ユーザーさんが着なくなったアウトドアウェアを回収し、新しい服の原料の一部に活用するYAMAP製品循環プロジェクト『生まれ変わる、やまの服』。2022年9月に衣類の回収を始め、2024年4月に第1弾の製品化が実現しました。
「捨てるのではなく、生かす選択肢をつくりたい」。山を登る皆さんからの共感によって支えられている新プロジェクト。YAMAPが衣類の循環にかける想いや仕組み、プロジェクトへのご参加方法についてお伝えします。
2024.04.19
松山麻理
YAMAP コンテンツディレクター
2024年3月某日。
カラフルなシャツや、キッズサイズのフリース、有名ブランドの名作まで……。見ているだけで楽しくなるのは、YAMAP製品循環プロジェクト『生まれ変わる、やまの服』に賛同いただいたユーザーの皆さんから届いた、アウトドア衣類の数々です。
2022年9月〜11月に回収された衣類を原料に使用した「生まれ変わったやまの服」2024モデルのTシャツ発売に合わせて、この日、YAMAPストアの商品開発スタッフたちが第2期回収衣類の仕分け作業を行いました。
「何ヶ所も引きつれたパンツ、藪に絡まったのかな・・」
「キッズものはすぐサイズアウトしちゃうよね〜」
「この派手なマラソン大会の記念Tシャツ、好みに合わなかったんじゃない?」
そんなことを話しながら、仕分け作業がさっそくスタート。
「アウトドア業界って、矛盾を抱えてると思うんですよね」
YAMAP STOREのプロジェクト担当乙部晴佳は、回収衣類にハサミを入れながら、話します。
「フィールドで身を守るための機能ってありますよね。風雨から身を守る防風・防水性能や、大量に汗をかいても汗冷えしない速乾性能、岩場や藪の中で擦れても破れない耐久性とか。
それは必要なものだけど、より良いものを作ろうと追求するほど、化学的な加工が必要になったり、複合素材に頼ったりと、いつの間にか環境負荷が高く、リサイクルもしづらい製品になってしまうことが多いんです。
矛盾を抱えながら、それでも私たちは地球で遊ばせてもらっている人間として、なるべくフィールドに対してローインパクトなものを選択できる人間でありたい。今回の循環プロジェクトは、そんな想いから始まりました。」
突然ですが、「水平リサイクル」という言葉をご存知でしょうか。「水平リサイクル」とは、リサイクル前と後で用途を変えない資源循環の方法のこと。
例えば、空になったアルミ缶を集めて、また新しいアルミ缶を作ることは、典型的な「水平リサイクル」の一つといえます。
今回のプロジェクトの大きな特長は、YAMAPとともに国内アウトドアブランド「STATIC(スタティック)」が、さらに一歩踏み込んだ、トレーサビリティを担保できる状態での「衣類の水平リサイクル」を実現させたことです。
カギは、資源が乏しかった100年以上前に日本で生まれた反毛(はんもう)という技術。
ポリエステルの生地を細かく裁断したものを、針で引っかいてバラして、綿毛のような状態に。そこからウールやコットンと同じように、繊維をより合わせて糸にします。一度に大量の糸を作らなくて良いため、少ロットでの生産が可能なのが特徴です。
反毛は、薬品による分解や高温加熱による溶解を行なわず、再生に必要なエネルギーも少ないため、環境負荷の少ないリサイクル手法です。
リサイクルの技術や仕組みがあっても、賛同してくださるユーザーさんがいなくては成り立たないのが、この循環プロジェクト。
気持ちよく衣類と「さよなら」できるように、YAMAPでは回収のお手間や配送費ご負担への御礼として、YAMAP STOREで使える2,000円分のクーポンと、多用途に使えるオリジナルジップパックを差し上げています。
衣類の回収は通年受付中。衣替えのタイミングや、新しい衣類を買って入れ替えるタイミングで、是非YAMAPまでお送りください。
これまで回収にご協力いただいた皆さんへ改めて感謝をお伝えするとともに、引き続き、ポリエステル製衣類の回収に、ご協力よろしくお願いします。
詳しい回収方法はこちら
「循環プロジェクトは、ようやく最初の回収衣類を製品化して、スタート地点に立ったばかりといえる段階です。今は、100%ポリエステルまたは100%リサイクルポリエステル素材のみを対象としていますが、ウール100%についても、近い将来取り組みを広げていきたいと考えています。小さな一歩ですが、これからも“捨てない選択肢”を提案していきます」(乙部)
アウトドアウェアといえば、身体に寄り添うぴったりフィットが主流ですが、普段使いのTシャツは、ゆったりフィットやオーバーサイズが好みという方も多いのでは。
「生まれ変わった、やまの服」Tシャツは、アウトドアとして求められる機能的なフィット感を保ちながらも、スポーティさが出過ぎない絶妙なシルエット。再生ポリエステル100%なので、速乾性に優れ、汗ばむ季節の普段着にもおすすめ。山でも街でもおうちでも、ワードローブに加えやすい一着です。
全体的にはグレーに見えますが、布地をよく見ると、回収衣類の繊維の色が見える部分もあり、それもまた味わい。存分に着倒していただいた後は、もちろん循環プロジェクトで回収することができます。
衣替えの時、新しくモノを買う時、いい「さよなら」ができそうか想像してみることを、これからのスタンダードにしていけたら。
未来に繋がる循環の輪に、あなたも参加してみませんか?
「生まれ変わったやまの服」はこちら
撮影=甲田和久