汗の悩みよさらば|汗処理のためのアンダーウェア【ドライナミック】を徹底解剖

最近、登山者の間で話題になっているアンダーウェアがあります。それはミレーの「ドライナミック」シリーズ。登山者の悩みのひとつ、「汗問題」を解決する画期的な商品なんだとか。夏本番を迎えるこれからの季節にぴったりな「ドライナミック」シリーズの秘密を探るべく取材してみました。

2022.06.10

小川 郁代

編集・ライター

INDEX

アウトドアの新常識。暑いからこそもう1枚着るアンダーウェアの力

暑い季節の大きな悩みが、汗との付き合い方。汗は体温を調節するための大切な機能だとわかってはいても、イヤなべた付きや濡れ感などは、できるだけ避けたいものです。アウトドアでは、速乾性の高いベースレイヤーを身に着けるのが常識。それでも大量に汗をかく場面では、汗でウェアが肌に張り付いたり、モワっと熱のこもる感じがあったりと、不快感がぬぐい切れないと感じる人も多いでしょう。

それを解消するために近年使われるようになったのが、べースレイヤーの下に着る、汗処理のためのアンダーウェア。汗のストレスを解消するために、あえてもう1枚プラスするという考え方が、登山など運動量の多いアクティビティを中心に、急速に存在感を高めてきました。

支持されるには理由がある! ミレー【ドライナミックメッシュ】の実力とは

登山やハイキングの帰りに立ち寄った麓の温泉で、ちょっとあやしげな「アミアミ」を着ている人を見かけたことはないでしょうか? それこそが、ミレーの汗処理用アンダーウェア「ドライナミックメッシュ」です。

一度目にしたら忘れないインパクトのあるルックス。当初はほかに着ている人が少ないこともあり、「脱衣所で肩身が狭い」などと言われることもありましたが、発売から5年が経った今では、口コミを中心にユーザーが大幅に増加。多くのリピーターを抱える大人気商品に成長しました

とはいえ、見た目としてはかなり奇抜。メッシュとはいえ、かなり厚手の素材感。真夏の暑さを考えると、あえて1枚加えようとは思えないというのが正直なところ。それでも着実にリピーターが増え続けているのは、使った人がその効果を、確かに実感できているからにほかなりません。

そもそも汗処理用アンダーウェアってどんなもの?

直接肌に着けるベースレイヤーも年々機能が進化していますが、そこに加える新たなレイヤリングとして現れたのが、下にもう1枚プラスするアンダーウェア。ここ数年で製品の種類もかなり増えてきました。それぞれに異なる特徴はありますが、目的はどれも同じ「いかに早く濡れを肌から遠ざけるか」ということ。

水を吸収しない性質を持つ繊維で作られたアンダーウェアを肌に直接着ると、体にかいた汗はアンダーウェアにとどまることなく、上に着た吸水性のベースレイヤーに移動します。すると、肌はドライな状態になり、汗を吸ったベースレイヤーが直接肌に触れないため、濡れやベタつきを感じることがなく、汗が肌に戻ることもありません。

アンダーウェアが肌から汗をすばやく引き離し、速乾性のベースレイヤーが水分を発散することで大量の汗を処理する。これが汗処理アンダーウェアに共通する、基本的な考え方です。

圧倒的な汗処理能力の秘密は、編み目の大きさと生地の厚み

では、同じような発想で作られたアンダーウェアがいろいろある中で、「ドライナミックメッシュ」がこれほど高く評価されているのはなぜなのでしょう?

汗処理用のアンダーウェアは、保水性のない素材で汗を効率よく吸い上げ通気性を確保するために、ほとんどの商品がメッシュ構造の生地を使っています。そのため、一般的には「メッシュインナー」などと称されることがありますが、ひと目でこれほどはっきりとメッシュであることがわかるのは、「ドライナミックメッシュ」だけ。

実は、この編み目の大きさにこそ、圧倒的な汗処理能力の秘密があるのです。

●肌の設置面積を小さくする大きなメッシュ
最大の理由は、メッシュを大きくすることで、肌との設置面積を少なくできるということ。

肌に触れる面が小さければ、濡れたTシャツを素肌に着た時のように、ベタっと生地が肌に張り付くことはありません。濡れ感が少ないだけでなく、水分が体から熱を奪う量も小さくできるため、体温低下のリスクも大幅に減らすことができます。

