国内外のハイカーに大人気の高尾山(599m)から最も近く、短時間で歩けるコースもある城山(小仏城山・670m)。開放感ある山頂で絶品の茶屋グルメを楽しめるオススメの山です。登山ガイドの鷲尾太輔さんが、山歩きの初心者からベテランまでゆったり楽しめる休日の日帰り山歩を提案してくれました。
2024.04.09
鷲尾 太輔
山岳ライター・登山ガイド
①山頂にある2軒の茶屋で楽しめるなめこ汁
②堂々とそびえる富士山はもちろん、高尾山の向こうに広がる都心までの眺望
③桜・紅葉など、季節の風物詩を満喫できる絶景スポット
城山の山頂には2軒の茶屋があり、おでんやモツ煮、ぜんざいなどの甘味はもちろん、それぞれ醤油仕立て・味噌仕立てと趣向を凝らしたなめこ汁を提供しています。営業は原則として週末・休日のみですが、心地よい汗を流した身体に染み渡る絶品です。
これまでは山頂の南側が城山茶屋・北側が春美茶屋でしたが、2024年3月からは隣の景信山で営業していた景信茶屋 青木が営業を引き継いで、「小仏城山 青天狗」としてオープン。うどんやカレーも提供し、城山グルメがさらにパワーアップしました。
城山からは眺望も抜群!山頂標識がある東側からは、高尾山を前景に広がる東京都心の街並を一望できます。
山頂の南側は草原状に開けており、こちらからは堂々とそびえる富士山を望むことができます。特に冬から春にかけては山頂が雪化粧をしており、ひときわ美しい姿。茶屋グルメと並ぶ、山歩のご褒美といえるでしょう。
城山と高尾山の間にある一丁平周辺は、千本桜と呼ばれる桜の名所です。例年の見頃となる4月上〜中旬には桜のトンネルの下を歩くことができ、東屋が設けられた展望台からは富士山も望むことができます。
展望台から高尾山方面へ少し下った一丁平園地は、秋には紅葉の名所となります。ベンチ・テーブル・トイレもあり、例年の見頃となる11月中〜下旬には、紅葉狩りを楽しみながら憩う人々で賑わいます。
もちろん城山山頂も桜や紅葉が多く、見頃の時期には平日でも茶屋が営業している場合もあります(要事前確認)。この春は茶屋グルメを肴に、城山でお花見を楽しんでみませんか。
ここからはおすすめの2コースを紹介します。
ポイント
①週末・休日はバスの本数が多い小仏バス停からスタート
②旧甲州街道を歩き小仏峠など歴史の面影も満喫
③人気の高尾山からはケーブルカーで楽々下山
コース情報
コースタイム:3時間5分
歩行距離:6.9km
累計標高差(上り):592m
累計標高差(下り):412m
小仏バス停からしばらくは、舗装路を歩きます。途中には「小佛山」の山号を冠した寺院・寶珠寺も。ふたつのヘアピンカーブを越えて、景信山登山口を右手に見ながら進むと、小さな駐車場のある登山口へ到着します。
登山口からしばらくは、ヤゴ沢作業路の未舗装の林道を歩きます。林道が終わると土や小石が露出した道に変わります。最初はジグザグのやや急な上りですが、やがてゆるやかでまっすぐな道に変わります。
景信山からの道、相模湖駅からの道、城山への道が交わり多くのハイカーで賑わう小仏峠の広場。ベンチ・テーブルの他、かわいらしいタヌキ像が迎えてくれます。左へ進んだもうひとつの広場には、1880年に明治天皇が巡幸のために小仏峠を越えた際の休憩所趾の石碑が建っています。
小仏峠からひと上りでベンチが整備された広場・浅間台があり、なだらかな道が続きます。まき道(2024年3月現在通行止)との分岐からやや急な階段が始まりますが、前方に電波塔が見えてくれば城山は目の前です。
城山でグルメと絶景を楽しんだら、高尾山へ向かいます。階段や木道をゆるやかに下り一丁平を過ぎると、前方にそびえる高尾山が少しずつ近づいて来ます。
写真の分岐は右手の階段、左手のまき道いずれを通っても高尾山手前で合流します。紅葉台のトイレ・ベンチや、茶屋・細田屋を利用したい場合は、右手を進みましょう。
高尾山の手前は石段が続きますが、写真の東屋が見えたら山頂は目前です。高尾山からも富士山や丹沢山塊の展望が楽しめる他、ビジターセンターや3軒の茶屋・トイレがあります。
高尾山からは全区間が舗装された1号路を下ります。薬王院の境内に入り、奥の院・本社・本堂・山門の順に階段を下ると、杉の巨木が立ち並ぶ平坦な参道となります。歩きやすい女坂を下って、さる園・山野草園が見えたら、ケーブルカー・高尾山駅は目前です。
高尾山のおすすめ初心者コースを紹介:高尾山の初心者向け厳選3コース|ケーブルカー最短や自然満喫コースを登山ガイドが解説
