アウトドアの達人に学ぶ「山コーヒー」の道具、淹れ方、嗜み方

登山とコーヒーを楽しむ「山コーヒー」の世界へようこそ。雄大な景色を眺めながらのコーヒータイムは、他には代えがたい特別な時間です。苦労してたどり着いた山頂での贅沢な一杯、どうせ飲むなら最高に美味しいコーヒーを飲みたいものですよね。

山で珠玉の一杯を淹れるためには、どのような準備が必要なのでしょうか? 今回はご自身もカフェを経営し、山コーヒーにこだわりをお持ちのアウトドアコーディネーター、小雀陣二さんに、至高の山コーヒーを味わうために揃えたい道具、淹れ方のコツをお聞きしました。

2020.06.17

小雀 陣ニ

アウトドアコーディネーター

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登山とコーヒーの美味しい関係

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見上げるような急登を目の前にすると「何でまたこんな事してるんだ」と登るのが億劫になる。それでも誘われると「お!いいね」と、また懲りずに山に登るし、間が空くと「なんだか、山に行きたい…」と思う。めんどくさがりながら、それでも私は山に惹かれる。

それはひとえに歩く楽しみ、登頂する達成感というような登山の楽しみ以外に、山で食べる美味しい食事。さらに、そこに”魅惑のコーヒー”があるからだと思う。山コーヒーの楽しみ方を知ることは、山での時間をより濃密なものにしてくれるのである。

山でこそコーヒーがおすすめな理由

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アウトドアメーカーを退社後、フリーランスのアウトドアコーディネーターとなり、雑誌などで料理ページを担当することが多くなった。幼い頃から食べることが好きで、友人とのキャンプではいつも食事担当だったことも、遠からず影響しているのかもしれない。

ついには料理好きが高じて、神奈川県の三浦半島の突端にカフェを開いた。はやいものでオープンして7年になる。

そんな仕事柄もあって、「山で何を飲むか?」と聞かれることがある。そういう時、決まって私はコーヒーと答える。一口飲んだ時のほっとする感覚、香りにとても癒される。登山は日常のルーティンのような生活とは違い、体力はもちろんや知力も使い、五感をより活用する。だからこそ、コーヒーを飲んだ時のホッとする感覚がいつもより深い。

朝起きて、仕事の合間に、休憩に。そして山でも飲む。コーヒーは一口飲むと何かを切り替えてくれる、スイッチのような不思議な飲み物だ。

旨いコーヒーを飲むためには「豆へのこだわり」が不可欠だ

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コーヒーを淹れる道具を説明する前に、一番大事なコーヒー豆について触れたい。豆の特徴はそれぞれ違っていて、そこがおもしろい。煎り方から、原産地、品種など選択肢は多岐にわたる。新たな味を発見するためにも、自分の好みを豆屋さんに相談して決めることをおすすめする。コーヒーロースター(豆焙煎屋)も増えたので選び放題。山行のたびに毎回豆を変えて楽しむのもいい。
 
個人的なコーヒー豆の好みとしては、甘みと苦味が感じられ、酸味が抑えられたコーヒーが一番気に入っている。自分の店では、友人のロースターと相談し、コロンビア産のメサデサントス農園の、甘みがあり爽やかな酸味のある豆を深煎りしたフレンチローストと、コスタリカ産のドンパブロ・ベジャビスタ農園の果実味が感じられる芳香な香りと甘み、酸味と苦味が抑えられている中煎りをブレンドして提供している。

コーヒーの味に関しては、最近ワインと比べられることがある。同じ果実から作られているため、香り、甘み、苦味、酸味など比べるポイントが同じだからだ。ワインには詳しくないが、赤ワインのカベルネ・ソーヴィニヨンという品種が好きで、この特徴は好みのコーヒーにも近い。

コーヒーの選択肢は膨大であり、奥深さはひとくちには語れないのだ。

持参必至の「登山用コーヒーミル」

また、(読者諸賢は、すでにご存知だと思うが)コーヒーは淹れる直前に挽いた方が、豆本来の鮮度や香りを楽しむことができるので、豆を挽くコーヒーミルも持参したい。

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私も使っており、これから山コーヒーを始めたいと思っている方にお勧めしたいのが、ジャパンポーレックス社の「コーヒーミル・Ⅱミニ」だ。丁寧に作られたこだわりのセラミック刃が気に入っている。セラミック製の歯は、酸化せず、豆に余計な匂いが付かない。さらに豆を挽きやすい。登山用のミルの購入を検討している様なら、少々値が張るが、ぜひともセラミック性をご検討いただきたい。

