち着いて冷静に対処すること。山で遭難しないために、ぜひ心に留めておきたいものです。
監修者:羽根田 治(はねだ・おさむ)
1961年、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。フリーライター。山岳遭難や登山技術に関する記事を、山岳雑誌や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている。また、ロープワークに関する著書・監修本も多い。現在は埼玉と沖縄を行き来する生活を送る。主な著書に『ドキュメント道迷い遭難』『ドキュメント単独行遭難』『ドキュメント生還 山岳遭難からの脱出』『空飛ぶ山岳救助隊』『山の遭難 あなたの山登りは大丈夫か』『山でバテないテクニック』『ロープワーク・ハンドブック』『新装版 野外毒本』『トムラウシ山の遭難はなぜ起きたのか』(共著)『生死を分ける、山の遭難回避術』『人を襲うクマ 遭遇事例とその生態』などがある。
登山は小学生の頃から始め、高校時代は冬休みや夏休みを利用して八ヶ岳の赤岳鉱泉で居候生活を送りながら登山技術を学ぶ。その後は山岳部や山岳会などに属さず、独学で重そうやピークハント、ハイキング、テレマークスキーなどを続ける。2013年より長野県の山岳遭難防止アドバイザーを務める。
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