気温が上がってくる春先になると、葉が出る前に可憐な花を咲かせるミツマタ。春を告げる花のひとつとされ、近年、登山者の間でもミツマタが咲く山の人気が集まっています。今回は、YAMAPユーザーの登頂者数のデータから、ミツマタ鑑賞が楽しめる人気の山をランキング形式で紹介します。
トップ画像:ぴょんさんの活動日記
2025.04.09
YAMAP MAGAZINE 編集部
コウゾと並び、その樹皮が和紙の原料として知られるミツマタ。江戸末期生まれの植物学者・牧野富太郎によれば、「三叉(ミツマタ)はその枝が3本ずつに分かれていることによる」というのがその名前の由来とされています。
古くは7〜8世紀ごろに編纂された日本最古の歌集『万葉集』でも柿本人麻呂がミツマタの歌を詠んでいますが、日本原産ではないとされ、和紙の材料として本格的に活用されるようになったのは16世紀ごろからだと考えられています。
中国での名称(漢名)は「黄瑞香(おうずいこう)」。その名の通り、とりわけ群生地では周辺を黄金色に染め上げ、甘い香りを漂わせます。
近年は登山者の間でも、ロウバイに続く春を告げる花として、人気を集めているミツマタ。今回は実際にYAMAPでの実際の2024年の登頂者数データをもとに、ランキング形式でミツマタ鑑賞が楽しめる山を紹介します。
「ピーヤ」の名前で親しまれている鍛冶屋坂水路橋(さぁ〜ちさんの活動日記)
都留アルプス山(713m)や、古城山(583m)、天神山(580m)、長安寺山(654m)など、標高500~650mの山々が山梨県都留市のほぼ中央に連なる「都留アルプス」。2016年から整備の気運が高まった新しいルートで、歩きやすく整備された複数のコースがあり、比較的手軽に縦走が楽しめます。
木々の間から望む富士山や四季折々の景色が楽しめますが、特に春は登山道の途中にあるミツマタの群生地が見もの。タイミングがよければ、3月は梅、4月は桜とともに鑑賞できるでしょう。
コース情報
コース定数:18(コース定数とは)
コースタイム:4時間40分
歩行距離:9.3km
累計標高差(上り):657m
累計標高差(下り):750m
三峰山(みつみねさん、934m)は、丹沢山地東部の大山(1,252m)の北にあり、その名の通り北峰、中峰、南峰と3つの峰から成る山です。丹沢山北東の丹沢三峰(東峰、中峰、西峰)と区別するために大山三峰山(おおやまみつみねやま)ともよばれます。
ミツマタの群生地は三峰山の登山口でもある不動尻(424m)に広がっており、県内最大規模のミツマタ大群生地となっています。
一方、三峰山は低山ながら地形が急峻で道が狭く、痩せ尾根やハシゴ、クサリ場などが連続し、経験者向きの登山道となっています。特に登山経験の浅い方の単独行動は避けた方が無難です。
コース情報
コース定数:26(コース定数とは)
コースタイム:6時間20分
歩行距離:10.3km
累計標高差(上り):1122m
累計標高差(下り):1134m
丹沢湖の北側に位置し、ミツマタ群生地があることで知られる大出山(おおだやま、834m)。通称「ミツバ岳」の由来は定かではありませんが、一説にはミツマタ畑(ミツマタバタケ)が「ミツバダケ」と勘違いされて広まったともいわれています。
初心者でも気軽に登れるこの山の一番の魅力は、満開のミツマタと富士山を一緒に望めること。ミツマタの花が咲く3月下旬ー4月上旬に登山者が集中し、この時期には多くの登山者で賑わいます。
コース情報
コース定数:10(コース定数とは)
コースタイム:2時間40分
歩行距離:2.2km
累計標高差(上り):487m
累計標高差(下り):487m
大山ケーブルカーの駅に隣接して立つ大山阿夫利神社下社。山頂は本社が(Shinichi14k0さんの活動日記)
第4位の三峰山同様、丹沢山地に位置する大山(1,252m)。古くは雨降山、阿夫利山とも呼ばれた雨乞い信仰の山で、江戸時代には庶民の登拝が流行したといわれています。大山ケーブルカーを利用すれば中腹までアクセスできるため、初心者にも人気。山頂からは相模湾や富士山、秦野市街、伊豆大島などの眺望が望めます。
ミツマタを見るには、ヤビツ峠、あるいは広沢寺温泉から足を延ばして、第4位でも紹介した大規模群生地・不動尻を通るコースがおすすめです。
コース情報
コース定数:20(コース定数とは)
コースタイム:5時間20分
歩行距離:9.1km
累計標高差(上り):721m
累計標高差(下り):1357m
焼森山付近にある奇石「こだま岩」からの素晴らしい眺望(full moonさんの活動日記)
栃木・茨城県境の稜線に近い低山で、ミツマタの群生地として有名な焼森山(やけもりさん/やきもりやま、423m)。
現地の案内看板によると、戦時中に紙不足を懸念した地元の方々が紙の原料としてミツマタを植えたのが始まりとされています。いっときは忘れ去られていましが、2005年に中学校建設のために山の間伐が行われたことがきっかけとなり、光が入り、群生地として成長しました。
「ミツマタの小径」とよばれる群生地では遊歩道が整備され、光が差し込むミツマタのトンネルの中を歩けるのも魅力的。焼森山の東に連なり、山頂からの眺望がよい鶏足山(けいそくさん、430m)と併せて登る登山コースが人気です。
コース情報
コース定数:14(コース定数とは)
コースタイム:3時間40分
歩行距離:6.0km
累計標高差(上り):618m
累計標高差(下り):615m