●空気の流れを作る生地の厚みが継続的な汗処理を可能にする
どれほど優れた吸汗速乾ベースレイヤーでも、吸い上げた汗が乾くまでの時間がゼロになることはありません。大量に汗をかき続ければ、ベースレイヤーの発散が間に合わず、それ以上の水分を吸収する余裕がなくなって、汗は肌表面に残ってしまいます。

しかし、ドライナミックメッシュはメッシュ生地自体に厚みがあるので、肌とベースレイヤーの間に空間ができて、メッシュが常に空気に触れた状態に。すると、汗がベースレイヤーに吸収される前の段階で、メッシュを通り抜けている間にも乾き始めるという現象が生まれます。

つまり、ベースレイヤーだけでなく、ドライナミックメッシュ自身も汗を発散するということ。ベースレイヤーの吸汗速乾性だけに頼らなくても、ダブルの効果で肌表面の濡れを途切れることなく処理し続けることができるのです。

そのため、一般的な汗処理用のアンダーウェアが、アンダーウェアと吸汗速乾機能のあるベースレイヤーをできるだけ密着した状態で着ることを推奨しているのに対し、ドライナミックメッシュは、少しゆとりのあるベースレイヤーをあわせてもOK。フィットしているほうが汗処理能力は高まりますが、夏の暑い時期など、あまりピタッとしすぎない風通しのいいものが着られるのは、とてもうれしいポイントではないでしょうか。

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●吸汗性と優しい肌触りを持つ特殊構造の糸
メッシュを編み上げる糸の主な素材は、水分を含まないポリプロピレン。繊維にあけられた無数の小さな穴が毛細管現象を引き起こして、肌表面の汗をグングンと吸い上げます。

汗処理の仕組みだけを考えれば、ポリプロピレン100%でもよいのですが、ドライナミックメッシュに使用している糸は、ナイロンとポリウレタンを組み合わせたもの。ポリプロピレンは汗処理で重要な役割を果たしますが、肌触りや耐久性が弱点。それを、しなやかで耐久性に優れるナイロンが補い、ポリウレタンの伸縮性で動きやすさも確保しました。

メッシュの目が大きいだけに、長時間着用していると肌に網状の跡がどうしても残りがちですが、しばらくすれば自然に消えるので、少しの間のガマンです。ただし、長時間圧力をかけた状態が続くと、まれにアザのような状態になることがあるので、山小屋などでの就寝時は必ず脱ぐようにしましょう。

これらの工夫で得られる抜群の汗処理能力こそが、ドライナミックメッシュが高い評価を受ける理由。大量の汗をかき続ける、運動量の多いアクティビティをする人たちのたくさんの口コミが、何よりの証拠でしょう。

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もっと気軽に使いたいなら、新登場【ドライナミックスルー】に注目!

ここまでで、ドライナミックメッシュがいかに高い汗処理能力を備えているかは、充分理解していただけたのではないかと思いますが、それでもあの見た目に、二の足を踏む方も多いでしょう。

すでにドライナミックメッシュを愛用している方のなかにも、それほど大量の汗をかかないときには、ドライナミックメッシュを少し大げさに感じるという人もいるはずです。

また、これほど快適に過ごせるならぜひ日常生活にも取り入れたいけれど、山以外で着るのは、いろいろと気が引ける思う気持ちもよくわかります。

そんな皆さんにぜひ知っていただきたいのが、ドライナミックに新たに加わった「ドライナミックスルー」

ドライナミックメッシュで培った汗処理のノウハウを、もっと気軽に取り入れられるようにと考えられた、普段着感覚で使える、ライトな汗処理用アンダーウェアシリーズです。

一見すると、よくある普通のアンダーウェアに見えますが、「ドライナミック」の名を冠するからには、ただの汗取りインナーに終わるはずはありません。

「ドライナミックメッシュ」と同じように、ベースレイヤーの下に重ねて使うもの。
見た目はかなり違いますが、考え方のベースは「ドライナミックメッシュ」同様に、肌に触れる面積を小さくすることで、濡れやベタつきを抑え、汗冷えを軽減するというものです。

