絶景と癒しをダブルで楽しめる「渓谷×山歩」。夏は涼しさ、秋には紅葉を求めてー。夏休みやシルバーウィークの行き先としてもおすすめできる、福岡近郊の素敵な山歩道(さんぽみち)を紹介します。
※ 山歩(さんぽ)とは、山や身のまわりの自然の中を気持ちよく歩くこと。当企画「⚪︎⚪︎山歩」では、さまざまなテーマをかけ合わせ、思い立ったらすぐ行ける山歩コースの提案をしています。
2023.07.21
YAMAP MAGAZINE 編集部
山歩(さんぽ)とは、都会から少し足を伸ばすだけで出会える自然を、無理せずのんびり歩きながら楽しむこと。ふと予定が空いた休日や天気が良い日は絶好の山歩日和。
苔むした岩や神秘的な色の水をたたえた瀬・淵・滝などが織りなす非日常の空間は、夏には涼をもたらし、秋には周囲の木々が鮮やかに色づいて目を楽しませてくれます。
今回の山歩(さんぽ)道選定の目安は以下の通り。
・歩行時間:3時間以内
・歩行距離:5km以内
・上り累積標高差:400m以下
これはハイキング初心者でも無理なく気軽に歩ける目安。手持ちの歩きやすい服装と履き慣れた滑りにくい靴があれば準備OKです。
※一部、上記目安を超えるコースもあります。
※自然災害の発生などにより、現地の登山道や遊歩道、交通機関が通行止めになる場合もあります。お出かけ前に現地の最新情報を確認するようにしましょう。
秋吉台(山口県)・四国カルスト(愛媛県・高知県)と並んで、日本三大カルストに数えられる平尾台。
カルストとは、水に溶解しやすい石灰岩などが雨などの侵食でできた地形のこと。太古の海洋生物から形成された石灰岩が、ピナクルと呼ばれる岩柱やドリーネと呼ばれる凹地など、珍しい景観を形成しています。
名所のひとつが、小高い丘の上にそびえる鬼の唐手岩(からていわ)。かつては修験道の行者たちの修行の場であったといわれる場所で、その麓に流れる滝不動も彼らの滝行の場であったという伝承が残っています。
平尾台を訪れたらぜひ立ち寄りたいのが、ピナクルやドリーネと同じく石灰岩地形のシンボルである鍾乳洞。
特に、千仏鍾乳洞は1935年に国の天然記念物に指定された由緒ある鍾乳洞です。奥行き900mまで照明設備が整備され、水がたまっている深部を歩くためのサンダルをレンタルできます。
ひんやりとした鍾乳洞でのプチケイビング(洞窟探検)は、家族や友人との忘れられない思い出になることでしょう。
・歩行時間:1時間20分
・歩行距離:3.2km
・上り:148m
・アクセス
車で:九州縦貫道・小倉南インターチェンジから茶ヶ床園地駐車場まで約20分
・コースを詳しく見る
阿蘇外輪山から湧き出した伏流水が流れ下る菊池渓谷。渓谷内で最大の落差を誇る掛幕の滝のほか、フォトスポットとして人気の黎明の滝、山伏修行の伝説が残る天狗滝、日本の滝百選に選定された四十三万滝など、個性豊かな滝が点在しています。
この豊かな水は周囲に美しい天然広葉樹の森も育んでいます。春の新緑、夏の避暑、秋の紅葉、冬の樹氷など、四季折々に表情を変える森と水が調和した様子は、九州随一の渓谷美です。
いつ訪れても素敵な景観を楽しめる菊池渓谷ですが、とりわけ絶景として人気なのが光芒(こうぼう)。広河原周辺では夏の早朝にしか見ることができない光景です。
木々の間から射し込む朝日が放射状に水面を照らす情景は、SNSでも大人気。ただし薄明からの行動となるので、足元には注意しましょう。
・歩行時間:1時間10分
・歩行距離:2.8km
・上り:136m
・アクセス
車で:九州道・植木インターチェンジから菊池渓谷第一駐車場まで約40分
・コースを詳しく見る
