山々が美しい紅葉に染まり始める秋は、ウェア選びが難しい季節。気温が一気に下がるので、雨や汗でウェアを濡らしてしまうと体が冷えやすく、夏山よりも誤魔化しが効きません。
この時期のウェア選びで意識すべきポイントは、“適度な暖かさと汗抜けの良さを兼ね備えている”こと。そこで、秋山での選択肢となってくるのが「ソフトシェル」です。使い方次第で秋の登山の心強い味方となってくれるソフトシェル。その特徴と、おすすめモデルを紹介しましょう。
2025.10.06
池田 圭
編集・ライター
ソフトシェルとは、防風性・撥水性・通気性に優れるというマルチな機能を持つハイスペックなウェア。また、ストレッチ性が高くて動きやすいばかりでなく、名前が表す通り、ソフトで伸縮性も兼ね備えた着心地がポイントです。樹林帯から稜線歩きまで、1枚で幅広いシーンに対応することができます。
そんな、ソフトシェルが誕生したのは、今から30年以上前のこと。
以来、行動中もオーバーヒートしづらいように通気性や軽量性を重視したタイプから、クライミングのようなハードな環境下でも使える耐久性を重視したタイプまで、ソフトシェルのバリエーションは年々増え続けてきました。
ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット ¥16,500
気温が一気に低くなり始める秋に着るならば、適度な保温性と冷気の侵入を防ぐ防風性がありつつ、行動中に体がオーバーヒートしないような通気の良さを兼ね備えたモデルが良いでしょう。
その点、今シーズンの数ある新作からおすすめしたいのが、コロンビアからリリースされた「ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット」です。
同社が手がけるソフトシェルとしては、やや厚めの生地が採用され、3シーズン(秋冬春)のハイキングに適したモデルです。夏山でも使うならば、より薄手で軽量な素材を採用した「ライトキャニオンソフトシェル」というモデルもラインナップされています。
ちなみに、近年はソフトシェルと同じように行動中に着られる「アクティブインサレーション」なるカテゴリーも登場し始めましたが、使い分けは明確。
軽さと保温性を重視して選ぶなら、アクティブインシュレーションに分があります。しかし、岩場を通過したり、雨に降られる可能性があったりと、コンディションが変わり続けるような登山なら、汎用性の高いソフトシェルの出番です。
前述の通り、ソフトシェルにはさまざまなタイプがあります。では、何を基準に選べばよいのでしょうか。
その答えは「素材」です。
各ソフトシェルの特徴は、「使っている素材の特徴」と言い換えることができます。つまり、ソフトシェル選びで悩んだ時は、素材に注目すると選びやすくなるのです。
滑らか、かつ強度の高い表地
「ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット」に採用されているのは、適度な厚みがある二重織のシェル素材。
表と裏で異なる構造の生地を採用する事で、生地の間に暖かな空気の層を作り、適度な保温力と通気性のバランスを実現。滑らかなサーフェス(表面)は擦れに強く、防風性もあります。
裏の肌面に目を移してみましょう。
こちらは一転、表面に凹凸を持たせ、肌離れを良くすると共に、保温性を高めています。
適度な通気性を備えているので、ずっと着っぱなしで行動してもオーバーヒートしづらく、常にドライで快適な着心地をキープしてくれます。半袖の上に重ねてみると、サラリとした肌触りの良さがよくわかります。
また、素材のストレッチ性を最大限に活かすため、体にフィットするシルエットが採用されています。ダブつかないので、稜線上などの風が強い場所ではレインウェアと重ね着したり、テント場での停滞時はダウンと重ねたりと、ミッドレイヤーとしても活躍。肌寒くなってくるこれからの季節は、1日中、出番が多くなるはずです。
小雨が降り始めたのでレインウェアを着たら、またすぐに晴れてきたなんて状況はよくありますよね。
このソフトシェルは、フッ素化合物を使用しないコロンビア独自の撥水機能「オムニシールド」を採用。雨の降り始め程度であれば対応できる撥水性を備えています。レインウェアを着ようか悩む微妙なシチュエーションでも、迷わず着続けることができるでしょう。
コロンビア独自のサンプロテクション機能「オムニシェイド」も搭載(紫外線の95%を防ぐ「UPF50」を備えている)しているので、想像以上に紫外線量の多い秋以降の山で着るのにも安心です。
もちろん、ソフトシェルジャケットならではの、ストレッチ性の高さも十分。加えて、肩周りは可動域が広い形状になっています。クサリ場やハシゴの通過時に腕を大きく上げるような動きをしても、どこかが突っ張るようなストレスがありません。
ハリのある生地は伸びるだけでなく、戻る力も強いため、体の動きにしっかりと追従してくれます。この戻る力の強さと軽さが、長時間でも快適に着続けられるポイントです。
ディテールは非常にミニマムなデザインが採用されています。
持ち運ぶことも考慮した軽さとコンパクトさに仕上げられていることも、「ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット」の大きな特徴でしょう。重量はメンズのMサイズで388g(ウィメンズMサイズは352g)ほどしかありません。
例えば、ドローコードで調整可能なフードは、非常にシンプルな造りです。フィット感が高く、バタつきづらいので、雨だけでなく、冷たい風を防ぎたい時にも有効です。
袖口や裾はドローコードではなく、軽量なストレッチバインダーを使用。シンプルながら、可能な限り重量を抑えつつ、風の侵入を防いでくれるディテールとなっています。
肌寒い時はシャツやフリースのように羽織ったり、ウィンドシェル代わりに風を防いだり。「ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット」は、1枚でさまざまなシーンをカバーできる万能シェルと言えるでしょう。
余計な脱ぎ着と荷物を減らして登山のスピードを上げられることは、一気に日が短くなり始める秋冬のウェア選びには大きなメリットになります。
突き詰めると、用途ごとに必要なウェアはどんどん細分化していきます。しかし、シーンごとに自分にはどのようなウェアが必要なのかを把握するには、ある程度の経験が不可欠です。
もし、あなたがまだ秋冬の登山用にどのようなウェアを買うべきか決めかねているならば、まずは「ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット」のような汎用性の高いタイプのソフトシェルを選んでみてはどうでしょうか?
これが秋のウェア選びで失敗しない、最善のファーストチョイスになるはずです。
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ライトキャニオンミッドウェイトソフトシェルジャケット
¥16,500
サイズ:S〜XL
素材:ストレッチダブルウィーブ(ポリエステル90%、ポリウレタン10%)
重量:388g(メンズM)
原稿:池田圭
撮影:廣瀬順二
モデル:金城拓馬
協力:コロンビアスポーツウェアジャパン