ミレーからレインウェアの概念を覆すオバケ(ファントム)級、防水ウェアが登場

ミレーの高機能防水ウェア「ティフォン」がさらなる進化を遂げました。高透湿性、着心地の良さ、そして優れた伸縮性。この3つの「高機能」を高い水準で兼ね備えた「ティフォン」シリーズに、超軽量レインウェア「ファントム」が登場。発売から10周年となる今年、元祖「ティフォン」と「ティフォン ファントム」の真価を山岳ライターの森山憲一さんがフィールドテストしました。

なお、記事の最後にはYAMAPユーザー限定の「モニター募集」もあります。ぜひ最後までお読みください。

2025.02.25

森山 憲一

山岳ライター/編集者

INDEX

高機能防水ウェアの代表格「ティフォン」は発売10周年

ゴアテックスをはじめとして、さまざまな防水透湿素材が群雄割拠するレインウェア界において、ミレーの「ティフォン」はすでにひとつの確固たる地位を築いたなと感じます。

他の素材と比べたときのティフォンの優位性は、ひとつは蒸れの少なさ。50,000g/m²/24hという透湿性は、数ある防水透湿素材のなかでも最高レベル。メーカーが謳うこういう数字データは、実際には違いがよくわからないということも少なくありませんが、ティフォンの蒸れにくさははっきりと体感できるのです。

もうひとつの優位性は着心地のしなやかさ。レインウェアというと、パリパリと硬い着心地であることが常なのですが、ティフォンは防水ウェアとは思えないほど着心地が自然です。

このティフォン、今年で登場10周年になるといいます。

実は私、初代が出たときのことをよく覚えています。登場当初は「W7 50000」という名称でした。ミレーからまったく新しいレインウェアが出ると聞き、早速試してみたのです。袖を通してみた瞬間、「これ、ほんとにレインウェアなの?」と思ったほど、着心地のナチュラルさは当時から際立っていました。

ティフォンの前身となる「W7 50000」登場時のパンフレット

この「W7 50000」はそれほど大きな注目を集めることはありませんでしたが、翌年、裏地を改良して名称を「ティフォン(=フランス語で台風の意味)」と変えて以降、人気は急上昇。いまでは「しなやかなレインウェアといえばティフォン」というほど、イメージが定着しています。

そのティフォン、10周年を迎えるにあたり、また新たな進化を見せています。進化ポイントはいくつかあるのですが、一番の目玉は「超軽量化」でしょう。

まるでウィンドシェルのような超軽量レインウェア「ティフォン ファントム」

光にかざすと透けて見えるほどの薄さ

↑これです。

実物を手に取ったら、軽量ウインドシェルとしか思えないはず。重量は163グラムしかありません(ティフォン ファントム トレックジャケット・Mサイズ)。

しかしこれはれっきとしたレインウェア。従来と同等の防水透湿メンブレンを使った本格的な3レイヤー構造。メンブレンに組み合わせる表地と裏地に極薄の生地を使うことで、この薄さと軽さを実現しています。

同じ素材を使い、ハンドポケットを省略してより軽量化したバージョンの「ティフォン ファントム ファストジャケット」は132グラム(Mサイズ)。もはや3レイヤーのレインウェアの重量とは思えません。

生地が薄くなったことで透湿性も向上しています。通常のティフォンは50,000g/m²/24hであるところ、ファントムは60,000g/m²/24h。これもレインウェア史上最高レベルの数値です。

その性能はいかに。ということで、実際に着用して山を歩いてきました。

ずっと着たままでいられるナチュラル感!


登山スタート時、雨は降っていなかったし特に寒くもなかったのですが、あえてティフォン ファントム トレックジャケットを着込んで歩き出しました。

前述したとおり、ファントムには2モデルあります。ひとつは私が着ている「トレックジャケット」。もうひとつは、132グラムの「ファストジャケット」。使われている素材は同じですが、「ファスト」のほうはハンドポケットや裾のコードロックなどを省略して徹底的にシンプル仕様にしたモデル。

「ファスト」は多少の便利さは犠牲にしても重量減を優先したいトレイルランニングやファストパッキングに向いたモデル。一方、登山で使うことを考えるなら、「トレック」のほうが使いやすいかなと思います。30グラムほど重くなりますが、細かい部分が凝っていて、より快適に使えるからです。

たとえばひとつはこれ。袖口の手首側が少し長くなっていて、手の甲をいい感じに覆ってくれます。これだけで雨天時に手に直接当たる水の量が減り、冷たさを感じることが少なく感じます。こういう細かいディテールを作り込んであるところが「トレック」の特徴です。

手の甲のカバー部分。わずか2センチほどなのに、あるとないとでは大きく違うと感じます

もうひとつは下からも開くダブルジッパー仕様になっていること。軽量レインウェアとしては贅沢すぎる仕様ともいえますが、換気用に少し開けたり、用足しがしやすくなったりなど、使用上はなにかと便利。それから左右のハンドポケットも、やはりあると便利ですよね。

