縦走テント泊に必要なスキルとは?|北アルプス縦走を目指すYouTuberこつぶさん、テント泊リハーサル編

YAMAPユーザーの方にアンケートを取ると、今後目指したい山行スタイルの上位にいつも上がってくるのが「テント泊」です。日頃は日帰り登山や山小屋泊を楽しんでいる人が、本格的なテント泊での縦走を目指すには、どんなテント泊のスキルがあればいいのでしょうか?

今回、日頃は大型バイクで全国を回りながら、その過程で日帰り登山を楽しんでいるというYouTuberのこつぶさんが、「この秋、テント泊縦走に挑戦したい」とYAMAPスタッフとテント泊のリハーサルにでかけました。テントの設営の仕方、テント泊のマナー、テント場での山ごはんづくりをした様子をお届けします。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか?

2021.09.16

米村 奈穂

フリーライター

INDEX

YouTuber / YAMAP安全登山アンバサダー こつぶさん
日本一周バイク旅をYouTubeで配信しているこつぶさん。旅先で各地の山に登るうちに、テント泊で縦走がしたいと思うように。目標は昨年登った燕岳から表銀座を歩くこと。
(こつぶちゃんねる:https://www.youtube.com/channel/UCX23v0voDwuLdlF7kNbfZFA

YAMAP STORE店長 木村 晃太朗
某アウトドアアパレルブランドを経てYAMAPへ。山歩き・トレラン・サーフィン・クライミング等、自然と接するアクティビティが趣味。目下、九州の山々を探索中。お客様との対話を大切にし、「新たな発見」が生まれるような提案を心がけている。

YAMAP コミュニティリーダー 大村 雄太
YAMAPユーザーとのコミュニケーションの先頭に立って、数々のイベントやキャンペーンの実施、ユーザーとの対話を繰り返してきた。登山に、キャンプに、釣りにと、休日のアウトドアアクティビティの幅は広い。趣味の域を超えたJAZZプレーヤーでもある。

こつぶさんが、「テント泊リハーサル」をした際の様子は、こちらのチャンネルでもお届けしています。ぜひ、ご覧ください。

こつぶちゃんねる「YAMAP store テント泊リハーサル編」

テント泊装備を担いで登るということ

全国をバイクで旅しながら訪れた先で日帰り登山を楽しんでいるこつぶさんは、今年、北アルプスでテント泊を計画中。

YAMAP STOREでテント泊装備を揃え(YAMAP STORE 買い物編はこちら)、早速リハーサルテント泊を行うために、「YAMAP STORE 福岡店」から車で30分の場所にある、標高829mの宝満山へ向かいました。メンバーは、こつぶさん、YAMAP STORE店長の木村さん、YAMAPのコミュニティリーダーで、宝満山に通い慣れた大村さんの3人。

まずは、登る前にザックの背負い方、靴紐の結び方などをレクチャーしてもらいました。

リハーサルテント泊メンバー。YAMAP STORE店長木村さん(左)、Youtuberこつぶさん(中)、YAMAPコミュニティリーダー大村さん(右)

靴紐の結び方 ①靴紐を先まで緩め、足を無理なく靴に収める。②踵と靴の間に隙間がないように踵をしっかり収める。③先の方から適度な強さで紐を締め、フックに掛ける部分は、足が前にズレやすい場合はフックの上から下へ紐をかけた方が緩みにくい。④最後の結び目は、蝶々結びを2回繰り返すとほどけない

ザックの背負い方 ①片膝にザックを乗せて、片側の肩に回して背負う。②腰骨を包むようにウエストベルトを締める。②ウエストベルトの位置がずれない程度にショルダーベルトを締める。③胸の位置に付いているチェストベルトを締める。きつく締めすぎると胸が圧迫されるので要注意。④ショルダーベルトが肩から浮かない程度にショルダーベルトの上についているスタビライザーを前に引っ張る(写真)

山頂に上宮がある宝満山の正面登山道は参道でもあり、延々と石段が続きます。大村さんに、「初めはゆっくりすぎると思うぐらいの早さで」とアドバイスを受け、慎重に歩き出したこつぶさん。しかし、「日帰り装備と違って、一歩一歩が鉛のように重いです…。荷物で体重が増して体が左右に振られ動きにくいです…」と、不安はつのるばかり。

