奥日光の神秘 ・雲竜渓谷の氷瀑を訪ねて|風景写真家・横田裕市さんのスノーハイク紹介

冬の日光といえば、多くの人が思い浮かべるのは華厳の滝や中禅寺湖の凍結した姿かもしれません。ですが、知る人ぞ知る冬の絶景スポットがあります。それが、奥日光に位置する「雲竜渓谷の氷瀑」です。

冬のごく限られた時期しか見ることのできない絶景ですが、適切な装備など、いくつかのポイントに気をつければ、登山初心者でも楽しめます。

国際コンテストなどで数々の受賞歴のあるプロ風景写真家・横田裕市さんが、自ら撮影した現地での美しい写真とともに、雲竜渓谷の魅力や、アイゼンなどの準備、氷瀑の撮影のコツについて紹介します。

2025.01.18

横田 裕市

風景写真家

INDEX

世界遺産・日光東照宮の北西に位置する雲竜渓谷

雲竜渓谷は、栃木県日光市・女峰山の中腹に位置する渓谷です。世界遺産・日光東照宮の北西に位置し、女峰山を源流とする稲荷川の上流部にあたります。渓谷の奥にある雲竜瀑は、冬季になると凍結し、壮大な氷瀑を形成することで知られています。

雲竜渓谷の氷瀑は、その規模と美しさから関東の名氷瀑のひとつとされています。落差約160mにも及ぶ巨大な氷の塊は、まさに自然が生み出すアート。太陽の光を受けて輝く渓谷内の氷柱は、大小さまざまな氷柱や氷壁が連なり、まるで氷の回廊を歩いているかのような感覚を味わえます。

訪れる人々を魅了し、「氷の神殿」や「氷のジュエリー」などと形容されることもあります。渓谷に立ち入った瞬間から、そこは美しい氷の回廊です。

アイゼン・ピッケルを装備し目的地の雲竜瀑へ

雲竜瀑へは渓谷の奥から凍り付いた岩場を登る必要があります。雲竜瀑への往来には12本爪のアイゼンとピッケルが必須です。しっかり準備をしていきましょう。登り切れば、そこには巨大な雲竜瀑が姿を現します。

落差160mの雲竜瀑

11時すぎに雲が流れ太陽光が雲竜瀑を照らす

雲竜瀑を前に記念撮影をする人、眺めながら食事をする人、それぞれの満喫する時間が流れています

氷瀑が見られる時期

雲竜渓谷の氷瀑が見られるのは、例年1月中旬から2月中旬の約1ヶ月程度です。この時期に合わせて、多くのツアーが開催されます。ただし、気温の変化によって氷瀑の形成状況は年によって異なるため、最新の情報を確認することをおすすめします。

近年は地球温暖化の影響で、氷瀑の規模が縮小傾向にあるという報告もあります。今のうちに見ておくべき貴重な自然現象といえるでしょう。

雲竜渓谷往復コース

登山口から氷瀑までは片道約4.5km、標高差約600mです。所要時間は往復で約4〜5時間程度となります。写真撮影や休憩を含めると、もう少し時間に余裕をもっておくのがよいでしょう。
ヤマップでのコースタイムは以下の通り。

*コース定数:16 コース定数とは
*歩行時間:4時間20分
*歩行距離:8.3km
*上り:562m

より詳しいYAMAPのコース情報はこちら

撮影のコツ


雲竜渓谷の氷瀑は、写真愛好家にとっても魅力的な被写体です。以下のようなポイントを押さえると、より印象的な写真が撮れるでしょう。

1.広角レンズの活用:氷瀑の壮大さを表現するには広角レンズが非常に効果的です。私の作例は14mmで撮影しています。

2.人物を入れる:氷瀑のスケール感を表現するために、対比として人物をいれるとより氷瀑のスケールが際立ちます。

準備と注意点

氷瀑トレッキングは冬山登山の一種です。適切な装備と準備が必要不可欠です。

装備

・スノーブーツ
・アイゼン(12本爪推奨)
・ストック
・ピッケル
・ヘルメット(氷柱の落下に備えて必須)
・スノーシュー(積雪状態による)
・防寒着(スキーウェアなど)
・グローブ
・ニット帽
・サングラスまたはゴーグル

