宮城県と山形県にまたがる蔵王連峰。この山域で有名な景色の一つといえば冬の樹氷(スノーモンスター)ですが、昨年のときは数年ぶりの当たり年らしく、見応えのある樹氷が育ちました。冬の蔵王は気象条件が厳しく(だから樹氷が育つ)、晴れ間を狙うことが難しい山域ですが、フォトグラファーの横田裕市さんは、経験豊富な登山仲間の助言を元に晴れのチャンスを狙い、快晴の樹氷高原を求めて関東からの「日帰り登山」を決行しました(2022年3月2日)。
2023.12.13
横田 裕市
風景写真家
2022年3月2日。数年ぶりの当たり年と言われる蔵王の樹氷を求めて、東京駅から始発に乗り込み、山形新幹線で山形駅に向かう。山形駅からは駅前でバスに乗り変え、蔵王温泉を目指す。
山形駅のバス乗り場近くに乗車券売り場があるので、そこで乗車券を購入しよう。樹氷シーズンは【山形駅前~蔵王温泉の往復バス乗車券】と【蔵王ロープウェイ往復乗車券】がセットになった樹氷観賞乗車券(大人4,500円)の購入をおすすめする。バラ売りで購入するより500円安い。詳しくは山交株式会社のお知らせをチェックしよう。
私はロープウェイ上から樹氷高原を満足いくまで撮影するため、通常の乗車券で蔵王温泉へ向かい、ロープウェイ乗り場で1日券を購入した。
蔵王温泉バスターミナルには大型のコインロッカーが設置されている。私はここで登山準備を整え、スーツケースをロッカーに預けてからロープウェイ乗り場へ向かった。
蔵王温泉は温泉街でありながら、一帯が巨大なスキー場。どこも駐車場が満車になるほど賑わっていた。そのスキー場の一角にある蔵王ロープウェイ「蔵王山麓駅」へはバスターミナルから徒歩10分ほどで到着する。ここからロープウェイに乗り「樹氷高原駅」を経由し「地蔵山頂駅」へ向かう。
ロープウェイで標高が上がるにつれ、眼下には素晴らしい樹氷地帯が見えてきた。これほど立派な樹氷を日本で見るのは初めて。まさに冬の芸術だ。
樹氷高原を眺めているうちに地蔵山頂駅に到着するも、天気はあいにくの曇り。しばらく様子を見るために駅内のレストランで待機をすることにした。このレストランでは温かい食事が出るので、登山に持参する食料は携帯食のみで十分だった。ちょうどお昼時だったので、ランチに丼と山形名物の玉こんにゃく、コーヒーをいただく。
昼休憩が済んだタイミングで晴れ間が見えてきたので、いざ熊野岳へ出発。熊野岳の登山時間は多く見積もって片道1時間ほど。道中に危険箇所も無いため冬山初心者でも楽しめる。
樹氷を撮影する人や熊野岳方面へ往来する登山者を横目に進む。前方からスキーで滑り降りてきた登山者とすれ違う。大変気持ち良さそうに滑る様子を羨ましく思い、次回は私も下山時にはスノーボードで滑走したいと思った。多くの登山者による圧雪されたトレースのおかげで、中腹まで登山靴のみで進むことができた。
行く先々に広がる立派な樹氷高原に感動し、撮影しながら山頂を目指した。天候はどんどん晴れ間が広がり回復に向かったが、この日は風速が最大18メートルほどあり強風の中の山行となった。
中腹からはスノーシューを装着。途中からトレースがわかりにくくなり、YAMAPの登山地図を見ながら方角を確認し、山頂へ向けて安全を確認しつつ道なき道を前進。足跡のない雪道を歩く、冬山ならではのスノーシューイングの醍醐味を楽しみながら無事山頂に到着した。
山頂にある熊野神社を参拝したかったのだが、雪に埋もれておりどれが神社かも分からず断念。かろうじて山頂の標柱を見つけ、記念撮影。強風のためすぐに下山を開始した。上りは東側から回り込むルートで登り、下りは北側の直登ルートを駆け下りた。
山形県を訪れる前に、長野県乗鞍高原でパウダースノーを駆け下りるダウンヒルスノーシューの楽しさを覚えたばかりだった私は、熊野岳でもそれができないかと期待していたが、残念ながらここでは雪が硬く乗鞍高原のようにスムーズに駆け下りることはできなかった。それでも軽快にスノーシューを楽しんだ。
ちなみに、強風が吹く冬山では風に舞う雪の結晶が視界を奪い、顔に凍傷を負うリスクがあるので厄介だ。ゴーグルで視界を確保し、顔はバラクラバで守ろう。
地蔵山頂駅近くまで戻ったタイミングで近くにある樹氷地帯を中心にじっくり撮影し、午後3時過ぎに駅に帰還。(YAMAP活動記録はここまで)
ロープウェイの下り最終便時刻の午後4時30分まで、私は地蔵山頂駅と樹氷高原駅を往復し、ロープウェイ上から快晴の樹氷高原を撮影した。