大村さんのアドバイスはさらに続きます。

「靴のグリップを感じながら、真上から足の裏全面で地面を踏むようにベタ足で歩くと安定しますよ。歩幅を狭くするとベタ足で歩きやすいです。まっすぐ登るのがきつければ、ジグザグに歩いてみるとバランスよく歩けます。

アルプスではこの荷物を背負って岩稜帯を歩きます。体を振られるととても危険です。北アルプスに行くまでに、何度かテント泊装備で登るトレーニングをした方がいいですね。実際の山行と同じ時間くらい歩いてみると不安も減るかもしれません」

装備だけでなく、歩き方も日帰りと違ってくることを体感しながら、なんとか無事、山頂直下のテント場に到着。休む間も無く今回の最大の目的、テントを設営していきます。

肩の重さが気になるこつぶさん。途中でザックの背負い方を再度チェック。「もう少しウェストベルトを締めてみましょうか?」と木村店長からアドバイス。ザックのベルト類は、歩き出して体にザックが馴染んだ頃、再度調節するのがオススメ

やっとテント場に到着して、今日一番の笑顔がこぼれるこつぶさん。今回の目的は、まだまだこれからですよ〜!

いざ、テントの設営開始!

「テントを張る前に、周囲を見渡して場所の確認をしましょう。なるべく平坦で、風が強ければ樹林帯の側や岩陰など風を防げる場所がオススメです。トイレや水場の動線上だと、人の行き来が気になることもあります。テント場が狭かったり、人気の場所だったりすると、いい場所はすぐに埋まってしまいます。13時頃にはテント場に到着するように心がけておけば、急な天候の変化にも対応しやすくなります」

大村さんからアドバイスを受けながら、まずは設営場所を選びます。

今回こつぶさんが使用したテントは「muraco(ムラコ)ラピードエックスワン 2P」。モノトーンでシンプルなデザインが人気を集めるブランドが展開する2人用テントで、強風へも強く、入り口が両サイドにある利便性や広い居住空間が人気です。スタイリッシュなイメージで、撮影機材の多いこつぶさんにはピッタリのモデルです。

まずは、テントの中身を確認しよう。テント:muraco(ムラコ)ラピードエックスワン 左奥から順に「スタッフサック」、「フライシート」、左手前から「ペグ」、「グランドシート(別売り)」、「インナーテント」、「ポール」

まずは、テント装備が全て揃っているか確認しましょう。スタッフバックは無くさないように一つにまとめておきます。グランドシートを広げます。風が強ければ、上にザックを置くか、ペグを打ち込んでおきます。下に石があると寝心地が悪いうえにテント生地に負担がかかるため除いておきましょう。グランドシートの上にテント本体を重ねます。テントの側面や入口を風上にすると風の抵抗を受けやすいため、風向きを読みながらテントを立てる方向を決めましょう。

グランドシートを広げます。地面をよく確認しよう。北アルプスでは、石でゴツゴツしたテント場も多数。せめて自分の寝るマットの面積だけでも平坦になるように整えましょう

グランドシートの上にインナーテントを広げます。風があれば、ザックをテントの中に入れて飛ばされないようにします

ポールを中心から組み立てます。混雑したテント場では、周囲に注意しながらポールを広げましょう。ムラコのラピードエックスワンの場合、ポールの先端が前後で色分けしてあります。テント本体のループの色とポールの色を合わせて、ポールをテント本体の四隅の部品に差し込みます。ポールが立ち上がったら、テント本体のフックを中心からポールに引っ掛けていきます。

中心からポールを組み立てていきます。ラピードエックスワンにはクロスしているメインのポールの他に、リッジポールという家の梁のようなポールが付属します。これにより居住空間が広がります

ポールの先端とテント本体のループの色を合わせて、ポールをループの先端の部品に差し込みます

テント本体のフックをポールに引っ掛けます

前後を確認しながらフライシートを被せます。四隅のループの色が、テント本体のループの色と同じになるように向きを合わせます。四隅の張り綱を、ポールの延長線上にペグダウンします。ペグが差し込めない場所であれば、張り綱を石に巻きつけるか、スーパーの袋に石を詰めて重石にするなどして固定してみましょう。張り綱は、風がなくてもしっかり張りましょう。フライシートをピンと張ることで、本体との間に空気が流れ、結露の防止にもなります。ペグの向きと角度に注意しながらペグダウンします。