ただ、「メッシュ」と大きく違うのは、汗を吸い上げる効果と、発散する効果の両方を備えて、「汗処理用アンダーウェア + 吸湿速乾ベースレイヤー」の2枚の役割を、1枚でこなすという点です。

1枚で2枚分の機能を持つ、片面メッシュ素材

素材表面の全体に見える小さなハニカム模様。表と裏で性格の違う、二面構造の素材です。

凹凸のある裏面は、肌に接する面積が少ないメッシュ構造。汗で濡れた肌に生地が張り付くのを防いでくれます。凹凸のないフラットな仕上げの表面は、メッシュが吸い上げた汗を広い面積に広げて、すばやく発散させる働きを担う部分。構造的には、メッシュ生地の表にフラットな表地を合わせた状態と考えればいいでしょう。

素材は、吸水速乾性に優れるポリエステルがメイン。メッシュ構造で汗を吸い上げるドライナミックメッシュとは違い、素材自体の吸水性で汗を処理します。

驚くのはその速さ。裏のメッシュが吸い上げた水分が、フラットな表面に一気に広がって、より広い範囲で発散されるので、スピーディーに濡れを乾かすことができます。

紙の上に垂らした水滴に、ドライナミックスルーの裏側を当てた様子。あっという間に表面に水が広がるのがわかる

幅広いシーンで使いやすい、着心地と見た目と汗処理のベストバランス

ただし、薄い素材の表裏を使い分けることで、吸汗と発散の二役をこなすため、「ドライナミックメッシュ」のような、圧倒的な汗処理能力の高さはありません。大量の汗をかき続けるような場面では、汗処理が追い付かず、濡れや冷えを感じる可能性があります。

ただ、それほど大量の汗をかかないライトな登山やハイキング、気温がさほど高くない季節のアクティビティなら、「ドライナミックスルー」の汗処理能力で充分。体にフィットする「メッシュ」に比べて「スルー」はゆったり目のシルエットで、薄手で肌触りが柔らかく、伸縮性や通気性も高いので、気軽でリラックスした着心地が味わえます。

何よりも、見た目がシンプルで違和感がないで、誰でもどんな状況でも、迷わず着られるのが大きな特徴。「メッシュ」では服を脱ぐのをためらう、下山後の温泉やジムの更衣室でも、まったく気を使う必要がありません。

メンズタイプは襟元がVネックに、ウィメンズは広めのUネックになっているので、どんなウェアにも合わせやすいのもいいところ。アウトドアからデイリーまで、幅広く使うことができます。

アンダーウェアなので、基本的には上に何かを着る前提ですが、メッシュほどスケスケではないので、汗の量が多い時や気温が高い時はこれ1枚になることもできそう。ただ、ある程度の透け感があり、薄手で下着や体の凹凸を拾いやすいので、気になる方にはちょっと厳しいかもしれません。

「メッシュ」と「スルー」を使い分ければ、いつでもどこでも汗対策は万全

これまでは「ドライナミックメッシュ」しかなかったミレーの汗処理アンダーウェアに、もうひとつのラインができたことで、使用する場面やアクティビティによって使い分けができるようになりました。汗の不快感を防ぐという目的は同じでも、スタイルの違う<メッシュ><スルー>。それぞれがどんな場面にふさわしいのか、具体的なシーンを例に考えてみましょう。

◆運動量が多く大量の汗をかくアクティビティには「ドライナミックメッシュ」の力強い汗処理能力が魅力

<登山>
急登が続くハードな登山や、重い荷物で長距離を歩く縦走登山では、環境の目まぐるしい変化への対応も重要。暑い、寒いを繰り返す状況で、<メッシュ>のパワフルな汗処理能力が大活躍。

<バックカントリースキー・スノーボード>
斜面を登って滑り降りるバックカントリーでは、夏以上に大量の汗をかくこともしばしば。防風性の高いレイヤリングに組み合わせると、<メッシュ>のメッシュが抱え込む空気が温まって、保温効果を発揮。

<雨の日のアクティビティ>
体を濡らす可能性がある雨の日は、濡れ対策として<メッシュ>が有効。上に着るものが濡れたとしても、体の冷えを最低限に抑えることができます。

