2022年3月18日、東京・二子玉川に、全国で10店舗目となる直営「アークテリクス 二子玉川ライズ S.C.店」がオープンしました。首都圏最大の売り場面積を構え、アウトドアからデイリーまでを幅広くカバーする、ブランドストアならではの充実のラインナップを誇るお店です。今回は、このお店を例にブランドストアを上手に活用するメリットをご紹介しましょう。
2022.03.25
小川 郁代
編集・ライター
東急田園都市線・大井町線の二子玉川駅から歩いて数分。大規模商業施設、二子玉川ライズ S.C.の1階にひときわ目を引くアウトドアブランドストアがオープンしました。
それが、「アークテリクス 二子玉川ライズ S.C.店」。ガラス張りの大きな窓に、高い天井。広々したワンフロアに、ゆったりと製品が並べられた様子は、ギャラリーやショールームを思わせる雰囲気です。
カラフルでありながら、全体的に統一感があって、大量の商品があるにもかかわらず、すっきりと落ち着いた印象。店内のあちこちに置かれた観葉植物と、窓から見える屋外の樹々が重なって、まるで外にいるような、開放的でリラックスした空気が流れています。
アウトドアで使うアパレルや道具を手に入れようとしたとき、どこで購入するかの選択肢はいくつもあります。さまざまなブランドの商品が集まるアウトドア用品店や、いつでもどこでも買い物ができるオンラインストアなど、同じ商品を扱っていても、それぞれに異なる特徴があります。
では、ひとつのブランドだけを扱う直営店、「ブランドストア」には、どんなメリットや特徴があるのでしょう?
「ブランドストアは、ただ商品を売るための場所ではなく、ブランドのコンセプトや商品ができるまでの裏側など、さまざまな情報を発信するための場所でもあります」
話をしてくれたのは、アークテリクス ブランドヘッドの高木賢さん。オープンを目前に控えた「アークテリクス 二子玉川ライズ S.C.店」で、ブランドストアならではの特徴やメリット、上手な使い方などについて、じっくりと話を伺いました。
「アウトドアウェアは、かなり知識が豊富な人でも違いがわかりにくく、シェルの素材の違いや中綿の種類などは、見た目や手触りだけではなかなか判断できません。単に登山用、ハイキング用などという説明ではなく、なぜその素材が使われているのか、それにどんな利点があるのかなど、実際に見て、触れて、ほかの製品との比較などをしながら、アークテリクス製品のすべてを知り尽くした専門のスタッフから直接説明を聞けるのが、ブランドストアの最大のメリットです」
確かに、広い売り場にずらりと並ぶ商品を見ても、ひと目で用途や機能の違いはわかりにくいもの。ただ、素材や機能などの話は、ある程度に知識がないと難しいようにも思えますが、ブランドストアは初心者よりも経験者向きなのでしょうか?
「それはまったく逆で、初心者の方やあまり素材などに詳しくない方こそ、まずはブランドストアを訪れるといいと思います。というのは、充分な知識がないまま多くのブランドのなかから商品を選ぶと、同じような用途のものが重なってしまったり、本当は必要なものが抜け落ちてしまったりということが起こりがちです。
その点、ひとつのブランドに絞って考えれば、それぞれのシーンをカバーできるように商品構成が考えられているので、場面に合わせて何が必要なのか、季節やシーズンが変わったときには、何をプラスしなければならないのかなどが、とてもシンプルに理解できると思います。
もちろん、実際は、いろいろなブランドを組み合わせて使うこともあるでしょうが、ひとつのブランドで揃えると、フィッティング面での余計なストレスを減らせることことが、大きなメリットだと思います。フィットの考え方はブランドごとにかなり違いがあるので、サイズ選びは間違っていなくても、シェルに対してミッドレイヤーがゆったりしすぎていたり、袖口や裾から下に着たものがはみ出したりということがよくあります。同じブランドなら、ベースレイヤーからシェルまで、基本的に重ねることを前提で作られているので、そういう心配はほとんどありません」
「それに対して、アウトドア用品店のメリットは、やはりいろいろなブランドで比較できるところですね。アークテリクスの商品はそういったお店でも買えますが、すべてのラインナップが揃う訳ではありません。とくに、小物類が充実しているところは少ないので、その点ではブランドストアが便利だと思います。
ネットショッピングは、近くにお店が無い場合などはとても便利。アークテリクスにもオンラインストアがありますが、気心地やサイズ感については、実際に試すに越したことはありません。
カラーも、実際に見るのと画面とではかなり印象が違います。アークテリクスには、デザイナーとは別にカラーだけを扱う専門のスタッフがいて、シーズンごとのテーマに沿った、こだわりのカラーを展開しているので、ぜひ実物を見て欲しいです。また、実際に着てみたら、思っていた色とは違う色が似合ったということは、売り場でもよくあります」
店内を見渡すと、広さ以上に空間が大きく感じられるのは、天井の高さに加えて、ほとんどの商品が、すぐに手の届く低めの位置にディスプレイされているからかもしれません。ウェア類はもちろん、シューズもよくあるラックではなく、店舗中央の背の低いディスプレイ台に並べられています。
店の一角に、シンプルな大型テーブルが備えられているのが目を惹きました。このテーブルは、ディスプレイのスペースとして、商品が並ぶ予定なのでしょうか?