前後を確認してフライシートを被せます

張り綱がポールの延長線上になるようにペグダウンします

地面とペグの間の角度が60度くらいになるようにペグを打ちます。ペグの向きを逆にしないよう注意しましょう。

今宵の宿が完成!入口が両側にあるので出入りが楽で開放感も抜群です。

マット、シュラフ、枕も設置完了!テントが狭い場合は、ザックを足の下に敷いてしまうのもあり。夜中に必要になるかもしれない防寒着やレインウエア、ヘッドライトなどはすぐ手が届く位置にスタンバイしておきましょう。

テント泊の楽しみは、なんといっても山食!

こつぶさんの今夜のメニューは、みんな大好き「カレーメシ」!

テント泊の楽しみといえば何と言っても夕ご飯。歩き疲れた後の山ごはんは格別です。こつぶさんに晩御飯のメニューを聞くと、「今夜はこれです!お湯を入れておしまいです!」とのこと。

えっ?せっかくのテント泊なのに何か作らないの?と思われるかもしれません。今回こつぶさんには、夕食は各自でと伝えていました。案外これは大切なこと。山の経験豊富なメンバーだけならば凝ったメニューでも構いません。しかし、テント泊装備を初めて担ぐとなると、食料の重さはかなりの負担。かといって全部運んであげれば、もしはぐれてしまった場合、食料を持っていないことになりかなり危険です。自分で山行日数分の献立を考えて、自分で担いで、自分で作る。これもテント泊縦走の大事な要素です。

YAMAPスタッフのメニューを見てみると、山男たちは、二人ともメスティンを使って美味しそうな夕ご飯をチャチャっと作ってしまったのでした。簡単に作り方をご紹介しましょう!


YAMAP STORE 木村店長の「人参たっぷり炊き込みご飯」

(左)メスティンにお米を1合入れ、内側の金具の部分まで水を入れ30分ほど置く
(右)醤油大さじ1、みりん大さじ1、人参をたっぷり入れる

(左)ツナ缶を入れる
(右)強火にかけ、吹き出したら蓋に重石をして、弱火で12分。使っているのはYAMAPのオリジナルメスティン(※近日発売予定)

上下をひっくり返し、10分ほどタオルなどに包んで蒸らせば完成!

大村さんの「オイルサーディン丼」(『山と食欲と私』より)

(左)メスティンにお米1合を入れ、上記のように炊く
(右)大村さんオススメの山で役立つ調味料。左端は小分けのオリーブオイル

炊きたてのご飯にコンビニのサラダとオイルサーディンをのせて、醤油をかけます。ブラックペッパーをたっぷりかけるのが大村さん流!


 

YAMAPとサッポロビールの共同開発で実現した「おつかれ山(さん)ビール」で乾杯!

山の夜は静かに過ぎ、あっという間に朝が来ました。よく見ると、テントは空っぽ。みんな、日の出を拝みに山頂へ向かったようです。山頂はテント場から10分ほど。山の上で日の出を楽しめるのもテント泊ならではの楽しみ方ですね。

パッキングを制するものはテント泊を制する!

テントを乾かしつつ撤収中。宝満山のキャンプセンターは、朝10時までには撤収しなければいけません

すっかり日は昇り、各々テントを撤収し始めました。こつぶさんの心配は、一度出した装備を、再びきれいにパッキングできるのだろうかということ。こつぶさんの全装備を確認しつつ、パッキング隊長の大村さんにコツを聞きながら、パッキングしてみました。

「大きくて、かつ山行中使わないものから入れていきましょう。それからその隙間を小さなもので埋める感じです。手を差し込んで、隙間があるか確認しながら入れます。つぶれてもいいものはなるべく下に押し込んで。

ペットボトルもちょっと潰してから入れましょうか。三脚は使うので外に取り付けましょう。重ねられそうなものは重ねてスペースを節約します。テントはコンプレッションベルトをしっかり締めてなるべく小さくしましょう。