ポイント
①大垂水バス停からの最短コース
②桜・紅葉が美しく富士山の眺望も綺麗な一丁平へも
③稜線上は歩きやすい木道・階段が整備されて安心
コース情報
コースタイム:1時間46分
歩行距離:3.7km
累計標高差(上り):318m
累計標高差(下り):316m
スタート・ゴールとなるのはJR八王子駅とJR相模湖駅を結ぶ神奈川中央交通の大垂水(おおだるみ)バス停です。高尾駅入口、京王高尾山口駅からも乗車できますが、1日に3往復のみと本数が少ないので、なるべく朝一番の便に乗りましょう。
バスを逃してしまったらタクシー利用も可能(JR高尾駅北口から約3,000円程度)です。大垂水バス停から車道沿いを歩き、写真左奥が登山口となります。
登山口からなだらかな道を歩き、この分岐は中央の階段を上ります。階段の距離はさほど長くなく、あとは一丁平までゆるやかなアップダウンが続く道となります。
一丁平で富士山の展望を楽しんだら、城山までゆるやかな稜線を進みます。ほぼ全区間が木道や木製の階段で整備されており、歩きやすい道です。
この区間にも随所に桜が点在しており、振り返れば高尾山がそびえています。
城山のシンボルのひとつが、大きな木製の天狗像です。かつては山頂標識の近くにありましたが、現在は小仏城山 青天狗の前に鎮座しています。
下りは城山から100mほど戻った右手に延びる道を進みます。最初は木製の階段が続きますが、やがてなだらかな下りへと変わり、正面には丹沢の山並を望むことができます。
森の中へと下り、雷岩山(560m)・春日山(540m)を経由して、沢のせせらぎが見えたら、大垂水バス停は間近です。ここから高尾方面へ戻る便は、16時台とやや遅い時間の運行です。早めに下山できたら、13時台の相模湖駅行に乗車して、JR中央線で相模湖駅から上り列車に乗って帰るのもおすすめです。
おすすめコース①でケーブル清滝駅へ下山したら、ぜひ味わいたいのが名物・高尾そばです。周囲にはたくさんのそば屋が軒を連ねており、お気に入りの店を探すのも楽しみ。おすすめコース②でも大垂水バス停から八王子駅北口行に乗車して高尾山口駅バス停で途中下車すれば、味わうことができますよ。
その他、おしゃれなカフェやボリューム満点の洋食を味わえるレストラン・ゲストハウスなど、山歩後のお腹を満たすグルメが満載です。
おすすめコース②で相模湖駅行のバスに乗った場合、歴史好きの人なら手前の小原バス停で途中下車するのもおすすめ。旧甲州街道で参勤交代の際に大名が宿泊した本陣のひとつである小原宿本陣は、日野宿(東京都)・上諏訪宿(長野県)と並んで3つしか現存していない貴重な史跡です。
おすすめコース①ではゴール地点からすぐ、おすすめコース②でも大垂水バス停から八王子駅北口行に乗車して高尾山口駅バス停で途中下車すると立ち寄れるのが、京王線・高尾山口駅のホームに隣接した「京王高尾山温泉 極楽湯」です。
アルカリ性単純温泉の露天岩風呂からは高尾山周辺の山並を望むことができ、山歩の余韻に浸りながら、心地よく汗を流すことができますよ。
おすすめコース①・②の両方で立ち寄るのが、城山山頂と一丁平園地のトイレです。山頂トイレは天狗像の鼻が指す方向を振り返って少し下った場所にありますよ。
おすすめコース①では他にも小仏バス停・高尾山手前の紅葉台・高尾山頂ビジターセンター脇・高尾山頂下・薬王院境内・ケーブル高尾山駅にもトイレがあります。
城山山頂に点在するベンチ・テーブルは休憩・食事にぴったり。なお、周辺は茶屋の私有地であり、バーナーを使って山ごはんを作る場合は、茶屋に声をかけて「火器使用許可」の札をあらかじめもらってテーブルに置いておきましょう。
おすすめコース①・②の両方で立ち寄るのが、一丁平展望台の東屋や一丁平園地周辺のベンチ・テーブルです。おすすめコース①では他にも小仏峠・紅葉台・高尾山頂周辺にベンチ・テーブル・東屋などがあります。
おすすめコース①の小仏バス停とおすすめコース②の大垂水バス停とも、JR中央線・高尾駅北口付近から発車します。
大垂水バス停へは駅からまっすぐ歩いて甲州街道を右に曲がった場所にある高尾駅入口バス停から神奈川中央交通バスで約19分、小仏バス停へは駅前ロータリーの高尾駅北口バス停から京王バスで約21分で到着します。
神奈川中央交通|高尾駅入口バス停 時刻表
京王バス|高尾駅北口バス停 時刻表
執筆・素材協力・トップ画像撮影=鷲尾 太輔(登山ガイド)