多くの人々はウインタースポーツのためにロープウェイを利用しているため、下りのロープウェイは利用者が少なくほぼ貸切状態だ。午前中の曇天から一転し、青空に映える白銀の樹氷高原は大変美しかった。この機を逃すまいと何度もシャッターを切った。
下山後はバスターミナルに戻り、街着に着替えて装備をロッカーに預け、下山後の温泉と名物のジンギスカンを楽しんだ。
蔵王温泉にはバスターミナルから徒歩圏内に3ヶ所の共同浴場がある。料金はたったの200円。浴室に浴槽のみのシンプルな施設だが風情があるのでおすすめ。
蔵王温泉名物のジンギスカンを提供するお店はいくつかあるが、あいにく営業しているお店が少ない中でなんとか「どさん娘 蔵王のいえ」にて味わうことができた。下山後の温泉からのジンギスカンは最高のご褒美だ。美味しいラム肉や野菜をじっくり焼いて食べるので、食事の時間は1時間ほど確保するのが良い。
私は滞在時間を目いっぱい満喫したため、最終便のバスと終電の新幹線で帰路についた。快晴の蔵王樹氷高原と熊野岳山行を満喫できた非常に満足度の高い日帰り登山となった。
なかなかエキサイティングな日帰り登山だったが、晴天の蔵王樹氷高原鑑賞と冬山登山を満喫したい方は、直前まで天候に気を配りつつ、この日帰りプランを参考にしていただけたら幸いだ。
YAMAPの活動日記に、記事に載せられなかった写真も載っています。
共同浴場は200円で利用可能。浴場のみのためタオルなどの温泉セット要持参。
下湯共同浴場
山形県山形市蔵王温泉30−2
GoogleMap https://goo.gl/maps/ti3My7oQAVKfpoom9
上湯共同浴場
山形県山形市蔵王温泉45-1
GoogleMap https://goo.gl/maps/DmYM11krpNsNnXVu8
川原湯共同浴場
山形県山形市蔵王温泉43−3
GoogleMap https://goo.gl/maps/b62zPNsRAV68UV197
バスターミナルからロープウェイまでの区間内で味わえるお店を紹介。
どさん娘 蔵王のいえ
今回食事したお店。夕飯時は満席に。宿としても営業している。
〒990-2301 山形県山形市蔵王温泉904-4
GoogleMap https://goo.gl/maps/Kn5V5HLH44GFYoaGA
ろばた
共同浴場から近くにある人気店。訪問時は営業しておらず。
山形県山形市蔵王温泉川原42−5
GoogleMap https://goo.gl/maps/6qTRQpS6CJ6njBpT7
とみたや
メイン通り沿いの食堂。
山形県山形市蔵王温泉903-4
GoogleMap https://goo.gl/maps/KPUA8jWmZhCaxM8a9
JR山形駅前から山交バスに乗車し、蔵王温泉バスターミナルへ。東京から夜行バスで蔵王温泉直行便もあるが、シーズン中は混雑するため予約は早めに。冬季限定でJR仙台駅から蔵王温泉への直行バスも運行している。
始発の山形新幹線で山形駅へ向かい、山形駅前バス乗り場から蔵王温泉バスターミナルへ。蔵王ロープウェイで樹氷を鑑賞しつつ熊野岳や三宝荒神山など登山を満喫。下山後は蔵王温泉で汗を流し、ジンギスカンを味わい、バスと新幹線で帰路へ。
時刻 | 項目 |
6:12 | 山形新幹線 東京駅始発 |
9:20 | 蔵王温泉行きバス |
10:30 | 蔵王ロープウェイ蔵王山麓駅着 |
11:20 | 蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅着 |
12:40 | 登山開始 |
14:00 | 熊野岳登頂 |
15:10 | 下山完了 |
16:30 | ロープウェイ下り最終便 |
17:30 | 温泉 |
18:00 | ジンギスカン |
19:50 | バス最終便 |
20:43 | 山形新幹線 終電 |
23:28 | 東京駅着 |
新幹線(東京駅〜山形駅):片道11,650円
路線バス(山形駅〜蔵王温泉):片道 1,000円
樹氷鑑賞券(往復バス+往復ロープウェイ):4,500円 ※おすすめ
ロープウェイ(山麓駅〜地蔵山頂駅)片道券:1,500円
ロープウェイ1日券:5,500円(私は撮影のためこちらを利用)
蔵王温泉共同浴場:200円
コインロッカー:800円(400円×2回利用)
ジンギスカン+ライススープセット:1,980円(1,680円+300円)