下からも開くジッパー。いろいろなシーンで重宝します

しばらく歩いていて気づくことは、やはり透湿性が高いこと。普通のレインウェアと比べて蒸れの少なさは明らかでした。防水透湿メンブレンの入っていない薄手ウインドシェルと比べるとさすがに蒸れはありますが、レインウェアの蒸れ感とはステージが違うように感じます。感覚的には、レインウェアとウインドシェルの中間的な感じでしょうか。

着心地の軽さと自然さも「レインウェア離れ」していて、これは新鮮な感覚でした。これならずっと着ていられると感じたし、実際、脱ぎたくなることはありませんでした(テストしたのは10月の低山)。

動きやすさの秘密は軽さと裏地

あと、圧倒的に軽いので動きやすい。生地がしなやかなこともあって、腕を上げるような動作もとても自然にできます。レインウェア特有のモタつきはほとんどないといっていいでしょう。

腕を上げて岩や木、鎖などをつかむ動作がとても軽快にできる

下の写真がウェア内側。裏地は微妙に凹凸のある素材で肌ざわりがサラッとしており、半袖シャツの上に着てもベタつく感じはありません。さらに注目はシームテープ。9ミリという極細のものが使われています。幅が太いシームテープを使うと着心地が硬くなってしまうのです。

ファントムの着心地の軽さと自然さにこの極細シームテープが貢献している部分は間違いなくあると思います。

裏地は通気性の高いハイゲージニット素材。シームテープの幅は9mm!

低山派にぜひ試してみてほしい一着

ファントムを一日着てみた感想としては、とにかく快適性が群を抜いているということでした。これはレインウェアの新しいカテゴリーを開く一着になるのでは?と感じたほどです。

というのも、軽くてコンパクトなので、ザックに常備していてもほとんど負担にならず、使用感や着心地はほぼウインドシェルなのに、いざ雨が降ってきたらレインウェアとしても機能する。これを持っていれば、レインウェアとウインドシェルを一着で兼ねられるのです。この「気軽感」は新感覚といえます。

メーカー的には運動量の多いアクティブ派向けのウェアという位置づけなのだと思いますが、実は日帰り低山ユースにもとても向いているレインウェアなのではないかというのが感想でありました。

逆にファントムの弱点は防風性と保温性が低めなこと。風が吹いたときにスースーする感覚があります。これは暑いときにはメリットになるのですが、気象条件が過酷なときには少々心許なく感じることと思います。

たとえば、夏の北アルプス3,000メートルの稜線上で風雨に叩かれたときのことを想像すると、状況によっては体が冷えてしまうこともあると思われます。

こういうオールラウンドな用途も想定するとなると、やはり同じティフォンシリーズのなかでも、ノーマルなモデルのほうが安心感は高いかなというところです。

さらに進化した元祖「ティフォン」

ということで、こちらはノーマルなタイプの「ティフォン ストレッチジャケット」。ファントムと比べると見てわかるとおり、ヘルメット対応のフードや袖、裾がたっぷりしていて、着たときの守られ感・安心感はステージが違うと感じます。生地もファントムより厚めのものが使われています。

これがティフォンの元祖的存在で、ミレーのレインウェアのなかでも、最もオールラウンドで中心的なモデル。私が10年前の「W7 50000」時代から使っていたレインウェアの直系後継モデルになります。

袖を通してみた瞬間に感じたのはフィット感のよさ。私が比較対象としたのは10年前の「W7 50000」なので、当然といえば当然なのですが、体にしっくりとフィットして、着心地が圧倒的に洗練されています。10年の間に、こういう目に見えにくい部分の改良を積み重ねていたことが感じられました。

フィット感のよさには、もちろん生地のストレッチ性の高さも貢献しているのだと思います。ストレッチ性が高いことは、透湿性の高さと並んでティフォンのもうひとつのストロングポイントではあるのですが、最新モデルはそのストレッチ性の高さを生かしてより効率的なシェイプに改良されているのだと思います。「W7 50000」は今にして思えば、ずいぶんムダに緩いフィットだったな…。

ストレッチ性が高いだけでなく、ツルツルテカテカしない質感もティフォンのナチュラルな着心地の秘訣

「どこでも安心」はやはりこちら

ティフォン ストレッチジャケットは、スペック的には耐水性も透湿性もファントムより劣ります。実際、蒸れ感はファントムと比べると少し高く感じます。

ただし、夏山用としてフルスペックのレインウェアだけに、防風性の高さはファントムより明らかに上。そしてティフォンならではのしなやかで自然な着心地はやはり魅力で、それはこのストレッチジャケットでも変わりません。

