九重連山・中岳で絶景登山|若者よ、山へ登れ

大分県の火山群・九重山群の一つで、九重山系の中では最高峰となる「中岳」。牧ノ戸峠からスタートし、樹林、御池を経由して中岳山頂を目指す定番コースを、13名の若者たちが登りました。

(初出:「やまポトレ」2017年07月23日)

2021.05.21

YAMAP MAGAZINE 編集部

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山に登ると思うことがある。

山には、若者が少ない。

特に、20代の登山者となると、お目にかかれる機会は一気に少なくなる。

そんなことを考えていたある日、イベントで知り合った元山岳部のコーマ氏が、登山初心者の若者を集めて九重へ登るという話を聞きつけた。

当日集まったのは、大学生から社会人数年目までの13人の若者たち。彼らのほとんどが、これまで登山の経験がないとのことだ。

自己紹介も程々に、登山は牧ノ戸峠から始まった。

開始5分。

林道の神秘的な木漏れ日に歓声が上がる。みな、思い思いにお気に入りの構図を見つけ、カメラやスマートフォンで撮影を始める。

彼らの綺麗な写真やカッコいい映像などに対するアンテナは驚くほどに高い。そして、今回撮られた写真の多くが、Instagramに載るだろう。

山は日常の風景と一線を画す、絶好の撮影スポット。360°が非日常であることは、山へ登る大きな動機になる。

(登山の服装を調べるのに、まずInstagramを使ったという話には驚いたものだ)

舗装された道から、本格的な登山道へ。傾斜がつき始め、高度が上がっていく。それに応じて、景色も変化を始める。

樹林帯から抜け出し、目の前が開けた。その瞬間、二度目の歓声が上がった。

再び始まる撮影大会。日が暮れる前に下山できるか、若干の不安を覚えたが、彼らの眩しい笑顔を見ているとそんなことも忘れてしまう。

一度登ってしまえば、九重はしばらく登山者に優しい。遠くに稜線を望みながら、広い道を賑やかに進むことができる。
開放的な気分になったのか、みな会話も弾んでいるようだ。ネガティブな会話は一切聞かれない。

山では誰もが前向きになれる。すれ違う全ての人とにこやかに挨拶をしあう環境が、下界にはあるだろうか。彼らも他のハイカーと、和気藹々とコミュニケーションを取っていた。

しかし、どんな山もずっと優しいわけではない。ここは九州本土最高峰、九重連山。クライマックスが近づくにつれ、道は険しさを増していく。

さすがに疲れを見せるメンバーも出てきた。すると、自然とそれを励ますメンバーが現れる。誰に言われるまでもなく、とても自然な営みとして、疲れている相手に何をしてあげればいいのかを、みなが考えていた。

登山では困ることだらけ。そして、自然を前に人間はあまりにも無力だ。だからこそ、助け合う必要がある。そのためには、相手の立場になって考えることが大事であり、これはそのまま社会生活にそっくり置き換えられる。学校の自然教室や登山研修などが、あちこちで行われているのも納得ができる。

確かに登山にはきつい側面があるが、きついからこそのご褒美もある。一行は、中岳の麓にある御池に陣を張り、昼食に移った。メニューは各々が選んだカップ麺。それと、こちらで準備したウィンナー。さらに、コーマ氏が持ってきた冷えたサイダー。

疲れや達成感は、極上の調味料になるらしい。「一番印象的だったのは、昼食」という声も出てるほど、山でのお昼ご飯はインパクトがあったようだ。

昼食後、一行はいよいよ中岳山頂へアタックをかける。山行の序盤に「あそこが目指す山頂だよ」と伝えると、多くのメンバーが驚きと絶望の顔を見せていたものだが、今となればゴールは目の前。みなの目は、爛々と輝いていた。

そして、ついに彼らは初めての山頂へと登り立った。そこからの景色は、ここまで頑張ってきた自分へのご褒美だ。何度目か分からない歓声が上がり、終わらない写真撮影大会が始まる。もう何度も見たお決まりの流れだが、私はそれを笑顔で見つめていた。


九重連山の基本情報

■中岳

標高:1,791m
「九州の屋根」とも呼ばれる九重連山(もしくは「くじゅう連山」)は、ドーム状の火山体が数多く連なり、裾野には広大な高原が広がる。5月下旬くらいから火山高地に生えるツツジの一種・ミヤマキリシマが咲き始め、山々がピンク色に染まる。

YAMAP MAGAZINE 編集部

YAMAP MAGAZINE 編集部

登山アプリYAMAP運営のWebメディア「YAMAP MAGAZINE」編集部。365日、寝ても覚めても山のことばかり。日帰り登山にテント泊縦走、雪山、クライミング、トレラン…山や自然を楽しむアウトドア・アクティビティを日々堪能しつつ、その魅力をたくさんの人に知ってもらいたいと奮闘中。