すぐ取り出したいもの、特にレインウエアとザックカバーは上側に入れておいて、天候の急変にも対応できるようにしておきます。レインウェアはスタッフバックから出した状態で入れておくと、荒天の中でも手間取らずに着ることができますよ」

こつぶさんのテント泊装備 01.マット02.360度カメラ03.レインウェア04.着替え05.シュラフ06.カメラバック07.ミドルレイヤー(保温着)08.洗面具09.枕10.ウィンドブレーカー11.ガス缶12.エマージェンシーシート13.カップ14.三脚15.テント16.トレッキングポール17.テーブル18.シーツ19.ランタン20.サングラス21.メガネ22.歯ブラシ23.ヘッドランプ24.虫除け25.モバイルバッテリー26.ザックカバー27.グローブ28.水29.クッカー&バーナー30.カメラ31.自撮り棒

《 YAMAP STOREで購入できるアイテム 》
03.レインウェア:patagonia(パタゴニア)/トレントシェル3Lジャケット
04.スタッフサック:PAAGO WORKS(パーゴワークス)/ダブルフェイススタッフバッグ
05. 寝袋:NANGA(ナンガ)/オーロラライト 350 DX
06.カメラバック:PAAGO WORKS(パーゴワークス)/フォーカス
07.ミドルレイヤー:NORRONA(ノローナ)/フォルケティン オクタジャケット
09. 枕:COCOON(コクーン)/エアーコアフッドピローウルトラライト
15. テント:muraco(ムラコ)/ラピードエックスワン 2P
16. トレッキングポール:GRIPWELL(グリップウェル)/ジェム・カーボン
17. 机:Cascade Wild(カスケードワイルド)/ウルトラライトテーブル
18.シーツ:COCOON(コクーン)/インセクトシールド サファリトラベルシーツ コットン
19.ランタン:CARRY THE SUN(キャリー・ザ・サン)/YAMAP限定ウォームライト ミディアム
26.ザックカバー:MYSTERY RANCH/(ミステリーランチ)/パックフライ

全面がYの字に開きパッキングしやすいミステリーランチのクーリー。最初はファスナーを全開にして、途中から閉めて上から押し込みます。テントは下側に入れる派と、設営の際にすぐ出せるよう上側に入れる派がいるようです

(左)重ねられるものは重ねて。ガス管とカップがきれいに重なりました(右)ゴミ専用の防水のスタッフバックがあれば、匂いが漏れることもなく、ゴミをコンパクトに片付けることができます

大村さんは、他にも登山装備と思って準備してほしいものがあるといいます。それはYAMAPのアプリ上で作成できる「登山計画」。長野県の山であれば、その計画をYAMAPに提出すると、同時に登山届けとして長野県へも提出されます。同行する仲間と山行計画を共有して事前の打ち合わせに使うことも可能。

計画を立てるということは、事前に山をイメージすることになり、コースタイムやエスケープルートの確認にもなります。道具の準備に追われることなく、山のイメージトレーニングも忘れずにおこなうようにしましょう。

今回のテント泊のリハーサルを経て、こつぶさんは、

「リハーサルの日はとても暑かったということもありますが、重い荷物を持っての登山は予想以上に大変でした。本番のアルプス縦走に向けて、しっかりと体力をつけて、何座かトレーニングになるような山に登るようにします。登山計画も作る意味がよくわかりました。本番に向けてがんばります!」

こつぶさん、本番のテント泊縦走にむけて、がんばってくださいね!

●テント泊縦走に備えた荷物を揃えるならYAMAP STORE

●「登山計画」をつくって安全登山を

●今回、テント泊のリハーサルをした宝満山キャンプセンター

テント泊は無料だが、土日は管理人に届け出ること。設営は15時から、撤収は翌朝10時まで。消灯22時。焚き火は禁止。正面登山道入り口から徒歩約2時間

米村 奈穂

フリーライター

米村 奈穂

フリーライター

幼い頃より山岳部の顧問をしていた父親に連れられ山に入る。アウドドアーメーカー勤務や、九州・山口の山雑誌「季刊のぼろ」編集部を経て現職に。