岐阜県最北端にある『飛騨市』は、面積の93%が森林です。広葉樹の森が育む豊かな自然は、地域の暮らしを支え、その美しい景観で訪れる人々の心を癒し続けています。そんな素敵な循環が維持できているのは、ひとえに地元で保全活動をしている人たちがいるからこそ。
しかし近年では、その自然を守る人々の高齢化と担い手不足により、保全活動が難しい状況に追い込まれています…。そこに輪をかけて、異常な気候変動や森の手入れ不足によって、イノシシやニホンジカの食害増加など、様々な課題が生じているのが現状です。
先人たちが守ってきた自然を未来に繋ぎたい! 森を守って自然に恩返ししたい! そんな思いで始まったプロジェクトが、“関係人口”の力を借りて森や山を助ける、その名も、「森スケ!」です。
■森スケ https://hidasuke.com/events/event/morisuke2023/
今回は、その森スケ!プロジェクトの一環として、飛騨市&YAMAPが超スペシャルツアーを企画しました。YAMAPユーザーが地元の方と一緒に登山道を整備し、新たに北アルプスの展望台『YAMAP平』を開拓するという大プロジェクト。これは、新たな登山道整備に関わることが出来る貴重な体験というだけでなく、いつも楽しませてもらっている自然への恩返しです。ぜひ、このチャンスをお見逃しなく、ツアーにお申し込みください!
それでは、ここからアウトドアライターのユーコンカワイさんに、飛騨市&YAMAPスペシャルツアーの魅力を紹介してもらいましょう。
2023.06.02
ユーコンカワイ
アウトドアライター&グラフィックデザイナー
とある“宝の地図”を手に入れた。
この地図には牧場と山の絵が描かれているが、それをつなぐ道は記されていない。YAMAPの山地図のように、赤い線などは引かれていないのだ。
そもそも赤い線、すなわち登山道は当たり前に存在するものではない。山を切り開き、道を作り、それを保全している人々がいて成り立つものだ。その努力の上で、僕らは山頂からの感動的な眺め、日常では味わえない充実感、心穏やかになる素敵な時間を享受することができる。
道なき地図。牧場と天蓋山山頂の間には「?」のマークがあり、「YAMAP平」という謎の文字のみが記されている。そこには何があるのか? 一体どんな絶景やロマンが待っているのか?
これは登山道開拓に一から関われる滅多にないチャンスだ。YAMAPのまっさらな白地図に新たな赤い線を刻みつけるのは自分自身。数々の登山道を整備してくれた先人たちに感謝をし、今度は僕らが次世代の登山者へと新たな価値と感動をつないでいく番だ。
いざ、天空の山里へ。開拓の旅が、いま始まる。
宝の地図に描かれた山の名は、「天蓋山(てんがいさん・1,527m)」。
岐阜県北部の飛騨市にある、知る人ぞ知る北アルプス展望の山だ。360度に切り開かれた山頂からは、薬師岳、北ノ俣岳、黒部五郎岳などの名峰が望め、遠くは立山連峰、御嶽、白山までもが見渡せるという。山頂までは2時間ほどで到達できるため、気軽に行ける“展望特等席”と言ってもいい山である。
現在天蓋山に登るには、山之村キャンプ場からの1ルートのみが存在している。しかしその基点となるキャンプ場が2023年3月で営業を休止してしまい、今後は登山者も減っていくことが懸念されているのだ。
このままでは、素敵な展望の山が整備されずに廃れていってしまう…。
そして、過疎化が進むこの地域の元気が、さらになくなっていってしまう…。
そこでまず動いたのは地元の皆さんだ。天蓋山の山麓エリア「山之村」のシンボルである「奥飛騨山之村牧場」からの新たな登山道を切り開こう!というプロジェクトが昨年からスタートしたのである。「かつて林業に使われていた道」を一部再活用する形で整備し、稜線に伸びる景色の良い登山道を新たに作り出そうとしている。
そんな山之村の皆さんの熱い想いに地元自治体の飛騨市も賛同し、「森スケ!」の特別メニューとして、自然保全に感度の高いYAMAPユーザー限定のツアーを企画した。それが今回の「天蓋山・新登山道整備ツアー」なのである。
日 程:2023年7月22日(土)~23日(日)1泊2日
定 員:10名 ※YAMAPユーザー限定
集合場所:飛騨市役所 岐阜県飛騨市古川町本町2-22 ※現地集合現地解散
行 程:1日目 登山道整備(草刈り、ベンチ作り、看板設置など) 夜:「りょうし食堂」での懇親会 ※1日目は朝7時頃の集合を予定しているので遠隔地の方は前泊が必要です。
2日目 山之村散策、奥飛騨山之村牧場でソーセージバイキング&振り返り、飛騨市役所解散
宿 泊:中井旅館
移 動:マイクロバス
料 金:3万円(税別)
※本ツアーには多数の応募が予想されます。参加者は飛騨市とYAMAPで選考させていただきます。
※整備作業には特別な技術などは必要ありません。登山に必要な体力と山を愛する気持ちを持っていることが参加条件となります。
※選考を通過した参加希望者には後日、旅行代金、行程等を連絡し、その後、参加の最終確定となります。
※ツアーを取材し、YAMAP MAGAZINEにて記事化を予定しています。参加者の皆さんの様子も掲載されますので、あらかじめご了承の上、お申し込みください。
・奥飛騨山之村牧場の下梶(したかじ)さんと座主(ざす)さんからのメッセージ
少子高齢化でも、地域の皆さんと一緒に山之村を盛り上げています。山之村はとにかく空気が抜群に美味しいんです。そんな場所で飼育して作った乳製品や肉製品、高地で採れた野菜も、本当に美味しいので、YAMAPユーザーさんにも味わって欲しいです。植林されてない山は“明るい山”と好評。ぜひ牧場と山を繋ぐ素敵な登山道を共に作り、山之村の魅力を一緒に発信してほしいです!