ティフォンストレッチにはパンツもあるのですが、これがまた特によい。こういう大きな動きをしても突っ張ることが少なく、素材のストレッチ性の高さの恩恵を強く感じるところです。

ジャケットのブルーのカラーもいい色だなと思いました。山のなかで目立つ色なのですが、単純な青ではなく、若干ターコイズっぽい絶妙な発色で、高級感があります。

こういう岩場でも動きやすい。ストレッチ性の高さが効くシチュエーションです。

雨が強くなると、フードの大きさや適度な生地厚が安心感を与えてくれます。

選択肢が増えたティフォンシリーズ

3レイヤーレインウェアとしての限界を追求した飛び道具的な「ティフォン ファントムジャケット」。トレイルランニング用の尖ったジャケットなのかと思っていましたが、使ってみると、思いのほか懐の広いジャケットであることが発見でした。

軽量化を追求したウェアは快適性が犠牲になることが多いのですが、ファントムは快適性もものすごく高いのです。それゆえに、トレイルランニングなどのアクティブユーザーだけでなく、その真逆ともいえる日帰り低山ハイカーにもうってつけの一着となっています。標高が低めのところなら、アクティブ派にもゆっくり派にもどちらにもマッチする。こういうウェアはあまりありませんでした。

一方で、どんな条件でも一定の快適性を得られるオールラウンド性、そこを求めるなら、やはりノーマルな「ティフォン ストレッチジャケット」のほうでしょう。一年を通じていろいろな登山をしたいという人になら、間違いなくこちらをおすすめします。

選択肢は増えましたが、そんな感じで選び分けるとよいのではないでしょうか。どちらにしても、レインウェアのイメージを超えたしなやかな着心地を体感できることでしょう。

「ティフォン ファントム トレック」YAMAPユーザーモニター募集

今回の記事で紹介したミレー「ティフォン ファントム トレック」、実はYAMAPユーザー限定でモニター企画を実施します!

モニターに選定された方には「ティフォン ファントム トレック」を、実際に登山で使用し、その使用感や感想をYAMAPの活動日記でレポートしてください。なお、お送りした「ティフォン ファントム トレック」は、そのままプレゼントさせていただきますので、奮ってご応募ください。

【募集期間】2025年2月27日(木)から3月12日(水)まで

【募集人数】3名

【応募方法】以下の応募フォームからご応募ください。
※お使いのブラウザでYAMAPにログインの上、アクセスしてください。

【応募条件】
ご応募いただいた後、選定された方にはYAMAP内メッセージにてご連絡させていただきますので、対応いただける方。(選定のご連絡は3月下旬頃を予定)
*選定された方のみご連絡させていただきます。あらかじめご了承ください。

・ティフォン ファントム トレックを使用した山行での使用感・感想を、期間中(商品到着後〜5月上旬開催予定のオンライン座談会前まで)に、1回以上、活動日記として投稿いただける方。
・ティフォン ファントム トレックを使用した山行での使用感・感想を、5月上旬実施予定のモニター座談会(リモートで開催予定)でお話いただける方。
・YAMAP MAGAZINEの記事やミレーのホームページ等で、活動日記の情報(写真・テキスト等)、モニター座談会および写真の使用を許諾いただける方。
・その他、今回のモニター企画に関するYAMAPからのリクエストにご対応いただける方。
*本モニターの趣旨に外れている場合や、利用規約に違反している場合、 YAMAP運営事務局が不適切と判断した場合などは、応募資格を失うことがあります。

原稿:森山憲一
撮影:矢島慎一
協力:ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン

森山 憲一

山岳ライター/編集者

森山 憲一

山岳ライター/編集者

1967年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学教育学部(地理歴史専修)卒。大学時代に探検部に在籍し、在学中4回計10カ月アフリカに通う。大学卒業後、山と溪谷社に入社。2年間スキー・スノーボードビデオの制作に携わった後、1996年から雑誌編集部へ。「山と渓谷」編集部、「ROCK&SNOW」編集部を経て、2008年に枻出版社へ移籍。雑誌『PEAKS』の創刊に携わる。2013年からフリーランスとなり、登山と ...(続きを読む

1967年神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学教育学部(地理歴史専修)卒。大学時代に探検部に在籍し、在学中4回計10カ月アフリカに通う。大学卒業後、山と溪谷社に入社。2年間スキー・スノーボードビデオの制作に携わった後、1996年から雑誌編集部へ。「山と渓谷」編集部、「ROCK&SNOW」編集部を経て、2008年に枻出版社へ移籍。雑誌『PEAKS』の創刊に携わる。2013年からフリーランスとなり、登山とクライミングをメインテーマに様々なアウトドア系雑誌などに寄稿し、写真撮影も手がける。ブログ「森山編集所」(moriyamakenichi.com)には根強い読者がいる。