多くのツアーでは、アイゼンやスノーシューなどの専門装備のレンタルがあります。

注意点

・天候の変化に注意:冬山の天候は変わりやすく、急激に悪化することもあります。
・氷柱の落下:気温の上昇とともに氷柱が崩落することがあります。ヘルメットの着用と周囲への注意が必要です。
・川への転落:渓谷内は踏み外しや転倒に注意。雪に覆われた川の上を歩く箇所があります。踏み跡から外れると冷水に浸かる危険があります。

初心者はガイド付きツアーを活用しよう

雲竜渓谷の氷瀑への道のりはそこまで難易度の高いルートではありませんが、初心者の方や、冬山登山の経験が少ない方は、ガイド付きのツアーに参加することをおすすめします。

地元のガイドは、安全なルート選択や天候判断、緊急時の対応など、専門的な知識と経験を持っています。また、雲竜渓谷や周辺の自然、歴史についての解説も聞くことができ、より深い体験ができるでしょう。

雲竜渓谷登山道へのアクセス

瀧尾神社の駐車場(そむさんの活動日記より

雲竜渓谷登山口へのアクセスは、JR日光駅または東武日光駅からタクシーまたはレンタカーを利用するのが一般的です。登山口前の駐車場、もしくは日光東照宮裏にある瀧尾神社の駐車場利用が主になります。登山口前の駐車場は5台程度ですぐ満車になります。路面凍結がひどく、コンディションによっては駐車する際は四駆・スタッドレス必須です。

駅から雲竜渓谷登山口駐車場までは約6km。多くのツアーでは、日光駅や宿泊先からの送迎サービスがあります。なお、私は今回宿泊した宿から徒歩で向かいました。

冬の日光が誇る自然美を堪能しよう

雲竜渓谷の氷瀑は、関東では稀有な冬の絶景スポットです。その姿は、見る者に自然の力強さと美しさを感じさせ、心に深い印象を残します。友人から雲竜渓谷を教えてもらい、初めて訪れた時の感動は今でも忘れません。

この景色を楽しめるのはわずか1ヶ月ほど。まさに「限られた時期しか見られない」冬の特別な体験と言えるでしょう。適切な準備と注意を払えば、登山初心者でも十分に楽しむことができます。

来シーズン、雲竜渓谷の氷瀑を訪れ、冬の日光が誇る自然美を味わってみませんか?きっと、素晴らしい時間になるはずです。

横田 裕市

風景写真家

横田 裕市

風景写真家

福島県出身 85 年生、東京都在住の写真家。雄大な自然のスケールを伝える大胆かつ 繊細な絵を得意とする。プロとして10年のキャリアを持ち、主に商業向けに国内外の風景を撮影。Appleでの広告採用や国際フォトコンテスト ipa2016 での部門優勝、海外メディア 掲載等、国内外問わず活動の幅を広げている。今秋、TAMRONの新作レンズ広告撮影を担当。全国でSONYのセミナー講師を務める。20 ...(続きを読む

福島県出身 85 年生、東京都在住の写真家。雄大な自然のスケールを伝える大胆かつ 繊細な絵を得意とする。プロとして10年のキャリアを持ち、主に商業向けに国内外の風景を撮影。Appleでの広告採用や国際フォトコンテスト ipa2016 での部門優勝、海外メディア 掲載等、国内外問わず活動の幅を広げている。今秋、TAMRONの新作レンズ広告撮影を担当。全国でSONYのセミナー講師を務める。2019 年ソニーイメージングギャラリー にて初写真展「フィンランド 冬の光」が大成功を収め、全国で巡回展を開催。

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