・飛騨市まちづくり観光齋藤課長からのメッセージ
今回は自然を愛するYAMAPユーザー限定のツアーとして企画しました。新たな登山道整備ツアーの目的は、山之村の活性化はもちろん、これをきっかけに全国の自然保全に対する意識を高め、今一度自然に感謝する気持ちを想い出してほしいという願いが込められています。我々には、先人たちが守ってきた自然と、今とこれからの自然を守ることで、その責任をしっかり未来に繋げるという使命があります。ツアーを通じて、今後も一緒に戦ってくれる仲間を募集しています。我こそはというユーザーさんのご参加を待ってます!
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登山にはさまざまな楽しみ方がある。その中でも、道が整備されてない「今」でしか味わうことのできない感動や充実感がこの「天蓋山・新登山道整備ツアー」にはあるはずだ。ツアーが終わった時、きっとあなたには「自分が最初に携わった山だ」という誇り、「山之村という第2の故郷ができた」、「次世代のために先人の想いを繋ぐことができた」という喜びを感じることだろう。
さあ、共に開拓の旅に出かけよう! 皆の者、準備はいいか!
えい!えい!モォ〜!!(←ジャージー牛の声)
飛騨市では、「天蓋山・新登山道整備ツアー」の他にも今年度、「森スケ!」と名付けられたさまざまなボランティアプログラムを企画している。
ちなみにこの「森スケ!」というプロジェクトは、実は昨年YAMAPとのコラボで実現した「池ヶ原湿原のヨシ刈りツアー」 がきっかけて誕生した取り組みなのだ。
飛騨の美しい自然は、その裏で多くの人の保全活動によって成り立っている。飛騨市はそれらの活動が持続可能なものになるよう、「保全活動×山麓の魅力体験」を掛け合わせたツアーの拡大を狙って「森スケ!」の取り組みを進めている。都会の人でも、旅するように気軽に保全活動に携われるだけでなく、その地域をより深く体感できるプログラムを揃えている。
今回の天蓋山整備や、前述の池ヶ原湿原ヨシ刈りなど、他にも多くのプログラムがあるので、興味を持った方はぜひ「森スケ!」の特設サイトをチェックして欲しい。
参加すればきっと飛騨市とボランティアの魅力にハマって、登山とは違った山の楽しみを見つけられるはずだ!
なお、飛騨市では自然保全事業に一緒に取り組んでくれる「バディ」も探している。飛騨で地域おこし協力隊として働きたい!そんな方は是非、齋藤課長まで連絡してほしい。
※地域おこし協力隊 任期:3年 報酬:240万円/年 活動費:200万円/年
連絡先:飛騨市役所まちづくり観光課 0577-73-7463
さて、最後に改めて「天蓋山・新登山道整備ツアー」の舞台となる山之村の魅力を紹介しよう。
天蓋山の中腹(標高1,000m付近)には盆地が広がっており、そこに点在する7つの集落は「山之村」と総称される。岐阜県で唯一「日本の里100選」に選ばれており、葺(かやぶ)き民家や全面板造りの伝統的な倉庫「板倉」が残り、日本の原風景を感じながら散策するだけでも気持ちがいい開放的なエリアだ。
そののどかな里には「奥飛騨山之村牧場」という牧場があり、高地の特性を活かして貴重なジャージー牛が飼育されている。濃厚な乳製品(牛乳、ヨーグルト、プリン)や肉製品(ソーセージ、ハム、ベーコン)を味わうことができ、乳搾りや乗馬などの体験も充実している人気の牧場だ。
ツアーでは、天蓋山整備のあとに、牧場でのソーセージバイキングなど「食」の楽しみも用意している。最高の山に登って、他のYAMAPユーザーと力を合わせて作業をして、美味しいものを食べるだけで、山之村の活性化にも貢献できてしまう…。
ここまで読んできて開拓魂が溢れかえってしまっているそこのあなた。心の声が「行け!飛騨へ!」と叫んでいるのならば、今すぐ以下のツアー概要をチェックしよう!
原稿:ユーコンカワイ
写真:西條聡
協力:飛騨市