「いいえ、このテーブルは、お客様が気になった商品を自由に運んできて、ゆっくりと見ていただくためのスペースです。ふつうはハンガーにかかった状態や、実際に着て見ることが多いと思うのですが、ここなら商品を大きく広げてチェックしたり、違うモデルと比較したりすることもできます。これほど大きなテーブルが店内にあることは、二子玉川店ならではのポイントです。
アークテリクスの商品は、製造の技術が非常に高いのが特徴です。よく、『人が作ったとは思えないほど精巧にできている』などといわれますが、人の手でなければこの繊細な作業はできません。シェルの縫い目は、裏側からシームテープを貼って防水をしますが、アークテリクスほど細いシームテープ加工ができるブランドはほかにないはずです。商品に自信があるので、どうぞ、普段は目の届かないところまで、じっくりと観察してください。きっと驚いていただけると思いますよ」
充分な広さがあるからこその特徴は、想像以上に大きい試着室にも表れています。ちょっとした個室の広さがあるので、足を思い切り開いたり、腕をぐるぐると回したり、人前では少し躊躇するような動きも、心おきなく試すことができるでしょう。ファミリーや友人と一緒に、見た目やフィット感をチェックしあうにも、充分な広さです。
「スペースに余裕があるので、それを充分に活用してほしいと思います。シューズの試着は、ふつうその場で足踏みする程度ですが、ここは店内を一周するだけでもかなりの距離があるので、しっかりと履き心地が試せると思います。
もうひとつ、このお店は外光がふんだんに取り入れられるので、商品のカラーを充分に楽しんでいただけると思います。もともと、自然光の下で映えるように考えられたカラーなので、ここは本当に理想的な環境ですね」
最後に、アークテリクスのこれからや、ブランドとしての方向性などを聞いてみました。
「アークテリクスの製品は、以前から『長く使える』ことを重視して、耐久性や、時代を超えて使えるデザインのものを作ってきました。今年は新たに、『Take(資源を採取し)』、『Make(作り)』、『Waste(捨てる)』という従来の一方通行型の経済を、循環型経済に作り変える、『REBIRD™』という取り組みを始めます。今年首都圏に新たにオープンする予定の店舗には、販売スタッフとは別に、メンテナンスの相談やアドバイスを行なう専門スタッフの常駐も検討しています。二子玉川店でも、広いスペースを活かして、メンテナンスに関するセミナーやイベントなどを行なって、アークテリクスの製品を長く使っていただけるよう、情報発信をしていきたいと思います。
ここは、都内とは思えないほどの広さや環境に恵まれていますが、全国のブランドストアは、それぞれの土地柄や立地に合わせた、その場所ならではの店づくりをしています。商品のラインナップやカテゴリ―にも多少の違いがありますが、どのブランドストアにも共通しているのは、トレーニングやアウトドア研修などを通じて、アークテリクスのすべてを知り尽くした、専門スタッフがお客様の対応をしていることです。スタッフそれぞれが、お客様にとってはアークテリクスというブランドの代表であるという気持ちで取り組んでいますので、どうぞ気軽にブランドストアに立ち寄って、質問や相談はもちろん、アウトドアの楽しい話などを聞かせてください」
アークテリクス 二子玉川ライズ S.C.店
所在地:東京都世田谷区玉川1-14-1 二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット1F
TEL:03-6805-6862
営業時間:10:00~20:00
アークテリクス ブランドサイト:https://arcteryx.jp/
アークテリクス 二子玉川ライズ S.C.店Instagram:https://www.instagram.com/arcteryx.futakotamagawa/
取材・原稿:小川郁代