耶馬日田英彦山(やばひたひこさん)国定公園内にある岳切(たっきり)渓谷は、耶馬溪の溶岩が造り出した巨大な一枚岩の岩盤を、温見(ぬくみ)川の水が滑るように流れる場所です。
水深は深い場所でも10cmほどで、川の中を歩くことができる水流遊歩道が整備されています。
長い年月をかけて磨かれた川底は素足でじゃぶじゃぶと歩け、水温の高い夏場には多くの親子連れでにぎわいます。渓谷に沿って地上をゆく山歩道もあり、季節を問わずその絶景を堪能できます。
岳切渓谷と同じ宇佐市院内町にあるもうひとつの人気スポットが、「宇佐のマチュピチュ」と呼ばれる山あいの集落と棚田の景色。
尖った山の中腹に切り拓かれた農地は、確かに南米ペルーの世界遺産マチュピチュに似ている景観。2016年には駐車場と展望所が完成しており、新しい名所へ立ち寄ってみるのもよいでしょう。
・歩行時間:1時間
・歩行距離:2.8km
・上り:97m
・アクセス
車で:宇佐別府道・院内インターチェンジから岳切渓谷駐車場まで約35分
・コースを詳しく見る
日本百名山の一座である祖母山(1,756m)。近隣で同じく日本百名山に選定されている阿蘇山(1,592m)などと違い、活火山でないため、その山懐は豊かな自然林で覆われています。
山頂付近は切り立った岩稜であるため、本格的な山登りの装備と経験が必要。北麓の神原(こうばる)登山口から5合目小屋までは、初心者でも歩きやすい山歩道が整備されており、祖母山の森に育まれた渓谷美を堪能できます。
祖母山を源流とする神原川の上流に位置することから、神原渓谷とも呼ばれる山歩道。5合目小屋を周回する沿道には、一合目の滝、寝覚の滝、御社の滝などが点在しています。
苔むした岩肌や滝、渓流と周囲の森林のコントラストは季節によって趣を変え、飽きることがありません。
・歩行時間:2時間10分
・歩行距離:2.2km
・上り:230m
・アクセス
車で:中九州横断道・竹田インターチェンジから神原登山口駐車場まで約40分
・コースを詳しく見る
※注意※ 野河内渓谷は2023年7月の大雨による増水で土砂が流出するなどしたため、復旧工事を行っています。不動明王・仮桟橋付近まで入れますが、それより奥は立ち入りできません(2024年7月12日現在)。最新の現地情報を確認するようにしてください(福岡市ホームページ)。
野河内(のごうち)渓谷には、片道20分あまりの山歩道が整備されています。距離にして約700mのコンパクトなルートですが、その沿道はまさに絶景のオンパレード。
入口近くに祀られた不動明王像を過ぎると、神秘的な水をたたえた、むくろうじ渕が。さらに鮎返りの滝・矢渕滝などの滝や、二瀬岩・ダゴ岩などの巨岩が連続します。
終点の風涼峡まで行けば秘境ムード満点。大都市の福岡市にあるとは思えない景観が広がります。
渓谷入口付近の、水深が浅く流れが穏やかな場所は、夏には涼を求めて水遊びを楽しむ親子連れも訪れます。ただし必ず保護者の方が付き添って、雨などで増水していたり、雲行きがあやしい場合は入渓を避けましょう。
流れの急な上流部は、専門的な技術と装備を持った登山者が、沢登りにチャレンジするフィールドです。
・歩行時間:45分
・歩行距離:1.4km
・上り:73m
・アクセス
車で:福岡都市高速環状線・野芥西インターチェンジから野河内渓谷駐車場まで約30分
・コースを詳しく見る
生命の源でもある“水”を身近に感じることができる渓谷は、癒しにもリフレッシュにもぴったりの山歩スポット。マイナスイオン豊富な清流と木々が放つ芳香は、心身の疲れも洗い清めてくれることでしょう。
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トップ画像:YUNIさんの活動日記より
執筆・編集協力:鷲尾 太輔