豆の保存と持ち運びにはこのアイテムがおすすめ

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気に入ったこだわりの豆は、自宅では必ず密閉容器に入れ、常温の陽の当たらない場所で保管したい。豆はどんどんと酸化していき、味が落ちてしまうからだ。2週間以上保管するなら密閉し冷蔵庫へ。それ以上なら冷凍庫という選択肢もあるが、正直なところおすすめはしない。なるべく新鮮なうちに飲んでしまうのがベストだ。

豆を山に持ち運ぶ時は、ジッパー付きの袋が軽量でいい。こだわる時は、より気分が上がるGoStakという筒型のクリアケースに入れている。密閉度が高く、強度もあり、安心して豆を持ち運ぶことができる。

一押し「ペーパードリップ方式」の淹れ方、必要アイテムは?

淹れ方
至高のコーヒーを淹れるためには、紙のフィルターでコーヒー粉を漉す「ペーパードリップ方式」がおすすめだ。抽出の仕方によって味わいに違いが出るのがおもしろい。山行での後片付けも、ジッパー付きの袋にまとめておくと捨てやすい。

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クッカー
湯を沸かすポットやクッカーは、すでにお持ちのもので基本的には問題はない。しかしコーヒーが淹れやすいように細くゆっくり注げる口があると尚よい。最近はアウトドア用のコーヒーポット(ケトル)のようなグッズもあるので、さがしてみよう。

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ドリッパー
コーヒードリッパーは、軽いものからユニークな形のものまで、各社素材もいろいろある。見た目のデザインや素材感、使うカップの大きさなどに合わせて選ぶといい。

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カップ
コーヒーを飲むカップは、素材や重量、デザインなど好みのものを探すのも楽しい。中空チタン製のダブルウォール式マグカップは保温力が高くまた軽量性もあるので、最後まで熱い状態でコーヒーを楽しむことができる。参考にしてもらいつつも、自分のお気に入りのマグカップで飲むコーヒーが一番格別なのは間違いはない。

至福の一杯を生む、山コーヒー必須道具まとめ

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今一度、ここで山でコーヒーを淹れるために必要な道具をまとめてみよう。

・コーヒー豆
・コーヒーミル
・クッカー(もしくはケトル)
・ドリッパー
・ペーパーフィルター
・バーナー
・ガス缶
・マグカップ

正直、コーヒーのためだけに持ち運ぶ荷物が増えるのは悩ましい。ここに挙げただけでも、それなりにかさばるので、山行に持っていくべきか迷うところだ。

だが、至高の一杯を飲むために、多少の重量は目をつむることも必要なのである。

豆ではなく粉にすれば、より荷物はコンパクトになるし、さらに軽量にしたいのであれば、インスタントコーヒーという選択肢もある。どこまでこだわるかは本人次第だ。自分の体力と計画にあった荷物で登山に向かって欲しい。

今回は、至福の一杯のために必要な道具やコーヒー豆について話をしたが、楽しみ方も様々で奥が深いのがコーヒーの世界。次回は、ドリップ編。実際に至高のコーヒーの淹れ方を紹介したいと思うので、ぜひとも楽しみにして欲しい。

小雀 陣ニ

アウトドアコーディネーター

小雀 陣ニ

アウトドアコーディネーター

アウトドアメーカー、カヤックショップ勤務後、アウトドアコーディネーターとして各メディアで撮影に携わり、得意な料理を通じて手軽で簡単なアウトドア料理のレシピを紹介し、料理教室なども行う。日本とアラスカでカヤックやハイキング、MTBツアーを企画し、アウトドアで過ごす楽しさを広め、メーカーと共に新たなキャンプ道具の企画、開発も行う。週末は、神奈川県三浦市三崎港前で喫茶店「雀家」を営んでいる。 「山グルメ ...(続きを読む

アウトドアメーカー、カヤックショップ勤務後、アウトドアコーディネーターとして各メディアで撮影に携わり、得意な料理を通じて手軽で簡単なアウトドア料理のレシピを紹介し、料理教室なども行う。日本とアラスカでカヤックやハイキング、MTBツアーを企画し、アウトドアで過ごす楽しさを広め、メーカーと共に新たなキャンプ道具の企画、開発も行う。週末は、神奈川県三浦市三崎港前で喫茶店「雀家」を営んでいる。
「山グルメ」「誰でもキャンプ料理の王様」(共にエイ出版社)
「山料理」(山と溪谷社)など著書多数。