<沢登りやシャワークライミング>
始めから濡れることを前提に行なう水辺のアクティビティでは、水から上がったときの冷え防止に、<メッシュ>のメッシュで、濡れた衣類が体に触れる面積を減らしましょう。

◆発汗量がそれほど多くない場面では、シンプルで着心地のいい「ドライナミックスルー」の快適性がうれしい

<気軽な登山やハイキング>
運動量のあまり多くない山歩きなら、気軽に着られて汗処理はしっかりしてくれる、使い勝手のいい<スルー>の出番。さらりと快適な着心地が続きます。

<キャンプやガーデニング>
長時間を屋外で過ごすキャンプや、暑さの中で作業に集中するガーデニングには、<スルー>で汗対策をしておきましょう。突然の雨に降られても、体を冷やすことなく屋根のある所にたどり着けるはずです。

<ご近所ランやサイクリング>
運動量は多いけれど比較的行動時間が短いシーンなら、着心地重視の<スルー>を選ぶのもあり。気温が高くて暑いと感じるときも、<スルー>ならストレスなく使えます。そのまま銭湯に直行しても、誰の目を気にすることもありません。

<通勤、通学、日常生活に>
汗だくの満員電車や炎天下での徒歩移動から、急に冷房の効いた屋内へ。街中の生活で汗や冷えに悩まされる時間にも、アウトドア品質の汗処理技術の力を借りましょう。<スルー>なら、ビジネスウェアにも合わせやすい形とカラーで、どんな場面にもフィット。クールな顔で快適に1日を過ごせます。

本格派だけのものじゃない! 誰もが使える身近なドライナミック

ドライの強烈なインパクトのせいか、「ドライナミック」はどこか、コアなユーザーのためのものというイメージがあったかもしれませんが、スルーの登場で、一気に手に取りやすいものになりました。気軽に使えるスルーは、きっと、これまで使うのをちょっとためらっていた、多くのみなさんの快適をお手伝いできるはずです。

どんな体型の登山者も気軽に使えるのがスルーのいいところ

売り場では、パッケージのカラーが目印。アクティブシーンのための本格派<メッシュ>は赤、日常から身近なアウトドアまで幅広く使える<スルー>は、青のパッケージと覚えておいてください。

2つのドライナミックで、日常からアウトドアまでをカバー。夏だけではなく1年を通して活用できて、ドライ、スルー共に、縫製糸に抗菌効果を施しているので、イヤなニオイを抑える効果も備えます。

これで汗対策に抜かりなし! 汗の悩みのすべてを、ドライナミックで解消しましょう。

◆モデル:杉本龍郎さん(登山ガイド)
日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ。ヨーロッパアルプスや、ニュージーランドでのトレッキングガイドを経て、現在は山梨県韮崎市を拠点に活動。2018年にはヒマラヤキャンプ隊にて、未踏峰パンカールヒマール(6,264m)に登頂。

◆ドライナミック着用コメント:
普段から山ではドライを愛用しています。これを使うようになってから、汗のストレスが劇的に少なくなったので、着ずに山に入ることは考えられないほど信頼しています。汗対策は夏のものだと思いがちですが、寒い季節にもとても重要です。メッシュは使い方によっては、汗対策だけでなく保温の助けにもなるので、1年間通して助けられています。

スルーは昨年から使い出しましたが、軽めの運動時や普段にも使っていて、とても快適です。メッシュは、機能的には申し分ないのですが、山の温泉以外で人に見られるのはちょっと抵抗があるし、厚手でぴったりした着心地なので、本気で動くとき以外は、楽に着られるスルーが使いやすいですね。場所や季節によっても使い分けができるので、両方持っておくと本当に便利だと思います。

原稿:小川郁代
撮影:小山幸彦(STUH)
協力:ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン

小川 郁代

編集・ライター

小川 郁代

編集・ライター

まったくのインドア派が、ずいぶん大人になってから始めたクライミングをきっかけにアウトドアの世界へ。アウトドア関連の雑誌、書籍、ウェブなどのライターとして制作に関わるかたわら、アウトドアクライミングの環境保全活動を行なう、NPO法人日本フリークライミング協会(JFA)の広報担当としても活動する。